ミクロの傑作圏

「ミクロの傑作圏」(浅倉久志/編訳 文源庫 2004)

よく素性がわからない本、というのがある。
「ミクロの傑作圏」もそんな本のひとつ。
手に入れたのは、いつだったかの東京国際ブックフェア。
カバーもなく、ただパラフィン紙だけがかけられて積み重ねられていた本は、「ここでしか手に入らない感」を強く発していた。
このとき買ったのは、もう一冊、「読書相談」(池内紀)がある。
こちらは書評集。

いま、ネットでしらべてみたら、版元の文源庫のサイトがヒットした。
サイトをみると、「ミクロの傑作圏」はオンデマンドブックとして手に入れることができるみたいだ。

ほかの情報もあわせてみると、文源庫では「遊歩人」という冊子をつくっていて、そこで連載していたのが「ミクロの傑作圏」らしい。
で、それを一冊にまとめてブックフェアで売っていたのを、たまたまこちらが買った、ということらしい。

手元の本には、前書きもあとがきもないから、どんな本なのかさっぱりわからない。
浅倉さんが外国人著者の名をかたって、ひとりで全部書いた本だといわれたら、きっと信じてしまったろうと思う。
でも、文源庫のサイトには、この本の紹介文があった。

「アメリカ文学の名翻訳者として、SFからミステリーまで小説 のあらゆるジャンルにわたり、膨大な量の作品を跳梁してきた 浅倉久志さんならではのベスト・セレクション」

やっと素性がわかった!

さて、この本の内容。
収められている短篇と、著者は以下。
イラストは古川タク。

「多幸小説のすすめ」 スティーヴン・リーコック
「おれと九百ドル」 オスカー・シスガル
「最後のユニコーン」 エドワード・D・ホック
「結婚について」 ジージ・ミケシュ
「取引は取引」 アラン・E・ナース
「アメリカほら話」 ルイス・アンターマイアー編
「グランド・セントラル駅にて」 スタンリー・クーパーマン
「人はパンのみにて」 ジョン・オハラ
「最後の饗宴」 D・B・ウィンダム・ルイス
「一夜の宿」 ウォルドー・フランク
「午後四時」 プライス・デイ
「ショー・ビジネス秘話」 アート・バックウォルド
「バス」 アーチボルド・マーシャル
「別れのセリフ」 ウィラード・マーシュ
「ベッドタイム・ストーリー」 リング・ラードナー
「ゲルダ」 イーヴリン・E・スミス
「晩餐会にて」 ガースン・ケニン
「なぜ砂漠には木がないか」 グレン・ラウンズ
「一家の柱」 マリオン・グロス
「サンタを待ちながら」 S・J・ペレルマン
「最高のもてなし」 レスリー・コンガー
「バランスシート」 モートン・ファインマン
「住むならクジラの腹のなか」 リチャード・ヒューズ
「教訓のない物語」 H・F・エリス

ぜんたいにナンセンス味のあるものが多い。
そのなかでもよりナンセンス味が強い、「最後のユニコーン」「アメリカほら話」「なぜ砂漠には木がないか」「住むならクジラの腹のなか」が好み。
ちなみに、「最後のユニコーン」はノアの箱舟もの。
「なぜ砂漠には木がないか」は木こりの巨人、ポール・バニヤンものだ。

ところで、この本、日本書籍総目録(現在入手可能な本を探すのに便利)ではみつからなかった。
国会図書館にもないし、東京都立図書館の横断検索でもみつからない。
せめて国会図書館には納本しておいたほうがいいんじゃないだろうか。


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