セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「夏の夜の夢」

2015-11-29 22:02:00 | 外国映画
 「夏の夜の夢」(「A MIDSUMMER NIGHT’S DREAM」、2014年、米)
   監督 ジュリー・テイモア
   原作 ウィリアム・シェイクスピア
   撮影 ロドリゴ・プリエト
   美術 エス・デヴリン
   照明 ドナルド・ホルダー
   音楽 エリオット・ゴールデンサル
   振付 ブライアン・ブルックス
   出演 キャサリーン・ハンター (パック)
       デイヴィッド・ヘアウッド (オーべロン)
       ティーナ・ベンコ (ティターニア)
       リリー・イングラート (ハーミア)
       ザック・アップルマン (ディミートリアス)
       リリー・イングラート (ライサンダー)
       マンディ・マスデン (ヘレナ)

 これを映画と呼ぶべきか、が、しかし、これも映画なのだろう。
 舞台劇の映画化は掃いて捨てる程有るけど、これは大ヒットした舞台劇
をそのまま映画的手法を取り入れて撮影した作品。
 監督は舞台演出をしたジュリー・テイモア本人が手掛けています。

 解説とあらすじ
 http://movie.walkerplus.com/mv59089/

 つまり、こういう映画。
 https://www.youtube.com/watch?v=ZTtN_JDFJVA

 余り観劇はしませんが、数少ない経験でいうと舞台をビデオ撮影したも
のを劇場内で販売してるのは見た事があります。
 この作品も、その類だろうけど、流石に一流演出家が自分の作品を映像
化しただけあって見応えが有りました。
 映像化の利点はヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!」と同じで、演出家
が注目させたい箇所をピックアップできる所、また、役者の息遣いさえ感じ
られる至近距離の映像が使える事だと思います。
 この作品は舞台劇の映画化と違って、脚本のカットや付け足し無しの舞
台そのまま、出来不出来を修正できない一発勝負のリアル感が何とも言
えない生身の迫力を生み出していて、それを見事に映像化してると思いま
す。
 (実際は何日もの撮影でイイトコ繋ぎだとしても、演じてる役者は一発勝
負に変わりない)

 この作品がDVD化されるのか解りませんが、もしレンタル出来る状態に
なったなら、自宅で観劇気分を存分に味わえる、そんな楽しみが増えると
思います。
 只、どんなに上手く作っても、やはり「生」の素晴らしい舞台には敵わな
い。
 舞台の醍醐味~浄瑠璃、落語、講談、浪曲に至るまで~、最高の舞台
は脚本、演出、美術、役者だけでは出来ないのです、それに反応する生
身の観客が居て、その全てが揃う。
 確かに、この作品は舞台の最高の映像化だろうけど、やはり芝居は生
で観てナンボだと思いました。

※この作品、観賞料金¥3000(割引は学割¥2500のみ)ちゅう、よく
 解らん設定。なのでDVD/ブルーレイ化しても料金が幾らになるのか)
※シェークスピアの時代、演劇は屋外の円形舞台(女性陣はファッション
 ショーの舞台、男性諸君はストリップ劇場の「出べそ」を想像して下さい)
 が多かったそうで、これは、それを意識した作りになってます。
 但し、21世紀ですから立体的だし映像のマジックも存分に使ってます。
※大人だって「枕投げ」は大好き!(笑)

 H27.11.28
 吉祥寺ヲデオン

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 憂き世をば 浮世に変えよ せめてもの ひばり啼くまで 夏の夜の夢
コメント (6)
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「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」

2015-11-22 13:44:51 | 映画感想
 「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」(「IF I STAY」、2014年、米)
   監督 R・J・カトラー
   脚本 ショーナ・クロス
   原作 ゲイル・フォアマン  「ミアの選択」
   撮影 ジョン・デ・ボーマン
   音楽 ヘイター・ペレイラ
   編集 キース・ヘンダーソン
   出演 クロエ・グレース・モレッツ
       ジェイミー・ブラックリー
       ジョシュア・レナード
       ミレイユ・イーノス
       ステイシー・キーチ

 或る雪の日、子供たちが休校になったのを幸いに家族で実家へ出掛ける。
 チェリストを目指すミアは最近、初恋の相手アダムと別れたばかり。
 彼女はジュリアード音楽院の合否通知を待っていたが、実家へ向かう途中、
対向車を避けようとした車がスリップ、衝突事故を起こしてしまう・・・。

