『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation  『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  40

2020-02-28 06:01:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ぺリオス領主の厚意をオロンテスが知る、アエネアスとイリオネスに無断で礼の心を込めたスペッシャルパンを焼きあげる、焼きあげたパンをかごに入れて会場に持ち込む、担当の係に手渡す。
 700個余りに及ぶパンの提供に係が感動する、それを知ったぺリオス領主が腰を折ってオロンテスに礼を述べる。
 宴が始めるときとなる。参加者一同が定まった場につく、ぺリオス領主の開会の辞を待つ、ぺリオスが台上に立つ、会場に拍手が沸く、台上のぺリオスがメッセージを述べる、乾杯を告げる、一同が杯の酒を飲みほす、宴がスタートする。
 代わってアエネアスが台上に立つ、返礼のメッセージを述べる、乾杯を告げる、杯の酒を飲みほす、感動の嵐が巻き起こる。
 一同が飲み、食べて宴が盛りあがる、場に空洞丸太を打つ鼓音がひびきわたる、それを合図に焚火のシマの真ん中の場に有志が出てくる、列を作る、列が動き出す、声をあげる、手で調子をとって舞う、彼らが舞う『壮行の舞』である。
 場に興奮を呼び起こす、心あるものが列中にとびいる、輪が大きくなる、マックス状態に到る、『ワオッ!』『ワオッ!』雄叫びをあげて舞の終止符を打つ。
 その舞を受けて、船団の者らの有志が出航の壮途に就く団舞を披露する、互いの団舞の交歓に会場が沸きあがる。
 次なる余興が始まる、友好惜別のレスリングの取っ組み合いを始める、闘技を終えて酒杯を酌み交わす、互いが別れがたさの情を確かめる、杯を交わして肩を抱き合う、別れを惜しみ、壮途の無事を祈る。
 この情景を眺める、ぺリオス、アエネアス、イリオネスが心を込めて杯を交わす。
 やがて宵を迎える、終宴のときがおとずれる、彼らは、やり場のない別れの情のやり場に困る風景を各所に繰りひろげる、暮れていく夜が彼らを引き離した。

 明けるアエネアス暦8月11日、アエネアスとイリオネスは、今日もぺリオス領主の館において、航海について詳しく知る者を招いて説明を聞く、彼ら二人は、知る限りを二人に説明する、イタリアの地の南端シチリア島に到るまで詳しく説明に及ぶ、ヘスペリアへはもっと北へだと説明する、アエネアスら二人が航海の状況を把握する、しかしながら、目指す海洋の気象についての確たる情報のないのが心もとない、それはそうであろうとうなずく。
 航海に詳しい者らの説明が終わり彼らがさる。
 ぺリオスがアエネアスに声をかける。
 『アエネアス統領、希望に満ちる話をするのにだな、夜に話し合うことが好きではない。実はだな、今回の航海に就いてだが、アポロンの祭祀の折に神託をもらってきている。明日、昼前にそれを話したい。今夜はここにとまれ。別れる前の一夜をジックリ過ごしたい。アンドロマケも話したいことがあるであろう。軍団長も泊まってもらえばいい』
 アエネアスがイリオネスに声をかける。
 『イリオネス、どうだ、お前の都合は?』
 『夜も更けました。言葉に甘えます。明朝は統領に先立って、領主宅を辞します』
 『おう、解った』
 アエネアスがぺリオスに答える。
 『ぺリオス領主、聞かれた通りだ。私と軍団長、世話になる』
 『おう、解った。それがいい、それがいい!』
 ぺリオスが快諾の言葉を返す。
 アンドロマケがぺリオスに声をかける。
 『あなた!アエネアス統領殿にあれを渡されたら!』
 『おう、そうだな!』とぺリオスが答えて、自分の執務室へと向かう。
 皮でしつらえた二つの袋を両手に抱えて戻ってきた。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation  『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  39

