原発問題

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プルトニウム輸送船「あかつき丸」の日米密約 ※2回目の紹介

2014-09-08 19:00:00 | 【原子力ムラの陰謀】

*『原子力ムラの陰謀』著者:今西憲之
「第5章 プルトニウム輸送船「あかつき丸」の日米密約」を数回に分け紹介します。2回目の紹介

原子力ムラの暗部を刻銘に記録に遺し、その男は逝った-

1995年12月8日、「夢の原子炉」と言われた

高速増殖炉「もんじゅ」でナトリウム漏れ事故が発生。

事故をめぐる”隠蔽”が次々と発覚する中、

一人の「国策会社」幹部が突如、命を落とした。

死の謎を解く鍵は、遺された膨大な資料のみ。

そこには原子力ムラが行ってきた”裏工作”の歴史が、

あまりにも生々しく記録されていた。

(P3「まえがき」から)

「『もんじゅ事故』で謎の死を遂げた西村成生さんが残した内部資料があるらしい」

 2012年冬、はじめにその話を聞いた時は、ここまで深くその資料と付き合うことになるとは想像もしていなかった。

 「西村ファイル」と名づけた資料の山を読み進めるうち、取材班は何度も我が目を疑った。国の特殊法人であるはずの動力炉・核燃料開発事業団(動燃=当時)が地域住民や職員の思想・行動を徹底的に調べ上げ、「洗脳」「工作」といった言葉が頻繁に飛び交う。そして、あまりに不自然な西村氏の死-。「原子力ムラ」の異常な体質が、次々と浮かび上がってきたのである。

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**『原子力ムラの陰謀』著書 「第5章 プルトニウム輸送船「あかつき丸」の日米密約」 の紹介 

前回の話プルトニウム輸送船「あかつき丸」の日米密約 ※1回目の紹介

 「秘密主義」が呼んだ国際社会からの疑念

 「あかつき丸」は、高速増殖原子炉「もんじゅ」の燃料として使用する予定のプルトニウム約1トンを、フランスから日本まで運んだ。輸送の実施主体は、「もんじゅ」の運転を担う動燃である。

 92年11月8日(日本時間)にフランス北部のシェルブール港を出港した「あかつき丸」は、アフリカ最南西端の喜望峰を回り、オーストラリアの南を通過、太平洋を北上して日本を目指すというルートをとった。通過国の反対で一度も港に寄港できず、約2ヶ月間のノンストップの長旅だった。

 「あかつき丸」が運んだプルトニウムは、そもそも日本の原発などで発生した使用済み核燃料から取り出したものだ。

 自前の再処理工場を完成させていない日本は、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する再処理作業をフランスやイギリスに委託していた。それまで1トンものプルトニウムの長距離海上輸送は、世界でも例がなかった。


 ところが、この輸送は日本国内だけでなく、世界中で大きな波紋を呼ぶことになった。

 ウランと違って自然界に存在しないプルトニウムは非常に人体への危険性が高く、とりわけ慎重な取り扱いが要求される。もし、輸送中に沈没などの事故が起きれば、周辺の海域に深刻な環境汚染を引き起こすことは必至だ。

 このため、領海内が「あかつき丸」の航路になることが予想される南太平洋や中南米の国々から一斉に反発の声が上がった。フランス出港前の92年10月には、ウルグアイ、アルゼンチン、チリの3国が自国の領海通過を認めないと表明。ブラジルも通過反対の声明を日本政府に通告した。カリブ海の島国で作るカリブ共同体・共同市場も懸念を表明した。

 騒ぎはアジアにも波及する。11月には、フィリピンの海軍提督が「あかつき丸がフィリピン領海に入るようなことがあれば哨戒艇によって追い返す」と表明。別の海軍大佐も「主権を行使する」と語るなど、強い拒絶反応が報道された

 各国のこうした疑念は、決して過剰反応とはいえない。これより前の84年には、原発の燃料である「六フッ化ウラン」を積んだフランスの貨物船「モン・ルイ号」がドーバー海峡で西ドイツ(当時)のカーフェリーと激突し、沈没する事故が実際に発生していたのである。


 問題は安全面だけではなかった。プルトニウムは原爆の材料にも転用できるため、日本が1トンものプルトニウムを入手することに対し、日本の核武装を疑う声もあがった。

 国内外の疑心暗鬼を深める1つの要因となったのが、「隠密輸送」とも批判された日本側の徹底した秘密主義的な対応だ。

「あかつき丸についての情報は、プルトニウムの扱いなどと並び、社内でももっともランクが高い極秘扱いだった」(元動燃幹部)

 輸送の主体となった動燃と科学技術庁は、テロリストによる「核ジャックからの防護」などを名目に、航路や航海の日程、到着港など一切の情報と秘匿。当初は「あかつき丸」という船名すら、公表しなかったのである。92年8月、フランスに向けて横浜港を出港する際には、船名をシートで覆い隠すほどの徹底ぶりであった。

※続き「プルトニウム輸送船「あかつき丸」の日米密約 」は、9/9 19:00 紹介予定です。

原子力ムラの陰謀: 機密ファイルが暴く闇


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