 幽体離脱とか超能力、タイムトラベル、このテの作品、今は余り受け付けな
いのだけど、これは、まぁ、いいかな。
 幽体離脱したヒロインが知り得ない事を知るというアンフェアな展開は好きじ
ゃないけど、クロエちゃんだから目を瞑ります。
 60年近く生きてきたけど、結局、僕はこういう「くすぐったい映画」が好きな
んでしょうね。(笑)
 幽体離脱したミアが振り返る初恋物語。
 この作品、クロエの為の映画と言ってもいいかも。
 この世代でクロエ・グレース・モレッツが抜きん出てるのはファンのハンデを
差し引いても、それ程、異論はないと思うし、事実この作品でも初恋に揺れな
がら家族から自立しようとする、微妙な立場を巧みに演じています。
 だから、これはこれで充分アリだし、その安全路線に異議を唱える積りはな
いと納得しています。
 でも(笑)・・、「小さな恋のメロディ」、「フレンズ」、「ジェレミー」、「青い珊瑚礁」、
「ラ・ブーム」、初恋物語というカテゴリーならば「ローマの休日」も。
 いずれもヒロインは手垢の付いてない初々しさでキラキラしてる。「初恋物語」
というピュアな素材には無名のスレてない初々しさが必要条件なんです。
 この作品、時代が変わったのかもしれないけど20世紀だったら大ヒットした
かもしれない、今だって、ヒロインが無名の新人女優だったらコケる恐れ大とは
言え、賭けるに値する大博打だった気がする。
 「初恋物語」に於ける最大のポイント「ピュア」さで、クロエちゃん不利なんだよ
なァ。(汗)
 デビューした初々しさというのは演技力と別モノで、他の要素でカバー出来な
い一瞬のシロモノなんです。
 (A・ヘップバーンだって2作目、3作目も初恋物語だけど「ローマの休日」のピ
ュアさは再現しようがなかった)

 この作品、確かに古いスタイルかもしれない。
 でも、初恋というエキセントリックで振り幅が極端に大きい素材の場合、設定
は落ち付いた状況の方が良いと僕は思っています。
 素材が極めて敏感で脆いのに、周りまで一緒にワサワサしてたら焦点が定
まらなくなる。
 その点、クロエ側の人達が安定してる為、二人をクローズアップする妨げに
ならずピントがズレる事がない。
 ここを「甘い」と見てしまえば評価は低くなるだろうけど、僕はセーフです。(笑)
 それでも事故後の家族の生死は、只、ドラマチックにしたいだけのあざとさ、
人の生死を効果の為(だけ)に使ってる違和感、ここは大きく減点に感じました。
 更に言えば、家族、親類、友人、いずれも理想的すぎなのですが、これも、或
る意味、作劇上(本作のテーマ~生死の選択)の効果を狙っての単純化で、そこまで
簡易方程式でいいの?と言う疑問も有ります。

 原作ものだから何とも言えないけど、脚本書いた人の中に「ジェレミー」(197
3年)が有ったかも。
 個人的感想ですが、あの作品を「自分ならこう作る」で書いた部分が有るよう
な気がしてならない。
 チェロ弾き、方向は違えどアーティスト志向の二人、引っ越しによる決定的障
害(こちらの引っ越しは深刻だけど、或る意味、引っ越し)。
 出会いも似てるし、何となく流れもそんな感じだし。
スーザンとジェレミーが19と18で、もし、スーザンに選択権が有ったら・・・。
 只、「ジェレミー」は一ヶ月くらいの話で喧嘩する暇もなかったけど(途中、F・
ゼフレッリの「ロミオとジュリエット」を真似たシーンがありますが、その点、「ジェ
レミー」は「ロミ・ジュリ」に近い)、こちらは1年半の時間が有る為、二人の仲を喧
嘩を含めて複雑に出来てる。
 でも、それがシンプル・イズ・ベストだった「ジェレミー」を超える要素になったか
は、ちょっと疑問。
 「ジェレミー」は演出が硬く、特に前半30分の流れが悪い、演出のテクニック
では、こちらが上だと思うのですが、時代と劇中時間に合わせて詰め込んだ分、
上記のような「あざとさ」が目につく欠点も出てしまった気がします。

