『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

[Aeneis's story] Ⅳ 『建国の地へ』 ご挨拶を申し上げます。

2019-12-29 06:47:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
          今年もこのブロづにアクセスいただき誠にありがとうございました。
                   謹んで御礼を申しあげます。
                今日を含めて3日で新しい年が明けます。
               皆さまにとって素晴らしい年でありますよう
                  力いっぱい!お祈りいたします。

                   山田秀雄  山田萌愛 

[Aeneis's story] Ⅳ 『建国の地へ』 To the founding land of nation 第1章 イピロスへ 35

2019-12-28 05:14:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアス暦4月6日の朝が明ける。
 緊張気配のイリオネスの朝は早い、星を頭の上にいただいて朝行事をすます、今日、明日の為すべきことを考える。
 浜に立って、船長役務の者らの起きだしてくるのを待つ、まず、パリヌルスが顔を見せる、オキテスが来る、続いて、オロンテス、アレテスが朝行事をすませて来る、四人がイリオネスを囲む。
 『軍団長!おはようございます!いい朝です』と四人が口をそろえての朝の挨拶である。それに答えるイリオネス。
 『おう、おはよう!いい朝だ。昨日は一日留守にした。パリヌルスにオロンテス、昨日の浜事情はどうであった?』
 オロンテスが答える。『日々の食糧であるパンのの状態から報告します。ただいま手持ちのパンが今日の朝食と昼食でなくなります。今日一日と明日の午前中はパン焼きに専念して業務を行います』
 『パリヌルスのほうはどのような予定でいる?』
 『私が担当しての業務は、午前中は、浜頭と船の構造についての話し合いです。それと船団の手すきの者を集めて武闘の訓練を行います』
 『解った。打ち合わせは一件である!この浜における停留は明日の午前中までだ。いいな。段取りは、明日、昼を早めに済ませて、プトロトウムに向けて出航する!いいな、その予定で業務を遂行してくれ。出航の準備を万全に整えること、航路については、オキテス、アレテスの知るところだ。明日の航海では、オキテスの二番船が先導役を務める。オキテス、それで戦列を整えるのだ、いいな。以上だ』
 『了解しました。今日、明日、その予定にもとずいて動きます』
 船長役務担当の四人が集まる、打ち合わせを行う。
 『俺は午前中、浜頭のほうへ出向くが早々に用件を済ませて戻る。明日、船をつけるプトロトウムの港、浜の状態はどんな具合だ?オキテス、話してくれ』
 オキテスがプトロトウムの港や浜の様子について語る。『そういうわけで、停留には、まあ~だが、いい条件といえるのではないか考えている』
 『解った。ところで例の二人の印象はどうであった?』
 『おう、その事か』と言ってオキテスは、ヘレノスとアンドロマケのプトロトウムにおける二人の印象について話す。
 イリオネスが四人の話の場に来る、パリヌルスに声をかける。
 『パリヌルス、お前、浜頭のところに行くと言っていたな。一緒に行こう。浜頭に事情を話しておきたい』
 二人は立ちあがる、連れ立って浜頭の許へと歩を運んで行く。
 『ケラニス浜頭、おはようございます』
 『お~お、おはよう!プトロトウムのほうはいかがでしたかな?』
 イリオネスは、プトロトウムでのヘレノスと故ヘクトルの妻女アンドロマケについての事情を話す、次いで、船団が明日の昼の頃合いにプトロトウムに向けて出航する件を伝える。
 そして、ケルキラ島のコリッシオイの浜に停留して、大変に世話になったことに丁寧に礼を述べる。
 浜頭も船の試し乗り、船の構造の件で大変に世話になったと礼を言う。
 『イリオネス軍団長殿、隣国のタラントウムに向かわれる時には、是非、この浜にたち寄っていただきたい、このコリッシオイは航路の道筋です。このままの別れで終わりたくはありませんな』
 『その折には、必ず浜頭の浜に寄らせていただきます。よろしく願います』
 二人は別れを惜しむ、固く手を握り合う。
 『おう、パリヌルス、俺はこれで船団の浜に戻るが、浜頭の聞かれたことに丁寧に対応してくれ』
 『解りました。昼には船団の浜に戻ります』
 『おうっ!』とパリヌルスの言葉を受けて、イリオネスが場を去っていく。
 残ったパリヌルスは、浜頭と膝をつき合わせて、船に関する質問に対して細やかに話す。
 浜頭も船に関して、なかなかに詳しい、話し終えて別れ際に浜頭がパリヌルスに話す。
 『パリヌルス殿、私は、小船の造船所を手掛けています。このたびは船の構造に関して詳しく理解しました。ありがとう!心から礼を言います。実を言いますと私の造船所を見てほしいのですが、この浜を離れた遠いところの浜にあります。描いていただいた舵構造の図面を大切にします。この恩は忘れません』
 二人は手を握り合う、別れを惜しんだ。

