認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症を発症する脳の機能レベルと症状との関係(A-76)

2013-02-11 | アルツハイマー型認知症発病のメカニズム

認知症の大多数90%以上を占めている「アルツハイマー型認知症」については、1995年に私達が市町村での「地域予防活動」を開始してから今日にいたるまでの間だけでも、発病させる原因を「アセチルコリン」と推測する説、「アミロイドベータ」と推測する説、「タウ蛋白」と推測する説、「脳の委縮」によると推測する説等の種々の学説が入れ替わり立ち代り唱えられてきました。それらの学説は、「発病のメカニズム」及び主張している「原因と結果との間の因果関係」を説明できないまま、うたかたのように出ては消えるのを繰り返してきているだけなのです。その結果、「アルツハイマー型認知症」は、認知症の専門家達の間では、「原因も分からないし、治すことも出来ないし、予防することも出来ない病気」とされ、なす術もなく放置されているのが現状なのです。

認知症を専門とする医師達が、診察の現場で行っていることと言えば、失語や失行や失認という「重度認知症」の段階でも更に末期にならないと発現してこない極めて重い症状だけを診断の要件(「第二の要件」)に規定している米国精神医学会が定める「DSM-4」の基準に依拠して診察を行い、「重度認知症」の段階でしか「アルツハイマー型認知症」を見つけられないでいるのです(前回N-75の「重度認知症」の症状を参照してください)。回復させることを放棄し、予防を提案することもなく、回復が困難である末期段階の「重度認知症」の段階の人達だけを見つけて、その人達を「介護施設」に送り込んでいるだけ、それが医療機関の役割になっているのです。認知症の専門家と言いながら、「DSM-4』の規定の問題点(重大な誤り)に気づくこともなく、規定を鵜呑みにし、金科玉条として受け入れているだけなのです(ここを「クリック」してください)。

医療現場のそうした状況の中で憂慮すべきなのは、「重度認知症」(大ボケ)の段階のお年寄りを「家庭」で家族が介護することを提案する人達が少なからずいることなのです。軽度認知症(小ボケ)及び中等度認知症(中ボケ)の段階までなら回復させることが可能なのですが、「重度認知症」の段階にまで脳の機能レベルが衰えてしまうと、回復させることは困難になるのです。「重度認知症」の人たちの問題点は、「回復させることが困難」なだけでは済まないのです。

「脳の機能レベル」が更に加速度的に衰えていく一方で、つまりは、「症状が更に重症化」していく(前回列挙した「重度認知症」の症状の上の方に列記してある症状から下の方に列記してある症状に向かって症状が進んでいく)一方で、「身体だけは、しっかりもつ」のが特徴なのです。「重度認知症」が始まった時点ではMMSの換算値で14点あるので、「脳の機能レベル」は4歳児レベルなのですが、(「アルツハイマー型認知症」という病名の死亡診断書は存在しないので)、身体がもっている間に他の病気を併発しない限り、ひたすらMMSのテストも全くできないレベルにまで脳の機能が衰え続けるのです。

言い換えると、「重度認知症」のお年寄りを抱えた家族は、自分の「社会生活」(自分らしい生き方の社会生活)をする機会も時間も気力も失くしていってしまうことになるのです。ただひたすら介護に追われることになり、趣味や遊びや交友や運動を楽しむ機会をなくしてしまうのです。現役であれば、働く機会を失うことさえ必要になるのです。これは、「価値観」の問題なので、それでも「家族介護に追われる人生」を選ぶかどうかは、最終的には本人が決めればいいことなのですが、その選択を社会的な風潮にすべきではないと思うのです。ましてや、国がそれを政策的に求めるとか制度化すべきものではないのです。介護保険制度の破綻(介護費用)の問題や家族介護の困難さなどの問題に目が向くのであれば、それこそ、「アルツハイマー型認知症」の早期発見による「回復と予防」を制度化すべきなのです。蛇口を閉める方法があるのだから、開きっぱなしにしている蛇口を閉める方策や政策に目を向けるべきだと思うのです(ここを「クリック」してください)。

脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉の機能レベル」を調べることが忘れ去られている医療の現場では、(「神経心理機能テスト」を活用して「前頭葉」を含む脳全体の総合的な「機能レベル」を調べることをしないで)、CTやMRIなどの機器を使って(「脳の形:脳の委縮の度合い」)を中心に調べているのです。それに付け加えるのが『記憶の障害』の症状なのですが、これにも問題があるのです。「前頭葉」を含む脳全体の総合的な「機能レベル」を調べないので、その結果として発現している『段階的症状』という考えもなく、「DSM-4」に規定されている「重度の記憶障害」(しばしば取り上げられる症状が、『つい先ほど食事を摂ったばかりなのに、すぐにそのことさえも忘れる』という症状)と失語や失行や失認という「末期の段階」にしか発現してこない極めて「重度の症状」だけが認知症の症状であると誤解しているのです。回復が容易な「軽度認知症」の段階も、回復が未だ可能な「中等度認知症」の段階も見過ごされてしまっているのです(「アルツハイマー型認知症」の症状を、軽度認知症、中等度認知症及び重度認知症の3つの段階に区分するのは、「二段階方式」の区分方法)。これら早期の段階では、発現してきている症状が、「重度認知症」の段階の症状に比べて相対的に軽いものばかりで、失語や失行や失認といった重い症状は未だ発現していないので、認知症とは診断されないのです

その結果、「アルツハイマー型認知症」は、早期の段階(「小ボケ」や「中ボケ」の段階)で見つけると正常なレベルに脳の機能を回復させることができる(治せる)し、更には予防することもできる性質のものであって、廃用症候群に属する「生活習慣病」の一種に過ぎないのに、「原因も分からないし、治すこともできないし、予防することもできない病気」にされてしまっているのです。認知症専門の精神科医達が皆そのように言うので、権威を重んじる我が国の国民もまた、医師の言葉をそのままに信じるのです。「アルツハイマー型認知症」は、原因もわからないし、治すことも出来ないし、予防することも出来ない病気だとする考えが、北海道から沖縄まで、全国通津裏裏、離島を含めた我が国の隅々にいたるまで深く深く浸透してしまっているのです。

他方で、脳をどのように使うのかと言う視点からの日々の生活の仕方が発病や回復を左右する「廃用症候群に属する生活習慣病である」とする私達の説を「疫学的に裏付ける」実態が出現してきてもいるのです。被災から約2年弱という僅かな期間しか経過していないにもかかわらず、東日本大震災の被災地に於いては『不活発病』のレッテルを貼られる高齢のお年寄り達が異常な規模で出現してきていて、今もなおその状況が進行しているという実態です。実は、この人達は「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階の人達なのです(前回のブログで表記した、「小ボケ」の段階の症状を読み返して、比較してみてください)。

このお年寄りたちの「前頭葉」を含む脳の機能レベルを、「二段階方式」に代表される「神経心理機能テスト」を活用して判定してみれば、左脳も右脳も正常レベルにあって、司令塔の「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)の機能レベルだけが異常なレベルに衰えてきていることが分かるのです(「軽度認知症」の段階)。特に、三本柱の「意欲、注意集中力及び注意分配力」の機能が異常なレベルに衰えてきているので、その直接のアウトプットとしての「症状」(「不活発病」のレッテルを貼られるような症状)が発現しているのです(実は、それこそが、「軽度認知症」の段階に発現してくる症状なのですが)。「アルツハイマー型認知症」の特徴である、段階的な症状の発現についての知識を持たない人達が、誤って「不活発病」のレッテルを貼り付けているだけということなのです。

「不活発病」のレッテルを張られるだけで放置されたままのこのお年寄り達は、この先2~3年も経つと、次の段階である「中等度認知症」(中ボケ)の症状を示すようになり、その段階を経て、(被災から4~5年が経過した後)速いケースだと「重度認知症」(大ボケ)の段階の症状を示すようになるのです。「重度認知症」の段階の症状が出てくるようになれば、『DSM-4』の規定を金科玉条と考えている認知症専門の医師達が大騒ぎする事態になることを予告しておきます。

「アルツハイマー型認知症」は、第二の人生を送っている「高齢者」が、日々の生活を送る中での脳の使い方としての「生活習慣」(「前頭葉」を含む脳の出番が極端に少ない「生活習慣」)のために、「廃用性の機能の異常な低下」が起きてくることが原因の病気に過ぎないのです。換言すれば、生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の下では、「前頭葉」を含めた脳の使われる機会が少なすぎるということなのです。一部の学者が唱えているような、「老人斑の生成」とか「神経原線維変化」等の器質の変化が起きてくることが原因で発病する病気ではないというのが、「脳の機能データ」を根拠とした私達の考えなのです(ここを「クリック」してください)。

