業者の力を借りなければゴミ一つまとも処分できない現代人
保存料合成着色料1000%SNSに堕落しもはや過去さえも踏ん切れない現代人
それではダメだと思ったんだ。。。キレイごとかもしれない、現実味の無い大それた話かもしれない、意味不明かもしれない。。。。でも。。。。。
できることはやっておこうと思ったんだ。。。。。
●
「・・・お前の話をまとめるとだ。
このまま中途半端に脱退したとてNPCメンバーはあの手この手を使って俺をNPCに復帰させようとする可能性がある
というか俺から言わせれば確実だ 絶対になにかしてくる
そこで条件つきのインフィニティバトル(ペン回し)で勝負し勝つことで有無も言わせず本当の意味での”NPC脱退”を手に入れる_____こういうことでいいんだよな」
こくん、と中学生とは思えない気品溢れた会釈もさることながら、いつの間にか右手にはティーカップ 左手には小さな白いお皿を持ちつつ弾力のありそうなピンクの唇でシナモンティーを啜る様は背景の綺麗な銀杏色と相乗して実にいい絵になっている。
「ペン回しで勝負ってところがさすがだわ・・・・辞めた俺には到底できない発想というのかな」
「フフフ あまり褒めると空から矢でも降ってきますわよ」
「それは困るから早急に帰ることにする じゃあな」
踵を返し、手の甲だけで帰りのあいさつを済ます。たったそれだけのことなのだが、ついこの前までは夢にも思わないほど有り得ない光景
____最大の天敵に背中向けてじゃあなって・・・・過去の俺なら笑っちまうなきっと___
と、
「あ、最後に一つだけいいか?___なんであんな手の込んだやり方までして俺を呼び出して、しかも贔屓するんだよ 敗北した自覚があるというのならNPCを助けてやるのが筋ってもんだろ」
その問いに対し、少女は冷ます吐息を震わしながら言った
「フフフ 無条件降伏したわりには言うことは言うのですわね」
「それはこっちのセリフだ ラーメン底の件といい今日はご機嫌なのか?」
「・・・まぁいいでしょう 理由は明白 私は私に忠を尽くす ただそれだけのこと」
「・・・はぁ・・・本人はそれで明白かも分からないけど簡単じゃないな・・・意味わからない」
「敗北者の誇りを遂行している___っといっても同じですわね フフフ
では用も済んだことですしワタクシ達は帰りますわ それでは三日後 お待ちしておりますわ」
そういうと両手に持っていた純白の食器は瞬時に消えて無くなり、代わりに影が二つになって鈴柱公園を去っていった
・・・・・・・・・・・・・やっぱりいたのかカラピン・・・。
将来はクノイチかなんかにでもなるのかな・・・背中の緊張が未だに取れないのがそう思った原因だろう。
●
時は流れ、、、決戦の時。
パックンからは勝負の一時間前にだけミーティングをすると言われたので指定された体育準備室に赴いてみれば、知ってるような知らないような人物が二人、木製の椅子に鎮座している。
黒板にはパックン一味が出迎えていることをふまえ、この教室内は俺も含めて“五人”。
なんだよこいつら?とパックンに目線を送ればいつものようにフフフと笑った後で、
「今日限りの戦友とでもいいましょうか 個人競技ではあるものの仲間は仲間 仲良くしてくださいまし」
「・・・・・・はぁ? 3対3の団体インフィニティバトルなのは聞いてたがそれって俺とパックン、カラピンで挑むってことじゃねーのかよ」
「フフフフ ワタクシはそんなこと一度も口にしてませんわ 今、この教室で椅子に座っているこのお二人____それがヤミヒロさんの仲間、もとい団体戦のメンバーでしてよ」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ぷ~くすくす」
