北大路機関

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新空母クイーンエリザベス公試開始,F-35B戦闘機が拓くSTOVL空母新時代と我が国DDH

2017-06-27 22:48:12 | 先端軍事テクノロジー
■F-35,STOVL空母新時代到来
 F-35Bを搭載する軽空母、所謂STOVL空母はSu-27戦闘機等を搭載するより大型のCTOL空母へ対抗し得る、という論点を考えていましたら、イギリスから世界初のF-35B用STOVL空母の話題が来ました。

 F-35戦闘機、本日も三菱FACOにて飛行試験が実施されており、日本向け五号機にあたるAX-5の試験は順調に進んでいます。そんな中、イギリスより新空母クイーンエリザベスの公試開始の一報が入りました。クイーンエリザベス級空母一番艦クイーンエリザベスは除籍されたインヴィンシブル級軽空母代替として二隻が建造されるイギリス海軍最新艦です。

 スコットランドのロサイス造船所を出航した新空母クイーンエリザベスは総建造費30億ポンド、邦貨換算4300億円という費用を投じ建造されました。アメリカ海軍のニミッツ級空母と比較し七割程度の大きさですが、アメリカ以外の空母としては世界最大です。当初は2008年頃に就役する計画でしたが、前級に当たるインヴィンシブル級軽空母は満載排水量20900t、後継艦は当初40000t程度を計画していたものの大型化を求める声も強く二転三転、時間を要しました。

 日本は空母を保有していませんが、しかし、海上自衛隊にはDDH,ヘリコプター搭載護衛艦として満載排水量19000tの護衛艦ひゅうが型2隻、満載排水量27000tの護衛艦いずも型2隻が運用されており、実に4隻が運用中です。一隻の大型艦に全て纏めるのではなく、必要な機能を4隻の全通飛行甲板型護衛艦へ分散し、求められる運用に対応する方式を採っている、ともいえるやもしれません。

 クイーンエリザベス、二番艦プリンスオブウェールズ、ともに建造が進み一番艦は本年就役予定、二番艦は2020年に就役し、満載排水量65500t、F-35B戦闘機等艦載機40機を搭載します。クイーンエリザベス級は垂直離着陸型のF-35Bを搭載する為、STOVL空母という一種の軽空母となりますがCTOL空母たるフランスのシャルルドゴールよりも大きい。

 いずも型護衛艦の満載排水量が27000tですので、クイーンエリザベス級の大きさが良く分かりますが興味深いのはこれだけ巨大な空母ながら、通常の戦闘機を運用できるCTOL空母ではなく、垂直離着陸機を運用するSTOVL空母である点です。実はイギリス海軍も一時、CTOL型のF-35Cを導入する方針へクイーンエリザベス級の設計変更を考えていました。

 F-35Bを導入するという計画の下イギリスはF-35開発JSF計画に参画していましたが、F-35Cは戦闘行動半径が開発当時、空軍型のF-35AやSTOVL型のF-35Bよりも大きく、運用柔軟性を考えればCTOL機を運用できる大きさの船体を有しているのだから設計変更すべき、という視点でした。F-35Bは一機一億ポンド、これだけ高価ならば慎重になる。

 イギリスは現在財政難にあります。2007年の欧州金融危機によりイギリスの主要産業であった金融業が壊滅的打撃を受け、特に欧州連合EUに加盟しながら欧州統一通貨ユーロを導入せず、欧州中央銀行金融規制を受けない為に金融取引手数料等を全欧の金融取引所よりも低く設定し欧州全域の金融取引の中枢を担った為、金融危機は痛い打撃となりました。

 財政難下のイギリスでは、国防費が大幅縮小を強いられ、チャレンジャー2主力戦車近代化改修計画中止、ASCOD装甲戦闘車調達計画中止、タイフーン戦闘機近代化改修中止と初期型早期退役、26型フリゲイト建造計画延期、矢継ぎ早に各種装備計画が中止され、基地施設も続々閉鎖、陸軍師団2個集約案が示され、艦隊も水上戦闘艦20隻を維持できないというかなりの削減を行いまして、新空母を維持する負担の大きさが垣間見えます。

 最優先度の計画として財政難下、クイーンエリザベス級建造は継続されました。この背景には、建造契約が既に欧州金融危機の時点で完了、今更建造中止としても違約金の総額が建造費を上回る為に中止できぬ事由もありましたが、二番艦売却案やコマンドー空母案等取沙汰されたのを経て本日、一番艦クイーンエリザベスは公試開始に漕ぎ着けたのですね。

