ウサギ、耳、伸びた、私、

このブログはたしかにイタい・・だがどうだろうか。痛みを訴えるのは大事なことだと私は思う。戦争より餓死の方が酷虐なのだから

亡霊のダイブスピナー 【第三章 3/3】(迎撃編)

2013-02-16 02:07:42 | NPC@13物語
「ちょっと疑問があるのですがいいですかヤミヒロ先輩」

「・・・・もう交渉は終わったはずだ」

「ええ ですから駄目元でいいます」

「・・・・・・・」

「先輩は私の問い”貴方にとってペン回しとはなんですか”に対し答える意思があるように見受けられました それも堂々と、明確な自信があるような雰囲気も感じられた・・・いったいどうお答えするつもりでしたの?」

「ああ、そんなことか ___ホント・・・そんなことだよ」

「はい?」

「そんなことわかるわけねぇーだろ ってのが回答だ」

「それは分かりづらい問いだったからですか?」

「ちがうよ、ただ単に無理って話だ。 だってそうだろ? ”NPC”にとってのペン回しなんてリーダーといえど一人じゃ決められない それがどんなに曖昧な答えだとしてもそもそも答える段階まで至っていない____そういうわけだ」

・・・

・・





キャンドルファイヤーのロウソク達はもうすぐで息を絶えようとしている

このままいけば火は木材へと燃え移り、軽いボヤ騒ぎになりかねない状況であるが担当の教職員達は謎の液体をぶちまけた

その謎の液体の正体とは水...ではなく揮発油だ

またたくまに燃え広がった炎の渦は、見るものの眼球から微量の水分を奪っていった

祭りもいよいよクライマックス

キャンドルファイヤーからキャンプファイヤーへと変貌したその塔をぐるりと囲む人々は、喝采と共に美しく踊り始めた


そして一方では、、、


       「作戦の概要を説明する・・・・!!!」


シュッシュッと、いつものように着火輪を回しながら意気込むのはNPCの火薬庫、クルタン

「ノリノリねぇ・・・・まぁ、気持ちはわからないこともないけど」

「ンダ~! オラも燃えてきたぞ~~!!!やべぇ~ぞおおお!!!!!」

「コラコラあまり大きな声を出しちゃダメっすよテル君  誰かに見つかったらどうするんですか」

「ああ そういえばクルタン  この教室・・・てか学校には警備員的なのはいないのか?」

「ええ いません  厳密にはいなく”させた”ですが、この際余計なことなので省きます」

・・・人を消す方法が余計なことだと言い切きるとは・・・相変わらず計り知れないなこの男・・・

「作戦は3グループに分かれ行動します 1階で待機する【チーム;メガネ】 二階で待機する【チーム;VAN】 三階で待機する【チーム;エピメテウス】 この三手で待機し、基本的にはその場は動かずパックン達を迎撃します」

「迎撃っすか・・・で、誰がどこにはいるんすか?」

「チームメガネはテル君とバドシ君にやってもらいます。 これが学校全体の地図になりますが第一正門入口から4部屋先の教育相談室(カウンセリングルーム)に隠れて作戦を実行してもらいます  丁度第二正門入口から中間地点ですね

チームメガネの仕事はいたってシンプル  私の合図と共にこの”おばけ花火を着火” 上窓から廊下へ分投げてください」

「・・・・・ンダ 了解しゴフォッ!?」

「なんで決め顔なのよテル そこはつっこむところでしょ  将来的母校が火事になるって」

「火災の件は大丈夫です オバケ花火の火は微量ですし、万が一のために一階フロアには耐熱塗料をこっそり塗ってあります」

・・・トンデモ思考を持ちながら論理的に穴を埋める、それがクルタンである・・・


「チームVANですが、ここは私一人でやります   二階にある放送室に待機し”音声”を使って妹共を怖がらせるのが主な仕事です」

「・・・おっかないわね・・・・ほどほどにしときなさいよ___さて、ということは残った私とヤミヒロが3階ね」

「シュッシュッ・・・チームエピメテウスにはヤミヒロ、ドンマロペアでいきましょう 

私の計画では妹どもは3階にたどり着く前までにギブアップする予定ですが念のため___

二人には私の教室に待機してもらいます」

「ん? クルタンの教室ってパックン達がペンを取りに行く目的地だよな クルタンのペンを盗むのが条件なんだから最悪俺ら見つかるんじゃ・・・」

「見つかってもいいのです なにも鬼ごっこをしているわけではありませんし、我々が隠れるのはパックン一味に恐怖心を植えつける為だけですから

そして仕事内容ですがコレです」

突如、ドスンとボストンバックを床に落としたクルタン その音からしてなにかしらのブツが入っているのは間違いなさそうだ

「なによこれ」

「チームエピメテウスはいわば保険です  できれば不動が理想・・・しかしながら交渉戦もそれなりのイレギュラーが発生したのを考慮すると必然のグループかもしれません・・・