____いや、別にいいんだよ 問題ない 全然問題ない 寛恕なヤミヒロは快諾快諾大いに快諾さ
・・・・・ただしブルドラてめぇはダメだ
「あ・・・あ~~ッ!!!今、小生ことワタシこと天下のブルドラ君カッコ僕カッコ閉じに向かってなんか良からぬ視線でこっち見てきましぇんでしたた?」
「たた、じゃねーよ 見てねーよ」
「ちょちょちょちょちょちょ~! ねっ、ネタは上がってんだからねッ!!みみみ見てただろおおが!!!ウザそうな目でさぁ絶対見てたしたしタニシ旨しタニシ・・・・・え?証拠はってか???_____ふ~う やれやれガキですか」
「・・・・」
「うっっっっ・・・・わ~・・・・無言ですかあ・・・・無言系なオトコですかしぇん輩・・・・僕ら同級生ですけどねえ・・・・でもヒクッ__________!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そういいながら指を指されるも問答無用でスルー。 そしてまあ、文章にしていたらくだらな過ぎて即行deleteキーを押しっぱなしにするほどの茶番を15分近くこれまたしょーーーーーーもない男の前でシカトを決めていたところ、ようやくもう一方の女が口を開けた。
「黙り込んでいるだけで芸のない男 アナタも霊長類ならここに来た意味を考えてもっと合理的に動いてはどう」
腰まで伸びた後ろ髪を一つに束ね、整った顔立ちに長いまつ毛と切り込むような目線
バーミリオンストレートをスカートと共に靡かせれば正真正銘の女子である
「・・・えっとキミは誰だったっけ?」
そしてなにより気になったのは、綺麗なのにも関わらず見蕩れる隙がないほどの独特な雰囲気で威圧してくる様が、どことなくパックンに似ていることだった
「同級生、隣のクラスに在籍している。名前はレッド 不便だから今日一日は名前覚えておいてくれ___それ以降は忘れてくれて構わない」
「レッド・・・ああ、思い出した。 いつもブルドラの隣にいるよなお前」
「副生徒会長だ。ブルドラは会長なのだから組織的にそうせざるを得ないだけ__側近みたいにいうな気持ち悪い」
「酷いっしゅよレッドはん・・・・・ふぇ~んふぇ~ん___ぷんぷんぷ~~~~~ッ!!!!あ、すいませんマジすいません申し訳ありませんすいませんもう二度としませんすませんスワセン」
どうやらウチの学校は会長より副会長の方が強いらしい。いろんな意味でそう思った。
「・・・でだ。パックンに一番重要なこと聞きたいんだが、レッドもブルドラもペン回しできんのか?」
「愚問ですわね・・・ワタクシがマッチングミスをすると思って?」
たしかにそうだな・・・と納得してしまうのは、信頼しているからそれとも屈服しているからか____どうでもいい
・・・・実にどうでもいいそんなことは_____
とにかく今は勝負に勝つ 無性に燃え滾ったその感情で頭をフル稼働すると、ようやくメンバー編成やペンの選択、テクニックなど具体的な作戦会議に本腰を入れた
●
廊下側にはバドシ、クルタン、テル
窓側にはヤミヒロ、レッド、ブルドラ
黒板の前にはパックン、カラピン
甲子園の開幕かの如く横2列に整列する両者と審判位置にパックン一味
ドンマロはあの怪我だ 傍観者になろうが来ると思ったがあの性格を考えてメンバーはこの試合のことを言ってないか
ヤミヒロは誰も見ようともしない。だって意味のないことだ。
俺はただ勝ってNPCとの縁を完全に断ち切る
そのことだけを強く思惟て、火照った身体は楽しそうに燻っていた
