『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1403

2018-10-31 07:22:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 スダヌスが両の手に持ちきれないほど昼の肴を抱えている、オキテスと目が合う。
 『おう、オキテス、待たせたな。お前とこうして昼めしをつまむ、俺のこの上ない喜びなのだ!場を決めろ!』
 二人は腰を落ち着ける。
 オキテスがパンをスダヌスに手渡す。
 『今日から売り出すスペッシャルパンの新製品だ。口に入れてみてくれ』
 スダヌスがパンをちぎって口に運ぶ。
 『おう、なかなかいいじゃないか、おつな味だな、変に気どった味でないところがいい!素朴な味わいが一番だ。これは売れるかもな』
 二人は、歓談を交わしながら昼めしの時を過ごす、オキテスがスダヌスに語りかける。
 『明後日だが、アサイチ、身体を開けておいてほしい。キドニス浜頭のところへ同道してくれ。それを終えたら、レテムノンへ向かう。10月からの売り出しの事前打ち合わせの話に行く』と言って持参した販促ツールをスダヌスに手渡す。
 販促ツールにしげしげと見入るスダヌス。
 『おう、これはいい!この一枚で船の事が一目瞭然に解る。お前らいい船を造っている。キドニス浜頭もテムノス浜頭もお前らの造った船がいいと評価している』
 『それはどんな評価だ?聞かせてくれ』
 『船足だ!船速の出やすさ、航走安定性のいいところが評価されている』
 『そうか、それはうれしい評価だ!それを営業の目玉にして営業話しを進めるかな』
 『おう、そうしろ!ところで事前の話し合い航海の日程は?』
 『明後日に出航する。4日くらいを予定している最終日の夜だが、お前の浜に停泊しようと考えている、よろしく頼む。その頼みをしたかったのだ』
 『了解、了解!待っている。売り出しの展示試乗会の催行はどのように展開する、話していいようなら聞かせろ!』
 『10月の第一日目はキドニアで3日間、レテムノン、マリア、イラクリオンと3日間づつ展示試乗会の催行を予定している』
 『えらい長期催行だな。キドニアでの催行には俺も手を貸す。営業航海は手伝えない』
 『そのあとにまたキドニアでの展示試乗会を予定している』
 『俺としてできるだけ手を貸すことを考える』
 『おう、頼む。スダヌス、お前が手伝ってくれれば、心強い!』
 オキテスとスダヌスの話し合いが落着する。
 アレテスが広場に姿を見せる。スダヌスが声を上げる。
 『お~い、アレテス、こっちだ!』
 『浜頭、何用です?売り場でこちらで浜頭に会うようにと言われましたが』
 『おう、話がある。塩干魚の大量受注だ。お前のところの手持ちについて聞きたい』
 『詳しくですか?詳しい在庫となると明日になりますが』
 『おう、それでいい。明日、打ち合わせの時間をとってくれ。昼めしでもつまみながら打ち合わせる』
 『解りました。そのように準備してきます』
 スダヌス、アレテスの打ち合わせが終わった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1402

2018-10-30 06:19:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスがオキテスに声をかける。
 『おう、オキテス、価格改定の件だが、あのような説明でうまくいったなと驚いている、重畳、重畳!お前は営業の担当に最高だな!よ~く解った!それでだな、集散所でやる営業活動は俺の役務でいいな』
 『おう、よろしく頼む!言ってくれるな!オロンテス。営業の仕事は、謙虚とプライドで勝負するとした!寝ずに考えた結果だ』
 オキテスが右手でこぶしをつくり左胸をドラムする。
 『俺、スダヌスとチョコット話してくる。そして、アレテスの昼便で帰る』
 『了解!』
 二人の脳裏にはいい明日が見えかけている。
 オロンテスは感懐を胸に沸かせる。
 『未来の扉を開ける。押して開けるか、引いて開けるか、それとも開けてもらって、招いて入れてもらうかだな。確かな成果を手にしていきたい!過ぎる欲をかかず、謙虚第一、不思議の働きでいただけるものをいただく、これに徹する』
 オロンテスがひとりごちる、民族の大事に携わる自分ありかたを決める。
 『なあ~、オロンテス、お前と俺だが折衝の場で対手を少しは押せるようになったな。営業のコツが板についてきたのかな』
 『オキテス、それは言えているかもな。俺らが持っている目標意識といったところだな。志、自ずから通じるだ』
 二人は心根満足の目線を合わせる、うなずき合う。
 パン売り場に着く、喧騒を極めている、客対応をするオロンテス。
 『おう、多忙!多忙!多忙はいいことだ!』
 
