古希からの田舎暮らし

古希近くなってから都市近郊に小さな家を建てて移り住む。田舎にとけこんでゆく日々の暮らしぶりをお伝えします。

「綺麗だね」「うん、綺麗だ」で完結しちゃうけど、

2024年03月20日 16時47分05秒 | 古希からの田舎暮らし
 図書館で借りた本『達人、かく語りき』沢木耕太郎セッションズ(訊いて、聴く)を〈拾い読み〉していたら、こんな文に出会いました。この本はノンフィクションなどの作家・沢木耕太郎と各界の達人との対談です。〈話の中身〉が深い。
 沢木が高峰秀子(女優 1924年生まれ 2010年86歳で没)と対談している中から引用します。


 沢木 〈独りで旅行することにふれながら〉 だから「一人旅はいいですよ」と勧める一つの理由は、誰かに助けられないで、自分一人で自分の実力を測りながら旅行できることなんです。そうやって一個一個確かめながら旅することで、少しずつ身の丈が高くなっていくような感じがあるんですね。
 高峰 確かにそうですね。一人で旅をすると、キザな言い方だけど、自分でものが見えてきますよね。沢木さんが書いていらっしゃったけど、例えば、バスに乗って窓から綺麗な景色を見た時、誰かと一緒の旅だと、「綺麗だね」「うん、綺麗だ」で完結しゃちゅうけど、一人だとその綺麗だという思いが胸の内に静かに沈んでいって醸造されていくと。
沢木 そうですね。


 高峰秀子は、映画祭にかこつけて「パリに脱出した」ときのことを、こう話しています。
高峰  いえ、あれは一人旅なんて呑気なものじゃなく、文字通りの「海外逃亡」なんです。私は五歳の時から自分の意思と関係なく女優という仕事をやって、恐ろしい養母や十数人の親戚の生活を全て引き受けてたから、心身ともにへたばっちゃって、とにかくそういうもの一切から解き放たれたい、半ばヤケクソ気味に日本から逃げ出したんです。

「完結しちゃう」という言い方。仲間同士でにぎやかに、たのしく旅をする。「共感する」。そこで「情感が完結し、つぎのことに目がいく」。自分のなかでなにかが醸成されることなく。 
 この感覚。達人はすごいなあ。   
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