セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「お熱いのがお好き」

2011-05-30 22:51:17 | 外国映画
 「お熱いのがお好き」(1959年・米)監督ビリー・ワイルダー 脚本ビリー・
   ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド 出演ジャック・レモン、トニー・カーティ
   ス、マリリン・モンロー

 言わずと知れた、B・ワイルダー&I・A・L・ダイアモンドの傑作コメディ。
 ワイルダー、ダイアモンド、E・ルビッチやN・サイモン、いずれも憧れてやま
ない人達。
 コメディの教本。
 僕も信念に近いくらい、そう思っていますし、実際、これ位、面白い映画は、
そう有るもんじゃない。
 そう思えば思うほど、ピーマン脳ミソの自分に、ほんの少しだけですけど思
う事がないではない作品でもあるんです。
 勿論、こんな「名作」にケチを付ける気は毛頭ありません。 
 誤解なさらぬように。

 まず、解らないのがT・カーティスとJ・レモンの関係。
 何故レモンは、あそこまで虐げられてもカーティスにくっ付いていくのか。
 口と女を丸め込むのに達者なカーティスと居る方が、仕事に有り付く確率が
高いから、それだけなんだろうか?
 最初に浮かぶのは「太陽がいっぱい」の、フィリップとトムの関係。
 二人はホモで、サディストのカーティス、マゾヒストのレモン。
 この場合、カーティスはフィリップと同じく両刀使いという事になる。
 でも、あの時代、ホモセクシャルを匂わせるの御法度だとも思うし・・・。
 マイアミで、レモンの意地悪のお陰でカーティスの正体がバレそうになった
時の、ホテルの浴室でカーティスがレモンにとった凶悪で居丈高な態度。
 通常なら、
 「ジェリー、ちょっと勘弁しろよ」
 「ジョー、随分、貸しがあるんだぜ、あれ位、安いもんさ」
 「過ぎたことは、過ぎたことだろ、元には戻れない、そんな事が出来りゃ、俺
達ァ、こんな所にいない、違うか?」
 「ハッキリ言っとくぞ!俺が最初にシュガーに目をつけた!!」
 「お前には、ご贔屓さんがいるだろ」
 「ありゃ、男だ!」
 「知るか!」
 で済むのに、なんで、ああいうシーンになったのか?
 ピーマンの自分には解らない、誰か教えて。

 もう一つ、自分的な「笑いの鮮度」について。
 この映画で一番の大爆笑は、レモンと富豪ジイさんのタンゴシーンというの
が定説なんですけど、何回か見返してくと一番最初に飽きるのが、このシーン。
 いや、何度観ても可笑しいですよ、このシーン。
 秀逸です、秀逸なんだけど、いかにも「それ!」ってシーンなんで、こっちも
「御出でなすった」って感じ。(笑)
 それを言われたら、作り手の「立つ瀬が無い」のは解ってるんですけどね。
 むしろ、何度観ても自然に可笑しいのは「列車」のシーン。
 ベット・パーティのシーンなんて最高です。
 暴論承知で書きますけど、マイアミでの一連シーンを無くして、この列車旅を
メインにした方が良かった気もします。
 ギャングも、富豪ジイさんも、みんな一諸で同じ列車に乗り合わせた「グラン
ド・ホテル」形式にしても、この話、成り立つじゃないですか。
 食堂車を真ん中にして、前の車両にはマフィアの連中を乗せた借り切り車
両が連なり、後ろはレディース・バンドの車両、更に最後部には、オスグット3
世の御料車みたいな専用車両がくっ付いてる、例の「タンゴ・シーン」だって列
車内で出来ると思う。
 G・ワイルダーの「大陸横断超特急」みたいに、汽車がマイアミに着いた所で
「大団円」とすればいい、なにせ「寝台車」ですから「艶笑コメディ」には、うって
つけの素材なんです。
 「大陸横断超特急」は「列車内」と「外界」、二つに分けたのが冗長に落ちた
原因じゃないかと思うんですけど、「列車内」という閉鎖空間だけで展開させる
事が出来れば「濃縮した時間」が作れる、そんな展開の「お熱いのがお好き」
も見てみたかった、
「石つぶて」の集中砲火でしょうが、僕には、そんな思いがあります。
 マイアミのシーンって、昔から、少し長い気がするんですよ。

 コメディエンヌとしてのM・モンローの最高傑作。
 勿論、異論などありません。
 オール・タイムの、コメディエンヌTOP5に入る人だと思っています。
 でも、彼女の才能は、コメディばかりじゃなかった。
 「帰らざる河」、「荒馬と女」、シリアス系でも充分に「女優」をしてるんじゃない
でしょうか。
 何を演じても、「セクシー・コメディエンヌ」の陰に隠れてしまう。
 誰もが陥る「罠」ですけど、彼女の場合「結末」が、その悲劇性を一層際立た
せてる気がします。


※「カーティスとレモンの女装がバレないのが変」という人がいるんですよね。
 これは約束事で「バレる」、「バレない」という精緻の問題とは別次元の事。
 「文楽」や「歌舞伎」の、見えていても「黒子は見えない」と同じ事なんで、
 「女装した」は、イコール「女にしか見えない」なんです。
 こういうのを「野暮」と言います。
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2 コメント

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面白いんだけど・・・ (宵乃)
2012-05-14 14:38:35
何故か記事を書く気になれないのは、マリリンが金髪だからでしょうか?(笑)
「帰らざる河」のマリリンは金髪でも好きなんですけど、セクシー・コメディエンヌな彼女はどうも苦手です。可愛いとは思うんですけど、やはり悲劇の事を考えてしまうせいなのかな・・・。

>ギャングも、富豪ジイさんも、みんな一諸で同じ列車に乗り合わせた「グランド・ホテル」形式にしても、この話、成り立つじゃないですか。

確かにそうですよね!
わたしもベッドパーティのシーンの方が印象に残ってます。マイアミについてからが長いというのも同感。
名作と名高いだけに、一瞬でも楽しめない時間があると気になってしまいます。
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日本語版のほうが・・・ (鉦鼓亭)
2012-05-14 22:40:28
宵乃さんのブロンドアレルギーって、僕の甲殻類アレルギーと似てますね。
当たる時と当たらない時がある。(笑)
(蟹は100%ダメですが)

ベッドパーティのシーンの方が印象に残ってます>最初の一転がりが雪だるま式に収集がつかなくなってく所がホントに可笑しいですよね。

この作品、もしかしたら宵乃さんがお生まれになる以前に、TVの洋画劇場で放映された版が一番面白いのかも。
声優時代の愛川欣也(今は、顔が浮かんでしまってダメかも)に、広川太一郎、向井真理子のゴールデン・トリオが吹き替えした版で、
民放の放映時間に収まるように、上手にカットしてあって、丁度、良かった気がします。
僕達の世代(僕はS31年)の多くの人は、これを劇場版より先に見てるはずです。
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