 一方、F-35Bですが、新しい展開を秘めた航空機です。垂直離着陸が可能なF-35Bは、しかし同時に第五世代戦闘機であり、Su-27戦闘機やF-15C戦闘機といった陸上基地から運用される戦闘機を圧倒できる性能を有しています。そして、イギリスは当初、ここまで開発が長引かなければ、F-35Bをインヴィンシブル級軽空母での運用を検討していました。

 アメリカの同盟国や友好国でなければ、F-35は導入できません。そして日本はF-35Aを試験運用中ですが、インヴィンシブル級軽空母と同程度の艦、海上自衛隊の護衛艦ひゅうが型はF-35Bを、飛行甲板へ耐熱材追加等必要でしょうが、運用可能である事を端的に示しています。F-35Bに対抗する空母艦載機といえばSu-27ですが必要な船体甲板長が大きい。

 日本が導入する機体は空軍型F-35Aですので、護衛艦に発着艦する事は出来ません。イギリスは空軍もF-35Bを導入しますが、イギリス空軍にはEF-2000タイフーン戦闘機が多数配備される前提があり、F-35Bはその上で導入される事となった為、日本がF-35Aを導入する事はある種当然の判断なのですが、F-35AとF-35Bの整備共通性は高いとされている。

 専守防衛の日本にこうした運用が必要かは一考の余地がありますが、防衛上空白地域である小笠原諸島への隣国による空母建造を通じた脅威波及、また東南アジアの我が国友好国への隣国空母による軍事恫喝への牽制、専守防衛を国是としていても、専守防衛を記す憲法が禁じた国際紛争に発展しないよう、予防外交の延長線に必要な措置は数多くあります。

 ひゅうが型2隻、いずも型2隻、海上自衛隊の予算と人員規模では仮に同盟国アメリカが運用するニミッツ級航空母艦を導入するには防衛大綱を改訂し増勢せねば成り立たず、一方、一隻導入しても整備補給と重整備のローテーションが組めません。クイーンエリザベス級の規模であっても、相当厳しい。しかし全通飛行甲板型護衛艦ならば四隻に振り分けて整備する事は出来ました。その上で、F-35Aを導入した訳ですので、新しい日本の防衛へどのように活用するか、考えてみる時期が来たのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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20 コメント

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Unknown (ドナルド)
2017-06-28 00:55:58
イギリスの海軍ファンの皆さんは、大騒ぎをしていますね。幾つか補足しますと、クイーンエリザベス(QNLZ)級は、一度、CATOBAR 空母にして搭載機もF35Cにする話が出たのですが、蒸気カタパルトはそもそも検討外で、EMALS用に取っておいていたはずの区画も、実は別の設備に使われていたことが発覚し、改造費が20億ポンドを越えることが分かったので、当初予定どおりSTOVLに戻した経緯があります。現状のEMALSのトラブルを見ると(これ以上の出費にイギリスは耐えられないという意味で)、正解だったと思います。STOVLは、悪天候に強く、また離陸も着艦もCATOBARより迅速にできるので、ソーティーレートも高くできるメリットもあります。ただ、航続距離は失います。とはいえ、F16/18とハリアーの比較ほどの性能差は、F35CとBの間にはないようなので、まあ、一つの選択肢としてありなのでしょう。

航空機運用能力は、船体の大きさ比よりも差があるので、QNLZ級 6.5万tは、日本のDDH 2万 or 3万t級の数倍の航空機運用能力があります。比較にならないでしょうね。とはいえイギリスはその運用能力を持て余す可能性が高いです。今の所、F35B 24機(最大36機)、マーリン対潜ヘリ16機搭載予定(AEWは対潜型のマーリンにCrowsnestレーダーを取り付けて対応)のようですが、これが揃うのは2020年代後半になりそうとのこと。最初の展開では、アメリカ海兵隊のF35B1個飛行隊を乗せるようです(自国の飛行隊も1こ乗せるでしょうが)。また、航空機運用能力の余裕を生かして、コマンドー母艦も兼ねるかもしれません(というか、他にLPHを買うお金がない)。