バックの中身は教えませんし合図があるまで決して開かないでください

ただ一ついえるのは、この中身を使って”祝福を受ける”・・それだけです」

「んだよそれ 隠す理由はなんだ?」

「ヤミヒロ君  今さっき、交渉戦のことを思い出してください。”敵を騙すにはまず味方から”と__そう習ったはずです

そしてこれはその応用、”敵に悟られたくなければまず味方から”」

「たしかに並外れたパックンの考察力には、隠すことの方が有効そうね」

「シュッシュッ・・別にNPCメンバーを信頼していないわけではありません 

ただ自分の考えうる最高の期待値をそのまま言葉にしているのです」

「・・・・わかった  クルタンの策だしな、 せっかくここまできたんだ ちょっとの不安くらい大目に見ておくよ」

____

そして5人は、クルタンから支給されたイヤホン型トランシーバーを肩耳に押し込むとお互いの声を確かめつつ所定の位置へと足を伸ばした







一階のテル、バドシ






















二階のクルタン























三階のヤミヒロ、ドンマロ




















おのおのの心は電波に乗せて学校全体を包囲した。 外では舞踊、中では戦場。



二人の不気味なオーラをかもしだす童女達が向かう先は・・・・・・・・・
 

                                戦場である。


「大丈夫ですかパッ嬢・・・アタイは正直ダメかもしれません」

「フフッ そんな弱腰でどうしますの? 恐怖心なんてものは、脳と人格を切り離して考えて入ればなんのもんだふぇ!?・・・・フフッ・・・ありませんのよ」

「今のパッ嬢 腰がプルプルですけど・・・めっさ脆そうなんですけど・・・」

予定通り、第一正面玄関近くのトイレから侵入に成功したパックン一味であるが、忍び込んですぐにこのありさまである

目的地は最上階三階2-C教室であることを考えれば、かなり厳しい状況・・・だがしかし、この少女パックンはそんな簡単に引き下がるヤツではない。持って生まれた判断力と考察力を武器にして、なんとか弱点の補助に打って出た

「2-C教室に行くにはいくつかルートがあるわね」

「第一昇降口からの階段を使うAルートか、第二昇降口からの階段を使うBルートか、っしょ?」



「そうね あとは給食運搬用の小型エレベーターを使う手もあるのだけれど、危険だから考えないことにしましょう」

で、どっちのルートを使うかですわね・・・

当然のことだけど学校のどこかにNPCメンバーが潜んでいるは自明の理

だとすればこのルート選択がワクタシ達の命運を握ってる

先に第一階段から上り三階廊下を突っ切るか、ひとまず一階廊下を走り、あとは第二階段で上るだけにするか・・・・二つに一つ・・・・・フフッ・・・・

不敵な笑みとまではいかない恐怖心で幾分か濁った笑みで言った

「最初に一階廊下を歩き、第二昇降口からの階段を使いましょう」

「・・・・・・」

「あらぴぃちゃん、なにかご不満?」

「いや、そういうわけではないんですけど・・・どうしてかなって」

カラピンの疑問もそれもそのはず

仮にも学校に不法侵入した身、それなのにわざわざ外部の人間に見られる可能性の高い一階廊下を突っ切るなど不合理この上ないのである

「その不合理でいくのよぴぃちゃん  たぶんNPCはワタクシ達が合理的に来ると踏んで3階廊下に様々なトラップを仕掛けているはず___簡単に言えば【裏】をよむってことよ」

