『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1337

2018-07-31 05:44:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 客人らは、天と地を震わせるどよめくき、拍手と喊声による歓迎に感が極まる。
 客人らが声をあげる。
 『おう、これはこれは!』
 彼らは、声をあげ、両の手を差しあげ、大きく振ってこたえる。
 オキテスは一同を統領らが待つ建造の場の会所へと案内する。
 統領と軍団長が進み出て一行を迎える。二人は手をさしのべる、固く握り合う、握手を交わして歓迎する。
 オキテスがキドニス、スダヌスの浜頭、そして、ガリダ頭領の三氏から2頭の子羊が挙式の儀式用にもらい受けたことを伝える。
 統領ら二人は改めて、三氏に丁重に礼を述べる。
 客人らとの歓談が賑々しく展開する。アエネアスは感謝の意を込めて話す、客人らとの絆が紡がれていく、交誼の深まりが感じられる話が展開である。
 アエネアスは、民族としての事業が好調に展開していくのは、皆さんの力添えの賜物であるとの認識をを述べ深く感謝している旨を一同に伝える。
 アエネアスが事業展開に関する四位一体思考について話した。
 客人らはアエネアスの心情に心をうたれ、これからもアエネアスらの事業展開に惜しむことなく力を貸すことを約した。
 ニューキドニアの地における造船の場として、船舶の建造開始式の開式の時となる。
 オキテスが会所へ一同を迎えに姿を見せる、会場へ案内する、席へいざなう。
 オキテスが建造開始式の開式を宣す。キドニス浜頭ら三氏から寄贈された子羊2頭のゼウス神及びポセイドン神への奉呈の儀で式が始まる。
 建造の浜は、広大にクレタ海に向けて開き臨んでいる。
 アエネアスとイリオネス、二人の装いは、軍装であり腰には帯剣している。
 彼らは、海に向かって供えられた2頭の子羊を前にして、左足を海に浸して波打ち際に立つ、気を引き締める。
 アエネアスがゼウス神への奉呈の口上を声高らかに叫ぶ、イリオネスがポセイドン神への口上を述べる。
 二人は同時に、帯剣の柄に手を添える、柄を握る、剣を鞘からおもむろに引き抜く、場は静まっている、静寂の時が流れる、会同している全員の目線が二人に集中する。
 二人は、剣を子羊の首にあてて身構える、引き上げられていく剣。
 『イエッ!』とアエネアス、『ヤッ!』とイリオネス。
 気合が飛ぶ!振る降ろされる剣の一閃、子羊の頭部が体から離れて飛ぶ、吹きあがる血しぶき、子羊の頭部が海中に没していく。
 いけにえ奉呈の儀が終わる。
 場に拍手が沸きあがる、盛大な拍手である。
 アエネアスとイリオネスがクレタ海に向けてうやうやしく低頭する。
 身を反転させる、建造の場に向かって、祈願の低頭をする。
 場に沸きあがる喊声、場を震わせるどよめき、会同している一同が興奮に身を震わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1336

2018-07-30 07:57:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスが一同と目を合わせる。
 『おう、一同、朝食も終わったな!早朝会議、これにて終了!今日は多忙の一日だ。オキテス、パリヌルスらと打ち合わせて、式の準備を整えてくれ』
 『オロンテスに聞くが、今日は、ギアスのヘルメスがキドニアに行っているのか?』
 『はい、そうです』
 『解った。おう、オキテス、統領や俺のやる仕事があれば言ってくれ。この会所にいる』
 会議の場が解かれる。
 パリヌルスらがオキテスを囲む、打ち合わせる、各自が挙式の準備に取りかかる。
 オキテスは、あらかじめ作成した式次第を変更して改まったものにする。
 オロンテスとは、客人を迎えての会食及び夕食会の件を打ち合わせる。
 パリヌルスとオキテスとドックスの三人は、建造の場に挙式の準備を整える。
 ドックスが、二人に話しかける。
 『建造開始の儀式として、統領と客人らに建造用材にクギを打ち込んでいただくというのはどうであろう?と考えていますが』
 これを聞いた二人がうなずく。
 『おう、それはいい!建造開始の意義がある。パリヌルス、それでどうだ?』
 『そうだな。それはいい。儀式として意義がある』
