セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「マルタの鷹」

2015-10-26 00:18:32 | 外国映画
 「マルタの鷹」(「The Maltese Falcon」、1941年、米)
   監督 ジョン・ヒューストン
   脚本 ジョン・ヒューストン
   原作 ダシール・ハメット
   撮影 アーサー・エディソン
   音楽 アドルフ・ドイチュ
   編集 トーマス・リチャーズ
   出演 ハンフリー・ボガート
       メアリー・アスター
       シドニー・グリーンストリート
       ピーター・ローレ

 16世紀、マルタ騎士団がスペイン王へ献上する途中海賊に奪われ、以来、
行方不明になっていた黄金に宝石を散りばめた鷹像。
 その像を巡る争奪戦に巻き込まれた探偵サム・スペード。

 ダシール・ハメットの原作を基に製作されたハードボイルドの記念碑的作品
で、名匠J・ヒューストン監督の第1作目にしてH・ボガートの出世作。
 この作品と「カサブランカ」がボガートのイメージを作ったのでしょう。
 1941年なら傑作、流石に70年の時が過ぎれば古典だけど今観ても名作だ
と思います。
 「三つ数えろ」程ではないにしろ話は結構解りにくい、だけど70年前ならいざ
知らず今はもう「犯罪の陰に○あり」は定石だから、最初から○が怪しいと思うの
は・・・ねぇ。(笑)
 3人が殺される訳ですけど、犯人は誰?と「マルタの鷹」の行方が上手にミッ
クスされてサスペンスを盛り上げてました。
 尤も、誰が殺したかはそれ程重要じゃなく、この作品の見所はスぺードと女、
介入者、ボス、それぞれの錯綜する思惑、騙し合い、心理戦辺りにあるんじゃな
いでしょうか。
 僕はミステリー要素より、そこが面白かったです。

 H・ボガートはこの作品でイメージを作ったのだから実に印象に残る演技。
 でもリアルタイムじゃないから、観る前からのボガートのイメージをそのまま演
じてる感じがしてちょっと悔しい。
 ヒロインのメアリー・アスターは僕の美的感覚から言うとイマイチ、けれど予算
の付いてる作品じゃないからスターさんは使えないし、上品ぶっても「お里」が知
れてる女は上手く出てたから合格かな。
 S・グリーンストリートとP・ローレは同じWBだから「カサブランカ」を思い出して
しまうけど、いずれも好演。
 ローレは小ワルを演じてると実にピッタリなんですよね。

 「相棒が殺されたら男は黙っちゃいない」
 ハードボイルドとは痩せ我慢の事であると誰かが言ってたけど、この台詞以
降のシーンは正に「そのもの」で、古典的ハードボイルド或いはH・ボガートの
世界を充分堪能出来ると思います。
 只、「三つ数えろ」と雰囲気が非常に似てるから、ボガートのハードボイルドに
特別興味が無ければ、どちらか一つ見れば充分かもしれません。

 この作品、昔から「いつか観よう」と思ってた作品、機会を提供して頂いた宵乃
さんとリクエスターに感謝致します。

※ダシール・ハメット
 レイモンド・チャンドラーと共に、ハードボイルドを確立させた作家の一人。
 黒澤監督代表作の一つ「用心棒」は、ハメットの「血の収穫」と他作品を下敷き
 にしています。

 H27.10.24
 DVD
コメント (4)
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「愛人/ラマン」

2015-10-12 23:57:40 | 映画感想
 「愛人/ラマン」(「L'Amant」、1992年、仏・英)
   監督 ジャン・ジャック・アノー
   原作 マルグリット・デュラス
   脚本 ジェラール・ブラッシュ  ジャン・ジャック・アノー
   撮影 ロベール・フレス
   美術 タン・アット・ホアン
   音楽 ガブリエル・ヤレド
   出演 ジェーン・マーチ
       レオン・カーフェイ
       フレデリック・マイニンガー
       ジャンヌ・モロー(ナレーション)

 1930年頃の仏領インドシナ(ヴェトナム)。
 リセ(学校)の寄宿舎暮らしの15歳のフランス人少女が、留学帰りの裕福な華僑の息子(32)と出会う。
 少女の家は投資に失敗し家族は崩壊寸前、フランスへ帰る金も無い。
 男は家の財産を守る為の政略結婚を控えていた。
 少女は富と好奇心から男の誘いを受け入れる。
 逃げ場の無い二人は快楽の刹那に堕ちていった・・・。

 まぁ、「禁断の愛」ってヤツです。
 クラブ仲間が「娘が出来ると10代の娘見ても欲望を感じなくなるんだよね」
 彼は一番早く結婚し子供も最初に出来たのだけど、僕は10年後、彼の後を追って同じ感覚に嵌ってます。
 なのでロリ顔の娘が生々しいシーン演じてても「大人の女」みたいに話に没入出来ない。(笑)
 フランス人が仏領アジア辺りの話を作ると「エマニエル夫人」みたいな、信じられないアジア蔑視の作品を作るけど、これはそれ程酷くはなかった。 
 虚実入り乱れた二人の微妙な関係は描けてたと思います。

 終盤近く、ベット上で二人の会話、
 「もう一度言って欲しい、お金をくれるからここに来たと」
 「お金をくれるから、ここに来たのよ」
 「繰り返して・・・初めて会った時から私はお金の事しか考えていない」
 「初めて会った時から、お金のことしか考えてないわ」
 男が女に頬を寄せて
 「君は淫売だ・・娼婦だ」
 「そう言われても不愉快じゃないわ」
 女が誘う、しかし男が顔を背ける
 「もう君を抱けない・・・(僕を)愛してないから」
 この台詞は始めの方、高級車の中での会話、
 「僕が貧しい中国人だったら?」
 「お金持ちの貴方がいいわ」
 と対になってると思うのだけど、残念ながら、この映画の肝とも言えるシーンが他シーンと同テンションで浮彫りになってない。
 この時の二人が表現すべき台詞裏の複雑で微妙な感情は「それなり」に出来てるのだけど、それが強い印象とならず埋没してしまってる。
 解らないコトはないけど、サラッとやり過ぎた気がします。
 そこが残念かも。

 美術、撮影は良かったです。

※ちょっと倒錯LOVEに興味が沸いてたのですが、ここら辺で打ち止めかな。(笑)
 「セクレタリー」はまあまあ。
 「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」は最後の10分で全てぶち壊し(そこ迄は良かった、ヒロインも魅力有った)。
 「愛人/ラマン」悪くは無いけど微妙。(笑)
 そんな意図は全然無かったけど、(話作りの)色々なヒントは貰えたので無駄な時間にはならなかったような・・・。
※更新が途絶えてたのでチト無理矢理、記事を書きました。
 他にも「夏の遊び」、「さらば友よ」、「太陽はひとりぼっち」とか観てるのですが、どうも記事を書く気が起きなくて。

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 あの日より 時は止まりし 我がいのち 交わる汗に 真(まこと)あるとは

 2015.10.12
 DVD

 10.14 追記
 ※そう言えば我が国には、こんな戯れ歌があったっけ
 傾城に 真ありとは 誰言うた 恋はこいでも 金持ってこい
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