・・・もちろん、一階廊下にも待ち伏せしている人間はいるとは思いますが・・・それでも3階よりはマシでしょう・・・・

「なるほど・・一階よりも三階廊下の方が罠が沢山あると・・・さすがパッ嬢!」

そして彼女らは第一階段をスルーし、一階廊下を直進し始めた___ルートBである。

・・・

・・



「ねぇお嬢・・・いい加減肩掴むのやめて、普通に痛い」

「あらあら、ワタクシはぴぃちゃんのことを想って緊張をほぐしてあげているというのひゃいッふひぇッ!」

「たしかにこの、小刻みに揺れる機械的な肩叩きがなんとも斬新だけど・・・どちらかというとアタイが松葉杖的な役割で緊張をほぐさせてあげているような・・・」

「あら、ぴぃちゃん」

「なにさ」

「天才と秀才の違いふェッ!!ひゃんっ!ギャアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・・

                  フフッ、、、なんだかわかって?」

「なにがフフッですかパッ嬢・・・この臆病者」

「・・・!!!」

「なんなんですか・・・アタイも怖いさよ?・・・そうしょ~・・・うーん・・・秀才はテストを行うと100点満点 天才はテストをしなくても100点満点 みたいな感じですかね」

「ちょっと具体性に欠けますわ」

「じゃあ答えは?」

「常に、いかなる時も物事を大局的にみれる人間は秀才・・・うちのお兄様がその部類に入ってよ」

「常にねえ・・・それでも十分に天才だとアタイなんかは思うけど...パッ嬢が思う天才像は違うのかい?」

「ええ 天才というのはね、物事を考察できなくたっていいの。だってそれは秀才の仕事だから___天才はそれよりもっと特異的な仕事を担ってる」

それは
「秀才では決して見れない考察限界の向こう側......まるで魔法を使ったかのような圧倒的”未来視”...まぁ、、、、、ワタクシの事ですわね」

なっ、と思わず言葉に詰まったカラピン。自分のことを堂々と天才と言い放った友人になんて接すればいいのだろうと....否、いつも通りに接すればいいだけであった

「ねぇねぇパッ嬢?足が急に止まったけど、その未来視とやらに何か映りこんででもいるのかい?」

「あと5歩先でなにか起きそうね フフッ その近くにある校長室かカンセリングルームらへんに敵が潜んでるんでしょう」

「じゃあ引き返しますか」

「いいえ このみゃみゃ進みましょう  さすがのワタクシもなにか起こるとわかっている今、この瞬間なら、動揺などいたしませんです」

ほんとですかあ~?、とジト目になるカラピン。そして、パックンの未来視スキルよりもパックンの精神を疑っている自分の思考回路にこそ自問自答しなきゃならないこの状況に、わけが分からなくなってとにかく歩くことにした。

超人はたしかにいる。よくテレビ番組とかで1万人に一人の逸材だ、とか100万人に一人の神の子だとかいうテロップをみるけどさ・・・なあになんてことはない

いや、すごいよ アタイのちっぽけな脳みそと無慈悲に比べられでもしてみ?、三日は寝込むね確実に____でもなんてことないんだよ。世界と比べたらさ。

今や地球の人口70億人だよ?とりあえず150年経てばその70億人も皆死ぬ。そしてその頃には違う70億人以上の人間で世界は満たされるだろう___10万だ100万だって話じゃないわけなのさ。1億人に一人10億人に一人の”人間”がいても全然おかしくはないの____そういう億レベルの”人間”をアタイは超人って呼ぶことにしてる

アタイの隣にいる彼女が超えた人間なのかはわからないから明確に定義することはできないんだけど.....。

だってパッ嬢はいったのさ、”向こう側の世界を見れるのは向こう側の住人だけだ”って

それが嘘かホントかはどうでもよくて、とにかくアタイの心が心地よく震えたことだけはよく覚えてる

そうして月日は流れて今は、なんかお嬢の従者みたいなのになってる。はたからみたら舎弟だね・・・ホントに・・・。

けどきついことなんて何一つもなかった___楽しいことだけが山のように降ってきた

パッ嬢の未来視現象もその一つ。

勘違いしないでほしいが未来が使えるのではない____現象するのだ。 

完全にコントロールはできないし、不発もバンバンある不出来なスキルではあるけれど、そこから生み出される数々の奇策に今でも新鮮さを感じている・・そう、とにかく楽しすぎるってわけさ

・・・さてさて、、、、何が起こるんだろうね・・・・

おのずと口端が歪むカラピンは二歩三歩、、、予言の地点へと歩を伸ばしていく

校長室を通りすぎて、カウンセリングルームの前へ・・・敵を目の前にして立ち止まるなどという小ざかしいマネはせずに、あえて気にせず歩幅は緩めない・・・もちろん内心はいつ来てもいいように心構えガッチガチ状態ではあるが・・・・

・・・
・・


おかしい・・・・

予言地点から遠ざかり、長い職員室前を通過してもなお、、、なんら反応はない

遠距離からなにかしらの道具で奇襲を狙っているのか・・・?