 オキテスがスダヌスの売り場へと向かう、オキテスがスダヌスの売り場の前に立つ、商談真っ最中のスダヌスと目が合う。
 『俺の話はあとでいい!商談優先!』
 『おう!』
 商談が終わる、客に礼を述べるスダヌス、念を押して場をはなれていく客。
 『おう、オキテス、待たせたな、すまん。久しぶりだ!お前とは三日会わなきゃ久しぶりなのだ。俺の気持ちがわかるな』
 『おう!』
 『いい商談がまとまった。塩干魚の大量受注だ。アレテス打ち合わせをやる。お前、俺に何か用事があるのか?』
 『おう、あるある!用事がなければ来てはならんのか?』
 『いや、そうではない』
 『難しい話ではない。昨夕のことだ、船舶の売り出しの営業計画をスタートさせた。浜頭の力を借りたいと考えている』
 『そうか、お前ら前向きだな。どうだ、もう頃合いだ、昼めしでもつままないか』
 『おう、いいな!今日はこのあと、アレテスの昼便で帰る』
 『広場で待っていてくれ。昼の準備をしてくる』
 『おう!』
 オキテスが広場で待つ、程なくスダヌスが昼のつまみものを持って姿を見せた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1401

2018-10-29 06:59:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスの言葉を聞き終えた一同、オキテスが口を開く。
 『明日、この事案をもって、キドニアの集散所と話し合います。そのうえで、当方の暦で11日には売り出しを控えた営業の事前の話し合いの航海に出航いたします』
 これを聞く一同、イリオネスが告げる。
 『おう、オキテス、了解した』
 イリオネスが応える、アエネアスと目を合わせる。
 『統領、ここでの話、了承されましたね。これでもって一同に営業活動の指示をします』
 イリオネスが姿勢を改める、言葉をも改める、パリヌルスら三人に指示を伝える。
 『一同に伝える!戦闘艇および新々艇の売り出し営業の活動がスタートする。確実に成果獲得せよ!結果を信じてやれ!成功を祈る!この営業活動は12月末日をもって終了とする。以上だ』
 『おうっ!』『おうっ!』『おうっ!』
 喊声と拍手で場が沸く。
 アエネアスが一同と目を合わせる、イリオネスが場を見渡す、二人は意を決めた鋭い視線をもってパリヌルスら三人と目線を合わせる。
 並々ならぬ決意を示している、会議の場を解き散会した。