 ケルキラ島停留の最後の一日が終わり、夜を過ごす。
 出航の日の朝を迎える、時間経過が飛ぶ矢のごとく速い、船団の出航する頃合いとなる。
 浜頭らが手掛けて製造している干し魚を船団の者ら全員にと大量にくれる。
 船団の一同が船上から浜頭らに丁寧に低頭して礼をする。
 イリオネスが浜頭に停留の礼を述べて、オキテスが船長役をしている二番船に乗る、すかさずオキテスが出航の令を飛ばす、船団が停留して過ごした浜を離れいく。
 浜頭らが手を振って見送る。船団は浜に沿って、南東に向けて波を割った。

[Aeneis's story] Ⅳ 『建国の地へ』 To the founding land of nation 第1章 イピロスへ 34

2019-12-27 07:55:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 プトロトウムからの帰途の航海で彼らに幸いしたのは、空が晴れわたり、月を頭上にして、ソヨットした風の海を航海したことである。
 ケルキラ島の南端の岬のさきの海に到って、無事に北に進路を変じて進行方向右手にする沿岸との離岸距離を適当に保って航海をしたことである。
 彼らが波を割る海は、落ち着いている、進路を転じて、一刻余り(約2時間)を経た頃合いには、コリッシオイの浜にまじかい海に到達している、コリッシオイの浜では、かがり火が盛んに燃えている。
 船上の一行は、無事なる航海で帰り着いたことに安堵する、浜にいる者らも月の光に照らされた海に近づいてくる一艘の小船を目にしている。
 浜に集まる人員が増えていく、浜には浜頭ら一同、船団の者らがつめかけて、用向きの航海に出かけたタピタン一行の帰りをかがり火を盛大に燃やして待っている。
 かがり火の灯りで浜の状況が見える、待ってくれている彼らが見える、浜頭の姿も見える。
 小船が指呼の距離に近づく、タピタンは、小船の舳先を浜に寄せあげる、歩み寄る浜頭、タピタンが浜頭に声をかける。
 『浜頭、用向きを終えて、只今、無事に帰りました』
 『おう、無事に帰ってきた。ごくろうごくろう!小船であるがゆえに心配した、無事が何より何より!さあ~さ、休んでくれ』
 浜頭が続けて声をかける。
 『アエネアス統領の姿が見えないようだが?』
 イリオネスが浜頭に答える。
 『浜頭、タピタンの心配りで無事、用向きの航海を終えて帰りました。統領は、用向きこれありでプトロトウムのとどまっています。詳しいことは明日になって話します。真偽のほどは、風聞の通りです。トロイの今はなきプリアモス王の末の息子がプトロトウムの領主を務めています』
 『そうでしたか、あなた方にとって何よりでしたな。ごくろうでした。ゆっくり休んでください。私のほうもパリヌルス殿の配慮で船の試し乗りを終えました。ありがとう、礼を言います』
 彼らは話し終える、イリオネスら一行は、出迎えたパリヌルス、オロンテスと船団の一部の者らと共に場をあとにする。
 一同が会した浜のかがり火が消されていく、浜は闇の静寂となっていく、コリッシオイの浜の一日が終わる。
 浜の者ら、船団の者ら一同が明ける朝を待つ寝についた。

