原発問題

原発事故によるさまざまな問題、ニュース

第10章 政治家と官僚のエクソダス ※1回目の紹介

2015-06-01 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第10章 政治家と官僚のエクソダスを複数回に分け紹介します。1回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

----------------

**『東京ブラックアウト』著書 「第10章 政治家と官僚のエクソダス」の紹介

第10章 政治家と官僚のエクソダス

 週刊現代(2014年10月11日号・143ページ)

「わき道をゆく 魚住昭の誌上デモ」

 日本人の心のありようは最近ガラリと変わった。その契機になったのは3・11だろう。私はあの日から約1ヶ月、終日テレビにかじりつき、各紙の原発報道を隈なく読んだ。それと、某ルートから刻々と入ってくる政府部内の情報を突き合わせた。

 最悪のシナリオは、東日本の壊滅だった。政府内の一部ではその場合、福岡に臨時政府を置く案も極秘に検討されたらしい。

*****

(35)

 事故から1週間後、自衛隊が中心となって、警察、消防、ゼネコン、そして米軍の力も借りて、6号機と7号機の格納容器やコンクリート建屋の基礎、それから崩壊したプールに、スラリーを流し込み、ようやく新崎原発からの放射性物質の放出が落ち着いた。電源も復活し、1号機から5号機の使用済み核燃料プールの冷却にも成功した。

 しかし残されたのは、新崎平野から関東平野に至るまでの放射能に汚染された国土の帯であった。格納容器の爆発とともに飛び散った使用済み核燃料のデブリを伴う瓦礫などは、粉塵になって、黒い雪とともに広範囲の国土にばらまかれたのである。

 フクシマの事故後に帰還困難区域に指定された場所は年間積算線量が50ミリシーベルトを超え、5年経過しても20ミリシーベルトを下回らないおそれのある地域であった。今回、黒い雪が降った関東全域が、この帰還困難区域に該当することになった・・・正に、日本列島は東西に分断されてしまったのである。


 関東平野では、電力不足を口実として、輪番で計画停電も実施されていた。しかし原発の電気が止まる一方で、東西連係線の増強は間に合っていない。

 期待されたメガソーラー発電も、送電線の容量不足を理由に、経産省が再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度による認定を凍結していた。それとともに買取価格も引き下げたため、普及に急ブレーキがかかっていた。

 たとえば九州では、太陽光発電と風力発電による固定価格買い取り制度に基づく接続の申し入れを合計すると、出力は1260万キロワットに膨らんでいた。これは単純にいって原発12基分であり、九州管内の夏のピーク時の電力需要の約8割にも当たる量だったが、経産省の急な政策変更により、その発電プロジェクトの多くは頓挫してしまっていた。

 本当は、原発の再稼働に費やすためのコストを送電網の増強や大型蓄電池の整備、それから揚水発電所の建設に振り向ければ、原発はいらないはずだ。

 そこまでの設備投資が間に合わないにせよ、古い火力発電所を稼働させたり、大工場の自家発電所から電気を購入したり、大口の需要家との需給調整契約による供給停止措置を発動したりすれば、電力は十分足りるのである。

 あるいは、日中、太陽光発電で得たエネルギーを使って水を水素と酸素に分解、こうして作った水素を燃料電池用に使い、夜間の電力やエネルギー源にしてもよいはずだ。

 しかしそれでは、原発即ゼロ論が全国で勢いづきかねない。レントの巨大な、すなわち権力者の取り分が多い原発を守る・・・日村と小島が申し合わせたとおりである。

 いったん家族を母国に避難させた各国大使館は、そのまま家族を日本に戻すことなく、続々と大使館の大阪移転を発表した。外資系大手企業も、その拠点を大阪に移転していった。

 さらに日本企業も、各社が続々と関西に移転を決定した。もともと関西が出自の会社はもちろんのこと、東京が出自の会社も関西移転を決定していく。個別の各社の決定は株主と経営陣の判断に基づく。資本主義社会における会社の目的は利潤の獲得にある。国に義理立てする理由はない。

※続き第10章 政治家と官僚のエクソダス」は、6/222:00に投稿予定です

 

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)

 


最新の画像もっと見る