曖昧すぎるその愚考も、二、三階へと続く第二階段へとうとう足を掛けてしまった時には、杞憂に終わっていた

階段を上るには廊下を直角に曲らなければならず、ゆえに今、現時点で、階段の一段目にいるということは、もう、廊下からは死角で攻撃はないに等しいと言わざるを得なかったからである

「・・・・ドンマイさ」

「フフッ・・・今日の眼は結構自信があったのだけれど___ごめんなさいねピィちゃん」

「やめてくださいよ なんで謝るんです?」

「あんなに楽しそうにしてたら誰だって謝りますわ」

「うそっしょー・・・そんなにアタイ、顔にでてましたか?」 



                         「ああ、丸分かりだったよ」   




「この学校内に設置した計108台の超マイクロ赤外線全方位カメラによって呼吸で揺らず心拍音まで感じ取るほどくっきりと、そして明瞭に・・・・・



・・・・


・・・


・・






シュッシュッシュッ」









キャンドルファイヤーからキャンプファイヤーへと変貌した巨大な炎をバックに佇む1.5階段目

唯一無二に厳かなその人影は、背景の紅に誇張されるかのようにとてつもない異彩を放っている

「やあ妹共、奇遇だ  そういえば、母親から妹と一緒に食べてこいと飯代を貰ってしまってね  私はいらないのでこの紙切れを使って二人で焼きそばでも食べてきてください・・・シュッシュッ」

閉じたチョキで挟まれた紙切れは空気抵抗を限りなくゼロに抑える軌道で一味へ。そしてパックンの後ろ髪に突き刺さった

「・・・相変わらず茶番が好きですねお兄様、、、この紙でどうやってご飯を食べろと?」

背中でも掻くように引っこ抜いたその紙は、まぎれもなくこの学校の設計図。紙幣なんかでは断じてない

「そこは妹の頭脳に任せます 最近こういう言葉を耳にしました”他人の不幸で飯がうまい”ということわざテイストな俗用語です____その地図を使ってNPCメンバーを不幸に陥れればおいしいご飯が食べられます・・きっとね・・シュッシュッ・・・さあ...



              やってみなさい我が愚妹」












「・・・・あらあら、設計図を見る限り、この赤いマーカーで書かれたルートで三階まで行け____といいたいのでしょうが・・・・いちよう聞いときますがなぜです?」



「シュッシュッ・・・なぜとはなぜなのでしょうか・・・・」

「なぜ、ワタクシ達がこんな一方的制約を受けなくてはならないのか聞いていますのよ」

「交渉時に締結した事柄に準じた結果・・・といえばいいですか? シュッシュッ」

「ええ わかりました。 ではこのルート通り、第一階段から三階に上がりますわ」

・・・

「・・・・はぁ・・・あのあのパッ嬢・・・話が全然ついてけない・・・・・とりあえずなんで縛りプレイなんかやらなきゃいけんのですか」

「PV事件の時 NPCメンバーが現地についてからワタクシ達が四つの問題を提示したのは覚えていますわね」

「ええ・・まぁ・・・」

「その時の”現地についてから”と”四つの試練提示”を”突然”と”制約”に換言、解釈して”同じことをしただけだ”と主張してきたのですわ」

「・・・・・こじつけっしょぅ・・・・・」

「あらあらピィちゃん そう思うならどう反論する気ですの? こちらも拡大解釈を言い分する手立てがあるにはある、でもそうなると間違いなくこちらが不利」

「なぜっしょぅ・・・・」

「あっちから同等性を求められるからですわ 

”おまえらの言い分はわかった、じゃあどう解釈すれば同等なのか示してくれ”と言われてしまう  これはきついですわよ   ちょっとでも隙をみせようものなら交渉時の同等性の合意は嘘だったのかと言われてしまいますから、最悪ですわね・・・そんなことになったら。」