[Aeneis's story] Ⅳ 『建国の地へ』 To the founding land of nation 第1章 イピロスへ 33

2019-12-26 08:01:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
  アエネアスは、ヘレノスに声をかける。
 『ヘレノス、お前と俺、久々にこうして会えた。俺は船団を率いている。このあとの段取りを考えている。イリオネスを加えて三人だけで打ち合わせたい』
 『そうか、いいだろう。三人でベランダに出よう。そこで話す』
 アエネアスがイリオネスに声をかける、ヘレノスとともにベランダに出る、三人は声をひそめて話し合う。
 『我々は、船団を率いて海旅の途上にある。ケルキラ島の浜に長居はできない。また、これからの航海について考えなくてはならない』
 ヘレノスがアエネアスの目を見つめる。
 『そうか、アエネアス。船団の航海事情があることを察する。船団を俺の浜に着けろ!お前らの詳しい事情を聞きたい。お前の父上にも会いたい、ユールスの顔も見たい』
 『語りつくせない、二人だけの話もある』
 『お前は、ここに残り船団を呼べ!』
 『プトロトウムの浜に船団を停留させてもいいか?』
 『それはかまわん!俺の浜であり、俺の港だ』
 『それは、ありがたい願ってもないことだ』と言って、アエネアスは、イリオネスと話し合う。
 『イリオネス、聞いての通りだ。俺はここに残る。お前は、一行ととともに浜に戻り、浜頭に事情を話し、船団をこのプトロトウムの港に着けてくれ。頃合いも帰途に就くぎりぎりの頃合いになっている。即刻動いてくれ』
 『了解しました。即刻こちらを辞してオキテスらを連れて帰途に就きます。明後日の夕刻までには、プトロトウムに到着の予定で船団を率いて到着します』
 『よろしく頼む』
 三人が応接の間に戻る、イリオネスがオキテス、アレテス、タピタンに話しかける。
 『おう、タピタン。コリッシオイの浜に帰る。統領は、事情これありでここに残る。頃合いも頃合いだ、ここを辞する』
 三人が立ちあがる、イリオネスがヘレノスとアンドロマケに馳走になった礼を述べ応接の間を辞す、帰途に就く。
 一行はプトロトウムの上陸地点の浜を目指して歩を進める、往路に比べて帰路は時間をかけることなく上陸地点の浜に帰り着いた。
 浜に残っていた漕ぎかたらは、小船を浜に揚げて休んでいる、タピタンが一同に声をかける。
 『おう、帰ったぞ。即刻、帰途に就く出船の準備をしろっ!』
 『はいっ!』返事が返る、時間をかけることなく、帰り支度が整う。
 帰心矢の如しである、彼ら一行は、プトロトウムの浜を離れる、風が北から来ている、航走にいい条件に恵まれ、帰途の海浪を割る。
 星が天空にまたたく頃合いには、ケルキラ島の南端の岬近くの海、進路を北に取る地点に到達していた。

