『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1445

2018-12-28 16:12:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エドモン浜頭に船舶売り出し展示試乗会催行の礼を述べ、挨拶を終えて、宿営した浜に戻ってきたオキテスにダックスが声をかけてくる。
 『オキテス隊長、出航の準備が整っています。現在、海は凪ぎの状態ですが沖の海上状況は、この頃合いでは、船の行き来もなく、風のあるやなきやが解りません』
 『おう、解った!とにかく、出航する。出たとこ勝負だ!』
 オキテスの気持ちを思いやったダックスが全員に指示をする。
 『全員!乗艇!位置に就け!』
 『おう!』『おう!』
 彼らがダックスの指示の呼応して艇に乗る。
 『軍団長、艇に乗ってください』
 『おう、オキテス、浜の掃除は終わっているか?最終の点検をしてくれ』
 『清掃は、きれいに出来ています。申し分ありません』
 二人が乗艇する、オキテスがダックスと目を合わせる、うなずきあう、艇上を見渡す、オキテスが声をあげる。
 『出航!』
 ダックスが指示を飛ばす。
 『櫂さばきのピッチをあげ~っ!』
 戦闘艇、ヘルメス艇の二艇がイラクリオンの係留岸壁を離れていく、海面を泡立てて凪いでいる海を西へと波を割っていく。
 オキテスが大声で一同に伝える。
 『今日の午後半ばごろには、レテムノンに着く!今夜の停泊はレテムノンである!一同、解ったな』
 『おう!』『おう!』『おう!』
 操船担当が漕ぎかたの交替に気を配る、二艇は船速を落とすことなく航走する、昨日のイラクリオンにおける商況の活性をうけて、元気船足で洋上を駆ける。
 頃合いが昼頃になろうとしている、先日停泊したパノルモスの沖を通過しようとしている。
 オキテスが一同に声をかける。
 『クレタ島の真ん中あたりを見ろ!彼方に山のてっぺんが見えるだろ!クレタで一番に高い山だ!あれが『イデー山』だ』
 彼らは、島の真ん中にそびえるイデー山を彼方に身ながらの航走である。
 櫂さばきで飛ぶしぶきあびて、艇上で昼食のパンをほおばった。


 *ご挨拶申し上げます。ブログ小説『トロイからの落人』お読みいただき誠にありがとうございます。
  謹んでお礼を申し上げます。
  今日を含めて五日で新しい年が明けます。皆さまにとって良き年であることを力いっぱい祈願いたします。

                                  山田 秀雄   山田 萌愛
          

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1444

2018-12-27 04:28:21 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、船舶売り出し展示試乗会を終えて状況展開の始終を振り返り思い起こす、獲得成果の不思議を感じている。
 『帰ったら時間をかけて、よく考える』心のうちに思いさだめる。
 船舶売り出し展示試乗会において、試乗した客からは総体的にいい試乗評価を得た。また、エドモン浜頭の紹介でクノッソス集散所の営業総括責任担当のクラッソスとも挨拶を交わす。
 多忙の三日間を終える、受注戦闘艇3艇、引き合い総艇数5艇この成果獲得は嬉しかった。
 引き合いの5艇は受注の予想ができる引き合いである。イリオネスとオキテスが顔を合わせる、うなづき合う、イリオネスがオキテスに話しかける。
 『なあ~、オキテス、この成果を喜ぼう。この成果をどうして得ることができたか?を帰ってから考えよう』
 『そうですね。解りました』
 二人は、エドモン浜頭に成果報告と成果に到った感謝の礼を述べる。今日の宿営のイラクリオンの浜へと帰る。
 オキテスは、一同に今日の成果を伝える、その成果に驚く一同、彼らは感激する、歓声をあげる。
 一同の今日が終わった。
 