 『ドックス、それに決まりだ!それで式場を整えてくれ』
 『承知しました』
 『第二船台、第三船台上に完成戦闘艇の配置した。これはいいね』とパリヌルスが言う。
 オキテスが二人に告げる。
 『俺は、式次第と式の進行について、統領と軍団長と打ち合わせてくる。パリヌルス、浜の見張り番に指示を頼む』
 『おう、よっしゃ!』
 建造開始式準備万端が整う、打ち合わせも完了する。
 ヘルメスの到着する浜には、建造の場の一同が、漁業部担当の一同が隊列を整えている。
 式場を整え終わったパリヌルス、オキテスが浜に立つ、ドックスは建造の場に控える、アエネアスとイリオネスは、建造の場の会所で式の開始を待つ。
 ヘルメス艇が沖に姿を見せる、パリヌルスは、アエネアスのいる会所に向けて伝令を走らせる。
 『統領に軍団長、ヘルメス艇がまもなく浜に到着します』
 『おう、そうか、了解!』
 客人らを乗せたヘルメス艇が浜に着く、ギアスが客人らを浜へいざなう。
 パリヌルスとオキテスが客人らを迎える、オキテスが浜に上がった客人らに丁重に声をかける。
 『所長殿、ハニタス殿、トミタス殿、ようこそ、来てくださいました。日ごろ世話をかけています。来駕を待っていました。ありがとうございます』
 『このたびは、おめでとう。建造開始式に招いてくれてありがとう』
 『キドニス浜頭殿、スダヌス浜頭殿、本日はようこそ、来所下さってありがとうございます』
 『今日は、おめでとう!俺までよんでくれて、ありがとう。厚く礼を言う』
 『パリヌルスにオキテス、今日はおめでとう!これは建造開始式のゼウス神ポセイドン神への奉献いけにえに使ってくれ。キドニス浜頭と俺からだ』
 『キドニス浜頭殿、スダヌス浜頭殿、心遣いいただいて誠にありがとうございます。喜んで頂戴のうえ本日の式に使わせていただきます』
 スダヌスが黒毛の子羊を縛っている綱をオキテスの手に渡す。
 『おう、オキテス、今日は建造開始式、おめでとう。心から祝いの言葉を言う。これは俺からの建造開始式の貢ぎ物だ。式に使ってくれ』
 ガリダが白い子羊を縛った綱をオキテスに握らせる。
 『これはこれは、ガリダ殿ようこそ来てくれた、ありがとう。これはありがたく頂戴いたし、本日の式に使わせていただく』
 オキテスの客人らとの挨拶が終わる。
 パリヌルスが背後に並び待機している一同にサインを送る。
 盛大に手を打ち鳴らす拍手、声大きく喊声をあげてどよめく。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1335

2018-07-28 04:53:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスが建造開始式及び民族総員参加での夕食会の催行を告げた。
 その意を汲んでイリオネスが建造開始式挙行の意を話す。
 『建造開始式を簡単なカタチで挙行するのだが、我々民族一同の総意を結集して意気高らかに権威あるものとして挙行する!いいな』
 イリオネスの軍団長としての檄である。
 一同が声をそろえて、この言葉にこたえる、応える声が力強い。
 『了解しました!』
 イリオネスが指示を伝える。
 『オキテス、建造開始式は、闘いに挑む軍団の出陣式だ。心して、式次第を決めて、これを行う。運営の全てを君に一任する』
 『解りました』
 ドックスが姿を見せる。
 『会議への参加が遅くなりました。申し訳ありません』
 『おう、ドックス、諸事の手配が終わったか。会議が終わったらオキテスの案出する式次第にのっとって挙式の準備にかかる』
 『解りました』
 会議の席に朝食が届く。
 イリオネスが一同に目線を配って口を開く。
 『おう、皆!朝食を食べながら、次の議題の意見を交わす!パリヌルス、新々艇の構想について話してくれ』
 『はい!』
 一同がパンに噛みつく、一同の目線がパリヌルスの目を見る、パリヌルスが新々艇の構想を述べる。
 一同が口中のパンを咀嚼しながらうなずく。
 オキテスが問いかける。
 『パリヌルス、これまでの新艇に新しい価値構造を付加するわけだが、考えられる費用のかさみ具合はどれくらいと考えられる?』
 『そうだな、考えられるのは、衝角構造体の費用だけだ。新艇に取り付けている走行安定構造体を衝角構造体にするわけだが、構造に関する費用について考えてみたが、驚くような費用には為らない。これによって船としての価値が格段に向上する』