 クレタ海の朝が明ける。オキテスがキドニアに向かう朝である。
 海は凪いでいる、漕ぎかたが海面を泡立てる、艇上のオキテスとオロンテス、二人は折衝の件を話し合う。
 『おう、オキテス、キドニアの集散所における諸々の件、売り出しに関する一切をまかせろ!その役務は俺が責任を持って対応する』
 『心強い!頼む!』
 『しかしだ、今日、打ち合わせる船の引き渡し価格の件だ。一度話し合って決めている。折衝は難しいと思えよ。なにか策を考えておく必要がある』
 『了解!その件心得ている。折衝、有利展開、四位一体、皆が喜ぶで口説き落とす。任せておけ!昨夜は寝ずに考えた』
 『解った!その件、お前任せだ』
 キドニアへは、凪いだ海を沿岸から遠く離れることなく漕走で航走する、予定通り到着する。
 オキテスは、気を休めることなく、気鋭のアサイチに集散所の詰め所におもむく、担当のハニタスと話し合う。
 交渉の難儀を予想した引き渡し価格の改定は、案に相違して難儀することなく合意に達する、決着する。
 『オキテス殿、いい装備です。装備具合に比べて、価格改定額の加算額が大きいとは言えません。了解です。いいでしょう』
 ハニタス担当が発注しているマリアから受注している戦闘艇の納入についてたずねる。
 『受注戦闘艇の納入予定の件は?』
 『売り出しスタート時に注文主に引き渡しするように準備しています。マリアへは曳航していきますので航海都合により、引き渡しが10月7日となります。マリア集散所の意向がわかればよろしいのですが』
 『飛脚便にて問い合わせしておきます』
 『よろしく願います。オロンテスに連絡ください』
 『了解しました。今、見ているこの販促のツールですが、これはいい!どんな船かが一目瞭然ですな。また、意中に船の事を考えている人が手にすれば、船を真剣に考えますな』
 『それが我が方の期待です。よろしく願います』
 『解りました。オキテス殿、オロンテス殿、互いに力を合わせて、この仕事に花を咲かせましょう』
 『よろしく願います。いい結果を得たいものです』
 集散所との話し合いが終わる。三人が起ちあがる、硬く手を握り合う、笑みを交わす、うなずき合う。
 オロンテスが今日から売り場で展開する新製品のスペッシャルパンをハニタスに手渡した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1400

2018-10-26 12:29:39 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、これでいい!』
 パリヌルスが販促ツール用の木板の作成手配を終える、営業活動計画が動き始める。
 業務終了の時が過ぎる、キドニアからオロンテスも帰って来ている、新価格決定打ち合わせ会議の開始の時となる。
 会所に一同の顔がそろう、オキテスは緊張をかくせないでいる。
 『おう、一同!ご苦労。今日も順調に業務が進んだかな?』
 イリオネスが問いかける。
 『はい!順調に進捗しています』
 『それはよかった、重畳!では、戦闘艇および新々艇の引き渡し価格決定の会議を始める。オキテス、算出した原価の説明をしてくれ』
 オキテスはドックスが算出した数字を提示する、彼が言った価格設定の新しい考えと言える営業戦略価格政策構想について話す。
 アエネアスがオキテスに鋭い目線を注いで口を開く。
 『ほっほう、ドックスがそのようなことを言うとはな。そのような価格に関する考えがあると思ってはいた、しかし、そのように鮮明に意識はしてはいなかったな。おい!オキテス、しっかりしろ!お前の考えが及んでいない価格設定思考だ!』
 『はい、言われる通りです。全く私の不明なところでした。穴があれば入りたい、そのような心境です。この思考で新価格を設定します。営業作戦、百戦して危なからずの新価格を決定します』
 このように言うオキテスの全身に力がみなぎってくる。
 新価格決定は、ドックスの構想思考、オキテスの意思提示、原価試算を踏まえて、誠意の出精価格を告げようとする、ためらっている。
 そのためらいを見て、イリオネスが声をかける。
 『おい、オキテス、お前の告げる価格で決まるわけではない。その価格をこの場で検討するわけだ。ためらわずに数字を言え!』
 『ザックリいきます!決まっている価格に、その価格の20分の1を加算した価格でいきたいと考えています。加算金額は、100ドラクマです』
 アエネアスが意向について、ひと言告げる。
 『おう、その価格は、誠意あふれる出精価格だ。一同の考えを聞いてくれ』
 イリオネスが一同と目を合わせる、一同に問いかける。
 パリヌルスが賛意を示す、オロンテスがうなずく。
 イリオネスが意を伝える。
 『よしっ!その価格で営業を遂行する!いいな。それで目標達成ができませんでしたは許さん!いいな。成功を祈る!』
 イリオネスが決定を宣言する。
 次いでパリヌルスが販促について話す。
 新しい販促ツールを誘客に的を絞って考え、それに基づいて案出した販促手順と販促ツールを一同に提示する。
 一同が手渡された販促ツールに見入る。
 アエネアスが一同と目を合わせながら話し始める。
 『おう、パリッ!これはいい!お前の言う販促手順にうなずける。この1枚の販促ツールは客のほしいを惹起させるな、客の心をつかめる』
 『そうであるようにと期待しているわけです』
 『販促手順、営業戦略価格、販促ツール、お前らよくここまで知恵を出して考えた。これで目標達成、成果獲得が確かとなる』
 アエネアスからこの言葉を聞く、全員が力漲る心映えを見せた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1399