 イラクリオンの朝が明ける。
 空には一片の雲も見あたらない、快晴なり、クレタ海、イラクリオンの海は凪いでいる。
 朝行事を一同そろって終える、朝食を終える、今日のスケジュールをオキテスが一同に伝える。
 朝食を終えたイリオネスとオキテスがエドモン浜頭のもとへ挨拶に出向く。
 『エドモン浜頭殿、このたびは浜頭殿の力をたより、船舶売り出し展示試乗会をイラクリオンの地で開催できました。ありがとうございました。催行にあたっては、浜頭をはじめ配下の皆さんの尽力により感動の成果を獲得できました。喜びを言葉にすることができません。本当にありがとうございました。一重にエドモン浜頭殿の存在があったればこその結果と心得ています。我らの力では及ばない成果です。ありがとうございました。重ねて礼を申します』
 『俺らも考えてもいなかった成果に驚いている。いい成果獲得であった。ともに喜ぼう。納入引き渡しについての予定が決まり次第、連絡のほどを頼む。発注した客を長い期間またせないことに気を配ってほしい。以上だ。イリオネス軍団長、帰られたら、アエネアス統領にくれぐれもよろしく伝えてください』
 『エドモン浜頭殿、私どもはこれにて失礼いたします。ありがとうございました』
 イリオネスとオキテスが深く腰を折って低頭する。
 『おう、明日は、レテムノンでの船舶売り出し展示試乗会の開催だな!道中くれぐれも気をつけてな!無事の航海を祈る!』
 『ありがとうございます』
 『あ~あ、それから、連絡には集散所の飛脚便で連絡してくれればいい。また、今後の集散所との関わり合いについては、俺の方でクラッソスと話し合う。これまでのゆきがかりが少々変わるかもしれない、また、そうではないかもしれない。そういうことだ』
 『了解しました。よろしく願います。ではこれにて失礼します』
 オキテスが去りがけにエドモン浜頭に伝える。
 『エドモン浜頭殿、次月の月初めですが船舶の展示試乗会の開催を予定しています。引き合いを受注にしたいと考えています。よろしく願います』
 『おう、了解した!オキテス、道中の無事を祈る!』
 『ありがとうございました』
 二人はイラクリオンの係留の浜に戻る、レテムノンに向けて2艇の出航準備が整っていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1443

2018-12-26 05:14:01 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イラクスが待っていた客が姿を見せる。
 『お~お、ようこそ来てくれました。ありがとうございます』
 イラクスが歓待する、試乗戦闘艇に誘う、戦闘艇の容姿に見入る客、即刻、艇上へと案内する。
 オキテスが目を見張る、客が列をなして来場する、船舶売り出し展示試乗会開催の幕をきって落とす。
 イラクスが二組の客のグループを試乗戦闘艇に誘う、一行、2グループが乗艇する、艇が係留岸壁を離れて沖に出ていく。
 『イラクス殿、私は試乗戦闘艇の操船を担当しているダックスです。何なりと用を申し付けてください』
 『そうですか、私はイラクスデスです。ダックス操船担当、沖に島が見えます。この頃合いならいいと思う。あの島の周回で試乗をやりましょう。東からいい風が来ています。島の東側を目指してください』
 『はい!了解しました』
 ダックスが操舵担当のカイクスに指示する。
 『ダックス担当、島の北端で西に転進です。それで島の西端を過ぎたらイラクリオンの係留の浜へです。総走行行程は、170スタジオン(約32キロ)くらいです。よろしく頼みます』
 『了解しました』
 試乗戦闘艇は、懸命の櫂さばきで北進する、デイア島の東側を目指して波を割る。島に近づいていく、東方向からの風が強さを増してくる。
 島の北端を過ぎる、西方向に向けて転進する、すかさず帆張りする、帆走する、波立つ海上は、白ウサギが飛び跳ねる波立ちである。
 強めのいい風である、試乗艇が我が意を得たりと快走する、艇上の試乗者が声をあげる、一同がその走りを体感する。
 『おう!この走りは、いい!』
 『走行安定性もなかなかだな』
 艇上の試乗者らが走りの体感を評価する。
 島の北側25スタジオン(約5キロ)余りを、あっと言う間に駆け抜ける、駆け抜けてしばらくそのまま走行する。
 『ダックス担当、もういいでしょう』
 試乗艇をイラクリオンの係留岸壁に向け転進して浜に戻る。
 ダックスが試乗してくれた客に丁寧に礼をする、彼らは礼を返して艇を下りていく。
 浜には試乗希望者が押しかけている、彼らを乗せて、デイア島の試乗周回コース走行する。
 試乗を終えた客らが浜の一隅に設営したくつろぎの場で試乗体感を話し合う。
 彼らの評価はなかなか辛辣である、販促ツールと首っ引きで話声をあげる、だが、いい評価をしてくれているようであった。
 戦闘艇を試乗し、ヘルメス艇にも試乗したイラクスがオキテスの傍らに立つ、彼がオキテスに話しかける。
 『オキテス隊長、両艇に試乗希望者と乗ってみました。いい船です。帆走走行の船速、船足のノリがいい、走行安定性も優れています。新舵の操舵効果も従来の櫂舵に比べていいです。試乗者らは誉めはしないが、そのように評価しています』
 『そうですか、ありがとうございます』
 『あの防御楯構造、あれはいいですな。自信を持って客に進められる船です。明日、明後日、午前中が勝負です。買いたいと思う者が意思を決めるタイミングです』
 『いい結果を獲得したいと考えています。このやり方でいいのかとも考えています』
 『それは、終わってみなければですな』
 イラクリオンにおける三日間の船舶売り出し展示試乗会を終えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1442