2020-02-27 06:24:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアス暦8月10日、イピロス王暦8月7日の朝が明ける。
 浜に立つアエネアス、朝行事を終えたイリオネス、パリヌルスらがアエネアスを囲む、朝の挨拶を交わす。
 アエネアスが一同に声をかける。
 『おう、おはよう、いい朝だ。こうして浜で顔をそろえるのは久しぶりだな。チョット打ち合わせておきたい件がある』
 アエネアスが一同と目を合わせる。
 『君らが承知しているように13日から15日までの航海条件のよき日にこのプトロトウムから出航するわけだ。今日より3日をかけて出航準備を整える。パリヌルス、オキテス、アレテスは船の整備、オロンテスは食糧に関する諸準備、軍団長は財務の件、そして、俺に同道して航海に関する諸情報の収集と航海計画の策定をする。それらを終えて12日の午後には出航の詳細の打ち合わせを行う。以上だ!遺漏なきよう諸準備を整えてくれ。なお、朝食を終えたら一同を集めてくれ。出航の件を一同に伝える』
 『解りました』
 アエネアスの言葉が続く。
 『尚、今日、明日は軍団長とともに航海に関する情報収集をする。また、本日午後半ばから、ぺリオス領主の厚意による別れと壮行の宴に全員で参加する。以上だ』
 イリオネスが一同に声をかけて打ち合わせの場を解く。
 久しぶりに船団の一同が顔をそろえての朝食が終わる、朝食を終えた一同が集結する。
 統領からプトロトウムからの出航が伝えられる、一同からの歓声である、続いて、軍団長がぺリオス領主の厚意による別れと壮行の宴の件が伝えられる、一同が拍手と歓声でこれに答える、軍団長が出航に関する指示を伝える。
 『一同に指示する!出航に備えて、軍船の整備を入念にやること、クレタからこの地に到る海と比べて、海のスケールが格段に違う!そう言うことだ』
 イリオネスの前面にいる者が返事する。
 『はい!解りました。肝に命じてやります』
 統領からの出航指令、軍団長からの作業指示を終えて場が解かれる。
 アエネアスとイリオネスがぺリオスの館に向けて浜をあとにする、パリヌルスら三人は、軍船の整備要領を打ち合わせ、整備作業にとりかかる、オロンテスは、顔を見せた業者らと諸事を打ち合わせる。
 『オロンテス殿、注文の一切を承知しました。12日朝より船積みにかかります。決済の件についてはぺリオス領主殿より指示を受けています。要望がありましたら何なりと言ってください』
 『ほう、それはそれは、そのあたりのことはこちらでも、ぺリオス領主殿に確かめる。指示した物品の納入をよろしく頼む』
 『承知しました。任せておいてください』
 業者らが去っていく。
 時が過ぎていく、頃合いが午後半ばに到る。
 停留の浜から宴開催の浜が見える、二重の円を描いて焚火のシマが造られている、真ん中に余興の場が設けられているしつらえである、なにがしかの意図が感じられる。
 開催の頃合いが迫る、停留の浜に船団の者らを招待する使者が顔を見せる、一同が案内されて宴の場におもむく、定められた焚火のシマに案内され場に着いた。
 ぺリオス領主がアンドロマケを同伴して会場に姿を見せる、アエネアスにイリオネスが同道している。
 宴の場の一同が拍手で彼らを迎える、各シマの焚火が盛んに炎をあげた。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  38