[Aeneis's story] Ⅳ 『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 32

2019-12-25 06:30:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 身づくろいを整えたヘレノスが応接の間に姿を見せる、間を見渡す。
 『待たせました。この地の領主を務める、ヘレノスです』と自己の紹介をする。
 座している一同が立ちあがる、面々に目線を運ぶヘレノス、イリオネスと目が合う、続いて、その隣にいるアエネアスと目が合う、二人が同時に声をあげる。
 『おう、アエネアス!』
 『おう、ヘレノス!』
 二人は歩み寄る、互いの肩に手をさしのべる、顔に穴があくのではと思われる強い目線で二人は見つめ合う。
 『達者でいたか?アエネアス!』
 『達者だったか?ヘレノス!』
 二人の口走る口上が同じである、二人は、しげしげと見つめ合う。
 応接のテーブルの上にはぶどう酒が準備されている。
 アエネアスがヘレノスに言葉をかける。
 『語る話が尽きないくらいに多い!』
 『おう!聞く聞く!話してくれ!』
 二人はようやくにして身を離す、アエネアスの隣にいるイリオネスと目を合わせる。
 『おう、イリオネス達者であったか!』
 『ヘレノス殿、こそ達者でいられましたか?案じておりました』
 『何とか生き延びたといったところだ』
 『見受けたところ、元気な様子、何よりです。感無量で言葉が詰まります』
 『お前も元気そうで何よりだ。うれしい限りだ!』
 『ありがとうございます』
 続けて、ヘレノスはオキテスとアレテスに声をかける。
 『二人とも達者だったか。何より何より!』と言って手をさしのべる、かわるがわる手を握り合う、目線を交わす、語らずとも互いの達者を確かめ合う。
 ヘレノスが端に立っているタピタンに目を停める、アエネアスが説明する、
 『ケルキラ島に着いて、当地のケラニスと言う浜頭が、このプトロトウムに来るのに案内人としてつけてくれた、タピタンという者です』
 『そうですか、ご苦労でした。私は、このプトロトウムを領地としているヘレノスです。見知りおきください』
 『これはこれは、私は、ケルキラ島、コリッシオイのケラニス浜頭のもとにいるタピタンといいます。よろしく願います』
 ヘレノスが一同に声をかける。
 『おう、一同、立ったままでの話し合いもなんだ。腰を下ろしてください』
 ヘレノスの声がけで、一同が腰を下ろす、テーブル上に置かれている大き目の杯に満たされているぶどう酒の杯を手に持つ、ヘレノスが口を開く。
 『皆さん、このようにして、ここで会えたことをうれしく思う。乾杯!』
 一同が杯を口に運ぶ、杯をあおぐ、注がれているいるぶどう酒を飲む、彼らの表情が和む。
 ヘレノスがアエネアスに声をかける。
 『おう、アエネアス、お前と俺だ。互いの敬称略でいいだろう。語り合いたい!父上は、達者かな?ユールスは大きくなったであろうな、顔を見たい』
 『二人ともケルキラに来ている。元気でいる』
 アンドロマケが口をはさむ。
 『クレウサは、どうしていますまか?』
 『クレウサは、トロイを去る時、思いがけない事故によって身まかりました』
 『まあ~!』と声をあげる。
 アンドロマケは、嗚咽をこらえることができず、涙を流し、両の手で顔を覆う。
 アエネアスは、話し合いながら考えている、ヘレノスと過ごすこのあとのことを考えていた。
 
 

[Aeneis's story] Ⅳ 『建国の地へ』 To the funding of a nation  第1章 イピロスへ 31

2019-12-24 05:57:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ケラニス浜頭、水夫頭らを乗せた試し乗りの船が浜を離れていく、湾口から外海へと出る、船の進む方向に対して左手方向からの風である。
 パリヌルスは、風の力を体で感じとる。
 浜岸を離れること12スタジオン余り(約2.5キロくらい)沖に出る。
 試し乗りにいい海域である、帆走にいい風が吹いている、航走に条件の良さを感じとる。
 パリヌルスが声をあげる。
 『進路を右へ!』
 『おうっ!了解!』
 操舵担当が答える、船が左舷を上にかしげて風が吹いて過ぎる方向へと波を割る。
 『全帆、帆張り!』
 帆張りが瞬時に完了する、風をはらむ。
 『櫂をあげ!』
 船は帆走する、船速があがる、快調に航走する。
 『操舵担当、ジグザグ航走に操舵せよ!』
 『了解!』
 船は、操舵効果よろしく、右に左にと波を割って走行する、浜頭が体感している、感じ入っている。
 しばらくして走行を通常走行にもどす、パリヌルスが浜頭に声をかける。
 『浜頭殿、舵の操作をしてみられますか?』
 『おう、それは願ってもないことだ。やるやる』
 浜頭が操舵担当に代わって操舵棒を握る、操舵棒を伝わってくる水の抵抗を感じとる、慎重に操舵棒を操作する、船が反応する、右へ左へと進む、水切り具合を感じとっている・水夫頭らもかわるがわる操舵棒を握って操舵感覚を感じ取る。
 『ホッホウ、なかなか具合がよろしい』
 彼らの試し操舵が終わる、操舵担当に操舵棒を返す。
 浜頭が一枚帆と四枚帆について感じた疑問をパリヌルスに問いかける、試乗感についても聞いてくる、簡明に答えるパリヌルス。
 『パリヌルス殿、ありがとう!波割り、落ち着きのある走行、感じ取りました。感謝感謝です。戻りましょうか、出来るだけ海岸に沿って航走してください。向かい風が弱まるはずです』
 浜頭らを乗せての試し乗りを無事に終了する。
 夕刻近くなって浜頭方から大量の魚が届けられる。
 『一同の皆さん夕食の折に食べてください。今日は我々の試し乗りに骨を折ってくれてありがとう。感謝しています。これをみんなでどうぞ』
 オロンテスが受け取る。
 『ありがとうございます。喜んで頂戴します』
 船団の一同は、うまい魚を浜焼きスタイルで夕食に食す、クレタ島を出航して久々に夕食を味わい和んだ。
 浜頭が船について聞きたいということでパリヌルスは、浜頭のところへ呼ばれて出向いた。