こうした時の経過(被災から、4~5年)を経て、東日本大震災の被災地の「高齢者」たちが、他のどの地域の高齢者とも異なる「はるかに高い割合」で、「アルツハイマー型認知症」の症状を示すようになれば(被災から4~5年が経過したその時点では、速い人の場合は「重度認知」症の症状を示すようになります)、私達の主張内容に専門家達の注目が集まることになり、「アルツハイマー型認知症」の発病原因に対する専門家達の考えにも、コペルニクス的な転換の時期が訪れることになると思うのです。

(コーヒー・ブレイク) 「アルツハイマー型認知症」の各段階(私達の区分でいう、「小ボケ」、「中ボケ」及び「大ボケ」の段階)で発現してくる個別の「症状」(前回のブログで概説を説明した、「3段階」に区分される症状)は、使われる機会が極端に少なくなった為に急速に異常なレベルにまで衰えてきた「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルの単なる「アウト・プット」に過ぎないと私達は考えているのです(「廃用性」の加速度的な脳機能の低下が進行していくにつれて、各段階における「脳の働き具合」が、そのまま各段階の「症状」として発現するだけなのです)。 「老人班」や「神経原線維変化」或いは「脳の極度の委縮」は、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階である「重度認知症」(大ボケ)のレベルを何年間も患ったままでいた為に生じてきた結果(副産物)であって、「アルツハイマー型認知症」を発病させる「原因」ではないのです。認知症の専門家達(研究者や精神科医)は、早くこのことに気づいて欲しいと願うのです。

○  脳の働き方とその機能の発揮レベル

今日は、「アルツハイマー型認知症」の症状を発現させている「原因」である、「脳の働き方とその機能の発揮レベル」について、分かり易く概説してみたいと思います。

「脳の働き方とその機能の発揮レベル」という視点から言えば、「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階は、「左脳と右脳」は未だ正常レベルにあるのですが、脳全体の司令塔である「前頭葉」の働き具合だけが「異常なレベル」に衰えてきている状態なのです。 そのため、「前頭葉」の機能の中で最も基礎的で且つ重要な働きであり、意識の各構成要素に対する「認知度」を左右している「三本柱」の機能である「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」が、様々な場面で、的確且つ十分には働くことができなくなっているが故の「症状」を発現してくるのです。

このことを脳の機能面からもう少し詳しく説明すると、「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、「意識的な行動、行為及び思考」の目的である「テーマ」自体と「テーマ」の中身を構築している構成要素に対する「認知機能」が、正常且つ必要なレベルで働いていないのです。その上、意識的な行動、行為及び思考の過程で機能すべき「前頭葉」の各構成要素としての機能(自発性、発想、理解、計画、工夫、考察、分析、予見、洞察、推理、想像、機転、修正、創造、感動、判断、抑制、忍耐、指示等の機能)の認知内容について、「記銘」し、「保持」し及び「想起」する機能の発揮度も同時に不十分なものとなっているのです。

私達が開発した「二段階方式」による神経心理機能テストを活用して、この「三本柱」の機能を調べてみると、高齢者と呼ばれる年代の入り口の60歳代にもなると大幅に衰えてきて、70歳代ではピーク時の20歳代に比べて半分程度にまで衰えてきているのです。80歳代、90歳代と年をとるにつれて、脳の機能レベルは更に低空飛行になっていきます。「前頭葉」の各構成機能が働く際の「認知度」を左右している「意欲、注意集中力及び注意分配力」という「三本柱」の機能には、「生活習慣」の如何に関わらず、20歳代の半ばをピークとして、「加齢とともに、働きが緩やかなカーブを描きつつ、衰えていく」という性質があるのです(機能の「正常老化」)。実は、「三本柱」のこの機能は、「記憶」の工程である「記銘」、「保持」及び「想起」の機能発揮度にも深く関わっていて、影響しているのです(30歳代の後半から、いわゆる「物忘れ」の症状が発現してきて、加齢に伴いその程度態様が進行していくのは、このメカニズムの故なのです)。