2020-02-26 05:49:54 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ぺリオス領主が現場監督らを召集する、パリヌルスら隊長連も呼ぶ。
 『おう、一同!ごくろう。聞いてくれ!今日だが終業時を早めて業務を終了とする、一同に伝える用件がある。全員、幕舎の広場に集合してくれ。そういうことだ、いいな』と言って一同と目を合わせる。
 『了解しました』
 一同が場を解く、午後の作業に就く。
 時が午後半ばに到る、ぺリオス領主からの連絡が来る、今日の作業を終える。
 新設された幕舎前の広場に作業者ら全員が集まる、ぺリオス領主が台上に立つ、彼ら一同に声をかける。
 『おう、諸君!ごくろう!一同に伝える』と言って、集合した彼らと目を合わせる。
 『アエネアス統領殿の船団の一同、三隊が本日をもって工事に関しての作業支援が終了する。彼ら一同は、当月の12日頃に、このプトロトウムの港から西に向けて航海の途に就く。彼らがこの城壁構築建設工事に携わって四か月、この業務に力を尽くしてくれた。それによって、遅れていた工事が遅れを挽回し、順調に進行している。アエネアス船団の一同に心から礼を言う。ありがとう!諸君らが無事なる航海をもって、目的地に着かれることを強く強く祈願する』
 集まっている一同から絶大の拍手が沸きあがる。
 ぺリオス領主が言葉を続ける。
 『そういうことで、明日、午後半ばより一行の壮行と別れを惜しむ宴を催す!全員、会場の浜に集合してくれ!』
 一同からの大歓声が場の空間を震わせる。
 『一同、解ったな!以上である!』
 歓声と拍手で場がドットと沸きあがる。
 ぺリオス領主に代わってアエネアス統領が台上に立つ、一同を見渡す、口を開く。
 『我々が一同とともに、この工事、作業に携わって、築いた土塁の城壁、物見やぐら、そして、滔滔と水の流れる外掘等、この大事業のことは決して忘れはしない!一同、ありがとう!』
 拍手が沸き、大歓声があがる。
 集まっている者らに惜別の情の怒涛が押し寄せる、作業員らが手を握る、肩を抱く、別れの心情を交わす。
 工事に、作業に力を尽くした船団の者らが工事、作業の場を去る時がおとずれる、彼らが隊列を整える、幕舎の広場を去っていく、広場の一同が彼らを見送る、隊列が遠ざかっていった。
 アエネアス船団の彼ら一同が去った、ぺリオスが監督らを集める、待たせている城下の業者らを呼ぶ、明日の午後に催す壮行と別れの宴の件を打ち合わせる、業者らが快諾する。
 『心得ました。準備遺漏なく整えます』
 『おう、よろしく頼む』
 明日催行する宴の打ち合わせが終わる。
 ぺリオス配下の作業員ら一同が作業現場を引きあげる、彼らも隊列を整えて帰途に就いた。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  37

2020-02-25 06:03:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イピロス王暦の8月6日の朝が明ける。
 ぺリオスが工事現場の幕舎に泊まり込んでむかえた朝である、泊まり込んで3日になる、構築している土塁の外掘りには山から水をひいている、その水を浴びてサッパリする。
 明日は工事の休日としている、今日の工事を終えたら館に帰る段取りにしている。
 工事の現場は、館のある場所に比べてかなりの高所である、幕舎で過ごす夜は快適といえないまでもそれなりに過ごしやすい。
 作業者らと共に過ごす、親しみを感じる、彼は彼なりに一同と同感を共にする、そこに強まる信頼と連帯感の絆に喜びを感じている。
 アエネアスとイリオネスが城壁構築建設工事の現場に顔を見せる。
 『おう、ぺリオス領主殿、おはよう、いい朝だ!』
 『おう、アエネアス統領殿、おはよう』
 『おう、イリオネス軍団長、おはよう』
 『おはようございます、いい朝です』
 『アエネアス統領にイリオネス軍団長、今日が限りの日だな。アエネアス統領が率いる船団の者らの応援の手貸しをもらって、懸念していた工事の進捗が予定より大いに捗った厚く厚く礼を言う!ありがとう!』
 ぺリオスが手をさしのべる、アエネアスがその手を固く握る、イリオネスがアエネアスと替わって手を握る。
 『どうですかな、朝の工事現場の幕舎の飯場は!朝食を一緒にやらないか?』
 『おう!いいね、ぺリオス領主。一緒する』
 三人は、作業者らと共に朝食のパンを飲み物で胃のおさめる。
 自分らと同じ朝食のパンをほおばっている統領と軍団長にパリヌルスらが気づく、二人に朝の挨拶をするパリヌルスら三人、アエネアスが三人に告げる。
 『今日だが、昼食の休憩時に一同に出航の件を伝える。口外禁止を解く!もう話してもいい。詳しくは一同が浜に戻った時に全員に説明する。今日、作業を終えたら君らと一緒に浜に帰る。以上だ』
 『了解しました。私らからは、出航のことを一同には伝えません』
 『おう、解った!』
 彼ら五人の意思伝達が終わる。
 昼食の休憩時となる、統領と軍団長が一同とともに昼食の時を過ごす、アエネアスが一同と顔を合わせる。
 『おう、一同ごくろう。今、君らに伝える大切な用件を持ってきている。聞いてくれ!詳しいことは浜に戻って、改めて伝える。今日を含めて7日以内に次の航海に向けてこの地を出航する!軍団長、アトを説明してくれ』
 『今、我々が携わっている城壁構築建設工事に対する参加は、本日をもって終了する。ぺリオス領主殿とは話はついている。今日は君らと一緒に浜に帰る!以上だ』
 これを聞いた一同が歓声をあげた。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  36