 『解った。理解した』
 アエネアスがイリオネスに声をかける。
 『議長、一同の賛意を確かめたらどうだ?』
 『解りました』
 イリオネスが一同に声をかける。
 『今、パリヌルスの新々艇の構想を聞いた。また、考えられる費用の件も推察する想像の枠内にとどまると考えられる。諸君らに実行の如何を問う』
 オキテスが意向を述べる。
 『営業面から見ても有為な構想と考えられる。実行してしかるべきと考えます』
 一同からの拍手である。
 『おう、一同からの拍手か。一同からの賛意と受け止める。パリヌルス、新々艇構想、実行とする。直ちに段取りをして、建造の着手手配に取り掛かってくれ。決定だ』
 イリオネスが続けて一同に告げる。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1334

2018-07-26 07:57:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスが口を開く。
 『ドックスがまだ来ていないな』
 『ドックスは、朝の業務指示を終えてから、こちらに来ます。待ってやってください』
 『おう!ドックス不在でも話し合うことのできることからやる』
 イリオネスは、続けて三人に問いかける。
 『今日の建造開始式には、小島及びパン工房の連中の参加についてはどのようにしている?』
 パリヌルスが手をあげる。
 『それについて報告いたします。小島の一同は、アレテスと打ち合わせ済みです。今日の業務は休止して、全員参画するようにと通達してあります。パン工房のほうは昨夕、オロンテス隊長と打ち合わせしました』
 パリヌルスは、オロンテスと目を合わせる。
 『朝から打ち合わせはしていませんが、対処については会議の場での報告となります』
 イリオネスがオロンテスと顔を合わせる、話しかける。
 『オロンテス、パン工房の一同には、日ごろ大変に苦労をかけている。仕事の切れ間がなく、年中休まず活動してくれている。ここにパン工房の一同に深く感謝の意を伝える。オロンテス、統領に代わって礼を言う。ありがとう』
 『軍団長、パン工房の一同に代わって、感謝の言葉を受け取ります。ありがとうございます。今日の建造開始式の式次第は聞いてはいませんが、今日の会食の準備をするというカタチでの参画となります。それは、パン工房の一同は承知してくれています。以上です』
 『そうか了解した。世話をかけるな。ありがとう。オキテス、建造開始式の式次第はできているのか?』
 『はい、式次第は出来あがっています。本日は簡単に指揮を終えて、午後には建造をスタートさせようと考えていましたが、今日はあくまでも式に徹して、建造の業務の本格スタートは明日の朝よりと考えています』
 『朝になっての意思決定か?』
 『はい、そうです。本日は建造開始式の挙式に徹します。式に来ていただいた客人の皆さんを見送り、夕刻から我々総員参加で夕食会の催行をしてはと考えています。これを会議で承認いただきたいと願っています』
 『会議で一同の意向を確認するのだな』
 これを聞いてアエネアスが口を開く。
 『オキテス、お前の言うことがよく解った。軍団長、オキテスの言うことを理解して、式次第を組み、建造開始式を挙式する。今日は、民族総員参加で夕食会を催行する。オロンテス、パン工房の一同も全員参加の夕食会だ。日夜、休むことなく、業務を遂行してくれている一同に感謝の意を伝えたい。以上だ』
 一同がアエネアスの言葉に賛同する。
 今日の挙式と夕食会の催行を決定した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1333

2018-07-25 08:27:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスの心遣いで催行された夕食小宴は、建造の場の者らを歓ばせている。
 明日からの建造スタートの句読点であり、一同のワーク意欲を高めている。
 アエネアスとイリオネスも彼らと共に過ごす小宴を大いに楽しんでいる。
 『なあ~、イリオネス、このようにささやかではあるが一同と楽しんだ。いい時を過ごした。重畳の気分だ。俺ら、引き上げようか』
 『そうしましょう。パリヌルスらとあとのこと打ち合わせてきます。チョット待っていてください』
 イリオネスが三人の傍らに身を寄せる。