「お兄様 最後に一つ気になった点があったのでいいですか?」

火花は散らさない。ただそういう接し方こそが自然な家柄なのだと納得してしまうほどに完璧な、無感情極まりない冷めた目で見つめあう兄と妹。いまにも流麗なBGMが流れてきそうなほど絵になっている。

口を奏でる。

「なんだい妹」

「そこにじっと待ち伏せていたのですか?」

その問いに対し緩慢に首を縦へと動かしたクルタン

「ということは、ワタクシ達が一階廊下を歩き、この第二階段から三階に上がると予測していたわけですわね」

まるで亀のように再びの上下運動

「・・・解せませんわね。  いつからお兄様は賽で自分の行動を決めるような人間になってしまったのですか・・・ワタクシは悲しくなってしまいましたわ」

「シュッシュッ・・・別に賽ではない」

「なら言わさせていただきますわ

先に階段から上れば人目につくリスクが軽減できる

●一階とは違い 三階からでは敵は外で待機できない分危険度が低くなる

●三階の方が隠れられる部屋が少ない

●三階廊下の様子を見てから二階廊下へのルート変更も可能

●二階にあるワタクシ達の教室は第一階段からの方が近い

●第一階段方面には、音楽室、物理実験室、生物実験室、調理室、技能員室、などがありもしピッキング等で部屋に侵入できた場合、武器を所持できる可能性がある

ここまでの利点が第一階段利用にあるのにどうして第二階段から来ると予想できて・・???

これを賽を振らずしてなんだというのかしら・・・まさかとは思いますが裏の裏を読んだとでも言う気ですの?」

「シュッシュッ・・・それこそまさかですね 私が裏の裏を読む時は、決まって原稿用紙30枚分程度の理論が必要になってくる」

「じゃあ 披露してくださいよ  最後まで聞いて差し上げますわよ」

「なにを言ってますか・・・口の悪い妹には、一行程度の理由で十分」

「・・・・・・言いなさい」

「お前は”何かあった時 一階にいれば窓から、逃げられる” という深層心理・・・自分でも気がつかない数少ない防衛本能に屈しただけです」

刹那、両者の瞳の色は熱を持ち始めた。実に人間らしい、生命力溢れる眼力である。

「あらあ・・・・・・・・・ら・・・・・・


                                  ・・・・・・・・っッチ・・・・・・・・」

「様々なこと考えて、それを全て切り捨てて勝手に裏を読んだつもりらしいがお前の兄貴さんから言わせればそんなのただのいい訳ですね」

重ねて言った

「負けたのですよアナタは、自分自身の不甲斐なさに今日、、、初めてね」

「・・・・・・・・」

まずい・・・・このままではまずい・・・、、、そう強く警戒の念を抱くカラピンだが、こんなパックンの表情はいままで一度としてみたことがない。


      どうしたらいいんしょぅー・・・!!!

