たらいまわし本のTB企画

たらいまわし本のTB企画
通称「たら本」。

主催者がテーマを提示し、そのテーマに沿った記事を自分のブログで発表して、主催者の記事にトラックバックをする、というのがその趣向。

世間がせまく、こんな企画があるとは知らなかったのだけれど、kazuouさんのブログでその一端を知り、楽しそうだなあと思っていた。
で、今回、kazuouさんが主催者でもあり、初参加することに。

今回のテーマは、「夢見る機械」。
不思議な「道具」や「機械」をあつかった作品を挙げてほしいとのこと。
kazuouさんの紹介した作品群の密度は、圧巻!のひとこと。

このテーマならいろんな作品が思い浮かぶぞと思ったのだけれど、じっさい挙げようとすると、なかなか思い浮かばない。
「道具」に着目して本を読んだことがないのだなあと、自身の読書のクセを知ることができた。
それでも、本棚から本棚にとびうつったりしながら、なんとか思いついたのは以下。

「漂流物」(デイヴィッド・ウィーズナー BL出版 2007)

これは絵本。
デイヴィッド・ウィーズナーは、その超絶技巧により、リアリティに富んだ幻想的な物語を展開する名手。

少年が海岸で拾ったカメラ。
現像してみると、不思議な海中のようすが。
さらに、写真を手にした女の子の写真があり、その写真をのぞきこむと…。

小道具にカメラを用いた作品は、それ自体ひとつのテーマになるほど存在するだろう。
これは、その最新の成果の一冊。

「メカフィリア」(押井守 大日本絵画 2004)

副題は「押井守・映像機械論」。
画は竹内敦志。

いきなりマニアックで恐縮ですが…。
著者の押井さんは、おもにアニメで活躍されている映画監督。
本書は、押井監督が自作に登場させたメカニックについて記したもの。

アニメでメカといえば、ロボットか兵器のこと。
本書でふれられているメカも、この二つに尽きている。

映画に登場するメカは、まず第一に、作品の世界観を体現したものでないといけない。
さらに、登場場面に応じたデザインであることが必要。
くわえて、監督の思い入れや美意識に合致している必要もある。

押井監督自身は絵を描かない。
なので、デザイナーに発注をだすのだけれど、これが往々にしてうまくいかない。
どういう意図をもってして、そのメカがデザインされなければならないか、監督は縷々語るのだけれど、理論武装をすればするほど、好みとの両立がむつかしくなってくる。
「夢見る機械」というより、監督が「夢見た機械」。
そのあたりの悶絶ぶりが、なんとも面白い。

押井監督のファンでなければ読めないような本ではあるけれど、映像作品におけるメカニックの考察は、じつに含蓄に富む。
あと、文章にでてきた兵器などを、注釈で写真をつけて解説している点、編集の労力も大変なものだったのではないだろうか。

 

「踊る黄金像」(ドナルド・E・ウェストレイク 早川書房 1994)

訳は木村仁良。
ミステリアスプレス文庫の一冊。

kazuouさんの挙げられた本に、「十二の椅子」という本があった。
十二の椅子のどれかかにある、資産家の老婦人がかくしたダイヤモンドをめぐる物語だそう。
(じつは手元にあるのだけれど、読んでいなくて、読まなくちゃと思った)。

「踊る黄金像」も同趣向の話。
南米の某国から盗まれた黄金像。
複製品が15体もあるそれを、小悪党どもが奪いあう。

ウェストレイクのストーリー・テリングが冴え渡った、ユーモア・ミステリの逸品。
でも、いま検索してみたら、どうも品切れのよう。
こんなに面白いのになあ。

「ミエナイ彼女ト、ミエナイ僕。」(アンドリュー・クレメンツ 求龍堂 2005)

訳は坂本貢一。

これはヤングアダルト小説。
主人公の〈僕〉、15歳の少年ボビーは、ある日突然、透明人間になってしまう。
着膨れていった図書館で出会ったのは、目の見えない女の子アリーシャ。
ボビーはアリーシャの協力を得て、もとの姿にもどろうと奮闘する。