『ほう、誰かな?俺が驚く?』
 『身づくろいを整えて応接の間のほうに来てね!』
 ヘレノスは、身づくろいを整える、応接の間に姿を見せた。
 
 

[Aeneis's story ] Ⅳ 『建国の地へ』 To the funding of a nation イピロスへ 30

2019-12-23 06:11:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、長き海旅を経て、ケルキラ島に着く、当地の浜頭から島での風聞を耳にする。
 その真偽を確かめるためにギリシアとアルバニアにまたがっているプトロトウムなる村邑を訪ねて、アンドロマケと邂逅を果たす。
 彼は、供された一服の茶を口に含んでしみじみと運命の不思議を感じている。
 館の門前から多数の者らが交わす声が届く、アンドロマケが立ちあがる。
 『主人が帰ったようです。ちょっと失礼します』とことわりを言って、応接の間を出て門前へと向かう。
 アンドロマケが帰ってきた主人に声をかける。
 『今日の作業はどうでした? あなた、びっくりするわよ。別れて久しい人がたずねてきているわ』
 『ほう、誰だ?』
 『会えばわかるわ。身づくろいを整えて応接の間に来てね!』
 アンドロマケが主人ヘレノスをむかえ終えて応接の間に戻る。

 ケルキラ島、コリッシオイの浜ではケラニス浜頭の声がとんでいる、パリヌルスが答えている。
 パリヌルスは、浜頭が要請している船の試し乗りの要領について知恵を絞っている、考えがようやくにしてまとまる。
 効果的に操舵効果の現出にはこの手段しかないと決めて浜に立って海を眺める、風具合、風向、風力を推し測る、海上状況を確かめる。
 浜頭がパリヌルスに声をかけてくる。
 『パリヌルス殿、海、風、どんな具合ですかな?』
 パリヌルスは、改めて海上状況を確かめる、各所に白ウサギが跳び、波頭が風に飛んでいる、この状態なら大型の船でも操舵効果の現出が可能であると結論する。
 『風具合はよろしいですな。海上状況もこれならいけると考えられます』
 パリヌルスは、帆走状態での操舵効果の現出を考えて船の条件を整える。
 漕ぎかたの数を減らし60人として漕ぎかたを乗船させる、浜頭に声をかける。
 『浜頭殿、出走準備が整いました。この風、海上状況で試し乗り実行します。乗船してください』
 『おう!了解!』
 浜頭が水夫頭に声をかける、浜頭ら五人が乗船する。
 パリヌルスが船上の漕ぎかたらに声をかける。
 『おう、一同聞いてくれ。浜頭殿より、この船が装備している舵構造の操舵効果を体感、体験したいとの要請を受けて、これより試し乗りをやる。要領はその海域に到達して、帆走状態で体感してもらう!いいな!一同、よろしく頼む』
 パリヌルスは、鋭い目つきで漕ぎかたら一同と目を合わせる。
 『おうっ!』返事が返る。
 パリヌルスの声がとぶ。
 『出航!』
 櫂が海面を泡立てる、船は、波を割る航走条件のいい海域へと向かった。
 