ここで、「軽度認知症」(小ボケ)の脳の働き具合を簡単に言うと、日常の「社会生活」面で発生してくる種々の「テーマ」を実行するのに必要となるレベルでの「三本柱に下支えられた認知機能」が十分機能していない状態にあるのです。こうした条件下で行為が発想・企画・実行されるため、自発性、状況の判断、実行「テーマ」の計画と内容の工夫、機転や見通し及び決断等が的確にはできなくなるのです。 こうした事態は、自転車のチューブに空気を入れる「空気ポンプ」という機器に例をとって説明すれば、理解しやすいのではないかと思います。「アルツハイマー型認知症」は、空気をチューブに送る役割の紐状のゴム管の部分(脳で言えば、情報を伝達する神経線維)に支障があることが原因(アセチルコリンやアミロイドベータやタウ蛋白が発病を引き起こす原因と主張する学説の考え方)なのではなくて、ポンプを押して空気を押し出してやる部分(脳で言えば、情報を処理し発信してやる「前頭葉」等の脳の機能)に支障が起きてきたこと、つまり、(「廃用性の機能低下」により、働きが異常なレベルに衰えてしまい、正常に機能しなくなったこと)が原因で発病する(「認知症」の症状がでてくる)病気なのです(私達の考え方)。

「自分が置かれている状況を判断して、何をどのようにするかを企画し、あれこれの視点から結果をシミュレーションした上で、最終的な実行内容を選択し、脳の各部に指令を出して、それを実行する」それが、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」の機能だと言いました。そして、あれこれの視点から結果をシミュレーションした上で、最終的な実行内容を「選択」できるのは、「前頭葉」に内在する「評価の物差し」の機能が確立されていて(これが、所謂「自我」の確立)、且つそれがきちんと働いている故でもあるのです。

こうした意思決定のさまざまな過程で必要となる「前頭葉」の機能の働き具合が揺らいできている(異常なレベルに衰えてきている)最初の段階が、「軽度認知症」(小ボケ)の段階なのです。意識的な行動、行為及び思考の世界で、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」が、壊れてもいないのに異常なレベルに機能が衰えてきたとき(私達は、極めて多数の脳機能データの解析から、使われる機会が極端に少ない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続する中で、廃用性の機能低下が進んで、「前頭葉」の機能が異常なレベルに衰えてきていると考えているのです)、薬さえ飲めば元の「正常な機能レベル」に回復できるなど、理解することができないのです(「脳の構造と機能」という視点から考えて、そんなことは、「ありえない」と考えるのです)。

 「アルツハイマー型認知症」の症状を発現する最初の段階であり、「脳のリハビリ」(換言すると、「生活習慣」の改善による脳の活性化)により回復させることが容易な「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、「社会生活」に支障やトラブルが出てくるようになるのです。

「軽度認知症」(小ボケ)の段階になると、発想が湧いてこないし、見通しも立たないし、何をどうするのかという「テーマの構想と計画や工夫」が的確に出来なくなるのです。意欲が出てこなくなって、毎日ボンヤリと過ごし、居眠りばかりするようにもなります。何かの「テーマ」に取り掛かっても、注意集中力が続かなくて、「あれも遣り掛け、これも遣り掛け」という風に、中途半端になってしまうのです。頭の回転が鈍くなってしまって、かってのようにテキパキと処理することができないのです。その人らしい生活態度が消えていき、「こんな人ではなかったのに」と周りから言われるようになるのです。「人柄の本質」自体が変わっていくような症状(前述した、「前頭葉の評価の物差しとしての機能レベルのゆらぎに起因)を示してくるのです。「軽度認知症」(小ボケ)のイメージは、何事も人を頼るようになって、一日や一週間の計画も立てられず、指示してもらわないと動けない「指示待ち人」が特徴です。

「アルツハイマー型認知症」は、発病後の症状の進行が緩やかで、何年もかけて徐々にしか進んでいかないのが特徴です。発病後急激に症状が進行していき、僅か2~3年で寝たきり状態になってしまう「狭義のアルツハイマー病」とは、発病原因(発病のメカニズム)だけでなく、症状の進行度合いも全く異なるのです。「アルツハイマー型認知症」は、脳の機能レベル」のアウトプットが「症状」となので、同時に脳の働き具合もリンクさせて調べると、症状は前回のブログで例示したように「3つの段階」に区分されることが分かるのです。「軽度認知症」(小ボケ)と「重度認知症」(大ボケ)の中間が「中等度認知症」(中ボケ)です。「アルツハイマー型認知症」を発病して、相変わらずナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続していると、脳全体の廃用性の機能低下が更に進んでいき、「中等度認知症」(中ボケ)の段階に入っていきます。「軽度認知症」の段階の次に、「脳のリハビリ」により回復させることが未だ可能な、「中等度認知症」の段階があるのです。