2018-12-25 04:34:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イラクリオンの浜の朝が明ける、星が眠りについていく、イリオネスら一行が眠りから覚める。
 一同が起きあがる、朝行事に向かう、東の水平線上の空が明るんでくる、身を海に浸している、陽の出の時を待つ、陽が水平線を破る、目線を昇る太陽に釘づける。
 身は海中にある、身をすすぐ手がとまる、一瞬の静寂、太陽の第一射が彼らの顔を照射する、一同が瞑目する、彼らが何をかを念じる姿がそこにあった。
 一同が海からあがる、さわやかなる気が漂う。
 彼らは、オキテスを真ん中にして円陣を組む、オキテスが一同と目を合わせる、朝の挨拶を交わす、次いで、今日の業務、作業要領と段どりを告げる。
 『一同!解ったな!』
 『おうっ!』
 朝食を手間取ることなく済ませる、エドモン浜頭方の者らの来たるを待った。
 エドモン浜頭を先頭にして一行12人が姿を見せる。
 『おう!オキテス隊長、おはよう、いい朝だ。朝食を済ませたかな?』
 『はいっ!エドモン浜頭、おはようございます。来られるのを待っていました』
 『そうか、オキテス隊長、これがウチの者らをとり仕切っている、イラクスだ、よろしく頼む。会場の設営については、彼と話し合って設営してくれ』
 浜頭がイラクスに声をかける。
 『イラクス、こちらが船舶売り出し展示試乗会の業務指揮を担当しているオキテス隊長だ』
 エドモン浜頭が二人を結びつける、握手を交わすオキテスとイラクス、二人は会場設営の場に立つ、作業要領と段取りを話し合う、作業にとりかかる。
 エドモン浜頭は、イリオネスと朝の挨拶を交わす、連れ立って浜頭の屋敷へ歩を向け場を去っていく。
 オキテスとイラクスは、時を気にかけながら作業を進めている、船舶売り出し展示試乗会の会場設営を終える。
 二人は、頃合いを計る、イラクスが声をかける。
 『オキテス隊長、この会場はどうですかな?』
 『いいですな。この設営なら万全の客対応ができる』
 イラクスと言葉を交わしながらオキテスは、持参した販促ツール、戦闘艇と新々艇の仕様書き、絵図を接客台上に並べ積む。
 『オキテス隊長、太陽がこの位置に来る頃合いから、客が会場に姿を見せます。客対応頑張ります』
 『解りました。互いに頑張りましょう』
 『見込み客がアサイチに来ます。試乗の方よろしく願います』
 『了解しました』
 『それには私が同行します』
 イラクスが言ったように太陽がその位置に来る、太陽が動きを止めたかとオキテスの目に映った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1441

