月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

きくらげ栽培の真実(後編)

2017-12-05 22:14:54 | キノコ栽培
前編はこちら

さて、データで追えるだけ追ってみたけど、実情はどうなんだろう。キノコ動向に詳しい友人に聞いてみた。

友人Nは情報収集に長けた元同僚だ。今はシイタケ栽培で独立する準備のため関西にいる。久々の電話だったが、世間話もそこそこにキクラゲ栽培について聞いてみた。

N「うん、まあまあ調子いいみたいよ?」

鳥「キクラゲ生産者って多いの?」

N「いるいる。けっこう多い。このあたりは土地柄なのか障がい者雇用施設が多いんだけど、どこもかしこもキクラゲやってる。小規模でもできるし、傷みにくいから扱いやすいんじゃない?障がい者雇用でキノコ栽培っていうビジネスの元締めを商売にしてる人がいるみたい。」

鳥「そうなんだ。でもキクラゲってあんまり一般に馴染みないよね。そんなに売れるんかな?」

N「さすがに地元の農産物直売所じゃ生キクラゲは飽和状態だねー。スーパーでも大したこと売れんらしい。でもあまった分は元締めの乾物屋がぜんぶ引き取ってくれるって。値段もまあまあみたい。だから売り先に困ることは一切ないんだって」

鳥「えー!いい商売じゃんか!そんなに需要あるとは思えんけど」

N「だよねー。でね、そのキクラゲが最終的にどこで売られてんのか気になったから聞いてみたんだけど、よくわからんって。ていうか、その人はそういうことに興味ないみたい」

鳥「確かに国産の乾燥キクラゲが市販で売られてんの見んなー。どこ行ってんだろ?そりゃそうと、この際シイタケやめてキクラゲ栽培にしたら?」

N「んー、どうだろね。生産量が増え続けてるからそのうち値崩れするんじゃないかな」

鳥「まあそれはありうるねー。調子こいて増産したら値崩れって、キノコにありがちだし」

N「やっぱりシイタケにかぎるね」

鳥「あはは、さすがのシイタケ愛だね~」

まあこんな感じのやりとりだった。


国産乾燥キクラゲの売り先に関しては自分で考えてみたが、まず業務用として流通していることが予想される。中華料理店でもグレードの高い店や、あるいはホテルなど、食材にこだわる店ならば高くても国産を仕入れるだろう。中国人観光客も増えているので、思ったより出番は多いはずだ。チェーン店としては長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」が国産食材にこだわっており、キクラゲも国産品を用いている。

他には、輸出も考えられる。調べたところ、平成28年には6.4tを輸出している。おもな輸出先はアメリカ、香港、フィリピンなど。国内生産量が約59.5tだから、その割合は10パーセント強ということになる。日本の農産物としては決して小さくない数字だ。


他にもいくつか情報を仕入れた。まとめてみよう。

キクラゲ栽培のメリット

・初期投資がかからない
・冬がメインのシイタケの裏作としてピッタリ
・暑さに強い
・キノコが丈夫で扱いがラク
・乾燥すれば日持ちがするのでストックできる

キクラゲ栽培のデメリット
①認知度が低く、特に生キクラゲでは市場価格の安定性に欠ける
②冬場に暖房をかけて栽培しようとしても見合わない
③生産量が増え続けており、値下がりの圧力が高まっている


ざっとこんなところかな。
メリットは見ての通りとして、デメリットを検討してみよう。

①は裏返せば、今後大化けする可能性があるということ。一般家庭で生キクラゲを料理に使うのが当たり前になれば、価格も安定する。

②キクラゲの栽培には温度を保つことが欠かせないが、密閉して暖房を焚きまくると、今度は酸欠の障害がでる。もちろん燃料コストもかかるので、冬場の栽培は敬遠する人が多い。ただ、施設を巨大化して空調完備の大規模施設を作れば話は違ってくる。それに見合う利益が上げられるかがポイント。九州や沖縄など、暖かい地域は有利。

③これが一番のリスク要因。需要と供給のバランスで価格は決まるから、供給量が増えれば価格は下がることになる。消費量が急激に増えることは考えづらいので将来的に価格が下がるのは間違いないだろう。零細生産者にとっては厳しい。しかし……

現在キクラゲは中国からの輸入に頼り切っている。もし何かがあって中国からのキクラゲが高騰したら、あるいは輸入がストップしてしまったら。国産キクラゲは一気に檜舞台に駆け上がることになるだろう。そしてもうひとつ、キクラゲには輸出の道がある。海外という広大な消費市場が開ければ、キクラゲ栽培の未来は明るいだろう。

【結論】
キクラゲ栽培は今後儲かる気もするし、儲からん気もする


って、何も言ってへんのと同じやんけ(´・ω・`)
でも……大規模化が進み、販売価格が低下、零細が淘汰されていく将来は見える気がする。