2020-02-24 06:03:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスは、持参したパンをアエネアスとイリオネスに手渡す。
 『おう、オロンテス、ありがとう。焼きあげたばかりのパンではないか、これはいい!小腹に空腹を感じていたところだ』
 三人がパンをほおばる、アエネアスが二人と目線を交わして話し始める。
 『おう、今日、ぺリオス領主に出航の件を伝えた。彼は彼なりに俺らに期待していたのだな。それについて話し合った。いずれにしても彼との別れは、断腸の感傷だ。会って別れる、惜別の想いだ』
 『それはそうでしょう。統領と領主は特別な間柄です』
 『軍団長、お前、察しがいいな。ところでだ、この地から西への航海に就いての詳しい状況、それから情報の打ち合わせをぺリオス領主と話し合うことを約束した。それで充分な情報を得られると考えている』
 『解りました。その件については統領の担当です。しっかり頼みます』と言い終えて、イリオネスは、オロンテスのほうへ目を向ける。
 『おう、オロンテス、食糧関係の事情をチエックして、どのように整えるか、計画案をたてたか?』
 『その件については終わっています。軍団長に詳細を説明して対処したいと考えています。それには城下の業者との打ち合わせが必要です。よろしく願います』
 『軍団長、オロンテスと対応を検討して対処だな!』
 『おう、オロンテス了解した。その機会を早速、準備する。いいな』
 『おう、軍団長、それからだが、財務のチエックを終えたかな?』
 『それはまだです。明日、やろうと考えています』
 『クレタ島を出航して、ここまで来た。結構、出費の機会があったからな。情報を収集して、これからの出費を考えねばならない。それについては判明次第、計画を検討しよう』
 『おう、オロンテス、出航の件の口外禁止を解く!一同に伝えてくれていい』
 『解りました』
 三人は打ち合わせを終える。
 オロンテスは、持ち場に戻る、出航の旨を一同に伝える、『おう!』『おう!』と返事が返る、返事のニューアンスに懸念を感じる、航海の旅先におけるパン焼き作業の対処を考えての懸念である。
 オロンテスは、事情を考えながらも出航の通達を終える。
 彼は、彼らが考える懸念を払拭する対処に努めることを話す、また、果すべき使命の大切さを説いて聞かせる、彼らが納得する、オロンテスは安堵する、人を率いていくむつかしさを知る。
 日にちが弦を放れた矢のごとくに過ぎていく。

 イピロス王暦の8月5日が明ける。ぺリオスが今日はを考える、毎月の月初の5日は、アポロン神殿の祭祀の日である、ぺリオスはこの祭祀の主祭の任を務めているのである。
 祭祀を執行するに当たって、王のイピロスが執政する月次の神託を受託し、イピロス王が理解しやすく解説して王に呈上する、その役務に努めているのである。
 祭主であるイピロス王の諸事を無事に済ませる。
 役務を終えたぺリオスは、アエネアスの航海の神託を受託する。彼はその神託を解く。
 神託は、イタリアという大陸の南端を大きく迂回して、へスペリアに到達するという長途の航海であり、無事無難を告げてはいない、航海途上の海難、人事の機微による航海の滞りの懸念のあることを告げている。
 ぺリオスはこのことをどのようにアエネアスに説明しようかと脳漿を搾って考えた。
 