[Aeneis's story ] Ⅳ 『建国の地へ』 To the funding to nation  第1章  イピロスへ  29

2019-12-20 07:54:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 二人は、見つめ合う、見つめ合ったまま凍りついている、声を出せないでいる。
 感情の極まるときがおとずれる、ためらっている問いかけの想いが堰をきる、アンドロマケがアエネアスに声をかける。
 『あなた、どうしてここへ?』
 アンドロマケがアエネアスに身を寄せてくる、手を伸べる、アエネアスの手に手をそえる、たずねる、目が潤む。
 アエネアスがこみあげてくる感情をかろうじて抑えている、抑えきれない、アンドロマケに声をかける。
 『俺がケルキラ島に着いたのは四日前だ。ケルキラ島の西岸、コリッシオイの浜に着き、その浜を仕切っている浜頭から、トロイの王妃なる者がこのプトロトウムにいるという風聞を耳にしているという。それではとということで急ぎここに来た』
 『そう、そういうことなの』
 アンドロマケがそのように言って空を見上げる、雲を通して薄い陽の光が見える、太陽の位置を見る、時を計る。
 『この頃合いだと、もうじきじきに夫が帰ってきます。館のほうへ行きましょう。一行の皆さんも一緒にどうぞ』とアエネアスに声をかける。
 アンドロマケは館に向けて歩みだす、促されるままに歩を運ぶアエネアスと一行。
 1スタジオンくらい歩いて館に着く、一行を招じ入れる、応接の間に通す。
 アンドロマケの挙措ふるまいに王妃としての風情が漂っている、なお、現在の生活の落ち着きを見せている。
 召使に言いつけて、一行の者らに茶を供する。
 アンドロマケが頭をかしげる、イリオネスに声をかける。
 『イリオネスじゃないの、元気だったの?』
 『はい、なんとか。アンドロマケ殿もつつがなく過ごしていられるかな?』
 『イリオネス、トロイがあのようになって、つつがなくはないでしょう。それなりの事情を経て、今日を生きています』
 『アエネアス、よく知っているあなたと私、呼び方に気を使わなくてごめんなさい。アエネアス殿と呼んでよろしいのかしら』
 『俺の方こそ呼び方に気をつけなければいけないかもな。人前は別としてお前と俺だ呼び捨てでいい。アンドロマケ。それでいい』
 『それでいいの、アエネアス。今、私が夫としている人もあなたが良く知っている人よ。もうそろそろ帰ってきます』
 『俺が知っている?誰だろう?』
 アンドロマケの言葉を聞いてアエネアスは、脳漿を搾って考えた。

[Aeneis's story] Ⅳ 『建国の地へ』 To the funding of a nation   第1章  イピロスへ  28

2019-12-19 06:26:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一行五人は湾状を描いている海岸に沿って踏みならされた砂地の道を黙々と歩んで行く、やがて、村中へ向かう三叉路に到る。
 タピタンは何も言わないで曲がり角を右へと曲がる、村中を目指す。
 小船を降りて、半刻余り歩いたであろうか、十字路にさしかかる、左へと曲がり村中の高所を目指して歩を進める、高台の開けたところに到る。
 一行五人は高台の見晴らしのいい箇所に立つ、高台へとたどってきた道を振りかえる、海が眼下に見える、タピタンが口を開く。
 『お~お、これは素晴らしい!いい眺めですな。統領、プトロトウムの港が眼下に見えます。私、土地の者にたずねてきます、ここで少々休んでいてください』
 『おうっ!』
 アエネアスら四人がタピタンの言葉に従って足を休める、オキテスがアエネアスに声をかける。
 『統領、この高台の地からの眺め、なかなかですな。このプトロトウムもいい湾、港を持っていますな。対岸にケルキラの島の海岸線がかすんで見えています』(対岸のケルキラ島の海岸線とプトロトウムの湾との離岸距離は15キロ余りである)
 間をおくことなくタピタンが戻ってくる。
 『この道をもう少し行くと石垣を巡らせたでっかい館があるそうです。そこがそうだとのことです。少々休まれましたかな。行きます』
 タピタンはなかなかの健脚のようである、一行が腰をあげる、歩き出す。
 一人の女性の姿を目にする、その女性は三人の召使の女性を従えて、大きめの石をくみあげて造った墓とおぼしき二つの塚の一つの塚の前にひざまづいている。
 アエネアスは、その風景を目にして立ち止まる、彼は目線をひざまづいている女性に注ぐ、女性がその塚の詣でを終えたらしい、立ちあがる、彼の瞼のうらに過ぎ去りし日の一人の女性のたたずまいが浮かぶ、思い出している。
 それは、今はなきヘクトルの妻女アンドロマケのたたずまいである、彼はその女性が彼ら一行が歩を進めている道に向けて歩んでいる、一行は、彼女が道にたどり着くのを立ち止まって待つ。
 アエネアスの目線は、彼女をシッカと見つめている、彼女が顔をあげる、漁師姿の一行に目を停める、二人の目線が合う、女性が足を止める。
 一瞬である、人生の三つの『さか』の一つ『まさか?』と思い、強い視線をアエネアスの顔に注ぐ、アエネアスが彼女が歩んでくる道の前面に立つ、二人は立ちすくむ。
 彼女に従っている召使たちが立ち止まる、二人の見つめ合う風情を見て凍りつく、これはただならない事態と感じとる。
 アエネアスにつきそっている四人もその場に凍りつく。
 二人が声をあげる、互いの名を叫ぶ。
 『おう、アンドロマケ!俺だ』
 『あ~!アエネアス!』
 二人は、二年の歳月を経てここに邂逅したのである。
 