やっとだよ_______やっとケジメがつけられるんだよ・・・。
だからなにも言わない ・・・というよりあっちも一向に俺と同じで黙ったままだ
・・・はは、、、バカだねえ、、、・・・
言葉なしで語れる媒体か___残念ながらそんなもの今の俺にはないんだぜNPC
・・・・・・なんだこの有様、、、
気まずくなると予見した昨日までの俺がバカみたいじゃないか
そうだよ・・・やっぱNPCなんてどうでもいいんだよきっと
訴えかける感覚がないNPCメンバーからの声もない そんなんで俺に勝てると思ってるのか
・・・ペン回しでよ・・・
三戦勝負、先に二勝した勝利とする 対戦カードは予め用意されたエントリシートに味方の誰が何番目に戦うか書き、審判(パックン一味)に渡すため勝負が始まる直前まで誰と誰が当たるのかはわからない
インフィニティバトル第一戦
レッド VS テル
ルールは至ってシンプル お互いのペンを”ペン回しをしている状態”でぶつけ合い先に床に落としたしまった方が負け。つまり先に二回 敵のペンを床に落とした方が勝ち星というわけである。 勝ち星が多いチームが勝者だ。
なお反則として故意にペンをペン以外にぶつける行為
25センチ以上のロングペンを使う行為
お互いのペンの直線距離が30センチメートル超えるオーバーディフェンス
足を動かす行為、なおピヴォット行為も禁止
空中技の使用
0.2秒以上のペン静止、手首を使っただけのフェイク&パワークラッシュ
明らかにペンとは言いがたい形状をした物体、素材の使用
危険と判断できる改造
______________________________などがあげられる。
テルとレッド
両者の利き手の上ではもうすでにペンが踊っている
テルは愛ペンのドクターグリップ零式
しかしレッドの使用ペンは・・・・・・・・・・・・・赤色のフィルムで不規則にうねりあげる・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見紛うことなきコンパスそのもの
その鈍く煌く鋼色の角は、紅に染まりしユニコーンか、、、、
「ふざけんじゃねぇえええぞワレ!!! 反則だろそんなもん!!!!」
久方振りに切れたバドシだが、”俺ら”はただの一人だって動じない。ヤミヒロにいたってはやっぱ迫力あるな~と人事な感想を抱くだけだ
「反則ではありませんわ 勝負を続けてくださいまし」
「ああ!? てめぇの作ったルールにも書いてあんだろ お前らもはよ見いや最後の2行・・・そしてくたばれ・・ッッッ!!!!!!」
「【明らかにペンとは言いがたい形状をした物体の使用】と【危険と判断できる改造】ですわね
フフフ レッドさん 弁解は?」
「コンパスは書けるペン 字を書こうが円を書こうが概念的に同じペン 改造をした覚えもない よって反則でないと主張」
「フフフ レッドさんの主張を認めます コンパスはペンであり違法ではない ___以上」
「糞ガッ!!!!」
それで殴り合いに発展しなかったのは、クルタンがバドシを説得したからである
そりゃそうだ、、、感情的に流されるよりその方が絶対にいい
たしかに、動き回る赤きコンパスはまさに凶器 針の部分に保護シートがついているもののゴム製なため生の人体に当たろうものなら容易く血で染まるだろう____だがデメリットもあるのだ
バドシはクルタンによって身動きを封じられたが冷静さを取り戻す気は毛頭ないと見える___レッドに対する視線が熱を帯びているのがいい証拠、しかしながらその視線をも封じようとする男が一人いる
彼は遮るようにバドシの前に立つと微塵も動じずペンを構える___そして...