 『おう、あとのことよろしくな、統領と俺は引き上げる』
 『解りました。任せておいてください。いろいろ気遣い戴いてありがとうございました』
 アエネアスら二人は、場を去っていく。
 オキテスは、場の展開を見計らって場を解く、ドックスは班長らを集めて明朝の予定を伝える、それを終えて、パリヌルスと場の会所において、新々艇の構想について打ち合わせる。
 『パリヌルス隊長、新々艇の構想ですが了承しました。出来るだけ早くヘルメス艇を整備して、実験試走で答えを出してください。その結果で数値を確かなものにして、建造のスタートをします』
 『了解した。新々艇の件は明日の会議で新構想の件を確かなものにする』
 『解りました』
 二人は打ち合わせを終える。
 浜には寝につくころあいがおとずれていた。

 月が改まり、アエネアス暦9月の初日の朝が明ける。
 朝行事にいそしむ一同が醸し出す志気が浜一帯に漂っている。
 あふれる気概の朝行事を終える、燃えあがる志気を発して、改まった9月のフアストステップを踏み出す、己がスタンスする場へと歩を進める。
 彼らは、自分の果たす役務を背負い、建造の場に着く。
 ともに働く者と顔を合わせる、朝の挨拶を交わす、手を合わせる、通い合う意思、目を合わせる、微笑む。
 アエネアスとイリオネスが朝行事の浜に姿を見せる、朝行事を終えているパリヌルスら三人が彼ら二人を迎える。
 『おはようございます。いい朝です』
 『おう、おはよう。いい朝だ』
 『統領に軍団長、場の会所で待っています』
 『おう!』
 三人は、場の会所へ向かう、場に着く、場を整える。
 三人は、気をあらためて二人を会議の場に迎える。
 一同は、改めて朝の挨拶を交わす。
 統領がイリオネスに問いかける。
 『軍団長、今日の会議の進行役は?』
 『はい、私が努めます。一同着席!』と言って、イリオネスは一同と目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1332

2018-07-24 08:24:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、自分自身に問いかける。
 『明日から暦が改まる。スタンバイは、整っているのか?』
 アエネアスは、明朝の会議に向けて、頭中に浮かびあがってくる議題をチエックする。
 彼は、イリオネスに声をかける。
 『軍団長、夕食小宴の場に行こう。終業の頃合いだ』
 『そうですね。もうそろそろ場が整う頃です』
 二人は、建造の場の会所から、小宴を予定している建造の浜へ向かう。
 場の会所にドックスが顔を見せる。気が付いたオキテスが声をかける。
 『オキテス隊長、明日からの各班の担当部署を割り振っています。私の思案ですが、この体制で行こうと考えています』
 ドックスが部署と担当班を書き記した木板をオキテスに手渡す。
 『オキテス隊長の了解を得ておきたいのですが』
 オキテスがドックスから受け取った木板に見入る。
 『おう、これでいいが、状況次第で多少の修正はお前に任せる。ところで統領の指示でやる夕食小宴の会場はどうなっている?』
 『もう出来あがるころです。出来あがり次第呼びに来ます』
 『おう、オロンテス、お前も一緒にどうだ、統領直々の指示でセレストスが会場の設営をやってくれている』
 『おう、出席する。ところであしたの建造開始式の会食はどのようにするか考えているのか?』
 『おう、それだが軍団長を囲んで、夕食を食べながら話し合おうと考えている』
 『おう、了解した。まあ~、何かをやると言って、いつも泥縄式だな。いいだろう!そのうえで俺が責任を持って、会食の会場を整える』
 『おう、泥縄式だが、オロンテス、よろしく頼む。これこの通りだ』と言って、オキテスはオロンテスに頭を下げた。
 セレストスは、夕食小宴の場を支度している、焚火のシマを20余りこしらえる、食材を配置する、酒樽も配置する、焚火のシマに火を入れる。場が整った。
 イリオネスとセレストスが顔を合わせる。
 『急の発案でセレストスに世話をかけたな。もういいかな、一同に声をかけるが?』
 『もういいです。一同を呼んでください。焚火のシマは、24か所です。酒樽は6樽配置しました』
 『おう、そうか。ありがとう。君らもどうだ、ここで夕食を一緒にしては』
 『いえ、私らは、工房のほうで夕食をします』
