COCKPIT-19

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九月は人生の秋、もう一つの「老々介護」

2018-09-03 21:51:43 | 日記・エッセイ・コラム
日増しに夏の終わりを感じるこの季節、必ず耳にする曲がアメリカ映画「旅愁」(September Affir 1952)の主題歌「セプテンバーソング」。 今年は早々と九月一日の朝、NHKのラジオ放送で流れていたこの曲を、シナトラのヴァージョンで聞いた。 歌詞の内容は「九月は人生の秋、無駄にする時間は無くなり、残り少ない時を、あなたと共に過ごそう」。 日の短くなるこの時期と、老いゆく心情が重なり合って胸にしみるスタンダード・ナンバー。 ところで「もう一つの老々看護」とは猛暑の続く中、生死の間をさまよう老犬を、飼い主の老人が介護に取り組んだ十日間の現実

2匹の飼い犬のうち、同じ雌犬の「モモ」より2歳年上の「さくら」14歳が、急にふらついて歩けなくなり、飲まず食わずで寝たきりの状態となった。 これまで病気らしい病気をしたことがなく前日まで元気で食欲もあったので、たぶん熱中症だろうと涼しいところに移して経過観察していたが症状は変わらない。 次第に不安が強まり、定期健診や予防注射で10年来お世話になっている「かかりつけ医」に診てもらった。 血液検査は待ってる間に結果が出て、血球検査8項目、生化学検査15項目はいずれも正常値内、そして頂いた病名はたぶん、高齢犬に多く発症する「前庭疾患」とのこと。

この病気は、耳の奥にあり姿勢や体のバランスを保つ平衡感覚をつかさどる「前庭神経」に障害が起き、頭や体の位置をコントロールできなくなる。 さくらに起きた主な症状として、眼球が左右に揺れる「眼振」、首が片方に曲がる「斜頸」、まっすぐ歩けない、食欲低下・嘔吐など。 治療法は栄養補給のための「点滴」にステロイドなど4本の注射液を混入するが、犬の場合100㏄の点滴を僅か数分で終える。 理由は皮膚と筋肉との間の空間に薬液を注入し、徐々に体内へ浸透させるから。 さくらはモモより憶病で注射の際大騒ぎするのだが、今回まったく反応しないのが心配。

病名の前に「たぶん」が付いたのは、この症状が脳疾患に起因する可能性も考えられるからだが、そうした重病の場合は年齢も考慮して楽に死なせてやろうと決めていたので、迷うことはなかった。 治療にあたり入院・在宅いずれかの選択で僕が後者を希望したのは、さくらを狭いケージの中に置き去りにするより、家族と一緒に過ごすほうが回復にプラスになるはずだと考えたから。 日常は屋外の犬小屋で寝るさくらを、僕の枕元の廊下に寝かせると、安心したのかひたすら眠リ続ける。 僕が辛かったのは薬品の臭い、バスタオルの上に漏らす点滴による僅かな尿がその原因、防臭スプレーで何とか凌いだ。

一週間ほどして回復の兆しは、眼振がおさまり、水を飲むことから始まった。 次によろよろしながら外に出てオシッコをするようになると、ペースト状にしたささみの缶詰や、さつま芋のステイックなどを食べるようになる。 2~3日後、アップグレードしたドッグフードに、ビーフと野菜の缶詰をまぶして食べれるようになると、排便ができるようになり、毎日の通院が終った。 ドクターによると、この先80%程度の回復で日常復帰し、寿命を全うできるとのこと。 こうしてひとまず「ミニ老々介護」を終えたが、モモも含めて僕より先に逝ってくれるよう願わずにはいられない。    

 



  



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