「なあなあバドシ オラは大丈夫だから落ち着くンダ____
____なあに、楽しんでくっからよ!」
「ッ・・・・・....___」
岩のように固まったバドシの拳は水分を含んだかのように崩れていた。
________________________________________!!!
最初に攻めたのはドクターグリップ零式
零式の意はテルにだけ許されたNPCオリジナルの呼称、錘を外しただけの無改造のドクグリをわざわざそう呼ぶのは彼にしかできない、さも改造したかのような奇天烈なアクション____短いリーチを生かした相手のペンを問答無用で叩き落とす動きはNPC屈指の破壊力を誇るからだ、、、、がしかし相手が悪い
鍵穴を抉じ開けるような強引なモーションも無残に円回転で交わされ、捻って、威嚇する
本当にゴム製なのだとテルの甲が悟ったところで第一攻撃は終わっていた
「ンダ~ ダメか~~~」
「・・・・・・・・・」
インフィニティバトルはただペンをガチャガチャと回して戦うものではない
そんなことをやってもすぐに自らペンを落としてしまうためインフィニティという八の字を描く様ゆっくり回す安定感抜群の技をベースに戦う。だからインフィニティバトルという。
クルクルと回るコンパスは、真っ赤なじゃばら傘でも回すような動きでを威嚇し続ける
一方、握りなれたグリップの感触を確かめながらヘビを飼いならすテル___どちらも隙を窺うようにも見えて仕方が無い
無邪気な少年の表情は実に楽しそうに、却って鉄仮面を外さない大人びた少女は沈黙を貫く
インフィニティ(8の字)の軌道をさらに深く理解するにはS字フックを二つイメージしてほしい
一方だけを逆さまにして二つ重なれれば数字の【8】になるだろう。逆さまにした方のS字フックをAとしもう一方をBにすればペン回し技『インフィニティ』の上下軌道は簡単に説明できる
A時にペンは下降しB時に上昇する たったそれだけ
もちろん手首を捻れば違う軌道にもなるのだが落下リスクも上がるため基本的にAで下降Bで上昇である
そしてここが一番重要、バトルの肝。軌道ベクトルがB→Aに変化するその時、、、それが最大の隙、、急所だ
テルはセカンドターンもいく
コンパスなど二本のペンを同時に回しているようなものだとテルは思惟た
いくら先端が二つある予測不可能な動き方だとしても突き詰めればレッドのいうようにやはりコンパスもペン インフィニティの軌道を描くただのペン。 B→Aの隙は必ずあるとみた
B________________________|A・・・!!!!
急接近はフェイク 零式の小回りの良さを駆使し衝突寸前で手を伸ばすのを止める、そして敵の指先ではなく手首が微かに空を向いた....
「ソコッ!!!」
カツンと丁度針の金属に当たる音、、、、、だが甘い コンパス軌道の不規則性で芯を捕らえきれず、故にレッドの手からコンパスは離脱せずにいた、、、、が、____テルは冷静だった
オーバデフェンス(敵とのペン距離30cm以上離れる行為)をしないよう適度な間合いを取りつつ防御に回れば.....
_____ガシャッ!_______________時は来た。
床に落ちたのは紅のコンパス
「テルさんの勝利ですわ」
まずは先制と嘆息するテルとその仲間達
・・・・・・・・やっぱそうなるよな。。。
心の中でそう呟くヤミヒロは、レッドが使うコンパスの弱点がわかっていたからだ
それは圧倒的なまでのもろさ メンタルダメージでは他の追随を許さなくとも、針を抜きにすればただのガラクタ
ペンを持つ位置が極端に細く短いというインフィニティバトルにはあってはならない致命的な欠陥がコンパスにあるのだ
だからさっきも、せっかくテルの強攻撃を弱にまで軽減させたのにしばらく時間が経つと耐えられず自らペンを落とした
・・・恐れに疎いテルにはまったくもって無意味だったか
これは第一戦、、早々にストレートで決着がつきそうだな・・・・・その予想はヤミヒロだけではない、誰しもしていること
・・・・・そう、レッドただ一人を除いては。
テルVSレッド第一戦二本目、次にテルが勝てば第一戦はNPC側に軍配が挙がる
テルは開幕早々、初戦同様に開始直後から針なんぞ目もくれずに攻め立てた
針が届かないギリギリの射程圏内まで接近、ロックし そして叩き落とす、、、しかし、
その前にテルの皮膚は引き裂かれた
「・・・・ッ!?」
突如襲った猛烈な痛み
相手の間合い、針が届かないギリギリのラインで止まったはず____それなのに負った傷は紛れも無くコンパス針によるもの