 『解った。ご苦労であった』
 イリオネスは、一同招集の指示を出す、場には間をおかずに一同が集まる。オキテスらも姿を見せる。
 イリオネスが乾杯の支度をさせる。一同が手にしている酒杯に酒が満たされる。
 アエネアスが一同に声をかける。
 『おう、一同!聞いてくれ!先日来、そして今日、君らの働きによって建造の場が出来あがった。私が統領として君らの労をここにねぎらいたい』
 アエネアスが一同と顔を合わせる、口を開く。
 『一同!ご苦労であった。乾杯!』
 注がれた酒が飲みほされる、場から大歓声があがる。一同の感激が堰をきって場を沸かす、彼らは歓びを謳歌する。
 夕食小宴がスタートする。ワイワイ、ガヤガヤで夕食小宴が盛り上がった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1331

2018-07-23 07:00:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは空を仰ぎ見る、空が高い、澄んでいる、秋なる季節が近づいている。
 一朶の雲、巻雲がたなびいている、ふと思う。『雲が駆ける、追いかける希望か』胸に去来する感懐である。
 陽は西にある、アエネアスは、今日の終わりの訪れを身に感じる。
 建造の場の一同とともにした感動がとどまり、身にみなぎる『生』の充実感を覚えている。
 彼らとともに肌をすり合わせ、大地を踏み鳴らし、声をあげた。
 彼らとともに己がある、歓びを彼らと共にした一体感、また、イリオネスやパリヌルス、オキテスらとともにした歓びが身体を駆け巡っている。
 冷めやらぬ感動、漲る力、四肢に力が満ちてくる。
 彼は起ちあがる、衝動が身に走る、拳を握る、力が駆けあがってくる。
 顔は空を見上げる、目は天空の一点を見据える、アエネアスの拳が天を突く。
 腹底から、想いが噴きあがる。
 『ワオ~オ~!』
 アエネアスが雄叫びをあげる、咆哮する。
 場にいるイリオネス、パリヌルス、オキテスの三人がアエネアスが、突如、発した一声に驚く。
 イリオネスが声をかける。
 『統領、どうされました?』
 その問いかけを耳にするアエネアス。
 『おう、なにがあった?』
 『それは私が統領にたずねていることです』
 『お~、そうか。俺があげた声のことか』
 『そうです』
 『今、俺のあげた声のことか。あれはだな、お前らの声を一つにまとめての感動の一声だ。精気溌溂の気を声にしたのだ』
 『そうですか。驚きました』
 『今日、彼らと肌をすり合わせ、足を踏み鳴らし、声をあげた。その感動の声でもある。精々の気を一声にして咆哮した。気が晴れ晴れとした!彼らと過ごした一時は素晴らしかった。その一声でもある』
 『そうでしたか、私もその感動を胸に抱いています。パリヌルスにオキテス、君らはどうだ?』
 二人は同時に答える。
 『まったく、同感です。あの一時は素晴らしかった!その一語です。彼ら一同との一体感です。明日に向けての闘志と言いますか、『やってやるぜ!』という気が身体にみなぎってきています』
 『彼らとともに持っている感情を発露する。次からそのような機会がある時は、彼らとともに感動の時を過ごす!生きている!こいつらとともに俺も生きている!その感動を共にする』
 彼らは共感を語り合った。
 傍らにいるオロンテスは、『俺もそのような時を一同とともに過ごしたい』と心の中に思いとどめる。
 アエネアスは、明日からスタートする統治者である自分暦の9月に想いをはせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1330

2018-07-20 08:31:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 建造の場に駆けつけたセレストスは、歓喜に沸く建造の場の光景に目を見張る。
 セレストスは、眼前に展開する集団行動に加わりたいと思う、その衝動をかろうじて抑える、セレストスは、ここに呼ばれた理由をなんとなく悟った。
 建造の場の一同が隊伍を組んで、一団となって声をあげる、足を踏み鳴らす、地を響かせる、場を動かずにいた集団が動き始める。
 統領アエネアスが一同に加わったことで集団が動きが出す、アエネアスを真ん中にして、反時計回りにまわり始める。