ただただジッと、もうすぐ生まれる赤ちゃんのことが心配で堪らない父親のような振る舞いしかできないカラピンである...が、しかし

「・・・・・・・・・フフッ・・・・・・・・フフフフフフッ


          あらあらお兄様 本当に茶番が好きですわねぇ・・・・・



                           同等を示すこの場で負け?なんのことだかサッパリですわ」



「シュッシュッ・・・・なら迅速に、私のペンを奪ってきてください」

「ええ 言われなくとも_______その身に覚悟を抱きなさい。」

そしてパックンは踵を返し再び一階廊下へ。・・・兄弟喧嘩に振り回された不憫なカラピンもひとまず異例の事態が起きずに済んだと肩の力を抜いた・・・ところが

「やめてくださいパッ嬢  もう振り向かないでさ」

「お兄様!!!」

「シュッシュッ・・・・」

「・・・・・・・負けませんから___絶対に負けませんから・・・ッ!!!」


たしかにパックンはそう謂うと今度こそ完全に兄弟喧嘩は幕を閉じた

まぁ、本人達から言わせれば喧嘩なんていう生ぬるいものじゃ決してなく、お互いの人生観と血縁者としての立ち位置を革める戦争なのであるが・・・。

カメラは移り変わりクルタンサイドへ

まだまだ成長に乏しいその背中を俯瞰しながら見送れば、並々ならぬ速さで二階、放送室へと走った

人を不安定にさせる認識できないレベルの超高周波

妹達の足音を録音し、自動調整で違和感なく一階廊下の足音の数を増やすシステム

会話を成り立たせなくさせる妨害音波

音声でサブリミナル効果をかける洗脳の一種

それらあらゆる極悪非道な策の数々を実行できるのがこの放送室。完全なる全稼動、フルバースト。

妨害という言葉が生易しく感じられるほどのクルタンの本気は音声だけの枠に捉われず、ついには一階廊下の床を少し斜めにするだとか、廊下の階段の高さを一段だけ微妙に高くするだとか、、、それはもう、本当に血がつながった実の妹なのか疑うほどのものであった

効き目のほどは、、、、

数多の妨害機器をチャックしつつ監視カメラ越しに視認すれば、そろそろ一階廊下の中間地点まで到達しそうである

・・・あまり怖がってる雰囲気は感じ取れませんね・・・シュッシュッ・・・・

まぁ無理もない、妨害の質が質である。そのほとんど全てがパックンに悟られないための潜在意識、深層心理を揺らせるためのもの、、、目に見える反応が出るまでそれなりの時間を要するのは仕方ない

・・・シュッシュッ・・・しかしながら目に見えないまでもかなり効いているはず、ここで大きいのをぶち込めば面白いように崩れていくはずです・・・・

現にパックンの歩幅が少しずつ狭くなっているような気がすると、そう思いながらクルタンは内線ダイヤルを一番に、、、一階組(ファーストグループ)へとコンタクトを試みた

「シュッシュッ、聞こえますか?」

「ンダ~ やっと出番なんだ~!!!」

「ちょっとテル 声がデカイっす!」

交渉の一件で電波に関して、たった数時間ではあるが念入りに強化を重ねたのだが、双方の反応を見る限り音声状況に問題はなさそうだ

ならちゃっちゃっとやるしかあるまい

人は進む時より戻る時の方が警戒を怠る・・・その人間心理に則り、引き返し際の一味へオバケ花火をお見舞いしてやるのだ

妹共とファーストグループの最接近まであと数歩、自分の心拍音と面白いほど一致した歩音で歩く妹、、、バドシがオバケ花火を両手でしっかり固定し、テルは片手でチャッカマンを、もう片方の手は聞き漏れがないようイヤホンをしっかりと押さえる、あとはこの私クルタンが、無線越しに合図するだけ・・・・。

両者の陣営が一枚の壁越しにすれ違うその瞬間、、、、

ザーー ーー  ーーーー  ーー

   ーーーーーーー

          ザザーーー   ーーーー 


ー ーーーーー   ーーーーー ーーー     ャシャピーー ーーー



ーーーーーピ   ピーー    ーーーー   ー  ーー ーー    ー
ーー  ーーーー

ーーー ビビビーーーーー   ーーー
ーーー                      ーーギャ シャ ブブブ  ピピピー

ー          ーーー         ーーーー
ーーー              ー
ー  
ーー                   ーー ーーーーービ



                   ピ  イ ピ    ぴ   
      ぴ     お” 

ゃsy  さ           お”””””ま””@   d            fじ

ゃ」fj
  



そのふざけた雑音はクルタンの無声イヤホンから聞こえてくる

慌てはしない、やはり来たかと、いたって冷静に監視モニターを見上げれば、、しかしポタリと、額から汗が落ちた。



                                 ・・・・おかしい・・・・・・です・・・・ね・・・・


 
短い時間ではあったがかなりの電波妨害対策を敷いたのだ、これでダメとなればもはや電気機器に関してはもうお手上げ、今見ているこの監視モニタでさえ全画面砂嵐にされているはずである・・・だがしかしテルとバドシの姿はしっかりと映っている

しかもだ、モニタに映る彼らの雰囲気から察するにこのノイズ・・・・私にしか聞こえていない・・?!!!