アンドリュー・クレメンツは、話を進める手続きがとてもていねい。
透明人間モノとして、たいへん楽しめる。

また、この作品は電気毛布が重要な役割をはたす、電気毛布小説でもある。
それでラインナップに加えてみた。

さて。
じつをいうと、読み終わった本はたいてい手放してしまう。
なので、あんな作品もあったなあと思いついても、モノがないので、本当にその本だったか確定できない。
上記の本は、みな確定できたものだけれど、できなかった本として、あと二つ挙げておきたい。

「小惑星帯(アステロイド)遊侠伝」(横田順彌 徳間書店 1990)
任侠モノとスペース・オペラを合体させた、キテレツな作品。
「光線ドス」というネーミングが、あまりにも素晴らしい。

「タイムマシンのつくり方」(広瀬正 集英社 1982)
ショートショート集。
この本に、「もの」という作品が所収されているはず。
小道具としてではなく、まさに、その「もの」についての作品。
テーマに沿った本を、うんうん考えていたら思いつき、これはなかなかぴったりの作品だぞ、と思った次第。

あと、kazuouさんからお話をいただき、次回、主催者をやることになりました。
どんなテーマにしようかなー。

 

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
ご参加ありがとうございます (kazuou)
2007-11-15 06:58:08
ご参加いただきありがとうございます。主催も引き受けていただいて、感謝です!

面白い本が並びましたね。「漂流物」は、そのものずばり「夢見る機械」だと思います。写真の中に写真がある…という入れ子の構造がすばらしく魅力的でした。

「踊る黄金像」も傑作ですね。これを読んだとき、「十二の椅子」を思い浮かべました。どうも僕はこういう「宝探し」系に弱いです。

「もの」!思い付かなかったです。これは、いいですね。そういえばブラッドベリにも「もののかたち」という面白い作品がありました。

それでは次回のテーマ、楽しみにしています。
 
 
 
まだ考えてます (タナカ)
2007-11-16 00:04:06
kazuouさん、主催者お疲れ様です。

テーマにそった本を考えるのって楽しいですね。
ずいぶん考えたすえ、こんなラインナップになりました。

入れ子になっている絵本だと、「ズーム」(イシュトバン・バンニャイ ブッキング 2005)なんてのもありましたね。
でも、「漂流物」のほうが、シチュエーションがはっきりしているし、なによりカメラがでてきますから、今回のテーマにあってますね。

ウェストレイク作品には、ミステリアスプレス文庫で出会ったんですよ。
だから、「踊る黄金像」には思い入れがあります。
これと、「我輩はカモである」と「天から降ってきた泥棒」を読んで、ついていきます!と思いました(そのわりには未読の本もけっこうありますが)。
読み終わったあと、巻頭の人物紹介を読むと、また面白いんですよね。

「踊る黄金像」を読んで思い出したのは久生十蘭の「魔都」でした。
都会を右往左往する感じが似てる気がしたんです。

「タイムマシンのつくり方」は手放しちゃってたんで、古本屋をめぐったんですがダメでした。
kazuouさんがご存知だったみたいで嬉しいです。

で、いまだに、あれ入れればよかったかなあなんて思ってるわけですが、いま、「パイド・パイパー」(ネビル・シュート 創元推理社 2002)を思い出しました。
この小説の小道具は「笛」ですね。
最近、本屋にいったら、「文庫スター誕生!」なる企画でこの作品が取り上げられていました。
すごく面白いので読まれるといいです。
(子どもが活躍しないところが、外国小説らしい気がしました)

フレドリック・ブラウンの印刷機の話は、手元に本がなかったのであきらめました。
スティーブンソンの「箱ちがい」も思いついたんですが、内容をすっかり忘れていたんで、これも却下。

時代劇なんかでも、さがせば、このテーマの作品がいろいろみつかりそうです。

いや、もう、きりがないのでこのへんで。



 
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