2018-12-24 03:17:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、エドモン浜頭とイリオネスの再会の挨拶の終わるのを待って、エドモン浜頭に声をかける。
 『エドモン浜頭殿、先日はいろいろと相談にのっていただき誠にありがとうございました。私どもも対応の準備をしております、よろしくはからいのほどを願います。イラクリオンにおいての船舶売り出し展示試乗会の開催の日が明日となりました』
 『おう、日の経つのは早いものだな、オキテス隊長。当方の準備は整っている、安心してくれていい!』
 『はい、ありがとうございます』
 オキテスは、船舶売り出し展示試乗会の開催要領と段取りをエドモン浜頭に説明する。
 『オキテス隊長、了解した。明日から三日間、ウチの者らが、そうだな10人余りだが、展示試乗会の業務を手伝うことにしている。顔見知りの客が数人訪れる予定になっているからな。明朝、早く会場の設定予定地に出る。何なりと用事を言ってくれればいい。それからだが、クノッソス集散所の営業担当のクラッソスが顔を出すことになっている。その時に顔合わせをやろうう』
 『解りました。いろいろと配慮いただきありがとうございます。私どもに要望がありましたら遠慮なくいってください』
 『ところで、オキテス隊長、キドニア、マリアと船舶の売り出し展示試乗会を催行したわけだが、結果はどうであったかな?』
 『はい、どちらの会場においても戦闘艇を1艇、受注いたしました。引き合いは双方とも3艇づつです』
 『そうですか、いい具合にまとまっていますな、いいじゃありませんか。明日から三日間、力を合わせて頑張る!そういうことだ』
 『ありがとうございます』
 イリオネスがエドモン浜頭に声をかける。
 『浜頭、いろいろと世話をかけます。明日から三日間、鋭意出精、成果獲得に努めます。よろしく願います』
 『イリオネス軍団長、いいことを言ってくれる、鋭意出精とは、力を合わせてやる!これ一番だ』
 イリオネスとオキテスは、エドモン浜頭の屋敷を辞して、彼らの一同が待つ浜に戻ってくる。
 一同が夕食の準備を整えて、二人の戻ってくるのを待っていた。
 『おう、お前ら俺らが戻るのを待っていてくれたのか。そうか、戻るのが遅かった、許せ!腹が減ったであろう、待つことはなかったのに。ダックス!夕めしを食べるぞ!』
 彼らは一斉に夕めしにとりかかる。
 オキテスがキドニア、マリアと二か所で開催した船舶売り出し展示試乗会の結果を一同に伝える。
 一同から歓声があがる。
 明日から三日間、イラクリオンで行う売り出し展示試乗会の概略と段取りを伝える。
 一同から、気勢をあげる喊声があがる。
 『隊長!頑張ります!おうっ!』『おうっ!』『おうっ!』
 『夕めし、うまかったか?!おう!食べたら、寝る!』
 またもや一同から歓声があがる。
 一同は寝についた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1440

2018-12-22 04:25:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 キドニアにおける船舶売り出し展示試乗会は、キドニス、スダヌス二人の浜頭の応援もあり、営業の成果は好結果を招いている。。一日5回三日で14回の試乗航走を数えた。
 二日目には、キドニス浜頭の紹介客から戦闘艇の発注があり、三日間で戦闘艇1艇、新々艇2艇の引き合いを受け付ける。関係者一同がその成果に喜んだ。
 初回の売り出しを終えた一行は、キドニアの浜で宿営する。
 四日目、五日目の二日間は航海日としている。次の売り出し展示試乗会を行うマリアへは、約160キロの海路を納入戦闘艇を曳航しながら二日間をかけて航海することにしている。
 航海日初日の今日の停泊地は、キドニアからマリアまでの中間地点であるパノルモスとしている。
 航海は、いい海上条件に恵まれての航走である。キドニアから目的地であるパノルモスまでの約80キロの海路をいい西風に押されて、陽の出出航、日の入り到着、今様時間11時間かけて航走する。
 航海日二日目のパノルモス、マリア間もキドニア、パノルモス間と同様の約80キロくらいである。この行程の航海時間は、約12時間の時間を要した。
 イリオネス、オキテスらは、この長途の航海を試作戦闘艇と新々艇仕様に改造したヘルメス艇が引き渡し納入戦闘艇を1艇づつ曳航して無事に航走し終える。
 いい天候に恵まれたことが幸いしたといえる。
 航海日二日目の目指したマリアの停泊岸壁に到着した頃合いは、宵のとばりの降りる頃合いであった。
 オキテスがイリオネスに声をかける。
 『軍団長、この頃合いですと集散所との打ち合わせは無理です。明朝、早く出向いて戦闘艇の納入引き渡し及び展示試乗会の開催等の段取りを集散所側と打ち合わせます』
 『おう、解った。それでいい!』
 彼ら一行は、マリアの停泊岸壁の浜で宿営する。
 オキテスが早朝にマリアの集散所に出向く、諸事を打ち合わせる、展示試乗会を開催する。
 戦闘艇の注文主クランドス浜頭、リンドス浜頭への引き渡しには、ダントス集散所所長、リドラス担当、イリオネス、オキテスらが停泊岸壁に場を設けて引き渡す。
 引き渡す戦闘艇には、発注時には装備されていなかった、防御楯構造が装備されている、その装備に注文主の二人が大喜びする。
 また、引き渡す戦闘艇には、儀式用の子羊、ぶどう酒、持参した堅焼きパンなどが添えられている、受け取る二人の注文主が納入者の至れり尽くせりに大感動した。
 展示試乗会の催行は盛況のうちに終わる。
 三日間13回の試乗航走は、毎回、多数が試乗乗艇してにぎわう、今回も戦闘艇1艇の受注を受け付け、戦闘艇2艇、新々艇1艇の引き合いを受け付けた。
 納入戦闘艇の引き渡し、売り出し展示試乗会を終えた彼ら一行は、明日からの開催地であるイラクリオンへとマリアをあとにする。
 今夜の宿営地はイラクリオンのエドモン浜頭の浜である。イラクリオンには、日没後ではあるが明るい頃合いに到着する。
 イリオネスとオキテスは、船舶売り出し展示試乗会の催行の要領と段取りの打ち合わせにエドモン浜頭の屋敷へ出向く。
 エドモン浜頭とイリオネスは久々の邂逅である、二人は、元気であることを確かめ再会を喜び合った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1439