昨夜=今朝、Forth橋をくぐって、エジンバラの前を通り過ぎ、ぐるぐると公試をしていました。フリゲート艦のサザランドが同行しているようです。イギリスも久々の空母なので、公試やその後の航空機運用試験で色々と不具合は出るでしょうが、一つ一つ解決して、着実に実戦化を進めてほしいですね。

ttps://youtu.be/BknEq236s_Q
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Unknown (軍事オタク)
2017-06-28 09:42:23
F-35Bは予備機を含めて60機位は配備してもらいたいですね。
早期警戒型ヘリも必要になりますね。
水陸両用団向けの多目的母艦2隻?でも運用してもましょうか!
日本にある程度近ければ、E2Dで警戒してもらいましょう。空中給油型C-130型の6機程度やオスプレイの空中給油対応機も準備しますか。
ニフカはE767には装備できないんですかね?
ニフカ付けてE767にも空中給油受給能力を!
KC46も12機以上買わないとね。
それと、P-1哨戒機改造型で空中給油受給口付き開発配備を!
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空母じゃないよ護衛艦だよ (ニワカのミリオタ)
2017-06-28 20:43:37
やはり、自衛隊もF35Bを導入すべきですね
使い道は山ほどありますよw
A型は60機程度で調達を完了し、B型を60機程導入し、おおすみ型の退役を待たず、多目的輸送艦の名目で事実上の強襲揚陸艦を建造配備すべきと考えます
島しょ防衛のみならず、SEADやDEADなど、敵地反撃能力を見据えた装備品調達が望まれます
自衛隊員にのみ過酷な任務を押し付ける事をお許し下さい(合掌)
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Unknown (PAN)
2017-06-29 00:11:22
F-35Bが様々な可能性を秘めていることは事実ですし、ドナルドさんが仰るように、ハリアーに比べCTOL機に対しての性能差が小さいのは、評価すべきところです。

我が国もF-35Bとそれを運用する空母を導入すべきとの論調がありますが、果たしてわが日本が優先して導入すべき装備か?と問われれば、どうでしょうか?

もし、日本が近い将来に、asean 方面により強力なプレゼンスを示すというのなら、F-35BとSTOVL空母の導入は必須でしょう。しかし南西諸島や対北朝鮮を含む日本周辺エリアを中心に考えるなら、F-35A型の増勢及びF-15J改のさらなる近代化と、空中給油機の増加に予算を振り向けたほうが、費用対効果は高いんじゃないかと思われます。

イギリスの場合は、自国周辺に直接の脅威は少なく、、中東やアフリカなどの外地でプレゼンスを示さなければならないため、他を削っても空母の維持運用が必須でした。しかし日本の場合は、まずは自国周辺を敵対国に囲まれつつある状況です。イギリスとは、備える軍備の質が異なざるを得ないのは、当然の話です。
ならば、F-35BとSTOVL空母を最低2隻分導入し運用する費用を、もっと逼迫している空軍力の増勢に優先的に振り分けるべきじゃないでしょうか?
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お金の使い道 (初心者)
2017-06-29 07:55:32
自衛隊の兵器購入って他国と比べてどうなんでしょうか?。戦車の種類が多いし、AAV7、オスプレイ、グローバルホークとか次から次へと新しいの購入して。既存の兵器の整備費、改良にお金が回らないような気がします。米国から購入する兵器は殆ど米軍の型落ちでしかも数倍の値段で導入してるって本当ですか?。欧州メーカーとコンペにかけて値引きとか民間なら当然やることをやってないんでしょうね。防衛省は買い物のやり方から変えていかないと税金の無駄使いと思います。
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空自さんは? (Unknown)
2017-06-29 13:20:52
最近空自に予算を振り向けることはものすごく費用対効果が悪いのではないか、という気がして仕方ないです。あくまで制空一本主義で、多分理由としては他のことができる予算はもらってない、WW2は本土防空に失敗したから負けたのだ、故に本土上空の制空に全力を注げば勝つる!って感じのようにも思えます。
 これってただの幻想でしかないように思うのですけどね。多分本番では大して役立たずに終わるような気がして仕方ありません。本土上空の防空だけしか仕事しないのなら、今でも十分じゃないのかな。むしろ、空自の任務は本当に本土防空のみに限定して、改めて、海自と陸自の航空戦力の再編の予算増加を考える時期なんじゃないかと思うのですけど。
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Unknown (PAN)
2017-06-30 00:52:44
>空自さんは? (Unknown)さん