[Aeneis's story] episode Ⅳ 『建国の地へ』 To the funding of a nation  第1章  イピロスへ  27

2019-12-17 10:15:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 プトロトウムは、ギリシアとアルバニアの国境にまたがる海辺の村邑である。
 ケルキラ島南端の対岸であるギリシアのイグニメツアから40キロ余り北西である。山地が海岸に迫った、細くて長い地勢の北の端である。この辺境の地の村邑としては大きい部類といえる。
 今は、アキレスの父ペレウスの縁戚につながるモロッシアという領主が統治している地の一部である。この地はトロイの王プリアモスの長子ヘクトルと一対一で干戈を交え、ヘクトルを倒したアキレスである。
 そのアキレスがトロイ城攻略で死に、アキレスの息子であるネオプトレモスがヘクトルの妻であるアンドロマケを妻として、トロイからこの地に帰り統治していたのであるが、そのネオプトレモスもギリシア方の領主の謀略によって謀殺されてしまう。
 この事態を見かねたそのときのイピロスの領主がアンドロマケに救いの手をさしのべて、プトロトウムの高台の地に住まわせたのである。
 そののち、アンドロマケの身にあれやこれやがあって生活がおちつき今日の日に到っている。

 コリッシオイの浜を陽の出の頃に出たアエネアスらが乗った船がケルキラ島の南端で進路を北に換えて、ギリシアの地とケルキラ島の間のでっかいでっかい内海と思われる海を泡立て航跡を引いて北へと進んでいく。
 船上で朝めしも昼めしも終える、船長役で案内人であるタピタンは、目を凝らしてギリシア本土の沿岸を眺める、振り返って、遠くにケルキラの街邑を見る海上地点を通過している。
 タピタンがイリオネスに声をかける。
 『軍団長殿ですな。もうじきじきに目的地に着きます』
 『おう、そうか。ご苦労であったな』
 『そこでですが、船を降りたら海岸を歩いて目的地に向かいます。いいですね。統領殿にもそのことを伝えておいてください』
 『解った』
 『船を降りたら小半刻も歩いたところから、村の中へ向かいます。道中、言葉を交わすことなく行きます。いいですね!』とタピタンが念を押してくる。
 『了解した』
 程なく小船は、家屋がパラパラと目につく浜に着く、ほど近くに灌木の林がある浜である。
 タピタンが漕ぎかたらに声をかける。
 『おい、お前ら解っているな!少々沖に出て、魚釣りをして俺らの帰りを待っていてくれ』
 『分かりました』
 イリオネスが空を仰ぐ、見えない太陽の位置を確かめる、南中の位置と確かめる、
 『統領、ほぼ予定の頃合いです』
 『おう、そうか。重畳!』
 案内役のタピタン、そして、アエネアスら一行が下船する、浜に立つ。
 案内役のタピタンに続いて、踏みならされた砂地の海岸沿いの道をプトロトウムの村邑を目指して歩を運んでいった。