2018-10-25 05:10:40 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスが販促ツールの作成の場に起つ、場を見渡す、責任担当に声をかける。
 『おう、どうだ?上手く出来たか?見せてみろ!』
 出来あがった販促ツールに目線を注ぐ。
 『お~お、なかなかいい!よく出来ている、重畳!これを見れば『お~、こんな船があるのか』と一目瞭然だ。これがあれば客とつながる』
 出来あがった絵図板には、風を全帆にはらんで海上を快走する戦闘艇と新々艇が描かれている。木板の左下部には防御楯を舷に立てた艇の姿図が小ぶりに描かれている。
 そして、両艇が具備している五大特長が文言で書き記されている。
 彼はその出来あがりに満足する。
 『おう、これを夕刻までに10枚仕あげてくれ。俺がとりにくる。いいな』
 『了解しました。早速、作成にとりかかります』
 『そこでだが、この絵図板を作成するとすればだが、今の作成人員で1日でどれくらいの枚数が作れるか?』
 『そうですね。今の人員で総がかりでやって、一日 100枚といったところです』
 『すると、二日間で200枚か』
 『そうです。それ以上やるとすれば絵が雑になります』
 『作成についてお前の意見を聞く。絵図板を作るのについて木板の大きさはどうだ?』
 担当が場に準備している木板に中から1枚を選ぶ、パリヌルスに手渡す。
 『隊長、いま、作成した絵図板の大きさはやや小さいと感じています。ひとまわり大きいこの大きさが絵図を描きやすいのですが』
 『ほう、そうか。解った!早速、手配する。明日、明後日の二日間で200枚を作ってくれ』
 『了解しました。そこで木板の調達ですが、どのように?』
 『それは、俺が責任を持って手配する。明朝、建造の場の部材製作の場に取りに行ってくれ。準備しておく』
 『解りました』
 パリヌルスは、指示を終えると見本の木板を携えてオキテスの席場に向かう。
 『おう、オキテス頼みだ。引き受けてほしい』
 『おう、何だ?』
 『販促ツールの木板の件だ。販促ツールを作成する木板だが大きさが適当と言えない、ドックスに指示して、ツール用の木板を作ってほしいのだが』
 『おう、了解!どの大きさで枚数は?』
 『この大きさで板の厚さは、この半分くらいでもいい、それはまかせる。枚数は200枚、明日朝、明後日朝の二日に分けて受け取っていい』
 『200枚とは多いな』
 『成果目標達成のためだ』
 『解った。ドックスのところへ行く、一緒に行こう』
 起ちあがるオキテス、二人は歩み始める、二人は船台の場にいるドックスに話しかける。
 『おう、ドックス、飛び入りの用件だ。引き受けてくれ』
 『はい!』
 『木板を作ってくれ』
 『解りました。大きさと枚数は?』
 パリヌルスが木板の大きさと枚数について説明する、持ってきた見本の木板をドックスに手渡す。
 『枚数は、ちと多いが200枚だ。引き受けてくれ。これが見本だ。板厚については任せる、これより薄くていい。100枚づつ、二日に分けて受け取る。明朝に100枚、明後日朝に100枚。担当に受け取りに来させる』
 『解りました。明日朝、ここに取りに来てください。大きさは多少ばらついてもかまいませんね。端材で作るものですから』
 『おう、解った』
 オキテスがドックスに声をかける。
 『ドックス、いいな!』
 『解りました』
 パリヌルスは、販促ツール用の木板の手配を終えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1398 