2018-12-21 03:27:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜を出航して半刻、キドニアの船だまりが見えてくる。
 船だまりの岸壁上に人がいる、オキテスが目を見張る。
 『オキテス!これはどういうことだ?』
 イリオネスが声を上げて絶句する。
 この頃合いには、集散所はまだ開場していない。
 岸壁上にハニタス担当がいる、トミタスがいる、キドニス浜頭の姿も見える、その横にスダヌス浜頭が立っている。
 イリオネスとオキテスが緊張する、対応を思案する。
 今日の売り出し展示試乗会開催にあたって、船だまり岸壁に客が船を乗り降りする桟橋が整備されてる。
 これを目にしたオキテスが声をあげる。
 『軍団長!あれを見てください!桟橋が造られています。今日はいける!』
 ダックスとゴッカスが慎重に操船して艇を桟橋につける。
 イリオネスとオキテスがハニタス担当に挨拶する、キドニス浜頭にも挨拶する、スダヌス浜頭がオキテスに声をかけてくる。
 『おう、オキテス、おはよう!いい朝だ、喜べ!皆が待っている』
 『おう、了解!ハニタス担当に挨拶してくる』
 オキテスがイリオネスに声をかける。
 『軍団長、ハニタス担当とキドニス浜頭に挨拶してきます』
 『おう、俺も同道する』
 イリオネスとオキテスがハニタス担当とキドニス浜頭と顔を合わせる。
 『ハニタス担当殿、おはようございます』
 『キドニス浜頭殿、おはようございます。このたびは船舶の売り出しに関して当方のオキテスが大変世話になっております。ありがとうございます』
 『イリオネス軍団長殿、おはよう。おう、皆が朝早くから船だまりの岸壁に来て、待ちかねている。準備ができたら、早速、試乗に出よう』
 艇上にいるオキテスから声が届く。
 『軍団長!準備ができました』
 言い終わって、ダックとゴッカスに指示する。
 『試乗される皆さんを艇上に案内してくれ!』
 オキテスがスダヌス浜頭に声をかける。イリオネスがハニタス担当に目線を送る、うなずき返すハニタス担当、続けて、キドニス浜頭に声をかけて乗艇を促す。
 一行の乗艇を確かめるオキテス、ダックスとゴッカスに出艇を指示する、試乗の2艇が岸壁をあとにして沖に向かう。
 イリオネスが岸壁に残り、ハニタス担当にマリア集散所の注文主に引き渡す完成戦闘艇を披露する。ハニタス担当が販促ツールを見ながら艇を見て回る、船の出来栄えを確かめる。
 『イリオネス殿、満足できる出来あがりです。客の買いたいを増幅する船に出来あがっています』
 イリオネスとオキテスらは、船舶の売り出し展示試乗会開催の幕を切って落とした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1438