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  35

2020-02-21 06:25:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ぺリオスがアエネアスの言葉を聞き受ける、『そうか!』とつぶやく、絶句する、会話が途切れる。
 ぺリオスが問いかける。
 『アエネアス統領、聞くがお前の暦は今日が何日かな?俺の暦では今日が8月1日だ』
 『俺の暦は、今日が8月4日だ』
 『心得た。お前の言い分では、俺の暦で8月11日に出航するということになる』
 『そうなるな。そのようなわけで建設工事に加わるのは、俺の暦で今日から数えて5日後、日付けで言えば8月8日までとしている』
 『解った。了解した。俺は、お前をこの地に引き止めたい。しかし、引きき止められない!会うは別れか、お前と俺が引き裂かれる、耐えられない思いだ。アエネアス統領、ありがとう!よくぞこの俺に手を貸してくれた。何と礼をすればいいのか?そのような日が来るとはだ。考えてもいなかったことだ』
 『ぺリオス領主、この4か月余りだが、お前と過ごした日々は、俺とお前との絆の日々であった。新しい人生の未来を腹に抱いているアンドロマケにも会えた。俺にとって感激の日々であった。ぺリオス、お前の想いのカタチでお前の国を建てろ!』
 『お前こそだ!建国の立志の想いを遂げてくれ』
 『では、そう言うことだ。あと10日余りで別れの日が来る。互いの立志、互いの前途に向けて歩み出そう』
 『おうっ!』
 二人は、手を握り合う、肩を抱き合う、互いの心を語り合う、ぺリオスにとってまさかの時であった。
 アエネアスとイリオネスは、作業現場において一同とともに昼食をすませ、イリオネスを伴って工事現場をあとにする。
 イリオネスが声をかけてくる。
 『あ~っ!統領、サッパリされていますね』
 『おいっ!イリオネス、そんな風に見えるか?ぺリオスと出航について話し合った。出航の件についての口外禁止を解いてくれていいぞ。今後の打ち合わせを浜に帰ってやる。と言ってもお前とオロンテスの三人だけだが』
 『そうですね。オロンテスも重要な役務の責任を担っているわけですから』
 『そうだな。打ち合わせは遺漏のないようにやろう』
 『はい、心します』
 二人は停留の浜に着く、オロンテスが二人を迎える。
 イリオネスがオロンテスに声をかける。
 『おう、オロンテス、お前、今、手がすいているのか?』
 『はい、手はすいています。工事現場に作業員幕舎が出来てから、焼きあげるパンの量が少なくなって、楽させてもらっています』
 『そうか、これから統領と三人で打ち合わせをやる。例の木陰に行こうか』
 イリオネスはアエネアスに声をかけて木陰におちつく、オロンテスは、焼きあがったパンを持ってくる。
 三人は、木陰の草地に腰を下ろした。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation  第2章  プトロトウムにて  34

2020-02-20 06:13:21 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ぺリオスは、監督らからの工事現場の作業者用幕舎の建設計画の報告を受けて、即刻、幕舎の建設にとりかかる。
 港湾の作業者らの一同が幕舎の建設に当たる、建設は人海作業で建築が遂行されていく、幕舎は日にちをかけることなく完成する。
 ぺリオスは、配下の者らの宿舎のまかない方と業者と計らって食事供給の手配を完了する、順調に事を進めて実施に及ぶ。
 城壁構築建設工事の作業者らの陣容が600人超に増員が成る、幕舎ができて建設工事が進展し始める、工事進捗のスピードが加速する、作業が進展して工事が進んだ。
 ぺリオスは、イピロス王の暦によって日々を送っている、アエネアスの暦とは3日の差がある、アエネアス暦の8月1日が7月27日である。
 アエネアス暦8月4日の朝が明ける、作業員らの休日あけである。
 作業者らがぺリオスの館の門前の広場に集結して、作業現場に出発していく、アエネアスも同道している。
 工事現場の幕舎においてアエネアスはぺリオスと話し合う。
 『おう、ぺリオス領主、工事のほうだが、はかどっているな、重畳このうえなしだな!この分だと工事が完了するのは、いつ頃と考えている?』
 『おう、そうだな、想定していた完了日より1か月は早く終わる。イピロス王へ報告したら大変に喜ばれた。お前には大感謝だ。ありがとう』
 『それはよかったな!ところで話だが、そろそろ出航しようと考えている。このプトロトウムから、西への航海について、できるだけ詳しく知りたい』
 『なに出航!?そうか、お前にはお前の都合があるわな。ここに引き止めたいが、そのようなわけにはいかないのか』
 『お前、そのようなことを考えていたのか』
 『そうだ!出来ることなら、そのようにしたいと考えている』
 『俺がそれに応じると考えていたのか。それはできない相談だ』
 『俺の想いでは、お前が起つように考えている。アエネアス、考え直せ』
 『それはだめだ。俺は、380人の命と希望とその運命を預かっている。ぺリオス、お前の要望には応じられない!そういうことだ』
 『解った。応じられないお前の事情が解る。望みを達成しろ。引き止めたい!それをあきらめる。何かがあったらここに戻って来い!この俺がいる』
 『了解した』
 『航海についての詳細は、俺が語って聞かせる。また、航海事情に詳しい者がいるから、その者にも説明させる。あれこれ他人に聞く必要はない。俺に任せろ。出航日を決めたら言ってくれ』
 『おう、それはもう決めている俺の暦でいうと、8月13日から15日までの空模様のよき日に出航しようと考えている』
 『えらい急ではないか』と言って、ぺリオスは空を仰いだ。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  33

