kaeruのつぶやき

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老人と「資本論」

2016-08-24 18:32:58 | kaeruの『資本論』

「老人と……」とくれば「……海」でしょう。ヘミングウェイの代表作、昔読んだなーと、映画はテレビだったかなーとも。そんなことを頭に浮かんできたのは今日の資本論の講読会で、三人の話を聞きながらでした。

  話の内容はほとんど聞き取れないし今日報告された「商品資本の循環」とか「循環過程の三つの図式」はまったく予習なしでしたので、特に分からないままでした。そんななかで、資本の循環過程のなかでの労働市場、その労働市場から抜け出てきている高齢者層の一員であるここにいる四人は何のために「資本論」なるものを読んでいるのか? と妄想的に浮かんできました。

  というのも今日の講読会が始まるとき、Y氏が本を持ってくるのを忘れた、「俺も歳だなー」と言ったことが絡んでいたのでしょう。実は資本論を読もう、と言い出したのは彼でした。大学生時代にひと通り読み人前で講義をしたという話も彼からではありませんが聞いたことがあります。

   なんでそんなことを言い出したのか、と聞いたことがありましたが『もっと基本的なこと、根本的なことをつかみたい」と悩める青年のようなことを言ったものです。多分町長選挙を起点にして大きな変化が起きた、というより彼を中心にした一群がかかわって起こした時期からかなり経っての話だった頃だったかと思います。

   より根本的なことを知る、ということでしたら小生の願うことでもありましたしこれまでの資本論との関わりが中途半端でしたので、今度は全三巻を通そうと乗り掛かった船に座り込んだわけです。そして第1部「資本の生産過程」から第2部「資本の流通過程」に入ってみると労働市場というものが見えてきました。かすかに見えるという状況ですが、ここにいる79歳2人と70歳前後の2人にとっては、かなり以前に生きの良し悪しは別にして各々労働力所有者として立っていた「市場」です。

  もとより「資本論」は「労働者階級のバイブル」と称された様に、労働者に向けて書かれたものです。マルクスが【『資本論』がドイツの労働者階級の広い範囲にわたって急速に理解されだしたことは、私の仕事への最高の報酬である。】と書いているとおりです。

   同時にそれは、資本主義社会の基本的な仕組み・根本的な構造の解明の書でもありました。Y氏が「基本的な、根本的」を求めた内容でした。あわせてマルクスの次の言葉を思い起こすことができます。もちろん私は、新たなものを学ぼうとし、したがってまた自分で考えようとする読者を想定している。】

   現状から出発しつつ、現状を変える努力を支える精神はマルクスのこの言葉にあると思います。「新たなことを自分の頭で考える、そのために基本的なこと根本的なことを追求する」、こうなると高齢者にこそ必要な精神かと思えるのです。

   ヘミングウェイの老漁夫は大いなる得物を得ました、私達高齢者も得てきたものは誠に多くのものがある筈です。老漁夫は得物を失いましたが、私達はそれらのものを首尾よく次の世代の手に渡さねばと思います。そのためには若い世代と未来への展望を共有しなければなりませんが、ここに高齢者にとって資本論の意義があるように思えてきたのです。