*『原子力ムラの陰謀』著者:今西憲之
「第2章 動燃裏工作部隊「K機関」を暴く」を複数回に分け紹介します。15回目の紹介
原子力ムラの暗部を刻銘に記録に遺し、その男は逝った-
1995年12月8日、「夢の原子炉」と言われた
高速増殖炉「もんじゅ」でナトリウム漏れ事故が発生。
事故をめぐる”隠蔽”が次々と発覚する中、
一人の「国策会社」幹部が突如、命を落とした。
死の謎を解く鍵は、遺された膨大な資料のみ。
そこには原子力ムラが行ってきた”裏工作”の歴史が、
あまりにも生々しく記録されていた。
(P3「まえがき」から)
「『もんじゅ事故』で謎の死を遂げた西村成生さんが残した内部資料があるらしい」
2012年冬、はじめにその話を聞いた時は、ここまで深くその資料と付き合うことになるとは想像もしていなかった。
「西村ファイル」と名づけた資料の山を読み進めるうち、取材班は何度も我が目を疑った。国の特殊法人であるはずの動力炉・核燃料開発事業団(動燃=当時) が地域住民や職員の思想・行動を徹底的に調べ上げ、「洗脳」「工作」といった言葉が頻繁に飛び交う。そして、あまりに不自然な西村氏の死-。「原子力ム ラ」の異常な体質が、次々と浮かび上がってきたのである。
----------------
**『原子力ムラの陰謀』著書 「第2章 動燃裏工作部隊「K機関」を暴く」の紹介
一方、JAEA本体の施設、人形峠環境技術センターは鉄の柵で入り口が閉ざされており、詰め所から警備員が目を光らせていた。ウラン濃縮の試験プラントなどがあるはずだが、外観すら見ることができない。「人形原産」や「アトムサイエンス館」の牧歌的な雰囲気と違い、こちらは「原子力施設」の緊張感が漂っていた。
人里離れた山奥で、肩を寄せ合うように同じ敷地に建てられたJAEAと「人形原産」の建物。動燃と地元との「一心同体」の関係が、このロケーションからもはっきりとわかる。
さらに取材を進めていくと、「人形原産」は1978年に地元・上斎原村が出資して設立された第三セクターで、歴代社長には上斎原村長(現在は鏡野町長)が、役員には地元自治会の区長ら有力者が就いていることがわかった。「人形原産」の元役員が語る。
「地元の雇用を生み出すための会社で、東海村に同じような会社ができたときに、こちらでも作ったと聞いた。社員は100人ほどで、給料は役場の職員と同じくらい。役員報酬は月20万~30万円だけど、昔はもっと高かったから『ワシにもさせえ、ワシにもさせえ』と、みんなが役員になりたがった。だから、続けて何十年も(役員)をしたのはおらんですよ」
X氏も認めたように、まさに「村営企業」である。
原子力施設の地元には、国の「電源三法交付金」が支払われる。
電源三法交付金は74年に制定された電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法の三つの法律に基づいて地元自治体に交付されるもの。要は、安全へのリスクがある原子力施設を受け入れる代わりに、地元にお金を落とそうという制度である。その原資は、我々の電力料金に上乗せすることで捻出されている。
その額は莫大なもので、「もんじゅ」や敦賀原発など14基の原発が集中する福井県には、現在も毎年200億円を超える交付金が支払われている。
※続き「第2章 動燃裏工作部隊「K機関」を暴く 」は、1/27(火)22:00に投稿予定です。