「中等度認知症」(中ボケ)は、脳の司令塔である「前頭葉」の働きが「軽度認知症」のときより更に異常なレベルに加速度的に衰えてきている上に、「軽度認知症」のときは未だ正常だった高次機能の「左脳」と「右脳」と「運動の脳」の働きも異常なレベルに衰えてきていて、脳全体の働き具合が異常なレベルになってきています。「中等度認知症」のお年寄りの脳の働き具合は、「4~6歳児」のレベル相当と考えて下さい。

「中等度認知症」(中ボケ)の段階になると、意識の認知度を左右する「意欲、注意集中力と注意分配力」が「軽度認知症」のレベルよりも更に不十分にしか働かなくなります。その結果、認知それ自体とその記銘、保持及び想起の機能の発揮が更に不十分なものとなるのです。左脳がらみの論理的思考や計算、或いは言葉に対する理解や判断力、更には右脳がらみの色や形や時間や空間などに対する認知能力にも支障が出てきます。状況の判断、物ごとの理解や見通し等の判断が「幼稚園児」の程度となる結果、「家庭生活」面に支障やトラブルが起きてくるようになります。但し、「中等度認知症」の段階では、「家庭生活                                                                                                 面」で支障が出てくるとは言え、食事、大小便、入浴など身の回りのこと(セルフケア)は自分で一応できるので、家族に迷惑をかけることはあまりないのです。そのため家族も、「アルツハイマー型認知症」を発病しているとは考えもせず、「年のせい」と考えて悠長に構えているのです。

「中等度認知症」(中ボケ)の段階になると、食器の片付けや、洗濯物の取り込み、庭の草むしりといった、家庭内の簡単な用事程度のこともちゃんとできなくなります。「     4~6歳の幼児」がやる程度にしかできないのです。せっかく洗ってくれたお茶碗はもう一度洗いなおさないといけないし、庭の草取りをしてもらうと花の苗まで抜いてしまいます。この程度にまで脳の機能が衰えてきていても、失語や失行や失認等の「DSM-4」が「第二の要件」に掲げている「重度の症状」及び第一の要件に掲げている「重度の記憶障害」の症状が発現してきていないと、せっかく家族が病院に連れて行っても、「アルツハイマー型認知症」とは診断されないのです。

「中等度認知症」(「中ボケ」のイメージは、(家庭内の簡単な用事程度のこともちゃんとできない)のに、口だけは一人前、「言い訳の上手い幼稚園児」が特徴です。「前頭葉」の機能が異常なレベルに衰えてきているとはいえ、「軽度認知症」(小ボケ)には、未だ自覚があります。「意欲もわかないし、根気が続かないし、てきぱき出来ないし、発想も湧かないし、物事に感動することもないし・・・」と自身が感じていて、「以前の自分と比較して、自分のどこかがおかしい」という自覚を明確に持っていて、自分の状態に「不安」を感じているのです。ところが「中等度認知症」(中ボケ)の段階になってくると、そうした自覚を持つこと自体が出来なくなってくるのです。自分の状態に対する自覚がもてないので、不安も全くと言っていい程に感じていないのです。逆に、「こんなところが、おかしい」と家族が指摘しても、「そんなことはない。私は、ボケてなんかいない」と言い張るのです。自分のおかしな言動についての、一端の言い訳(ヘリクツの類)ばかりを並べ立てるのです。

「中等度認知症」(中ボケ)の段階になっても手をこまねいていて(そもそも、本人には自覚がないのですが、家族を含む周りの人達にも状況が理解されていなくて)、相変わらずナイナイ尽くしの「単調な生活」を本人が継続していると、「前頭葉」を含む脳全体の廃用性の機能低下が更に加速度的に進んでいき、「重度認知症」(大ボケ)の段階に入っていきます。

「アルツハイマー型認知症」の末期の段階であり、回復させることが困難な「重度認知症」(大ボケ)の段階は、「前頭葉」を含む脳全体の働きが「中等度認知症」の段階よりも更に異常なレベルに衰えてきているのです。左脳と右脳と運動の脳の働きも、幼稚なレベルの機能が残っている程度である上に、脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」は殆ど機能しなくなっているのです。そのため、意識の認知度を左右する「意欲」、「注意集中力」と「注意分配力」がほとんど働いていない状態なのです。「重度認知症」(大ボケ)段階のお年寄りの脳の働き具合は、「4歳児以下」のレベル相当と考えて下さい。 