ご存じだとは思いますが、南西諸島方面を考えるなら、航空戦力だけを見ても彼我の戦力差は逆転されつつあります。F-35Aの質でカバーするにしても、限界がありますし、実際に有事となれば、北と南西諸島の2正面作戦を十分に考慮しておかねばなりません。

現在の情勢を見るに、海軍力についてはまだ余裕がありますが、こと空軍力はスクランブルの回数増加だけをみても、現状でいっぱいいっぱいというのが正直なとところではないでしょうか?
このままいけば、いずれ航空優勢を保持できなくなるのは、火を見るより明らかです。

とはいえ日本の防衛費が、いきなり倍化するわけではありません。となれば、金食い虫の空母整備を考えるよりも、まずは航空戦力の拡充と、有事の継戦能力の向上(ミサイルの備蓄数とかも含めて)に、まずは予算を振り向けるべきというのが、僕の主張です。
空母2隻+艦載機の導入&運用費用があれば、いったいどれくらいの航空戦力が導入整備できると思いますか?

もちろん、島嶼戦や揚陸戦で、艦艇からの直援戦力があるにこしたことはありませんが、それは国内に限れば空軍力の拡充と空中給油の運用でカバーできるものです。
例えば、F-35Aの増勢がなれば、F-2を本来の使い方である対地支援や対艦攻撃に数多く振り分けることができるわけですから。
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Unknown (PAN)さん (Unknown)
2017-06-30 10:54:19
>例えば、F-35Aの増勢がなれば、F-2を本来の使い>方である対地支援や対艦攻撃に数多く振り分けるこ>とができる

 これ多分やらないか、ものすごく嫌がるでしょww。

>それは国内に限れば空軍力の拡充と空中給油の運用でカバーできるものです。
 
 戦場でガソリンスタンドよろしくお行儀よく整列して空中給油するのですか。すぐに落とされるような気がしますけど。そんな危ないことやりたくないから、空自さんは任務を本土防空に限定したいのでしょう。

 あなたのおっしゃることは、一種の希望的観測でしょう。現実を考えているように見えて、実は非常に非現実的に思えます。
 そもそも、空自の成立時点では、WW2の時点でのパイロットの過剰な消耗に対する反省があったということは聞いています。源田実さんたちですかね。陸海軍共にパイロットの生命を軽く扱い過ぎたことを反省すべき、という見解じゃなかったかな。
 それはもっともなことなんですが、いつの間にか、パイロットだけは安全地帯に!技量さえあげてりゃたとえ負けても引く手数多で、生活にはこまらないわww
と言われても仕方ないような一種のエリート意識の団体になってしまったように見えるんですけどね(その結果個人的技量はなんでも世界一らしいですね。けどF35は個人的技倆がものをいう機体じゃないでしょ)。
 フォトミッションだけはこなしてますけど、おそらく予想される有事には、非常に脆いでしょう。私の言いたいことは、そういう脆い集団にコストをかけるのは再考すべきじゃないか、ということです。いくら機体や装備の増勢を図っても期待を裏切られる結果になるように思います。本当に航空勢力の増勢を測るのなら、日本の国益が関わる領域が拡大しているのですから、空自の領域防空思想はWW2時のゲーリングのドイツ空軍と同様に、こんなはずじゃなかったという結果を産むだけのように思いますので、改めて海自や空自に目的のはっきりした航空戦力を持たせるべきだと思います。
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Unknown (PAN)さん (Unknown)
2017-06-30 11:22:32
えっと、南西諸島方面の緊張に言及されておられますね。確かにスクランブル回数の激増は大変憂慮すべき事態ですね。
 でもそんなことは平時だから言ってられるんじゃないかな。おそらく、本当に南西諸島有事になると、当初はともかく次第に那覇基地は使えなくなるでしょ。だって、あなたのおっしゃる通り航空優勢は中国側にあるのでしょうからね。たとえ旧式機でも雲霞のごとく押し寄せてくればね(今はまだそこまでの能力はないかもしれませんが)。
 そういうときには、九州から出撃するしかないでしょ。1000km以上飛ばないと行けないですよね。現場に一体何分いられるのですかね。20分くらいがいいとこでしょ。これパイロットにストレスたまるばかりで、仕事にならないんじゃないですか?のんびり空中給油?訓練じゃないでしょうが。中国だってバカじゃないですよ。有事にはきちんと給油機なんか落とせるように待ってるでしょ。
 空自の思想は制空一本主義または領域防空一本主義だと思いますが、いつの間にか、空自は日本の領域防空を自分だけでできると思い込んでるんじゃないでしょうかね。空自さんはどうも政治力がありませんね。海自のように粘っこく世論や政治家を誘導する力量にも欠けるように感じます。領域防空は技術とか予算だけのマターではないですよ。現実には、日本の利益領域自体が拡大してると考えるべきでしょ。ところが、空自さんはWW2以来の日本の「領域」を守ることしか考えないから、そこに齟齬が発生する。つまり、いくら予算や機材を増やしても「できない言い訳」ばかりが増えて、大した効果は望めない。ならば、最初から空自の任務は限定して相応の予算と機材で頑張ってもらうしかないのじゃ、ということです。
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Unknown (PAN)
2017-07-01 00:52:16
> (Unknown)さん