 最後に。
 クロエ・グレース・モレッツが普通の女子を演じてるを余り観ないのですが(笑)、
良かったです。

※「人が道を選び、選んだ道が人を作る」、いい台詞。
※僕がクロエ・グレース・モレッツを気にするのは、彼女がパトリシア・ゴッジに
 似てるからだと思います。
 映画を見始めた頃、J・フォンダのようなお姉さんタイプに憧れたけど、時代も
 あって同年代の女優は殆ど居なかった。
 初めて同年代の女子に憧れたのが「かもめの城」のP・ゴッジ(「シベールの
 日曜日」の時じゃないよ!)。
 彼女は20歳前にスクリーンから離れたけど、彼女の面影が重なるクロエが、
 この先、どんな役者になっていくのか・・・、もしP・ゴッジが女優を続けていた
 らどうなったのか、そんな興味もあってクロエちゃんを応援してる気がします。

 2015.11.21
 DVD
コメント (2)
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(カーリング)祝 LS北見 パンパシフィック選手権優勝!

2015-11-16 23:05:02 | カーリング
 土曜の映画「マルガリータで乾杯を!」(インド)、障がい者の娘が一人の女性として生きる
決意を固めるまでを描いた作品だけど、作りが雑な感じで。
 出来事が全て結末に向かわせる為だけに有るのと、ヒロインの尻が軽すぎてバイの悩み
も深刻に受け取れない(出会いが偶然だから、違っていればノーマルな関係の維持に悩む
はず)、それら安易な進め方が話に深みを与えず題材を活かしきれていない。
 僕の感想は一言、残念な作品。
 で、結局、記事書く気になれずでした。

 そんな腐ってた状況に朗報が。(笑)
 パンパシフィック(PACC)で優勝したの10年振りとか。
 ここのとこ中国、韓国が強かったもんなァ。
 ここで2位以内に入らないと世界選手権へ行けないし、行けないとオリンピック遠くなる
ばかりだし。
 本当に良かった!
 勝ったチームが北海道銀行フォルティウス(道銀)のライバル、ロコ・ソラーレ北見(LS)と
言うのは悔しいけど、贔屓チームと出場権を秤に掛けりゃ、やはり出場権の方がずっと重
い訳で。
 とにかく日本の為には万歳!LS北見よくやった!!
 (何か今年からアジア・オセアニア枠が3になったという情報が。結局、韓国、中国も行く
のか(笑)~でも、ニュージーランドとオーストラリアが急に強くならない限りアジア地区は世
界選手権に関してはほぼ無風状態になった)

 暫く道銀の1強かと思ってたら、LSのスキップ本橋が産休、そこへ同好会に格下げされ
宝の持ち腐れになってた日本スキップ両横綱の一人、藤沢五月が中部電力から里
帰り加入して戦力大幅UP、本橋のワンマンチームだったのが2年前の吉田(道銀をクビ)、
今年の藤沢加入で風通しが良くなり、それがチームムワーク強化にも繋がって、チームが
いい方向に進化してる。
 道銀ファンとしてはヤバイ感じ。(汗)
 現状、LSより優ってるのはパワーだけかも・・・。(スキップに限ればパワーは藤沢の方
が、ずっと上)
 今年度は小笠原の調子が上がらずLSに全敗中?だし。(涙)
 現在は、カナダで行われてるワールドカーリングツアーを転戦していて徐々に調子を上
げてる様子。
 でもまだ準決勝止まりで決勝まで行けてない、去年は確か2勝してたのに、とにかくガン
バレ!
 国内公式戦は来月の軽井沢国際、そして世界選手権代表を決める2月の日本選手権、
そこで優勝すれば3月の世界選手権へ。
 シーズンはまだ序盤、まだまだこれから!!
コメント (2)
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「新幹線大爆破」

2015-11-02 22:53:39 | 邦画
 東映嫌いが災いして見逃してた作品。

 「新幹線大爆破」(1975年、日本)
   監督 佐藤純彌
   脚本 小野竜之助   佐藤純彌
   原案 加藤阿礼
   撮影 飯村雅彦
   美術 中村修一郎
   音楽 青山八郎
   出演 高倉健
       宇津井健
       山本圭
       千葉真一

 工場の倒産で全てを失った沖田(高倉)、ふと知り合った学生運動家のなれ
の果て・古河(山本)、売血で命を繋いでた所を沖田に拾われた大城(織田)。
 その3人が国家相手に大博打に出る・・・。 

 探せば疵は幾つも有るけど、エンタティーメント作品として合格点ラインは軽
く超えてると思います。
 何よりハリウッドの大ヒット作「スピード」を20年先取りしてるのが痛快。
 