 

脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」がほとんど寝たきりの状態になっている「重度認知症」(大ボケ)の段階になると、これまでの人生で何度となく体験して体に浸み込んでいるような「言葉」や「テーマ」或いは「状況」に対しては或る程度の対応ができるのですが、折々に直面する新しい状況や身体に浸みこむほどの経験がないテーマに対しては殆ど対応できないのです。

脳の司令塔の「前頭葉」は、殆ど働かなくなっている上に、左脳や右脳や運動の脳も極めて不十分にしか働かない「重度認知症」(大ボケ)は、脳の機能を回復させることは困難となり、症状がさらに進んでいくので、自分の身の回りのことをする「セルフ・ケア」の面にも支障が出てきます。食事をしたり、服を着たり脱いだり、お風呂に入ったり、トイレの後始末をしたりといった、身の回りのことも自分でできなくなり、日常生活に「介助」が要るようになるのです。

(コーヒー・ブレイク) ところで、米国精神医学会の規定である「DSM-4」では、「記憶の障害」を「アルツハイマー型認知症」診断の「第一の要件」と定めているのですが、「アルツハイマー型認知症」のお年寄りの「記憶の障害」の問題について、少し説明しておきましょう(まず、ここを「クリック」してください)。

精神科医が「アルツハイマー型認知症」であると診断する第一の要件である「重度の記憶障害」の症状は、「前頭葉」を含む脳全体の働き具合が異常なレベルに衰えてしまっているので、「認知」それ自体と「記銘」、「保持」及び「想起」の機能が極めて不十分にしか働かない(症状の進行に連れて、どんどん機能しなくなっていく)ために起きてくるものなのです。

そもそも、記憶は、「記銘」して、「保持」して、「想起」してくるという経路をたどるものなのです。「重度認知症」(大ボケ)の段階になると、直前の事さえ忘れてしまうような重度の記憶障害の症状(ほんの少し前に食事をしたことさえ覚えていないような症状)が例示としてしばしば取り上げられています。「重度認知症」の段階にまで脳の機能が衰えてくると、脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」の機能、その中でも特に、意欲、注意の集中力及び注意の分配力という「三本柱」の機能がほとんど働かなくなってきている状態なので、「保持」及び「想起」に必要な程度での「記銘」自体ができなくなってくるのです。いろいろな「テーマ」の内容を記銘する記銘度自体が極めて低いので、保持も想起もできなくなっているのです。その結果として、直前の出来事さえも覚えていないということになるのです。

次いで、「重度認知症」の直前の段階である「中等度認知症」(中ボケ)の段階では、「昔のこと」は(認知症の重い症状が出ている人とは、とても思えない程の)かなりなレベルで、はっきりと思い出すことが出来るのです。その一方で、「最近起きた新しいこと」についての記憶が困難になるのです。その理由は、「意欲」、「注意集中力」と「注意分配力」の機能が不十分にしか働かなくなっているため、「記銘」するときの「記銘度が低くなってしまっている」ことが第一の原因なのです。昔の記憶は、年が若くて(三本柱の機能が正常なレベルにあったので)、「記銘度」が高かったころの記憶ということになり(記銘度が高いと、長期に保持されるので)、今でも思い出す(想起する)ことが出来るのです。

そして、「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、日常生活面で、いわゆる「物忘れ」の症状が頻繁に起きてくるようになるのが「記憶の障害」にかかわる特徴なのです。この場合、「前頭葉」の機能が異常なレベルにまで衰えてきているので、「前頭葉」の「三本柱」の機能である意欲、注意の集中力及び注意の分配力がきちんと働かなくなっているのです。そのため、「正常な人達」(「前頭葉」の機能レベルが正常な人達)にも起きてくる「物忘れの症状」(「老化の物忘れ」の症状)に比べて、何事をするにも意欲が湧いてこず、注意が集中できず、注意の分配力が的確には働かないので、物忘れが起きてくる「頻度」が高く、且つ物忘れの「程度」が激しいのが特徴なのです。

注)本著作物(このブログA-76に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

エイジングライフ研究所のHPここを「クリック」してください)

脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

  http://blog.goo.ne.jp/quantum_pianist

 http://blog.goo.ne.jp/kuru0214/e/d4801838dd9872301e0d491cd8900f1a


 

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