2018-10-24 05:44:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼ら三人の心が和む、ジョークも飛び出す、『事は成る!』 期待効果が成果を獲得すると胸を膨らませる。
 原価計算に基づく販売政策を話し合う。
 三者択一までに絞り込む。
 『統領、軍団長と顔を合わせて話し合うのだ。二人の意見も尊重しないとな。これでいいかな?』
 オキテスが満面に笑みを湛える、パリヌルスとドックスが目を合わせてうなづく。
 彼らは原価計算作業をやりはじめる、客との接衝状態に対応してのやり取りを想定する、三項対立状態までに考えをまとめる。
 『パリヌルス、価格設定の俺の意向が決まった、一応落着だ。お前の考えている販促ツールのことを聞かせてくれ』
 『俺の販促ツールに関する着想はだな。客の購入意思を誘発するツールに神経を集中させて考えている。『ここにこんな船がある』と告知する販促ツールだ。そのような一枚だ!』
 『お~お、それはいいかもだな』
 『今日の打ち合わせ会議までに仕あげて一同に披露する。それを見て販売政策を考えろ!お前が明日、集散所との打ち合わせに持参する分は今日仕上げておく』
 『了解した!』
 『客に『この船が買いたい!』と引き合い心を起こさせる販促ツールだ!必ず効き目があると自信を持っている』
 『えらい自信だな』
 『客と顔を合わせる、客はお前を知らない、お前は客を知らない。客との出会いを結びつける販促ツールだ』
 『お前、自信にあふれているな。その販促ツール早く見てみたい。よろしく頼む』
 『4枚組の絵図、仕様書きの組み合わせツールは、引き合い客用に使って欲しい。販促ツールの役割を明確にしようと考えた』
 『おう、解った』
 ドックスが二人に話しかける。
 『いい話合いですね、感じ入ります。私ら船の建造業務に携わっている部門が安心して仕事に打ち込める話です。やりがいを感じます。よろしく願います』
 ドックスが仕事に打ち込める幸福感をにじませて話しかける。
 重ねて、原価の計算を終えたことを報告する。
 『オキテス隊長、数字が出ています。この通りです。営業戦略価格政策を加味して、営業活動を進めてください。説明はいらないと考えています。書き記した数字を念査してください。私は建造の場に戻ります』
 『おう、手数をかけたな、ドックス!ごくろう!』と言って、オキテスが木板にかかれた数字に見入る。
 戦闘艇、新々艇の2艇の原価について簡明に書かれている。建造用材費と造作手数の二項目について記されている。
 パリヌルスが覗き見る。
 『おう、オキテス、二項目だけについての数字じゃないか。よく考えて書き記してある。決めた引き渡し価格に上乗せする分だけに絞って書いてあるというわけだ。それで話し合える』
 『おう、了解了解。あれこれ迷わず、決断価格でいく!』
 『俺も、これで引きあげる。では、打ち合わせの時にな』
 『おう!』
 パリヌルスが話し合ったオキテスの席場を離れていく、販促ツールを制作している場に足を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1397

