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“男のためのガーデニング”改め

御朱印蒐集~滋賀県 犬上郡 多賀町~大瀧神社~

2018-08-26 20:00:00 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 滋賀県犬上郡多賀町には「お多賀さん」で親しまれる「多賀大社」があり、多賀大社奥の院または別当といわれる「胡宮神社」、同じく多賀大社の奥宮あるいは末社と考えられている「大瀧神社」があります。
この3社にお参りすることを“多賀三社まいり”としているそうですが、これは歴史的な経緯があるというよりは観光やウォーキングコースとしての紹介のようですね。

これまで多賀3社の中で「大瀧神社」にだけは参詣する機会がなかったのですが、俗称「瀧の宮」と呼ばれる大瀧神社には景勝地「大蛇ヶ淵」があり、その激流を見たいこともあって参詣致しました。
大瀧神社は307号線を多賀大社から胡宮神社へ向かって南下した後、国道を折れて犬上川に沿い上流へと向かう道筋にありますが、道路脇には“シカ注意!”の看板がいくつか見られるような山間の自然豊かな場所にありました。



大瀧神社は社伝によると807年に坂上田村麻呂の願いにより建立されたとされ、その後の1638年に徳川家光によって造営され現在に至るとされます。
御祭神として祀られている神は「高龗神」「闇龗神」となり、この神は京都の貴船神社と同じ祭神となります。
大瀧・貴船の両社に共通して言えることは、社の付近に勢いのある清流が流れ「水源の神」を司る神ということです。



多賀大社・胡宮神社・大瀧神社の3社には直線距離でも10キロ以上の距離がありますが、大瀧神社を多賀大社の奥宮と考えた場合、かつての多賀大社の社領は膨大な広さであったと考えられます。
特に多賀町周辺には寺院はほぼ目立たないものの、集落単位の鎮守の神社が数多く見られますので、多賀は「お多賀さん」を中心とした神の棲む地域といった感じさえ抱きます。



現在の多賀町は行政の上で犬上郡に属しているのですが、市町村は平成の大合併によって多くの郡部が合併されてしまって“郡”という区分はなくなったと思っていましたので、郡がまだ残っていたのを知らなかったのは不勉強でした。
尚、犬上郡は豊郷・甲良・多賀の各町で構成されており、滋賀県内には他にも蒲生郡(日野・竜王)・愛知郡(愛荘町)の3つの郡が存在しています。
人口的にも4桁くらい人口の町が寄り合って郡として存続しているのには何か諸事情でもあったのでしょうか?と少し不思議に思います。



一之鳥居、二之鳥居を抜けると境内に入ることになりますが、二之鳥居の前には冨王稲荷神社が祀られています。
稲荷大明神を御祭神に祀るこの稲荷神社は多賀町の別所に1057年に祀られた後、1822年に現地に祀られるようになったとされます。



境内に入るとまず目を引くのは“大瀧神社のスギ”と呼ばれる御神木でしょうか。
樹齢300年以上・樹高28m・幹周り5.2mは後方にある犬上川の「大蛇ヶ淵」に向かって長く枝を伸ばしています。
鎮座する場所は犬上川の岸壁の上ですから、この神木が大蛇ヶ淵と本殿との間の一つの結界になっているようにも思えます。



参詣は拝殿からと本殿の両方で出来るようになっており、拝殿でお参りしたあとで本殿前でもう一度柏手を打つことになりました。
本殿の棟木には1638年の銘が残され、胡宮神社本殿・千代神社本殿(彦根市)と共に多賀大社の末社として家光公により再建されたものと考えられているそうです。



本殿の拝所からはさらに奥にも入ることができますが、本殿の左側には「大雷神社」の祠があり大雷命と大山祇命が御祭神として祀られています。
本殿の右には「犬上神社」に稲依別王命をお祀りした祠があり、この社の御祭神の稲依別王命と愛犬・小石丸の伝説は大瀧神社に大きく関わっているといいます。