カッターで切るような切り傷ではなく、一度刺されてから皮膚を抉るようにできた傷跡は痛みも完治の遅さもさぞキツいものだろう
不可解、謎でしかないのは、レッドからはまったくもって腕や手首を伸ばすモーションがなかったためである
そうまるで如意棒のようにオラの手の甲まで伸びて・・・・・・・あ、、、、、
百聞は一見にしかず、恐怖心を煽るその赤きコンパスを今一度よくと見れば答えは明白だった
「・・・・その遅さ、、、、自業自得」
テルへ向けた最初のあいさつは、いかにも蔑むようなソレだった。
「ンダ~ やっちまったな~」
コンパスの首は二つから一つに変わっていた。 もちろん片方を力ずくで折ったとか、そんなルールに抵触する行為ではない。
レッドはコンパスの“∧”の角度を変えたのだ。 一般的に円が書きやすいとされる30度ほどの角度から一気に限界ギリギリ175度まで曲げた、そしてコンパスを持つ位置を鉛筆に変えた
そして瞬時に三つ目の変化にも気づくヤミヒロ
・・・・針の保護キャップを外し、鉛筆部分(持つ部分)に被せることで安定性を確保・・・・
・・・・・・・・・・・なかなかやるじゃないか・・・・・彼女・・・・・・・・
テルからみても酷い光景に変わりない
目の前にはアイスピックにも似た直線的な凶器を振り回され、全長も倍近く伸びている
ただでさえさっき受けた傷後から血が滲んでヒリヒリと痛むというのになんたる逆境
それを畳み掛けるように今度はあちらから攻めて立ててきたものだから普通の人間なら降参しているところだ
「・・・・ッ!!」
セーブできる限界ギリギリの速さで振り回しながら攻めるレッド___冷血無比な彼女からしてみれば、人の手だろうがなんだろうが、たこ焼きを作る手際と一緒。
シュンッ!シュンッ!と躊躇いも無く虚空を刺し、そして抉り切る
・・・・・・・・・・・・
しかし楽しそうに
「うっひょ~ こっえ~!こっっっえ~~~~よ!!!」
天から貰った天真爛漫な性格に霧がかかることは永久にない
保護が解かれた鈍く光る針もなんのその、インフィニティで誘い、その逆軌道技であるインフィニティリバースでかわしながら様子を窺う
・・・・・そこなんだ・・・ッ!!!
下降軌道を利用して零式はその凶器を叩き付けた
当たり所は、針と支柱の境界線 かなりの負荷がかかるベストポイント
衝突面が大きいドクターグリップなら一撃で落下させることも・・・・・否、、、ダメ
変形前の双頭コンパスならそれもあったが、今は直線型、しかも持つ部分にはゴムがついていることもあり摩擦で滑らない___滑らないのなら落下することもない。
間髪入れずに攻め立てようとするも次の攻撃はレッドが先だった。
安定性を確保されてしまった以上、テルの独壇場とはいきはしないのである。
B→Aの隙を無慈悲に攻撃し続けるレッドに対し、やっと取れてきた直線コンパスとの間合いを保ちながらカウンターのチャンスを待つ
第一戦二本目が開始させて1分少々 未だにレッドのペン軌道が変わらないことを察するにどうやらインフィニティリバースは未修得とみてよさそうだ
後がないこの状況下、最後の秘策にしてはあまりに非力だし、そんな余裕もないからである。
長期戦になればペン回し歴の長い方、つまりはテルが勝つことは目に見えている
だから攻め続ける。 次に攻撃を許したら勝ち目がないから攻めるレッド
テルも余裕でかわしているようにみえるがそれは客観視でしかない
また刺されるかもしれないという恐怖心はほぼないが、刺されないように、ペンも当たらないようにと、いわば二重の防御を強いられているのだ
・・・・キツイな~・・・・・・もう行くしかないかもよお・・・・
思惟て防御を捨てれば、必然的に戦場は一変、、、激化した
バシッ!バシッ!と連続する衝突音 互いに攻めを譲らないノーガードの殴り合い
レッドには短期戦に持ち込める、しかし決定力不足が懸念される
テルには零式の力を最大限発揮できる、しかし怪我を覚悟せざるを得ない
両者が持つリスクとリターンの鍔迫り合い
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
拮抗した13回目の衝突音と共に事態は進展する
「・・・・・・ッ!!」
13回目と寸分狂わないタイミングで衝突___しかし14回目は鳴らなかった
テルの攻撃は空かされたのである
なぜなんだ・・・!?という心の中の疑問符は、手を負傷した状況と酷似している
手首も腕もペンの軌道もさっきと同じ動き方だったのになぜなンダ・・・・!!??