2020-02-19 05:56:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアス、イリオネス、オロンテスの三人が話し合いを終える、オロンテスが場を去って持ち場へと行く、アエネアスがイリオネスに声をかける。
 『おう、イリオネス、俺らも楽しんだが、ぺリオス方の参加者らも大層喜んでいたな。競技に全員が参加したことを心底からよろこんでいた。全員がこぞって参加する、競技を楽しむ、いいことだ!そして、あの表彰のしかたには感動した。あの演出でぺリオスと作業員らとの絆が太くなる。お前の采配は大したもんだ。いや~、たいへんによかった、よかった!』
 二人は浜に立って、夏の陽射しにかすんで見える遠望のケルキラ島、波おだやかな眼前の風景を眺めた。
 夕枯れの頃合いとなる、今日の作業を終えて一同が帰ってくる、停留の浜が彼らでにぎあう。
 イリオネスがパリヌルスら三人を呼ぶ。
 『おう、今日もごくろうであった。統領から指示がでた。それを話しておく!』
 一同と目を合わせる。
 『統領が今日、城壁構築建設工事の進行状態を見ての決断だ!アエネアス暦8月10日頃、遅くとも8月15日には。このプトロトウムを出航して航海に就く。その段取りで事を進める!以上だ。いいな!』
 『解りました。特別の指示はまだ出ていませんね、了解しました』
 『それはまだだ。指示があれば、その都度伝える!それから、このことを隊の者らに伝えることは禁止だ。月が変わって日をえらんで、統領の指示をもって伝える』
 『了解しました』
 『では打ち合わせを終わる。解散!』
 イリオネスは鋭いまなざしを三人に向ける、伝達を終えたイリオネスは、アエネアスの許におもむく。
 『統領、例の件、三人に伝えました。指示あるまで口外禁止を言いつけてあります』
 『おう、そうか、この件についての事の運びを考えた。ぺリオスにうちあけるのは、月が変わって8月の5日ごろにと段取りしている。表だっての行動は、それまで慎む。軍団長もそのように行動してくれ。オロンテスにもその旨を伝えておいてくれ。行動を開始したら、一気呵成に事を遂行する。それまでは他に気づかれることのないようにすることを徹底する』
 『了解しました』
 『ぺリオスには、その頃になって俺が話をする、航海情報の収集は、俺が責任を持ってこれに当たる』
 『解りました』
 アエネアスは、決意と行動のありかたをイリオネスに伝えた。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  32

2020-02-18 06:58:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 会議を終えたぺリオスがアエネアスに声をかける。
 『アエネアス統領、今、聞いたとおりだ。この季節である、屋根だけの現場幕舎を建てる。100人くらいを収容できる幕舎3棟を建てる。急いで建てることにした』
 『ほう、それはいい!工事が進行すれば、ますます現場が遠のく、その対処はいい、作業に携わっている者らの食事の手間が大変だろうが、そうあってしかるべきだ』
 『それは充分に考えている。俺の配下の宿舎のまかない方と業者と話し合って最善の手を打つ。どうするかについては、明日あたり返事がくる』
 『そうか、1日3食、600人に及ぶ作業者らの食事の采配はたいへんである。そのたいへんをやらねばならんのだ』
 『よくわかっている!そのために俺がいる。ハッハッハ!』
 ぺリオスが余裕を口にする。
 ぺリオスとアエネアス、イリオネスの三人が工事現場をあとにする。
 夏の強い陽射しを浴びながら、土塁城壁の上を工事の仕上がりを点検しながら歩を運んで館に帰り着く。
 『ぺリオス領主、俺とイリオネスは、これにて失礼する。アンドロマケによろしくな』
 
