原発問題

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【フクシマ見聞録】3・11日本政府から緊急事態特例で、住民票のない場所でもパスポートの申請を受付ける通達が出ていた ※78回目の紹介

2017-02-14 22:02:02 | 【フクシマ見聞録】

1876to1945さんのツイート(2013年10月01日~)を順に紹介します。78回目の紹介

【フクシマ見聞録】

3・11日本政府から緊急事態特例で、

住民票のない場所でもパスポートの申請を受付ける通達が出ていた

Akira Tsuboi@1876to1945さん 2014年1月20日のツイートから

 

福島行-2011年3月14日午後の羽田空港は、やはり平静とかわらなかった。
とくに外国人が多いということもなく、少なくも多くもない人間たちが
あたりをうろついていた。兄は運転してきた車を空港の駐車場に置いてきていた。

自分と同じく兄もたまたま連休を取っていたのでそうして動けたのだった-

 

-が、いずれ、進めている仕事のために戻ってくるつもりらしかった。
窓口で事情を伝え、ドイツという異国の政府発行の書類を手渡し、
通常の手続きを飛ばして旅客券を受け取る。福岡へむかう旅客権を
求める人間の列に連なりながらも、ひとり奇妙なものを感じざるを得なかった。-

 

-チケットを受け取り、新大阪ゆきの旅客券を受け取ってきた両親、
兄と別れることになった。「-じゃあ、元気でね」母が言い、
自分は月並みな言葉を返した。

自分は傍らに立つ父の、背広の背にまばらに落ちていたふけを
払ったことを覚えている。福岡への便には勤め人が多くを占めていた。-

 

-「-壷井さん、こちらへ-。」地味な中年の男が一室の扉から
顔を覗かせて言った。そこは福岡の、中洲と天神の間にある
パスポート申請の窓口だった。

以前書いたように、福岡へ着いた自分は三日間の休日を
ホテル暮らしに費やし、逡巡の末に福岡へ留まることを選び職場を馘首されていた。-

 

-東京へ戻るか。福岡にとどまるか。さらにそこから出てゆくのか。
動乱のときには、そんな行く末をめぐる分岐がつぎつぎに自分に突きつけられてくる。

戻らぬことを選択した以上、出てゆくことの可能性への準備をするのは
必然として感じられた。バイエルン州のある街、女の生まれた故郷へ戻った-

 

-女は、地元のメディアに請われて動乱のさなかにある日本人の心情を
聞き集めるように言われ、ホテルが貸し出すパソコンを使って家族
(空港経由のほうがホテル代安くあがるので、
同じホテルへ数日後にはやってきたのだった)の話を聞いていた。
ドイツで仕事を探してゆくという。-

 

-職も喪い、一人これまでずっと進めていた(自分なりに全霊をかけていた)
表現活動も先が見えなくなっていた。ただ残されたのは女とのつながりと、
無為に空いた時間-。

その空いた時間には、その頃には依然として
予断をゆるさなかった福一の情報、
これまでの原発をすすめる上でなされてきた操作-

 

-の悪質さ、被曝に対してまるで機能しない日本の惨状をめぐる
情報が埋めるようになっていた。

思えば、この選択を機に、自分をそれまで成してきたものの
要素のバランスが変わったのだと思う。

住民票のない福岡でのパスポート申請を相談すると、
一般の窓口の女に理由を聞かれ、仔細を説明した。-

 

-しばらくするとそうして地味な男が自分を呼び、
二人で個室に差し向かいになった。責任者らしかった。男は言った。

「いま、確認しました。確認しましたところ、
現在日本政府から緊急事態特例ということで、
住民票のない場所でもパスポートの申請を受け付けるよう通達が出ております-」

 

-おどろく以外なかった。(そんなこと、テレビで言ってなかったじゃないか-)
ホテル住まいをするようになり、家族も結局またひとところに
まとまる状態になっていた。

ホテルのテレビでは、ワイドショーが原発の状態、
そしてそこからもたらされる被曝程度を、レントゲンやCTと比べて軽微なもの-

 

-として解説する専門家が続々と出てきて話していた。
洪水のようにそんな情報を流していた一方で、政府はそんな
逃げるための緊急対応をおこなっていたのだった。

テレビからの情報量からすると、”ひそかに”と
言ってさしつかないと思われた。-

 

-として解説する専門家が続々と出てきて話していた。

(全国的な放送と比べて福岡の地元の放送局は危険性を危険なものとして論じていた)

。番組の合間には、公共広告機構の二つか三つほどしかないパターンの
映像が刷り込まれるようにして繰り返されていた。-


-幼児向けの絵本のようなアニメが、あえて作られた幼さと、
やわらかい甘さを前面に出してこちらの時間を埋めてゆく。

一言挨拶の言葉を発することの重要さを、ことここにいたって説いている。
洪水のようにそんな情報を流していた一方で、
政府はそんな緊急対応を敷いていたのだった。-

 

-圧倒的多数に向けて積極的に流される装われた、現実には意味をなさない、
むしろ当時の状況では肉体的な意味でも人をスポイルする以外の
なにものでもない稚気と、知る人間に向け、
ひそかに危機的な現実に即して対応するひどく具体的な対応。
この二面対応を行うにあたっての国の処理速度の迅速さに-

 

-禍々しさのまじった驚きをあらためて感じた。
(-すくなくとも、役人はこのことを知っているはず-)この選別。

これまで自分が外から問題にしていたその選別の、ふとした縁のかさなりで
少数の中へ、自分はいつの間にか紛れ込んでいた。
紛れ込み、特例的にパスポートを発行してもらおうとしている。-

 

※次回に続く

 2017/2/15(水)22:00に投稿予定です。 


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