2018-12-19 08:48:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 売り出しに関する打ち合わせ会議が終了する。
 オキテスは安堵する、自分が責任を持って遂行する業務がスタートする、『この業務を満足できるカタチで成し遂げたい!』であり、欲の張りすぎた目標達成願望は消え失せている。
 戦闘艇2艇の受注にこぎつけた前回の営業航海を振り返り、思い起こして考える。
 売り出し業務遂行の人員計画を考える、計画人員総数は、イリオネス、自分を含めて65名としている。前回の営業航海の参加メンバーをベースとしてメンバーを指名構成して決定する。
 新たに加える給食担当については、オロンテスと話し合い、パン工房のパンタスをメンバーに加える。総員65名の業務遂行人員構成が整う。
 イリオネス軍団長がこのプロジェクトの長としての役務に就く、業務遂行の手順、段取りの打ち合わせを丹念に行う。
 『オキテス、解っているな、そういうことだ。存分に業務の展開をやってくれ。業務の主役はお前だ!解っているな!』
 『了解しています。業務の遂行を任せていただきます』
 『おうっ!』と承諾の返事が力強く返る。
 オキテスは、多忙を極めている、手際よく処理していく。
 ドックスとは、引き渡し戦闘艇の件、戦闘艇の曳航輸送の件、そして、10月度の建造計画の件を打ち合わせる。
 集散所に出向いて、売り出しの件、展示試乗会実行の件の打ち合わせを行う、キドニス浜頭、スダヌス浜頭とも売り出し実行の件、展示試乗会開催の件を打ち合わせる。
 『解った!心得た!』返事をもらい、万全を期する。
 売り出し業務に携わる者、漕ぎかたら、曳航戦闘艇に乗り組む者ら、62名の各人に役務を任命、業務要領を説明を終える。
 給食担当のパンタスとは、売り出しスタート日より業務を終えて帰ってくるまでの業務要領と段取りを打ち合わせる。
 最後にパリヌルスと販促ツールについての打ち合わせ、また、売り出し当日の出港時まで手助けかたを頼んだ。
 『おう、了解!なんでも言ってくれ、そのために俺がいる。また、お前が留守の間、俺がお前に代わって建造の場を責任を持って引き受ける』
 『おう、よろしく頼む』
 オキテスは、多くの用件を処理する。
 航海の安全、業務遂行に対処、処理して、船舶の売り出し展示試乗会開催に出航する朝を迎えた。

 浜にアエネアスが立っている、今日の陽の出の時がおとずれる。
 昇る太陽の第一射が届く。
 クレタ海に面して立つアエネアス、彼の後ろには浜にいる全ての者らが立ち並んでいる。
 クレタ海を背にイリオネス、オキテスが並び立っている、63名の業務遂行メンバー、一行が二人の後ろに隊列を整えて並び立っている。
 アエネアスが声をあげる、半月に及ぶ売り出しの航海に出航する者らを送り出すメッセージを告げる。 
 それを受けて業務の遂行と安全航海の誓いを述べるオキテス。
 アエネアスの後ろにいる者らから大歓声があがる。
 出航する一行が艇に乗る、各自が部署に就く、オキテスが声をあげる。
 『櫂を持て!出航ッ!』
 漕ぎかたらが一斉に手にした櫂でもって凪いでいる海面を泡立てる、引き渡しの完成戦闘艇を曳いて、2艇が海面を割り始める、浜を離れていく。
 またもや、朝明けの浜に大歓声があがる、喊声が岸を離れ行くあわせて4艇の背を押した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1437

2018-12-18 07:14:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ニューキドニアの地に照る日、曇る日がおとずれて日にちが過ぎていく、オキテスが営業事前活動の航海から帰って10日が過ぎている、船舶の売り出しの初日が7日後に迫って来ていた。
 イリオネスが会議開催の招集をする、会議は、オロンテスのキドニアからの帰りを待って建造の場の会所で開かれた。
 議題は、船舶売り出し展示試乗会の開催、そして、引き渡しをする完成戦闘艇2艇の曳航輸送の件についてである。
 オキテスは、検討に検討を重ねる、思考に思考を重ねて、船舶売り出し展示試乗会開催の日程表を作成する、引き渡し納入する戦闘艇2艇の曳航輸送要領を考える、加えて人員計画も考えている、また、事前活動航海において、マリアからスダヌスのスオダの浜までを航走して長途の体験航走を試みている、そのうえ、半月にもわたる期間の業務遂行者、漕ぎかたらの給食担当者随行の要請も考慮していたのである。
 オキテスは、会議の場において、[船舶売り出し展示試乗会開催日程表]を提示して計画、人員計画、付帯事項を説明して要請する。
 要請事項は、全員の賛成で承認される。明後日にはこれらの件をキドニアの集散所と打ち合わせて売り出しの開催と実行をすることを一同に伝える。
 なお、この営業活動に関して、イリオネス軍団長が催事の取り締まりをすることが会議において一同に知らされる。
 アエネアス統領は、この船舶売り出しの催行を民族総動員で遂行する事に決めていたのである。