2018-10-23 08:04:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスから礼を言われたドックスが姿勢を改める、謙虚に返事を返す。
 『話を聞いてもらってうれしいのは、私のほうです。ありがとうございます。心の中で感謝しています』
 『よし!ドックス、パリヌルスが打ち合わせに午後イチに来る。午前中、時間をかけて原価の計算をやってくれ。価格決定の前提となる原価計算をおろそかにするわけにはいかない。パリヌルスとも話し合って意向をまとめる』
 『了解しました。そのようにはからって、午後イチにこの席場に来ます』
 『おう、待っている』
 ドックスと頭を突き合わせて考える要件が午後になる、オキテスはオキテスなりに新たな引き渡し価格を思案する。
 木炭を手にする、木板を前にして考えることに集中する。
 浜の昼食時間が終わる。午後の作業がスタートする。オキテスの席場にパリヌルスが来る、ドックスが顔を見せる、三人の話し合いが始まる。
 オキテスがドックスが提案した新価格決定要素について話す、パリヌルスが話しに耳を傾ける
 『おう、そうだな。価格決定の自由度だ!オキテス、その意向を尊重して考えねばならんぞ』
 パリヌルスが納得してオキテスに告げる。
 『ほう、それはいい考えだ、面白いではないか。オキテス、お前の面目、躍如じゃないか。営業を楽しめ!俺の考えている成果思考も改めなければならないな』
 『パリヌルス、お前、そのように考えるか、営業が楽しくなる、そのように心底思うか?目標の達成がやってのけれる。そのように思うか?』
 『オキテス、簡単に決めれることを片付けて、原価計算をやろう』
 オキテスと目を合わせる、パリヌルスが問いかける。
 『販促ツールの件だ。お前どのように考えている?お前の思惑を聞かせろ!』
 オキテスが販促ツールについて考えている思惑を語る。
 『特別にこれといった思惑があるわけではない。お前が組み上げた販促手順をお前が作った販促ツールを使ってやるということだ』
 『オキテス、了解した。プラスアルフアを考えて準備する。明日、キドニアに持参する分をあとから担当の者に届けさせる』
 『おう。解った。それは、ありがたい。よろしく頼む』
 『おう、オキテス、原価計算にかかろう!付加価値構造とこの価格政策をうまく使って行けば、『10』の手数で『13』の結果となるかもだな。俺が思惑では、『13』の手数で『10』の成果を獲得すると考えていたが、成果期待が大きくなる。やり方が正しかったか、正しくなかったか、答えが明確に出る!』
 『営業活動は、立案した営業政策に気を配って懸命にやる』
 オキテスは間をとり話し続ける。
 『いい成果は、不思議な成り行きで結果となる。成果獲得失敗には理由があると自覚している。いい成果獲得に懸命に努める』
 『おう、思う存分にやることだ!』
 『了解!お前がいるから心強い!』
 ドックスも加わって三人がうなづく。
 『パリヌルス、考えてみろや、こうして語り合う。『10』を語って『6』くらいしかやらなかったら、成果の達成がおぼつかない!せめて『8』くらいを懸命にやっていい成果を期待する』
 『オキテス、お前の言うようなところかな。『6』と『8』では、答えが大いに違うと考えている。その差『2』が成果の不思議に通じて、成果『13』となる。これ間違いない』
 これを言い合って三人は大笑いをした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1396

2018-10-22 08:01:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、テカリオンの見送りを終える、安堵する、浜作業の一同を招集する、簡単に打ち合わせを終え朝食を共にする。
 浜の巡察を行い、波打ち際に立つ、小島を見つめる。
 小島において漁業業務を宰領しているアレテスの活動に思いをはせる。
 彼とは、日ごろの接触は多くはない、情報交換の少なさが順調の証しとしている。
 
