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“男のためのガーデニング”改め

菩提寺山(甲西富士)と廃少菩提寺の石仏・石塔

2024-03-24 14:25:25 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 湖南市の「菩提寺山」は、別名「甲西富士」と呼ばれており、富士の名はその山容からというより「近江富士(三上山)」の南側に位置していることに関係がありそうです。
標高353mほどの低い山ですが、登ってみると見所が多く、東と西にある展望岩からの景色は絶景でした。

「菩提寺」は、奈良時代に奈良興福寺の別院として良弁が開基した「少菩提寺」が山名の由来となっており、山中に三十六坊もの堂坊を持つ大寺院だったという。
しかし織田信長の兵火によって堂宇は焼失し、麓にいくつかの石造物を遺跡として残すのみ。
名神高速道路の菩提寺パーキングの名前にもなっていて馴染みがありますが、上りのパーキングエリアには珍しい「美し松」が移植されています。



菩提寺山には7コースくらいの登山道があるようですが、当方は菩提寺多目的広場から登り始めて裏登山道に合流する道で登る。
急登の林道(舗装路)を登りきると、階段状に整備された登山道の登り口があり、ロープまで用意されている。
この後、何ヶ所かの急登にロープが張られていて、大いに助かることになります。



登山道に入るとウグイスの囀りが聞こえてきて、エナガやメジロにジョウビタキの姿が見えて歓迎ムードが漂う。
道の横には何層かに積まれた石垣があり、かつての「少菩提寺」の痕跡なのかどうかは分からないものの、結構長く続いていて段になっている石段でした。



滋賀県の湖東・湖南地方には巨石がある場所が多く、この菩提寺山でも上へ行けば行くほど大きな岩に遭遇します。
下は「重ね岩」という巨石群なのかと思いますが、縦に板状に突起しており、絶妙のバランスで林立しています。



登るにつれて傾斜がきつくなってきて砂地で滑りやすいのでロープが頼もしく感じる。
登りの時よりも下りの時の方がズルッとこけずに済んだので助かったと思います。





裏登山道から登ると山頂に着くまでに、“東展望岩”と“西展望岩”を通ることになり両方とも巨石の上に乗って絶景を眺めることが出来ます。
東展望岩では何とも心もとなさそうな橋を渡って巨石の上まで渡ります。





東展望岩からは先日登った十二坊や鏡山が見えます。
突き出した岩も変わった形をしていますが、ここより先は絶壁なので足がすくんでしまい、進むのはここまでとする。



道の脇に変わった形の珍木があり、名前が「土根生桧」と名付けられています。
なんでこんな奇妙な形になったのか分かりませんが、以前の冬はもっと豪雪が積もって雪の重みで曲がってしまったのか?



土根生桧を越えてさらに登っていくと西展望岩の巨石が道に立ちはだかります。
巨石の上へは迂回も出来ますが、ロープを使って登ることが出来ますので登ってみることにします。



登ってみると岩の上は畳一畳ほどの広さがあり、見降ろす景色は絶景です。
正面には三上山。その奥には琵琶湖を挟んだ先に、積雪して雪野残る比良山系が望めます。



そして菩提寺山(甲西富士)の山頂に到着です。
山頂のスペースは樹林に囲まれ眺望はないが、山頂表示が幾つも掛けられていてハイカーに愛されている山なんだなぁと実感する。



三等三角点「菩提寺」は、山頂の中央部にあります。



山頂で南峰・龍王社への行先表示があり、菩提寺山は山頂部と南峰の2つのピークがあるようでしたので、南峰へと向かってみます。
南峰には龍王社の祠だけがあり、ここで龍王をお祀りしているようでした。



南峰には南峰展望所があり、目の前には一級河川の野洲川が流れ、その先に見えるのは飯道山や阿星山方面でしょうか。
野洲川は扇状地を形成して豊かな農耕地を作ってきた半面、氾濫して水害をもたらしたり、水不足にも悩まされてきたといいます。

野洲川を見下ろす位置に龍王をお祀りして、水害を防止し、農耕に必要な水をもたらしてくれる龍神への祈りが顕著に感じられる場所です。
菩提寺山が甲西富士と呼ばれる以外に「龍王山」の名があるのは、龍神信仰の地だったことからなのでしょう。



南峰から元来たルートを戻って下山しましたが、下山後に「廃小菩提寺」の石仏や多宝塔に立ち寄ります。
「廃小菩提寺」は聖武天皇によって良弁によって731年に創建された寺院で、室町期の図によると、七堂伽藍・三十七坊の大寺院だったといいます。

寺院は織田信長と佐々木六角の戦渦に巻き込まれて廃塵に帰したとされますが、残されている鎌倉期の石仏・石塔からはかつての栄華の跡が見受けられます。
また「廃小菩提寺」は、同じく良弁が創建した金勝寺の「大菩提寺」に対して呼ばれていた寺院だとされている。



石造地蔵3尊像は、高さが158cmの等身大の石仏で、中央の像は鎌倉初期の像とされ、両側の地蔵像は南北朝期の作とされています。
中央の地蔵尊は笠石をかぶった姿となっており、錫杖や宝珠もくっきりと読み取ることができる。
右の地蔵尊は蓮の花と宝珠、左の地蔵尊は合掌しています。

多宝塔は鎌倉中期の1241年の作とされ、高さ454cmの大きな石塔です。
形もよく見かける多宝塔とは違った印象を受ける塔で、銘も残り、国の重要文化財に指定されています。



「石造地蔵3尊」や「多宝塔」があるエリアの奥には室町期の作とされる「閻魔石像」があります。
高さ170cmの閻魔像は、左に阿弥陀如来像・右に地蔵尊を脇侍とし、右側が大きく割れている。
尚、これより奥へ進むと幾つもの石仏や摩崖五輪塔、寺屋敷古墳 という古墳などがあり、最終的に南峰の龍王社へとつながる道があるようです。



菩提寺山は登り下りするのに大して時間がかからない低山ですが、景色・巨石・遺跡と見どころは満載の山でした。
今回はピストンでしたが、今回のルートにプラスして南峰から廃小菩提寺跡へ下ってきても面白そうな山でした。



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