ドライブ

「ドライブ」(ジェイムズ・サリス 早川書房 2006)。

訳は鈴木恵。

これはクライム・ノヴェル。
主人公はドライバーとだけ記される男。
フラッシュバックを多用した断章形式の構成。

冒頭、3人の死体のある部屋でドライバーは呆然としている。
以後、ドライバーの生涯と現在進行の話とが入り乱れながら語られていく。

不幸な生い立ちをもつドライバーは16歳の誕生日をまえに、里親の家を出て、ロサンジェルスに。
運転の腕を買われ、映画のスタントドライバーの仕事にありつく。
仕事は順調だったが、ふとしたことから強盗犯が逃走するさいのドライバーをすることになり、そちらでも仕事をかさねる。

断章形式は、ステインベックの「キャナリー・ロウ」(福武書店 1989)を読んでから、とても好きになった。
また、簡潔で、臨場感があり、ときおり箴言風の一文がはさまれる文体も好み。
セリフも気が利いているし、なおかつ本が薄いのもいい。

これはいいぞとと読んでいたら、中盤にさしかかるころ、冒頭のシーンにもどってしまった。
冒頭にもどるのは、ラスト直前だろうとひとり決めしていたのでとまどう。

またすこし進むと、いままで三人称ドライバー視点だったのが、多視点に変わる。
後半、はめられたドライバーは、窮地から逃れるために黒幕に肉薄していくのだけれど、これがまた大いにとまどう。
ちょっと、やることが派手すぎやしないか。
で、とまどったまま読了。

というわけで、この本は、個人的には前半傑作小説になってしまった。
あんまりこういう展開だろうと決めつけずに、素直に読んだらもっと面白く読めたかも。
そう思うと残念でならない。

せめて、ドライバー視点のままで話を進めてくれたら、最後まで緊張感がたもてたのではないかなあ。
構成と、省略の妙はとても楽しめたのだけれど。

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