        
                [船舶売り出し展示試乗会開催日程表]
 
          10月 1日~3日   キドニア集散所   宿営地 キドニア
     
             10月 4日       航海日   宿営地 パノルモス
             10月 5日       航海日   宿営地 マリア
  
          10月 6日~8日    マリア集散所   宿営地 マリア
                     受注艇の引き渡し
     
             10月 8日   イラクリオンへ   宿営地 イラクリオン
 
         10月 9日~12日    イラクリオン   宿営地 イラクリオン
     
             10月13日       航海日   宿営地 レテムノン
 
         10月14日~16日    レテムノン    宿営地 レテムノン
     
             10月17日     帰途航海日

                注 集散所暦で月日は表示してあります。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1436

2018-12-17 03:57:46 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、トロイ民族を率いてその頂点に立つ統領である。
 そうであるが故に事業遂行の成果期待値こそ事業成果として、仕事のやりがいであり、己の生き甲斐としている。
 オキテスの思考との違いは決定思考発想の原点の違いである。
 アエネアスには、民族の頂点に立つものとしての発想点がある。イリオネスには、その立ち位置に立っての発想点がある。
 この二人の発想点は、『目標があればこそ!』なのである。
 目標を正面に掲げて業務を、作業をやりきる、それが業務、作業のやり甲斐であり、生き甲斐なのである。
 狙う目標、標的があればこそ、成果期待値の達成をクリアして前へ進むのである。
 イリオネスの民力を駆動しての業務の作業の発想点は、口ではオキテスに告げてはいないが、原価に基づく獲得目標利益額が発想の原点にある。
 ここで、しかしである。
 アエネアスとイリオネスの二人がこの業務、作業に着手するときには、業務遂行の成果期待値が閾下に潜在し、潜在力化し、業務遂行力が顕在化する。そして、無我こそはで、業務遂行に力をを尽くすのである。
 業務遂行者として、我を捨てての業務遂行の実行者なのである。他の誰も彼ら二人を倣うことが出来ない域外の二人なのである。この二人は、そのような資質を有して、目標に向けて命を燃焼させるのである。
 
 二人の顔が合う、目が合う、うなずき合う、イリオネスがアエネアスに声をかける。
 『統領、オキテスも遠出の旅から無事に帰ってきました。今、今月も半ばに到っています。明日の件ですが、小島のアレテスの部署、パン工房を見まわってやりましょう』
 『そうだな、今月だが、月前半、多忙であった』
 『彼らは、統領の来訪を喜びます。次への踏み出しに力の湧出です』
 『おう、イリオネス、いいな!明日はそれの実行!心得た』
 二人が話し終える。パリヌルスとオキテスも何事かを話し合っている。オロンテスが姿を見せる。
 『軍団長、只今、帰りました。今日の成果です。今日は特に報告すべきことがありません』と述べて、売り上げの木札を入れた袋をイリオネスに手渡す。
 『おう、そうか。ご苦労であった』
 オロンテスがオキテスに声をかける。
 『おう、オキテス、長途の海旅、用達を短時日でやってのけたな!ごくろう、ごくろう。疲れのほうはどうだ?』
 『おう、疲労困憊というわけではない。ところで、営業事前活動の件を話しておきたいと考えている。イラクリオンとレテムノンにおける事情が考えていた事情とは、ちと違った。時間はそうかからない、夕めしの後にでもどうだ?』
 『おう、いいだろう。夕めしを終えたら会所のほうに来る』
 『解った。パリヌルス同席してくれ』
 『了解!』
 三人は話し終えて立ちあがる、アエネアスとイリオネスと挨拶を交わして会所をあとにした。