空中給油機の脆弱性を仰いますが、中途半端な空母も似たようなものですよ。
航空優勢を保てないなら、STOVL軽空母なんて活動不可能です。我々が今現在の遼寧をたいして脅威に思っちゃいないのは、逆に言えばあの程度の空母がこちらの領域内に出張ってきたら、その気になればいつでも撃沈もしくは無力化が可能だからです。その手段を我が方が持っているから、遼寧はそこまでの脅威じゃないんですよ。

で、それは逆を言えば中国側からも言えることなんです。日本が保持できるであろうレベルの中途半端な空母なら、無力化する手段を彼らは備えつつある。なんたって米のスーパーキャリア相手の対策を考えているわけですから。

対中国相手の手段として空母を計算に入れるなら、少なくとも米スーパーキャリア並みの圧倒的なパワーを備えていないと、とても有事に日本を支える力には足りません。
コミックの空母いぶきの世界は、あくまでもフィクションですよ。現実は、たかが軽空母1隻で、南西諸島エリアの航空優勢を支えることなんてできません。
ならば、今の日本がスーパーキャリア並みの空母を最低2隻+艦載機を最低100機程度導入運用することが可能なのか? 無理でしょう?
だったら、中途半端な軽空母なんぞに金を使うぐらいなら、航空優勢の逆転を阻止するために使うべきでしょうと言っているのです。

WW2時のゲーリングのドイツ空軍を例に出されますが、ならばあれほどの航空機動部隊を揃えていたのにも関わらず、敗れ去ってしまった我が帝国海軍の例もあります。その敗因が圧倒的な物量の差にあるのだとしたら、それは現在の対中国でも言えることなんじゃないですかね?

どうも、空自に対してかなりの反目を持たれているようですが、我が国は海に囲まれた島国です。防衛戦闘を考えるのであれば、空自=海自>陸自となってしまうことは、残念ながら事実です。
しかし予算ベースで言えば、人件費のかかる陸自がもっとも多く4割強、海自と空自が3割弱というのが現状です。この状態で、空母の導入や海自陸自の独自の航空戦力の増強とかいうことが、果たして現実的なことだと思いますか?

陸自の航空戦力にも触れておきましょう。例えば現在のコブラやアパッチの状態は憂慮すべきです。オスプレイなんぞ入れるくらいなら、ヴァイパーでも導入しろよと思います。ですが、何事にも優先順位があり、残念ながら現在の自衛隊のドクトリンでは、攻撃ヘリの後継導入はかなり順位が低いんですよ。なぜならば、攻撃ヘリでは対地支援はできても防空はできない。しかしF-2やF-35なら、その双方が可能だからです。それを空自がものすごく嫌がったとしても、必要ならやらざるを得ない。それが現実です。希望的観測を述べているのがどちらなのか、一度頭を冷やして考えてみてはいかがですか?

それとも、南シナ海に空母派遣してやりあおうとか、弾道ミサイル基地に先制攻撃を仕掛けるためには、空母がどうしても欲しいとか、大陸に攻めj込んだ陸自に直援航空戦力が欲しいとかいう、夢物語でも考えられて
いるのですか?

>現実には、日本の利益領域自体が拡大してると考えるべきでしょ。

その拡大した利益領域にどのようにコミットするつもりなのか、これ以上の議論を展開するなら、まずそこをはっきりさせてくださいね。
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