『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1004

2017-04-06 12:47:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 小島の北端を過ぎて、ギアスは風を読み取る、風は西から来ている、やや南寄りである、彼は決断した。
 艇を2スタジオン(400メートル弱)北上して、東方やや北向けに転進すると決める。このことを前もって一同に伝えることにした。
 風読みの結果、試走のコース変更を統領他一同に伝える、漕ぎかた連中及び操舵担当のホタスルにも告げる、ほどなく、方向転換点に到達する、艇は難なく方向転換をこなす、艇首を東方向やや北に向けて方向を転換する、ギアスは指示を発する。
 風の強さを考えて、声を大きめに張りあげる。
 『操舵担当!方向転換、右へ』
 ホたスルは細心の注意を払って操舵する。
 『漕ぎかた止め!櫂をあげ!全帆、帆張りせよ』
 帆が風をはらむ、風が艇を押す、ギアスが舵座に身を移す、艇の進行方向をチエックする、ホタスルの操舵に見入る、舵操作の方向を確かめる、ホタスルは舵の腕木を握って艇の航走方向の保持に努める。
 彼らは、試走を終えて浜に帰ってきた。
 イリオネスがパリヌルスに声をかける。 
 『おう、パリヌルス、新しく採用した舵構造の操作具合だが、舵操作のしやすさ、そして、操作効果を見ていた。従来の櫂舵より操作性、そして、その効果ともにいいのではないかと考えられる。この方法は初めてであり、長い航海においては、心配も懸念される。今度の納入航海には予備の櫂舵の準備をしておいた方がいいように考えられる』
 『今回の航海では、その配慮をしておきます。解りました』
 パリヌルスとオキテスはうなずく、パリヌルスがドックスに声をかける。
 『ドックス、ホタスルに舵の構成部材も少なく、頑丈構造ゆえに損壊の恐れのないことを説明しておいてくれ』
 『解りました』
 『それから、オキテス隊長と話し合って試作艇の細部に到るまで充分に点検して、出航に向けての整備を頼む。特に入念に点検してもらいたいのは、衝角構造体の連結結合部に異常がないかということに、特に念入りにやっておいてほしいということだ。解ってくれたな』
 『はい、解りました』
 『明日中に航海に備えての整備を終えてくれ。それでだが、結合部の件についてのみ、俺に報告してくれれば幸いなのだが。以上、頼む』
 そのようにドックスに伝えて、パリヌルスは、場を去っていく。
 オロンテスがキドニアから帰ってきている、統領ら四人が話し合っている、パリヌルスが加わる。
 『おう、パリッ!来たか。いま、オロンテスから話を聞いている』
 『試作艇のレテムノン行の航海に対応しての整備手配の指示を終えました。あとは、納入新艇の整備について、オキテス隊長の指示をドックスが待っています』
 『おう、そうか。オキテス、新艇の納入を終えて、無事に帰ってきてくれ。航海の無事を祈っている』
 『解りました。ありがとうございます』
 イリオネスがオロンテスに声をかける。
 『オロンテス、集散所との打ち合わせ終わっているな?』
 『はい、万事滞りなく打ち合わせを終えています』
 オロンテスがオキテスに声をかけてくる。
 『集散所に当方の納入計画を伝えてある。よろしく頼むとのことだ。それから、航海中の食糧のことだが、堅パンも加えて都合五日分くらい整えるようにしている。それでいいか?出航日の陽の出前に船に積み込む、それでいいな』
 『おう、ありがとう。それで十分だ。俺の気がかりは航海中の天候のことだ』