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【東京ブラックアウト】第1章 避難計画の罠 ※15回目の紹介

2015-03-05 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第1章 避難計画の罠プロローグ」含むを複数回に分け紹介します。15回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「プロローグ」⇒「第1章 避難計画の罠」の紹介

前回の話:【東京ブラックアウト】第1章 避難計画の罠 ※14回目の紹介

 あのときに東京に雨が降っていたならば、東京も飯舘村と同じように帰還困難区域となり、住民が退避せざるを得なくなっていたはずだ。なんという幸運だろうか・・・。

 「PPAなんていったって、日本国中がPPAとなる可能性だってありますよね。朝鮮半島やロシア、アラスカ、アメリカ西海岸、そして東海岸だって、安全とは言い切れない」

  と、文科省から出向している技術系の課長補佐が続けた。技術系官僚にありがちな落としどころを見ない直線的な議論だ。自分の発言が科学的に正しければ溜飲が下がるタイプ。役人としては使えない。

「フクシマの事故で放出された放射性物質は、事故直後の4月の土壌検査のサンプルで、アメリカのシアトルやボストンにも降り注いだと見られているんですよ」

 そう、文科省から出向している課長補佐は、これみよがしに続ける。

「PPAは概ね50キロと大きく目立つように書いて、その下に、嘘にならんように、参考値と、米粒くらい小っちゃく注記しとけ」

 と、守下副室長は吐き捨てるようにいう。

「50キロで収まる保障はないんじゃないですか?フクシマの沖合160キロ先でデッキに出ていた米空母の乗組員は、一ヶ月分の上限とされている線量を、1時間で浴びたんですよ」

 文科省出身の課長補佐は噛みつく。まるでわかっていない奴だ。こんな技官は出世できない。

「だから、『参考値』なんだろ。放射性プルームは風向きによって日本国中どこでも襲います、世界中に届きます、ってんじゃ、いたずらに日本国民のみならず、全世界の人々を不安に陥れるだけだ」

「でも、現実はそうじゃないですか」

「バカヤロー!それをどううまく見せるかが、俺達の仕事じゃないかっ」

 議論を経産省出身の守下副室長がリードする。今回は警察庁出身の黒城室長は黙っていた。

「参考値」とはよく考えたものだ。あくまで参考なのだから、嘘ではない。誤解を招きやすい表現かもしれないが、それは誤解したほうにも責任がある。

 それに、原子力災害対策担当室の室長と副室長がつねに角を突き合わせていたのでは、室長としての鼎の軽重を問われることになりかねない。本当に譲れないところ以外は、鷹揚に構えるのも組織の幹部として必要なことと、組織管理が要諦の警察庁では、あるべき組織文化として受け継がれている。

 経産省出身の守下副室長がここまで頑張るというのには、彼には彼の置かれた立場の事情というものがあるのだろう。それは、電力業界の利益に逆らうと自らの立身出世に響く、ということなのかもしれないが、立身出世の欲望は仕事へのモチベーションと表裏でもある。それはそれで問い詰めないことが大人のマナーだろう。

「次に、避難方法ですが、どうでしょう」と、環境省出身の課長補佐が切り出した。この人間はいつも自分の意見をいわない。司会進行役に徹する腹積もりのようだ。

「自家用車での避難をどうしますかね、みんな自家用車で逃げると思うのですが」

 警察庁出身の係長が恐る恐る尋ねた。交通は警察の所掌である以上、物をいわないわけにはいかない。

※続き第1章 避難計画の罠プロローグ含む)は、3/6(金)22:00に投稿予定です。

 

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


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