『チームエピメテウス聞こえますか?』

『ええ聞こえるわよ 予定よりちょっと早いコンタクトね なにかあった?』

『はい チームメガネとの無線が不能になりました 妹共の仕業でほぼ間違いないのですが・・・』

『あらかた言いたいことはわかったわ いちよう私達の無線も使ってみたけどダメね どうやら一階固有の妨害網みたい ・・・モニタが見えるのならなにかおかしなところは・・・・・・・ッ!』

『どうしましたか!?』

『なんだ!?・・・・ああ、俺はヤミヒロだけど ドンマロの奴血相変えて廊下に飛び出してったよ  いったいなにがどうなってるんだ?』

『・・・・チッ』

ドンマロくんはなにかを感じ取ったのは明白ですか・・・

それは緊急を要することで、モニタに映るバドシとテルに関係し・・だからこそ、その会話途中で気づき中断、ドンマロは走り出した・・・・

思考、思考、思考、

改めてモニタを凝視する彼の目は据わっている。もう見逃さない

Lighter Manは自分の履いている肩靴を脱ぎ捨てながら放送室のドアを開けると凄まじい全力で駆け抜けた



異様に長く、お餅が伸びてるんじゃないかと思うほどもどかしい三階廊下を突っ切りようやく第一階段で下へ・・・・計っていたら50m女子地区ベストも狙えたんじゃないかという素晴らしい走りのドンマロはこうとしか思わない


               ・・・・・・やばすぎよ・・・!!!!・・・・・・・・・


彼女はすべてを悟っていた パックン達が一階だけをジャミングするという異変に対しNPCでいち早く気づいたのだ  なぜなら...



私はおばけ花火の保管者がテルということを知っていたから。



パックン一味はなにがしたいのか?

この勝負を優位に進めたいのなら学校全体にジャミングを仕掛ければいいだけ。NPC全員の連携体制は破綻する。

それをしないということは”さらに優位に立てる状況”が整っていたから・・もちろんお情けという線は考えない

これは女の勘ってやつだけど、アイツら・・特にパックンはカードがあったら一回しか裏返さないタイプ 表か裏かの二極論者 決して裏の裏をよむなんて回りくどいことはしない

もし そういう状況化が有利な場面ではまったく違うベクトルの”表”か飛び道具の”裏”を引き合いに出してくる・・・そんな連中だ

全体ジャミングの欠点 それは”勝負が完全には決さない” これに尽きると思われる

いくら通信を遮断したところでNPCメンバーが消えるわけではない しっかり己の五感と道具を使い邪魔することができる

ならば部分ジャミングはその欠点を補う策のはず つまり...

部分ジャミングを行うことで”勝負が完全に決する”ということ

この瞬間にも”あること”が起こり”あること”で被害を被り”あること”でNPCは退場を余儀無くされ敗北するということ

直感的にその”なにかが起こる場所”というのはチームメガネのいる教育相談室(カウンセリングルーム)だろうとドンマロは思惟た


           ・・・・・問題は、その起こるなにかとはなに?つてことよね・・・・・


すると彼女はクルタンとの無線最中、、ドンマロは頭の中のイメージで放送室のモニタを作り出した

幾つもある大小様々な液晶が立て掛けてある一画面に彼らはいた

バドシとテルである

正直 彼らの顔はそこまで深くイメージできなかったわ だって酷く主張する物体がその手に握られてたから

それどころじゃないわよね・・・・




               私気づいちゃったわ・・・


                             その手のブツに....


                                    テルの手に握られているオバケ花火・・・・

















               ▲・・・実はロケット花火に掏り替わってるんでしょ?・・・▼








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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (男魂バド氏)
2013-02-16 05:32:33
チームメガネって名前のワリに不安しか感じないコンビでしたね・・・。


クルタン兄貴の活躍が目覚しかった回、そしてヤミヒロパートが毎回のように大草原不可避、今回も面白かったです)^o^(

急展開の連続で目が離せネェぜ!
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Unknown (セリフパクリマロ)
2013-02-16 23:05:01
相変わらずバド氏の直毛具合ww

ヘタレリーダー辞めないで><

これ読むのが一週間の楽しみになってます。

返信する
Unknown (ポロリヒロ)
2013-02-17 19:51:19
バドさん

チームメガネはnpcの執行役でしたw

ヤミヒロ は、交渉人になって全裸になってダイブしてまったく、なにやってるんでしょうねえ

ありがとう 次回は新章突入 お楽しみに!


マロさん

植毛作業楽しいですよ.....

さて、ヤミヒロは何を想うか

ありがとう

次回のキーワードは邂逅ということでよろしくっす



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