日本武尊の子である稲依別王命は日頃より猟を好み、猟犬・小石丸を引き連れ山間を徘徊していた時にこの峡谷の淵に人に危害を加える大蛇がいることを聞きます。
七日七夜が過ぎ仮眠をとっている命に愛犬・小石丸が吠えたててきたため、命は怒り腰の剣で一刀のもとに愛犬の首をはねてしまったとされます。
はねられた小石丸の首は岩影より命に襲いかかろうとする大蛇の喉にしっかり咬みつき、大蛇は淵に落ち悶死したと伝承されています。

神話の世界には理不尽な話が多いのですが、稲依別王命は愛犬の忠死に深く感じ、犬胴塚として祀り松を植えたと伝わります。
その松を犬胴松と呼ぶそうですが、今は建てられた祠の中でしめ縄をかけられ枯れ果てた姿を残しているだけです。



小石丸に由来する祠はもう一ヶ所あって、犬上川の大蛇ヶ淵を挟んだ対岸にある祠は稲依別王命が小石丸の首を鎮めた場所と伝わっている祠です。
本宮横には「犬神(犬咬み)神社」、「犬胴松」の祠、「小石丸の首塚」の祠と犬にまつわる伝承の多い神社といえます。
これらの伝承により犬との関わりの深い大瀧神社では月に一度“犬祈祷日”があり、愛犬の健康や長寿を願う方が犬を連れて祈祷に訪れられるようですね。



さて「大蛇ヶ淵」ですが、上流に犬上ダムができるまでは堂々たる瀑布だったと書かれてありましたが、現在も迫力のある渓谷美を楽しませてくれます。
落差10mを流れ落ち、奇岩の間をうねるような淵はまさに大蛇のような淵の名のとおりの迫力があり、見応え充分です。



大蛇が淵へはすぐ近くまで行くことが出来るのですが、岩が多く流れを見渡せる場所がない。
やむを得ず岩を登って見渡せる位置まで行きましたが、岩が激流でスベスベになっているため、岩から落ちそうで怖い。
落ちたら岩場と激流でただでは済みそうにありませんので、姿勢を保ちながら要注意で川上と川下を眺める。





犬上川に併設された遊歩道を進むと展望台のような場所がありましたので、一息入れながら渓谷見物となりました。
ここからの景観ではモミジが峡谷に覆いかぶさるように枝を伸ばしており、紅葉の時期にはいい景観が満喫できそうですね。





最後になりますが、この「犬上」という地名を最初は「犬神」から変形したものかと根拠もなく思っていました。
この大瀧神社の伝承を聞いてみると、「犬上」の名はどうも「犬咬み」からきているように思われます。
土地にまつわる話は現地へ行ってみて、いろいろ見てみないと分らないことが多いようですね。



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5 コメント

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はじめまして (taka)
2018-11-29 15:15:04
大瀧神社のことを検索していて
こちらに辿り着きました。
先日神アカリ(ライトアップ)で
大瀧神社と胡宮神社へ参拝しました。
その時に巡回バスの運転手さんに
「御朱印巡りをしているのですが
昼間来たら誰かいらっしゃいますかね?」
とお聞きしたところ
「地域の人が管理してる神社だから
いないんじゃないかな」
とのことだったのですが
御朱印いただけるんですね。
教えていただきたいのですが
神社に宮司様がいらっしゃったのでしょうか?
それとも電話連絡等されたのでしょうか?
ハーツイースより (takaさんへ)
2018-11-29 17:54:09
大瀧神社には地域の方の奉仕日と祭典の日があるようです。
社務所に日程が書かれていますので参考にされるといいかと思います。

返信ありがとうございます (taka)
2018-11-30 16:49:01
一度伺ってから
日程をチェックしてみます
ありがとうございましたm(__)m
Unknown (るり)
2022-05-17 06:51:25
自然豊かな神社を探していましたら大瀧神社を詳しく説明し写真もあり、大変参考になりました。ご利益がわからなかったですが犬の健康のご利益があると教えて頂き、愛犬が病気なので行ってみます。
ハーツ (るりさんへ)
2022-05-25 06:05:49
大瀧神社はペット(犬)と飼い主に幸せを与える御利益があると聞きます。
川沿いに遊歩道がありますので、愛犬の調子が良ければ散歩してみるのもいいかもしれませんね。

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