 二人は、船団の者らがぺリオス方の工事に出向いている、オロンテスらだけの閑散とした停留の浜に帰り着く。
 アエネアスがオロンテスを呼ぶ、木陰の少ない浜である、三人がくつろげる木陰を見つける、草地に腰を下ろす。
 アエネアスが二人の顔を見る、目を合わせる、話しかける。
 『おう、軍団長、今日、久びさに城壁構築建設工事のはかどりをこの目で見た。随分と進んでいたな。俺らも、もうそろそろ、次の航海を考える時がきている』
 『そうですね。港湾の作業工事も終えて、作業者らが城壁構築建設工事のほうに移っています。工事の進みは、工事全体の3分の2が出来あがってるはずです』
 『俺の考えを二人に言っておく。工事に携わっている三人には、軍団長、お前から伝えてくれ。俺がいいと言うまでは口外禁止だ!解ったな』
 『解りました。統領の考えを言ってください。出航に関する諸状況の考察に着手します』
 『おう、よう言ってくれた。俺の決断したところを伝えておく。早ければ俺の暦で8月10日おそくても8月15日にはプトロトウムを出航する。それまでには諸状況の調査、航海に関する考察を終える。オロンテスは食糧計画をよくよく念査、計画をする。軍団長と相談して対処してくれ。また、軍団長、財務のほうをチエックして先行きを考えること。航海にに関しての準備をもれなくやってくれ。ぺリオスのほうへは出航の7日前には伝達する』
 『解りました』
 イリオネスとオロンテスが出航に関するアエネアスの決断を受け取った。
 

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of a nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  31

2020-02-17 06:07:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 作業者らが広場に集結を終えている、出発の指示が飛ぶ、隊列を整える、工事現場に向けて歩み始める、ぺリオスが歩調を確かめる。
 アエネアスとぺリオス、完成している土塁の城壁の完成度を確かめながら歩を進めている、アエネアスがぺリオスに話しかける。
 『おう、ぺリオス領主。完成している土塁の城壁なかなかの仕上がりではないか!外堀もよくできている。随所に建てている物見やぐらもいい出来だ』
 『おう、アエネアス統領、手を貸してくれて、ありがとう。その甲斐があって順調な仕上がりで工事を進めている。工事の完成具合も我ながら満足できる出来あがりである。俺としてうれしい限りだ』
 『それは、重畳!現在、手掛けている現場はまだ先か?』
 『おう、もう少し先だ』
 『それにしても広場を出て時間がかかりすぎているように感じられるが』
 『おう、それについては対処を考えている。監督らと話し合っている。今日結論を出すことになっている。結論ができ次第、すぐに手を打つことにしている』
 『おう、そうか、それがいい!』
 彼ら一行が1刻(約2時間)足らず歩いて工事現場に到着する、監督らが手配をする、作業が始まる、港湾作業に従事していた作業員らが城壁構築建設工事に今日から加わるのである、対処、段取りする、現場は大わらわ状態である。
 作業にとりかかる、時を経ずして昼食時間となる。
 監督連が言葉を交わす、『今日は、出発が遅かったからしょうがない』一同が持参したパンをほおばって昼食を済ませる。
 ぺリオスが監督らに現場事情を質す、次いで午後の予定を打ち合わせる。
 『おう、了解した、いいだろう。この状況だ!何としても改善しなければならん!午後の作業に一同を就かせたら集まってくれ、懸案の結論を出す』
 『はい、解りました』
 『港湾の作業方の監督らも同席させてくれ』
 『おう、アエネアス統領、聞いての通りだ。午後の打ち合わせ会議に同席してくれ』
 『おう、心得た!』

 午後になって打ち合わせ会議が開かれる。
 監督らが集合する、程よい木陰をえらんで会議の場とする、ぺリオスが一同に声をかける、話し合いが始まる。
 『おう、一同!案がまとまったか?』
 『はい!まとまっています。朝、集合して、工事現場に到着するのに1刻もの時間がかかります、これでは仕事になりません。私らの意向は、即刻、作業員幕舎を建てて工事を進めるです。そのように結論しています』
 『そうか、案件の決定だな。作業員幕舎の建築計画を決める!建築工事にとりかかったら、早期完成を目指す!以上だ。段取りを決めたら報告をしてくれ』
 打ち合わせ会議は時間をかけることなく終わった。