COCKPIT-19

へようこそ!

クリムトの「接吻」と、愛人エミーリエ

2010-05-20 05:57:16 | 日記・エッセイ・コラム

ヨーロッパを旅行したら、それぞれの国のヴァンムース(発泡酒)を観察し、飲んできて欲しい。 僕の手元にオーストリアの空き瓶が保存してある。 大事にとってあるのは、ラベルに帝政オーストリアの画家 グスタフ・クリムトの 「接吻」が使われているから。 金箔を大胆に使った彼の代表作は、1908年総合芸術展で大好評を博し、展示会終了と同時に、オーストリア政府に買い上げられている。

この絵のモデルは クリムト自身と愛人のエミーリエ・フレーゲ。 クリムトは生涯未婚だったものの、多くのモデルと愛人関係にあり、非摘出子の存在も多数判明している。 その中でも著名で特別な関係にあったのが エミーリエ。  彼女は当時の社会では新進的な、女性ブテイック経営者で、亡くなったクリムトの弟エルストンの、妻の妹。

彼女は夏になると必アッター湖畔で、クリムトと安らぎに満ちた日々を過ごし、自由な関係を保ちながらも、信頼しあっていたことをうかがわせる。 この時期に官能的な生涯の傑作 「接吻」は生み出されている。 クリムト最後の言葉は 「エミーリエを呼んでくれ」。 彼女はクリムトの死後、彼と交わしたすべての手紙を処分し、生涯独身を貫いた。

前世紀末のウイーンで、絵のタブーであった裸体、妊婦、性模写、エロテックでスキャンダラスなクリムトの画風は、当時ごうごうたる非難を浴びる。 そうした非難は、人の心の深層にくすぶる欲望と真実を、あっさりと描きぬいた彼の才能と勇気に、素直な理解を示すだけの、自由な社会的背景が無かったからに他ならない。

2006年、「クリムト」のタイトルで映画も作られている。 オーストリア、イギリス、フランス、ドイツの合作で、主役は、一時ミッシェル・ファイファーとの交際相手だった。、ジョン・マルコヴィッチ。 グスタフ・クリムト1918年没、56歳。 曰く、「私の自画像はない、絵の対象として自分自身に興味がない。 むしろ興味があるのは他人、特に女性」。 


コメントを投稿