 自分の席場にいるオキテスが高みに輝く陽を仰ぐ、何事かを思案しながらドックスの到着を待っている。
 ドックスの声が耳を打つ。
 『オキテス隊長、待たせました。申し訳ありません』
 『おう、来たか来たか。まあ~、腰を下ろせ。打ち合わせは2件だ。原価の算出には時間がかかるかな?きめ細やかにやるか、ざっくり英断を下すかだ。直ちに仕事にかかる、いいな!』
 『はい、解りました』
 『まず、初めに打ち合わせておきたい用件はだな。テカリオンから新々艇を2艇受注した。あいている船台を使って新々艇の建造のスタートだ。建造は人員を割り当てて、突貫で進めてくれ』
 『解りました。今日は準備を整え、明日から建造に取り掛かります』
 『どう考えても、月うちの出来あがりは無理だろうな。出来あがればそれにこしたことはない』
 『とにかく、とりかかります。やってみますが、月の4分の1が過ぎています。月内の完成は無理ではないかと考えられます』
 『了解した。その時はそのときだ』
 ドックスがオキテスの目を見てこたえる。
 『それから、統領の指示による防御楯の標準装備の件だが、建造する全艇に装備してくれ。これは売りのでっかい目玉になると考えている。今、いずれの造船所で造られている船舶に構造されていない装備だ。俺らが建造する船舶の付加価値構造だ。よろしく頼む』
 『承知しました。戦闘艇のみならず、新々艇にもこの造作をするわけですね。解りました』
 『おう、そうだ。これからお前とやる原価計算は、この件に関してやるわけだ』
 『解りました。造作の用材費と造作手数について考えねばなりません、ですね』
 『おう、時間を必要とするか?』
 『そんな難儀な問題ではありません。ざっくり英断の価格決定は、営業を担当されているオキテス隊長の販売政策決断価格でいいのではないかとも考えられますが』
 『ほう、ドックス、お前、思い切ったことをいうな!販売政策決断価格とはな。新しい価格要素だな。これは面白い!打ち合わせ会議で意見の具申をする』
 『ちょっと時間をいただいて、大雑把ではなく細密に原価計算をしてみます。この付加価値によって利益を増大させるか、買い得価格とするか、その両方を追及するかによって、引き渡し価格の決定ですね』
 『ドックス、お前がそのような価格決定の高度意思思考をするとは考えてもいなかった。価格決定の新しい視点を教えてくれた。ありがとう』
 オキテスはドックスに礼を述べた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1395

2018-10-19 07:25:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ミロス島に向けて出港したテカリオンの船を見送ったイリオネスは、パリヌルスらに声をかける。
 『おう、テカリオンとの取引業務を終えた。次の大事が控えている。心してかかるのだ!全うすると肝に命じてやるぞ!』
 『解りました!』
 アエネアスとは違うイリオネスの立ち位置の言葉である。事を終えた一同が各自の持ち場へと向かう。
 
 オロンテスは、キドニアに向かう荷積みにとりかかる。ギアスはヘルメス艇の艇上で出航準備に声をあげている。
 オロンテスから声がかかる。
 『ギアス、出航準備だが、もういいか?』
 『出航の準備はできました!』
 『よし!出ようか!』
 ヘルメス艇が海面を割り始める、風向きがキドニア行きにふさわしくない、予想していなかった風向きである。
 ギアスが帆張りに迷う、櫂漕ぎでキドニアに向かう。
 
 オキテスはドックスと打ち合わせている。
 『おう、ドックス、今日のことだが、建造の手配、指示を終えたら、俺の席場に来てくれ。戦闘艇、新々艇の新構造に関する原価計算をやる!両艇の販売価格の修正のためだ』
 『解りました。一考しておきます』
 『おう、頼む!』
 
