『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  997

2017-03-28 06:48:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、オキテスならではの船というものに関する感性を持っている。
 『まあ~、そうだろうな。昨日の試乗コースの海上状況と違う海上状態状況にさらされることになる』
 
 彼らが活躍している時代は、紀元前1000年の頃である。現代において古代と言われるこの時代における船とはである。
 人類が考えた水のあるところの移動手段に使用するものであり、必要的、経験的な経験則に基づいて、考え造られてきた大道具である。
 この時代においては、船なるものの科学的解析がなされているわけでなく、造船に関する船舶工学が存在しているわけでもない。船が必要であり、経験的に建造され、想像的、欲望的な則に基づいて船造りがされていたであろうと推察される。
 この時代、エーゲ海を航行していた船を見てみよう。ギリシア連合軍がトロイ攻略に使用した軍船、この軍船は兵士と漕ぎかた合わせて70人から90人くらいと100人近い人員が乗船が可能であり、船首には衝角構造を施した大きな横帆1枚を張って帆走し、漕ぎかたの漕ぎで漕走で航行する大船であった。彼らは、海上で遭遇する敵船との交戦を展開するについて船上の者らが弓で矢を飛ばす、相手船に乗り移って干戈を交える、相手船に自船を衝突させて破砕するといった戦法で交戦したのである。また、植民思考の強いギリシア人が渡海するに使用した中型の船舶、沿岸諸国との交易に使用した交易船、中型、小型の船で多島海域で航行する船を襲い、島々を荒らしまわった海賊船、漁民が漁に使用する小型の船等であった。
 軍船が船首に施した交戦のための衝角構造は、その波割り形態が似ているとはいうものの形態的に現代の造船思考のバルバスバウ的な思考は皆無であった。

 パリヌルスらが考えた戦闘艇は、最大乗船人員が38~40人くらいである小型船である。パリヌルスが考えたカタチの衝角構造は、そのカタチの先端が尖っているとはいうものの奇しくもバルバスバウに似た海上交戦に役立てる衝角構造であった。その衝角構造は、試作艇の水面下に位置する船首の下部に設けられ、航走時の波割りに効果していた。艇上の者たちが体感した波割りである。現代の船舶に採用されているバルバスバウ的効果を航走する試作艇はかもしだしていたのである。
 試作艇が航走するときの航跡の泡立ち状態については、ドックスは、経験的に知っていたらしい。衝角構造体の断面の面積がヘルメス艇の走行安定性に設けた船の海面上の横滑り防止体の断面面積の4倍の大きさなのである。そこでドックスは考えた。
 『お~お、これではいかん。少々工作しなければーーー』と考えた結果の工作である。
 『艇が航走する。艇尾の泡立ちが気になる、構造体の側面、水と接している側面に手を加える』であった。
 『俺がやったあの時の船造りに施した、あのカタチに仕上げる』
 彼は決断した。
 戦闘艇の艇尾にあたる衝角構造体の末尾部を許される範囲で流線形形状に削り工作した。
 試作艇の試走、試乗において、その工作効果を確認した。