 集団が律調を整えて動く、歓びを謳いあげる、沸きあがる歓喜、一回転、二回転、三回転、集団の意気込みが場に満ち溢れる。
 集団の中の一人が両手をさしあげる、声を発する。
 『動きをやめ!』『その場で足を踏み鳴らせ!』『声をあげろ!』
 一同は、動きを止める、その場で足を踏み鳴らす、再び手を上げる、声をあげる。
 『一同、動作やめ!』『ビバッ!を三唱する』
 彼が声をあげる、『ビバッ!』
 一同の『ビバッ!』が場を震わせる。
 『ビバッ!』『ビバッ!』
 建造の浜を震わせる。これをもって建造の浜のどよめきが落ち着いた。
 集団の中からパリヌルスがぬけて、セレストスのいるところに来る、声をかける。
 『セレストス、待たせたな。統領をここに呼ぶ、指示を受けてくれ』
 セレストスをアエネアスにに引き合わせる。
 『おう、セレストス、来てくれたか。オロンテスがまだ帰っていないがいいだろう。建造の場の者らの夕食に肴と酒を添えて整えてくれ。俺らも同席する。建造の場の完成を場の者らと共に歓びたい』
 『解りました。場所は建造の浜でよろしいですね』
 『おう、それでいい』
 『統領、人数が多い、そのようなわけで浜焼きスタイルでよろしいですか?』
 『おう、そうだな。お前に任せる』
 『解りました。心得えました』
 夕食小宴の指示を受けたセレストスが場を去っていく。
 オロンテスが帰着する、建造の場の会所に来る。
 建造の場の一同と完成歓喜の感動足踏み行動を終えて、感動さめやらぬアエネアスらが場に会所でくつろぐ、
 『おう、オロンテス、この場の会所だが、ドックスが整えてくれた。今日、彼からこの場を受け取った。いい場所を作ってくれた、感動ひとしおといったところだ』
 『いいところに、いいものを作ってくれた。感動です』
 アエネアスとの話が終わり、オキテスが建造の場の完成、事の始終をオロンテスに語って聞かせる。
 オロンテスがイリオネスに今日の成果報告を終える、続いて、明日の建造開始式の件に及ぶ。
 『オロンテス、建造開始式の客人出席の動向は?』
 『はい、集散所からは、所長、ハニタス、トミタスの三人、キドニス浜頭、スダヌス浜頭です』
 『了解した。明日は早朝会議をこの場の会所でやる、朝行事を終えたらこの場に直行してくれ。キドニアへは代わりの者を行かせてくれ』
 『解りました』
 イリオネスは、オロンテスと打ち合わせを終えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1329

2018-07-19 07:42:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 建造の場の会所にいる者らが、完成した建造の場に沸きあがっている喊声に気をかける。
 アエネアスが問いかける。
 『えらい喊声ガ沸きあがっているな。何があった?』
 建造の場の総点検から戻ってきたオキテスが応える。
 『ドックスが作業を終えた者らをねぎらっている。その喊声です』
 パリヌルスが言葉を継ぐ。
 『彼らが懸命にやり遂げた仕事です。この喊声は、仕事をやり遂げた者らの雄叫びですな!この建造の場を構築した、これでもって明日から建造の業務に励もうとしている彼らの意気込みです。これくらいの感動があってしかるべきです』
 『おう、パリッ!お前の言う通りだ!彼ら一同がやり遂げた成果を誉めてやらねばならんな。鉄は熱く灼けているうちにたたけだ!行こう』と言って、アエネアスが立ちあがる。
 『パリヌルス、パン工房のセレストス呼んでくれ』続けて言葉をかける。
 『軍団長、オキテス、一緒に行くぞ!』
 パリヌルスが伝令役の者を呼ぶ。
 『おう、パン工房に行ってセレストスにすぐに、ここに来るように伝えてくれ!急いでいる!走れ!』
 『了解しました!』
 伝令役がパン工房に向けて走る、パリヌルスが場の会所でセレストスを待つ。
 アエネアスらは、建造の場の者ら一同のいる場に立つ、オキテスがドックスに二言三言ささやく。
 『解りました』
 ドックスが一同に向かって立つ、告げる。
 『一同、聞いてくれ!統領が君らに話される』
 一同が喊声をあげる、アエネアスの足もとにドックスが立ち台を準備する、台上に立つアエネアス、おもむろに口を開く、よくとおる声で一同に話しかける。
 『諸君!大変にご苦労であった。ドックス棟梁の指示にもとづき、4基の船台、建造部材製作の場、建造用材置き場を建設し整備を成し遂げてくれた。ここに完成を見るに至ったこと、諸君らとともに喜びたい』
