『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1228

2018-02-21 08:21:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『イリオネス殿、それで建造されている戦闘艇の客への引き渡し価格ですが、要望されている金額は如何ほどと考えていられるのですかな?』
 『あらゆる面から試算した結果ですが、1950ドラクマから1980ドラクマくらいと考えています』
 『先日私らが船だまりで見た船ですな。漕ぎかたが24人という船の大きさからみて、中型の船ですな。船の大きさ、艤装、施されている新構造、船型から考えて、まあ~、妥当な価格と思われます。船を売っていくというスタンスで考えた価格設定でなければなりません。そうでないと客のほうで買おうと考えても、買われない価格ではだめです』
 『それは言われる通りです。このクレタ島の船舶の価格相場から考えて適正であると考えられる価格は如何ほどです?』
 イリオネスは、ここで語尾に『~かな』をつけようかつけまいかと考えた末、語尾を『~です』できる。ハニタスはイリオネスが問いかける言葉の語尾の強さに気おされる。しかし、ハニタスの折衝力はひるまない。そのうえ、集散所としての矜持もある。客も大事であり、船を建造して集散所に利益を提供してくれるアエネアス方も大事な業務の提携先でもあると考えている。
 双方が建設的に検討する。互いにその立場を考慮して話し合おうと話し合う。
 ハニタスが提案する。
 『イリオネス殿、集散所としての考えを私が述べます。一番目、集散所があなた方に支払う戦闘艇の価格を決定します。二番目、客に提供するサービスを考える。三番目、集散所として、期間を限定しての売り出し記念価格を設定して船の販売をスタートする。集散所としての通常の販売価格を設定しておく。以上が私からの提案です。検討していただけるかなです』
 『解りました、いいでしょう。これは一歩前進というところですな。売り出し記念ということで新艇も加えて、売り出し記念のセールを催行していただければと考えます。ハニタス殿、了解しました検討いたしましょう』
 イリオネスの頭のなかでは、船舶建造の事業体のありかたが、マリアで話し合われた形態でカタチづくられつつある。中型船の建造に特化して造船していくという方針にかたまりつつある。
 イリオネスは、この時、6か月後に訪れる民族のありかたに関する事変にはまだ気づいてはいない。
 彼の決断は速かった。ハニタスの提案する販売政策を承諾する。そのラインに乗って検討を進める、話のまとまりにスピードがある、即断即決で検討が進められていく、結果はイリオネスに取って有利に展開していく、最終的に、戦闘艇一艇当たりの集散所から受け取る金額が増大したのである。ハニタスの提案を快く受け入れた結果としてである。
 『重畳!』
 イリオネスは、声には出さず心の中で吠える。
 ハニタスとの話し合いにのっていった。