先生と老犬とぼく

「先生と老犬とぼく」(ルイス・サッカー 文研出版 2008)

訳は、はらるい。
絵は、むかいながまさ。

ルイス・サッカーの本はほとんど読んでいる。
ほとんど読んだのは、要するに面白いからだ。
いままで読んだものはヤングアダルト向きが多かったけれど、今回は対象年齢がぐっと下がって、小学生の中級から。
対象年齢が変わっても、その面白さは変わらない。

訳者あとがきによれば、この本は「マーヴィン・レッドポスト」シリーズの4作目を訳出したものだとのこと。

さて、ストーリー。
主人公は3年生のマーヴィン・レッドポスト。
1週間の休みをとる担任のノース先生から、休みのあいだうちの犬の世話をしてくれないかという話をもちかけられる。

犬の名前はウォルドー。
もう17歳の老犬だから、ペットホテルにあずけたくない。
1日に3ドル、それを7日ぶん。
加えて、なにもなかったら4ドル足して、25ドル払う、と先生。

ノース先生はマーヴィンを自宅につれていき、ウォルドーと対面させ、ドッグフードやリードのある場所を教える。
「なにかききたいことある?」といわれたとき、マーヴィンはいう。
「先生はどうして、ぼくをえらんだんですか?」
「あなたには、分別と責任感があると思ったからよ」と、先生。

というわけで、マーヴィンは1週間ウォルドーの世話をすることに。
まず、読んでいて、先生が生徒にこんなことを頼むかなという疑問が浮かぶ。
しかも、お駄賃まであげて。
でも、ここでつまづくと先が読めないので、これがアメリカ流なんだろうと思うことにして先へ。

マーヴィンが先生の犬の世話をすることになったのは、クラスメイトの周知の事実。
おかげでマーヴィンはずいぶんからかわれる。
またノース先生の代わりにきた先生には、間が悪いことがかさなり、目をつけられてしまう。

さらには、ウォルドーをめぐってとんでもないことが起こる。
どうとんでもないかというと、「誰でもない男の裁判」(A・H・Z・カー 晶文社 2004)所収の、「黒い小猫」をほうふつとさせるといえば、わかるひとにはわかるだろう。

マーヴィンはたいへんな苦境に立たされるのだけれど、作者はそこを緻密に書いたりしない。
いままでどおり、さらっと書く。
このあたり、じつにうまい。

本書はイラストと文章のバランスもよかった。
電話をかけるマーヴィンの後ろ姿のイラストなど忘れがたいものだ。


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