原発問題

原発事故によるさまざまな問題、ニュース

『世界が見た福島原発災害』第14章 ミステリー ※2回目の紹介 <ベント開始時間が改竄された>

2015-07-28 22:00:17 | 【世界が見た福島原発災害】

*『世界が見た福島原発災害』著者:大沼安史

第14章 ミステリー」を複数回に分け紹介します。2回目の紹介

  福島原発災害は、東電、原子力安全・保安院など政府機関、テレビ・新聞による大本営発表、御用学者の楽観論評で、真実を隠され、国民は欺かれている。事実 上の報道管制がしかれているのだ。「いま直ちに影響はない」を信じていたら、自らのいのちと子供たちのいのち、そして未来のいのちまで危険に曝されること になってしまう。

 本書は、福島原発災害を伝える海外メディアを追い、政府・マスコミの情報操作を暴き、事故と被曝の全貌と真実に迫る。

----------------

**『世界が見た福島原発災害』著書 「第14章 ミステリーの紹介

前回の話:『世界が見た福島原発災害』第14章 ミステリー ※1回目の紹介 <無音爆発映像のミステリー>

 なぜベント開始時間が改竄されたのか

 4月7日、日本の共同通信のスクープ記事(英文)が世界を駆け巡った。

 「日本政府のタスクフォース フクシマ危機ログ(記録)を書き換え」ー

 首相官邸がホームページ公開記録を、何の説明もなくひそかに書き換えていたことを暴露する記事だった。「3月12日」分の記録の「1号機のベント開始時間」をこっそり書き換えていたことを暴露した記事だった。

 「1号機」が水素爆発を起こしたその日の、それも「ベント(格納容器の弁を開放して水蒸気を逃し圧力を下げる」という重要な作業の開始時間が、なんとホームページ上で書き換えられていたのだ。

 衝撃的なニュースだった。日本政府が何らかの意図で「隠蔽工作」ともとれる行動に走っていたことが暴露されたわけだから。

 この共同の英文記事ツイッターなどを通じて、全世界に瞬く間に拡散した。いっぺんに知れ渡った。私にこの共同のスクープを知らせてくれたのも、ある英文ツイッターの「速報」だった。

 一読して情けなくなった。

 それでなくても日本政府は、あのウィキリークスによる「国務省機密電」の暴露などで、世界的に信用を失墜させている。そこへ持ってきて、この「コッソリ書き換え」事件! 前述の、欧州のある都市で働く私の若い教え子の肩身がますます狭くなりそうな日本政府の醜態が、グローバルな規模でさらけ出された瞬間だった。

 では、どんな書き換えがひそかに行われていたか?

 この共同通信の特ダネは、日本語の記事にもなっているので、詳しくはそちらを読んでいただきたいが、要は当初、「午後2時30分」としていた「ベント」の開始時刻を「午前10時17分」へ4時間以上も繰り上げていたことが発覚したのだ。

 「1号機」で水素爆発が起きたのは、その日の「午後3時36分」。ということは、当初の「ベント開始時刻」の「午後2時30分」は、爆発の約1時間前だったわけだ。

 「約5時間前」に書き換えられていた。

 なぜ書き換えたのだろう?

 ここでまず原子力安全・保安院の「事情説明」を押さえておかねばならない。共同通信の記事によると保安院はこう釈明している。

 「当院は事故当初から、ベント操作着手の時刻を10時17分としてきた。(官邸ホームページは)『2時30分ベント開始』となっていたため、官邸に指摘し、表記が変わった」

 この保安院の言明が正しいとするなら、首相官邸は「ベントの開始時間」を勝手に4時間以上も繰り下げていたことになる・・・。

 官邸はなぜ、そんな小細工(?)をしていたのか?

 この謎を解く鍵は、その日、3月12日の菅直人首相の行動にあるように思われる。首相はこの日午前、懸命な復旧作業が続く「フクシマ」の現場にヘリで視察に入っているのだ

 時事通信の「首相動静」による、菅直人首相の当日朝の行動は以下の通り。

 「午前7時11分、福島県大熊町の東京電力福島第一原子力発電所着。同19分、重要免震棟へ。同23分、東京電力副社長の武藤栄原子力立地本部長による説明。池田元久経済産業副大臣同席。午前7時47分、武藤本部長による説明終了。同49分、重要免震棟を出て、同8時4分、陸自ヘリで福島第一原発」

 この菅首相の12日の現地入りはやがて、「現場の作業を妨害した政治的なパフォーマンス」と国会で追求されることになるが、実はこの時点ですでに、ネットのブログなどで「おかげでベントの開始が遅れた」との指摘が出ていたのである。

 官邸はこうした批判を免れようとして、「ベント開始時間」を「午後2時30分」にずらし、

「首相の視察は朝の早いうちでしたから、午後のベント開始とは無関係です」と言い逃れる、逃げ道を作ったのではないか?

 書き換えられた官邸の公開記録「福島第一・第二原子力発電所事故について」は毎日更新されている。この「書き換えられたPDFファイル」は、共同通信のスクープが出たあと数日間はアクセス可能だったが、今は接続しても「ページがみつかりません」の表示が出るだけだ。

続き第14章 ミステリー」は、7/29(水)22:00に投稿予定です。

 

世界が見た福島原発災害─海外メディアが報じる真実

 


最新の画像もっと見る