 パリヌルスは、販促ツールについて思案している。
 営業活動計画に基づいて船の購入希望客に対するアプローチに使用する販促ツールがいいのか、いけないのかのチエックと作成数量にについて考えている。
 オキテスと話し合わなくても推量できるが、オキテスの顔をたててやらねばと考える。
 『まあ~、オキテスと話し合って算段するか。それにしても、統領の四位一体構想をうまく機能させる、望む成果の獲得、それには販促活動のありかた次第による。いい成果を得るには?だ』
 彼は脳漿をしぼる、このワークにおいて、目標設定と販促活動、それによる成果の歩どまりについて考える。
 13くらいを目指す活動で10の成果、10の活動で8か7かの成果か、成果が5ということはあるまいと考えている。
 『この業務に携わる者が懸命にワークに取り組む、成果に恵まれる』
 事業体の長であるアエネアスはどのように考えているであろうかと考える。
 『謙虚に人事を尽くして業務を行い、成果を取りにいかず、成果をいただく。そのような姿勢で事を成せ』と告げるであろうと想像する。
 パリヌルスは決断する。『13の販促活動10の成果獲得』これでもって販促活動をデザインする。
 己の力量を知って謙虚に事に処していく、アプローチはオーバーでもかまわない、事後の効果期待とする。
 これを持って販促ツールの作成を決意した。
 『オキテスをたててやらねば、打ち合わせは丁寧にだな。午後イチにやる』とする。
 パリヌルスは、販促ツールの数量を一存で決める、ツール制作担当部署に制作の指示をした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1394

2018-10-18 07:16:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスら三人から、当面の計画を聞きとったイリオネスが口を開く。
 『おう、一同!君らの実行計画を聞いた、納得した。統領、そして、俺、君らの計画に積極的に参画している、一致協力、いい成果とすることを目指す!事が成ると信ずること、これを持して活動をスタートする』
 『了解しました』
 『それからだが、明日、陽の出の刻に出航するテカリオンの船の無事航海を祈って見送る。オロンテス頼んでおきたい。彼らにパンを届けてほしい!以上だ』
 一同から拍手がおきる、イリオネスが会議の終了を告げる。
 『これを持って、会議を終える』
 オキテスが手をあげる。
 『おう、オキテス何用だ?』とイリオネス。
 『軍団長、明日ですが、戦闘艇および新々艇が新構造となります。引き渡し価格の再検討、決定を明日しておきたいと考えています。明後日、集散所と打ち合わせをしなければなりません』
 『おう、そうだな』と言ってイリオネスが間をとり考える。
 『解った。オキテス、重要用件だ。明日、この時間にそれをやる。三人も検討をしておくこと』
 イリオネスが三人に告げる、会議を終えた。

 テカリオンが出航する朝が明ける、白み始めてくる雲一つない空、ニューキドニアの南に位置するレフカオリ山(2452メートル)から南風がおろしそよいできている、陽の出にはまだ間がある。
 テカリオンが乗り組みの者らに声をかける。
 『おう、一同!おはよう!いい朝だ、陽の出の刻に出航する!今日はいい南風が来る。この風でミロスに向かう!いいな』
 間を取って、言い足す。
 『俺は浜まで行ってくる。出航準備を抜かりなくやる、いいな』
 テカリオンが側近を連れて、浜からパンを届けに来たハシケに乗る、浜に向かう。
 浜は朝行事でにぎわい始めている、アエネアス、イリオネスの姿が見える、パリヌルスらも姿を見せる。
 申し合わせたようにテカリオンが側近を連れてアエネアスらにまみえる。
 『統領殿、そして、皆さん!大変、世話になりました。誠にありがとうございました。そのうえ、今朝ほども心のこもったパンをいただきありがとうございます。遠慮せずいただきます。どのように答えていけばいいかと心底から考えています。この恩に報いることができますように努めてまいります。期待してください。ありがとうございました』
 この言葉と同時に一行が深く低頭する。
 『テカリオン殿、あなたの勘が的中しましたな。いい風が南から来ています。航海の安全を祈っています』
 『風読みですか、季節の変わり目です。それを感じたまでです』
 テカリオンが射しくる陽の第一射を目にする。別れを告げる。
 『では、これにて失礼いたします』
 陽が水平線を破って昇る。テカリオンの交易船がでっかい一枚帆に風を受けて波を割り始める。
 曳航する2艇の新船は前後の帆柱に下段帆1枚づつ帆張りして風をはらませて曳かれていく。
 アエネアス以下浜に集った者らが彼らの船を見送る。
 テカリオンの船がクレタ海を北を目指して遠ざかっていった。