 主犯・高倉健と共犯・山本圭、織田あきらの回想シーン、緩急の付け所となっ
ていて僕は上手いと思います。
 この関係性を最小限の描写で効果的に描いてるのが好き、例えれば「冒険
者たち」における3人の冒頭の描写でしょうか。
 まぁ、共犯者の心理は解るけど主犯・沖田の動機付けは若干弱く、高倉健の
個性に頼りすぎてますが。
 (この作品、意図の有る無しに関わらず「冒険者たち」からリリシズムを抜き、
その替わりに日本的湿り気と泥臭さを加えた感じ、その意味で「冒険者たち」や
「明日に向かって撃て」の系譜に連なる作品、そんな気がします)

 僕は面白かった。これは間違いないので強調しますが、それでもラストシーン
がねぇ。(笑)
 ラストは、その一つ前のカットじゃないかな。
 沖田の上を飛んで行く飛行機、そこに○○。
 「明日に向かって撃て」より「みじかくも美しく燃え」のように主役を映さない方
が効果的だと・・・。
 そこが一番残念。
 他にも「一人も殺さず国から金を奪う」目的なのに、そう言ってる沖田が田坂
都の死産と重篤にリアクションを見せない(犯人側に犠牲が出てたにしても、そ
れは自業自得で乗客には何の罪もない)のは気になったし、元女房が写真を全
て焼却したので顔が不明というのは相当苦しい。
 山本圭の北海道の実家にはすぐ刑事が行くのに、沖田に実家は無いのか。
(笑)
 名前・住所が割れた時点で、運転免許更新申請書が警察に写真付きで有る
でしょ。 
 何かというと「私が行きます」と刑事役の青木義朗がフル回転するのも、ちょ
っと・・・。
 これ犯人側(高倉)、国鉄側(宇津井)の軸は定まってるのに、警察側の軸が
定まってないのが遠因。
 人を出し過ぎてアイドルグループの4人という美味しい素材を無駄にしてるし。
 僕だったら名古屋を通過する時、
 ア「通過しちゃったよ、でも、これで少しは眠れるな」
 マネージャー「バカ、ずっと目が開かなくなってもいいのか!」
 ア「それも、いいじゃない、なァ」
 くらいの台詞を入れちゃう。(笑)
 (田坂都にしても、死産・重篤という台本上の要件を満たした後、一切出てこ
ない。どうもドライとウェットのバランスが悪い)
 他にもいろいろ有るけど、話の推進力の馬力が大きいから致命傷にはなって
ないし、限られた時間内という切迫感が上手く疵をスルーさせてると思います。

 役者陣、高倉健は思ってたより随分良かった。
 でも一番印象に残ったのは過激派くずれのインテリを演じた山本圭。
 第一候補は原田芳雄だったらしいけど、山本圭の方が断然適役。
 あの位置は情念ではなく知性の方がいい、原田芳雄だと知能犯グループに
ならず単なるアナーキーになってしまい、知力vs知力というこの作品の面白見
が半減してしまう。
 宇津井健は上手いと思った事のない人だけど、この作品では嵌ってました。
 後、東映の気風なのか官房副長官の人が軽すぎ。
 お陰で政府、国鉄、警察、犯人のバランスが崩れてしまってる、力作だけに勿
体ない。

 欠点ばかり言い募った記事になりましたが、最初に書いたようにスケールの
大きなエンタティーメント作品に仕上がってると思います。
 僕は充分に楽しめました。

※wik見ても出てないけど、乗客のワンサの中に若山富三郎居るよね。
※僕の世代だと「特別機動捜査隊」+「Gメン75」+「ザ・ガードマン」な感じ。(笑)
※冒頭、貨車に仕掛ける素振りを見せながら、実際はキューロク(9600型蒸気
 機関車)のテンダー(機関車に付いてる炭水車)後部に仕掛けられたとはこれ
 如何に? (国鉄非協力だけど撮影は私営炭鉱線、何とかなる)
※品とセンスをまるで感じないクレジット、酷い。
※古河(山本)の住所が隣町の東○○5丁目、何処かと思ったら小学校(母校)の
 坂の下、同級生の住まいはあの辺りがメインで、あのアパートから50mくらい
 奥に初恋?の子が住んでた。(笑)

 2015、11.1
 TOHOシネマズ日本橋
 
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