 アエネアスは、言葉をきって一同を見渡す、顔を合わせる。
 『船舶の建造に関する三位一体思考構想がカタチとして出来あがったことを諸君らとともに喜び合いたい』
 アエネアスが話の間をとって一同と目を合わせる。
 『この施設、この設備があればこそ、諸君らが持っている全知全能力を注いで、いい船造りが遂行できる!諸君らとともに『ビバッ!』の三唱を叫びたい!』
 アエネアスは、一同と顔を合わせる、目線を運ぶ、目を合わせる。
 『俺が一声を叫ぶ!それにつれて君らが声をあげる!叫ぶぞ!いいな!』
 再び一同と顔を合わせる、アエネアスが臍下丹田に力を込める、心底、腹底から声を絞り出す、声が堰を破る。
 『ビバッ!』
 一同から力強い声があがる。
 『ビバッ!』
 アエネアスの『ビバッ!』
 一同の呼応の『ビバッ!』続けて『ビバッ!』三唱最後の『ビバッ!』
 三唱が終わる、沸きあがる拍手、そして喊声、建造の場がドヨメク、興奮のるつぼである。
 一同が足踏みを始める、あしぶみが力強くなってくる、隊伍の前部から声があがる。
 『ウオッ!』後部が呼応する『ウオッ!』
 どよめいてくる、足踏み、地鳴り、律調が整って響く。 
 『ウオッ!』『ウオッ!』
 アエネアスが一同の中に飛び込む、イリオネスが飛び込む、続いて、パリヌルス、オキテス、ドックス、の場にいる者らがこぞって集団の中に飛び込む。
 足踏み鳴らし、『ウオッ!』『ウオッ!』と雄叫ぶ。
 感激、感動に建造の場が沸きに沸く、彼らは喜びを謳歌した。
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1328

2018-07-18 07:37:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスら三人は、整備作業が終わり、整った建造部材製作の場を見る。治具、工具、作業台等が適正に配置され、作業環境が整っている。
 『ドックス、申し分がない!建造日程が一か月という長くはない日程において船舶を建造するのである。それに対応しての建造部材製作の場、船舶を建造していく船台、建造用材を保有し、供給する建造用材置き場、これらの場が有機的な位置に配置され機能する。また、各場の実効機能についてもよく考えて出来あがっている。ドックス、ご苦労であった。明日から船舶の建造をスタートさせる』
 『解りました。この施設、設備を機能させて、いい船を建造していきます』
 『パリヌルス、施設、設備、場の出来あがりを見てくれたか、お前の感想は?』
 『おう、申し分のない出来あがりだ。建造工程に不具合の発生が考えられない、全てがいい具合に出来あがっている。稼働してみて、ここをこうすればもっと良くなる考えついたら、そのようにすればいい。よく考えて構築された建造の場だ!』
 『おう、ドックス、非の打ち所がない出来あがりだ。重畳!』
 建造の場を見まわったパリヌルスとオキテスは、場の会所へと戻っていく、ドックスは作業を終えた全員を招集する。
 ドックスは、懸命に作業を遂行してくれた一同の労をねぎらい、明日の建造開始式の次第を伝え、スケジュールを伝える。
 彼は、太陽の位置を確かめて頃合いを計る。
 少々頃合いが早いと思われるが、今日の作業の終了を伝える。
 ドックスは、一同を見渡す、時間がかかったが一同と目をしっかり合わせる。
 『諸君ら一同に礼を言う!君らは懸命に作業をしてくれた。いい船造りに君らが作業する建造の場が、明日よりの建造開始に向けて充分であると考えられる条件で構築が完了した。ありがとう!心から礼を言う』
 ドックスの言葉に一同が歓声をあげる。
 ドックスが言葉を継ぐ。
 『船舶の建造にあたっては、諸施設、諸設備が君らの作業遂行にいい状態で機能する、機能させるのは君ら自身である。いい船造りは、いい施設、いい設備が大切である。それよりも大切であるのが、作業に携わる君らである。君らの全知全能を注ぎ込んで出来あがるのが、いい船なのだ!一同の力を結集していい船造りに邁進する』
 ドックスの言葉を聞いて、場の一同から力のこもった拍手が沸き起こる、場をどよめかせる大歓声があがる。
 このどよめきの大歓声に場の会所にいるアエネアスが驚く。
 イリオネスと場に戻ってきたパリヌルスもオキテスも沸きあがっている大歓声に驚き振り返った。