原発問題

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『被爆医師のヒロシマ』著者:肥田舜太郎<未知の症状で死んでいく被爆者> ※14回目の紹介

2015-09-15 22:02:02 | 【被爆医師のヒロシマ】著者:肥田舜太郎

*『被爆医師のヒロシマ』著者:肥田舜太郎 を複数回に分け紹介します。14回目の紹介

被爆医師のヒロシマ 肥田舜太郎

はじめに

  私は肥田舜太郎という広島で被爆した医師です。28歳のときに広島陸軍病院の軍医をしていて原爆にあいました。その直後から私は被爆者の救援・治療にあた り、戦後もひきつづき被爆者の診療と相談をうけてきた数少ない医者の一人です。いろいろな困難をかかえた被爆者の役に立つようにと今日まですごしていま す。

 私がなぜこういう医師の道を歩いてきたのかをふり返ってみると、医師 として説明しようのない被爆者の死に様につぎつぎとぶつかったからです。広島や長崎に落とされた原爆が人間に何をしたかという真相は、ほとんど知らされて いません。大きな爆弾が落とされて、町がふっとんだ。すごい熱が放出されて、猛烈な風がふいて、街が壊れて、人は焼かれてつぶされて死んだ。こういう姿は 伝えられているけれども、原爆のはなった放射線が体のなかに入って、それでたくさんの人間がじわじわと殺され、いまでも放射能被害に苦しんでいるというこ と、しかし現在の医学では治療法はまったくないということ、その事実はほとんど知らされていないのです。

 だから私は世界の人たちに核 兵器の恐ろしさを伝えるために活動してきました。死んでいく被爆者たちにぶつかって、そのたびに自分が感じたことをふり返りながら、被爆とか、原爆とか、 核兵器廃絶、原発事故という問題を私がどう考えるようになったかということなどをお伝えしたいと思います。

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**『被爆医師のヒロシマ』著書の紹介

前回の話『被爆医師のヒロシマ』著者:肥田舜太郎<未知の症状で死んでいく被爆者> ※13回目の紹介

 よく見ると、火傷していない健康なきれいな肌に紫色の斑点がありました。これは特定の病気のとき、たとえば白血病の末期で死んでいくときなどにあらわれる紫斑というもので、えんぴつのうしろ側に紫色のインクをつけてポツポツとはんこを押したかのように、20か30個の紫斑が出ています。

 そうこうするうちに、患者の様子が急変して、下血と言って、おしりの穴から出血しました。まぶたの裏や口内からも血が吹き出ます。鼻血や口からの出血ならまだわかりますが、普通は絶対に出血しないまぶたの裏側からも、タラーッタラーッと血が流れ出るのです。

 苦しがった患者が頭に手をやると、ふれたところの髪の毛が、まるで掃き落としたかのようにスーッと取れてしまいました。髪の毛がぬけるとか、脱毛というよりも、ごそっと取れると言ったほうが正確です。

 結局、この患者はゴボッと血をはいたのを最後に、血の海のなかで亡くなりました。

 高熱、口中の壊疽、紫斑、出血、脱毛という、教科書にもない症状の死にぶつかったのは私一人ではありません。担当地域を巡回して治療にあたっていた軍医たちの報告では、似たような症状が寄せられました。誰一人として経験したことのない症状に首をひねってあれこれ意見を言い合っているうちに、急変する患者がたくさん出始めます。まるで伝染病のように、たちまち戸坂村全体に広がったのです。それも5人、8人と申し合わせたように同じような時刻に発病して、相前後して亡くなっていきました。

 原因はまったくわかりませんでしたが、広島に落とされた爆弾によって、火傷と大ケガをして人が死ぬだけでなく、高熱、口中の壊疽、紫斑、出血、脱毛という5つの症状がそろうと、1~2時間くらいのうちに死んでしまうということが、医者も被爆者も3~4日間のうちに経験してわかったのです。これは「急性放射能症」と呼ばれる症状だと、あとから知りました。

(次回に続く)

続き『被爆医師のヒロシマ』は、9/16(水)22:00に投稿予定です。

 

被爆医師のヒロシマ―21世紀を生きる君たちに

『被爆医師のヒロシマ』著者:肥田舜太郎<未知の症状で死んでいく被爆者> ※13回目の紹介


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