刹那、時間差で襲い掛かるスズメ蜂は零式を“刺した”
正確に言おう。背後を取られた零式の“グリップ”をコンパスは迷わず“刺した”
そのまま釣り針に掛かったか大魚を引き上げるように、放物線を画きながらテルの愛ペンは地面へと落下
「フフフ 二本目はレッドの勝利ですわ」
審判の勝敗宣言後、ヤミヒロは周囲を見渡した・・・・敵の中で気づいてるヤツはいなさそうだな
レッドもよく考えたものだ。コンパスの特性”角度変化”を巧妙に仕掛けた秘策。
激しい衝突でもネジがきつくしまった新品のコンパスなら角度は微動にしない
俺はミーティング時、レッドがコンパスを使うといいだした時、真っ先に否定した
だってそうだろ?。あんな衝突の際、角度がいちいち変化しそうなもんで戦えるはずがないと。
けれどもその予想は実際に新品コンパスを手にとれば間違いだったと気づかされた。案外しっかりしているのだ。さすが日本製品、ちょっとやそっとの衝撃じゃ変化しない。
でも、、、だ。その衝撃も10回20回、と連続して負荷が掛かればいくらなんでも角度はずれてくる。。。。。その”ちょっとずつずれていく角度”を利用したのである。
さっきの13回目、コンパスの角度は少しずつ、敵に気づかれないほど微かに、丁度ドクターグリップの太さ一つ分までずれた
必然、同じタイミングならペンは接触せず、外側に曲ったコンパスは背後に回りこむようにしてグリップを刺す
レッドはコンパスの構造を熟知し、短所を秘策へと変えた。いうなれば叩きあいになった時点で、テルは十中に嵌っていたのである
・・・・さて、問題は、、、テルがいつこのトリックに気づくか、、、だな
きつめに見積もっても開始15秒以内といったところか、、、それまでに気づかれなければ俺らの勝利。コンパスネジの疲労は保たれたまま、短期決着以外有り得ない。
「三本目、始めてください」
一秒目に飛び出したレッド。少々あからさまな気もするがこれでいい。
なんども話すようだがテルの得意なスタイルは接近戦での激しい攻防。目の前でそれが出来る状況に例え罠かもしれど手を出してしまう。スピナーになった当初から貫いてきたスタイルが身体に染み付いている。
だから一発目、両者のペンは迷い無く入った。火花でも散るかのような攻撃と攻撃、されど一回転分のインターバルですぐに次がやってくる。
弐発目、もうこれはさっきの再現だ。フェイントとか、そういう類の濁りが一切感じられない
参発目、再現ならもうテルは引くしかない。でもそれはない。完全に熱くなったその闘志は、一度のイレギュラーよりも自分らしい定石を目立たせる
死発目、レッドは指先は鮮明に悟った もう十分だ。もうこれで終わりにできると...そして
____フフフ______だから貴方は_______ワタクシの奴隷なの___
テルは四発目のギリギリで攻撃を止め、手を引いた。
レッドの額から汗が、ツーと垂れる。___最後の最後で気づくとは___往生際の悪い・・・!
違う。テルはコンパスの曲りなど今でも気づいていない、きっと一生気づかない。そして“レッド”も気づかないだろう_____己が四発目の際、勝利を確信して自分でも知らず知らずの内に口元が笑ってしまっていたことに。
小難しいことには疎いテルでもそういう直感視できるものは絶対に見逃さないのは野生の力が今でも残っているからか___このままではいけないと冷静さを取り戻す。
・・・・長期戦になるかもな
微量ながらそのため息には悔しさも含まれるが、ヤツは予想以上にせっかちで、
冷静になるのもすぐに止め、攻撃に転じたテルは瞬く間にコンパスとの距離を詰めていく。
レッドからしてみたら恐怖でしかない。____が、
___なら____刺されても文句は言えまい_____
レッドは手首を捻りフェイクトインフィニティの体勢に、、、針が下方向から真横を向く形へと悪変___普通に突っ込めば間違いなく五指に刺さる
これでは攻めきれない、そこでテルも技変更を試みる、十八番、高速ソニック系フリースタイルへ____インフィニティでは決して成しえない、ソニック連続コンボの“神速”を叩き込む
バババババッ!とまるで胴打ちの練習のように、ペンではなく速度そのモノをぶつけているのかように怯むことなく責める零式
絶対絶命か、レッドはそのコンボに歯止めをかけるべく隙を見定めるとノーマルを一回転。更に零式の真下が安全と見ればそこに入り込み、上がるようにしてハーモリニカルソニック
えげつない軌道に対してテルに幸運の天使が舞い降りた____零式の鍔にある小さなストラップ穴にレッドが乱舞するコンパス針の先端が入ったのだ
____ンダ~ラッキ~ィ~!______
並外れた動体視力の彼がそれを見逃すはずもなく勢いよく、まるでさっき自分がされた一本釣りを再現するこのように、、、因縁を晴らすべく引き抜く
しかし詰めが甘い、手首の捻り方が弱かったがためにインフィニティとその逆を小刻みに繰り替えされればもう、コンパスは開放されてしまった
まだだ、
もう一度針に穴を通そうとインフィニティの上昇角度を調節する___ように見せかけたのがテル、今日初めてのフェイント技____事態をさけるため無理やり軌道をずらしたそのコンパスはもう牛乳がたっぷり滲み込んだクッキーのよう___防御というにはあまりにも脆い、、脆すぎる___最後は超高速ノーマルで仕舞いにするもこれまで受けたダメージによるコンパスの角度変化が、それを阻止した
お互いに一歩も引かない。数々の策が入り乱れてもなお落下音が響かないのは、もう後が無いからか、それともただ両者が互角だからだけなのか___勝利の女神は迷い病
隙を見れば攻撃、そしてカウンターを繰り返すことはや10分
インフィニティバトルにしてはあまりに長い勝負時間にレッドは一時オーバーディフェンスギリギリまでコンパスを移動させ休憩をとる______しかしそうはさせないと零式は責めてきた
ヤミヒロは解せない
それはまぁ攻撃型だから責めるのは当たり前だろうが、闇雲すぎる
休憩を阻止された彼女が今受けている技は通常技の連打。さっきまで多彩なコンボ技を避けてきたレッドにとってもはや休憩しているのと同義だ
・・・・なにか、、、なにかある
自滅狙いか?・・・・そう思惟たヤミヒロは刹那、テルの考えるとんでもないトリプルCに心が躍った
・・・・テルめ・・・・・なかなかやるじゃねーか・・・・・・
軽く零式を避けていくレッドもある程度の疑念は抱いていた
ここまで技量を知りえていてこの攻撃、、、なにかある、、、、
「なぁなぁ~ ペン回しって楽しいよな」
唐突にそう発したテルは技変化、、ソニックにパス系を混ぜたここ一番の高速回転でクライマックスにかかる
・・・なにかある・・・・絶対になにかある・・・・・あんな安定さの欠片もない技使って、明確な勝機がないはずがない・・・・じゃあなんだ・・・・なにがあるのだ・・・・避ければいいだろ・・・・こんな・・・・・・・・!?
腕ごと引いたレッドのコンパスはヌルリと・・・・いやな感触に苛まれる
「_____オマエ___!!!」
「へへっ・・・もう遅いンダ~」
腕を止めてなんとか落下せずに済むも、もうグラグラ。。。持ち手に取り付けていたゴム製の保護キャップが長期戦のためズレて、ペンもろとも落ちそうになっているためだ
敗北・・・その二文字をまだ拒絶するレッド。。。コンパスを右手から左手に持ち替えようとする
「させないンダ!!!」
テルは最終奥義を繰り出す。。。インフィニティバトルではめったに使用されることのないクイック技トルネードで、その甘い凶器を吹き飛ばす。
避けきれないと悟ったか、はたまた最初からフェイクか、、レッドのコンパスは方向を変えテルへ向くと....人差し指を立てながら....
「オラと同じ!?」
そう、彼女もトルネードへチェンジ。まさかまさかのトルネード同士のスプレッドエンド!
・・・・まさかトルネードまでできる経験者だったとはなぁ・・・とヤミヒロはパックンに目線を送る
しかし返ってきた反応は・・・・・
____フフフ、レッドさんは、ペン回し歴1ヶ月ちょい まだまだスプレッド系を習得できるレベルではありませんわ_______
そういう憫笑するような顔つき
「燃えてきたンダ!!」
「___勝手に焦げてな」
レッドのトルネード見せ掛けだけのいうなればお飾り___零式が繰り出す強烈な竜巻を前に成すすべは無い____はずだが...
レッドはそのまま反則一歩手前の強引な回し方でテルの零式を自らのペンもろとも吹き飛ばした
いくらテルが放つトルネードだとしても、成功をすてた捨て身トルネードの力を前にすれば非力・・・・無残に床へ転がり落ちる零式・・・。
「・・・・・どういうつもりだ? ここまできて相打ちなんて・・・オラ少しシツボーってやつしちまったぞ」
「____相打ち?____バカな冗談」
「・・・・・ンダ??」
「落下したのはお前のペンだけ_____私の勝利だ」
そう指をさした方向は、窓側の壁。。。。。。。まるでダーツのように、綺麗に刺さったレッドのペン
「インフィニティバトルの敗北条件は二つ、反則を犯すか、ペンが手から“落下”するかだ
。無回転とはどこにも書いてない。
私のペンは落ちてない、ただ横にそれて“刺さった”だけだ」
・・・・まじかよお・・・・と助けを求めるテルだが、案の定クルタンはバドシを宥めるので手一杯なご様子
「・・・・オラ・・・・負けたのか・・・・」
床に落ちたペンを取るためしゃがみ込むと、泣きもせず悔しがりもせず、、ただ過ぎてしまった台風の爪あとを確かめるように無表情でそう呟いた
「_______」
「なぁ レッド」
「_____なんだ」
「このコンパス、新品だよな 回すために買ったンダ?」
「いいや___勝つために勝った」
「そうかぁ・・・・・ならこのペン、オラにくれよ」
「______引導でも得たつもりか____」
「インドーお??カレーか!?」
「___いい___もう用済みだ___くれてやる」
よっしゃーっと無邪気に笑ったテルはコンパスのもとへ走った。そして、
「おーい やっと解放されたンダお前・・・大丈夫大丈夫心配いらねーぞ、オラは無改造シュギシャってやつだからな」
そういいながら刺さった針は引き抜かず、固定されたペンのネジだけ回せば、短いペンだけ取り出し自分の手に乗せた
「おお・・・おお!! これでドラマーができるようになれば、俺もイチリューってやつなンダ~」
と、敗北に悲観することなくまた、ペン回しを没頭し始めた。
・・・・
・・
・
●
第二戦
ヤミヒロVSバドシ
「やあヤミヒロさん てっきりブルドラが相手だとばかし思ってたっすよ」
「・・・・そういう作戦だよ 剣道やってんなら驚くこともないだろう」
そうっすねぇ~、と序盤の憤怒の息は何処へ行ったか、至って平常心を保つバドシ
「・・・意外と冷静だな、色々キレることは山のようにあると思うが・・・まぁいい、さあコールを審判」
「第二回戦 一本目・・・・・開始ですわ」
嘆声の類はない、その一言でペンはひずんだ。
銃弾のような速さにバドシの手の平はもはや空
まるで最初からそこにあったからのように、ただ足元に転がっている一本のペン___
____あれ・・・・・・俺ってば・・・・ペン・・・ちゃんと持ってたっすよね?___
自問しても答えはただ負けたのだという絶望感だけ...
・・・・
・・・
・・
・
つまるところ第ニ戦一本目は、格の違いを見せ付けたヤミヒロの勝利で終わっていたのだ
つづく
ヤミヒロVSバドシ そして。。。。。。
NPC亡霊のダイブスピナー第四章3/3 2013.03.09.(土)公開
久しぶりに出てきたけどブルドラのマジキチっぷりがモデル本人に訴えられそうなレベルだなww面白いから良いけど(無慈悲)
ブルちゃんごめんなさいやりすぎました反省してます___でもいいじゃんねー(やっぱ無慈悲)