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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ドイツ連邦軍 ウクライナ危機受けNATO緊急展開部隊整備、用途廃止戦車100両を返納

2015-04-12 21:41:24 | 防衛・安全保障
■ドイツ軍戦車五割増強とロシア新戦車
 AFP通信によればドイツ連邦軍は用途廃止となったレオパルド2戦車100両を再配備する決定を行ったとのこと。

 ドイツ連邦軍の戦車は225両まで削減されています、陸上自衛隊の戦車定数が400両から300両に削減され、安全保障上の大きな命題として討議されていますが、ドイツ連邦軍の削減は更に進んでいます。我が国の場合は、海空防衛力強化と島嶼部防衛強化への転換ですが、ドイツは陸海空軍全てが縮小しているのです。

 冷戦時代末期にドイツ連邦軍はレオパルド2戦車2020両を主力として戦車5045両を配備していたのですが、冷戦終結と共に東欧諸国のNATO加盟等を経て安全保障環境が激変し大幅に削減していました。しかし、ウクライナ危機を受け、ドイツ軍は戦車を過度に縮小し危機に対応できない状況が生じ、急遽戦車を再整備する事となったのです。100両の増備といえば、かつての大量の戦車を運用したドイツ軍であれば単なる方針変更となりますが、現在の戦車225両体制のドイツ軍において100両の増強は戦車の五割増強に他なりません。

 今回再整備されるのは、レオパルド2A6戦車、レオパルド2は1979年に完成した第三世代戦車で、従来の打撃力に重点を置いた第二世代戦車から120mm滑腔砲と複合装甲に150hp級エンジンを採用し機動力と防護力を両立し第三世代戦車というものを定義づけた戦車なのですが、自衛隊の90式戦車や10式戦車と比較し、車体部分の基本設計は1970年代末の延長線上のものを近代化しているに過ぎません。

 この再整備される戦車はNATOがウクライナ危機を受け創設を決定したNATO緊急展開部隊に供出される戦車の主力となり、ドイツは戦車数を一旦328両に戻す方針であるほか、2017年に最新型のレオパルド2A7へ近代化改修する方針と報じられています。こうして整備する戦車により、NATO緊急展開部隊はNATO域内及び周辺地域での事態に対し、二日間で5000名規模の部隊を展開させる構想です。

 一方、ドイツがレオパルド2の近代化改修を進める中、ロシア国内において現在のT-80戦車およびT-90戦車に続く新戦車T-14アルマータとみられる画像がWeb上に投稿され、話題を呼んでいます。従来のT-72を原型とする改修戦車ではなく、新型車体とカバーが被せられた新砲塔が確認されました。

 日本が新型車両を冷戦後開発し続けていたところが、旧西側諸国では例外的に見られていましたが、中国とロシアなどは予算の枠内で同様の努力を続けており、T-14については仰角俯角に限界のあった低姿勢砲塔から大型砲塔へ、発射速度と信頼性に問題が多かったカセトカ自動装填装置も新砲塔で改められ、車体に多数のペリスコープが並び砲塔の自動化等が図られている可能性があります。

 T-14アルマータについては現時点で能力が全く未定であり五月の対独戦勝記念行事に初公開されるおのとみられますが、レオパルド2A7を328両整備するドイツ軍の対応能力もまた未知数であり、特に欧州全般が第三世代戦車の近代化改修以上の新戦車開発計画を行っておらず、将来戦車の模索は停滞したままです。この状況を見ますと、我が国からの10式戦車のNATO諸国への提案を行ってみるべきではないか、と考えさせられると共に、過度に削減した軍事力と有事への対応能力というものを十分認識し施策政策を画定しなければならない、と考えさせられるところです。

北大路機関:はるな
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7 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (ドナルド)
2015-04-13 00:58:58
現状の情勢からして、国防費の増加を決定したドイツが、戦車を(少々)増やすのは当然の対応と思います。保管してあったレオ2を復活させるのでしょう。

近代化と言えば、日本もそろそろ90式にC4Iを追加する必要がありますね。10式の調達を減らしてもよいので、C4Iを90式に増備し(「搭載できない」は嘘でしたから)、戦術教本として10式と90式を基本的に同等にすることが重要と思います。

さらに言えば、普通科へのC4I装備の充実も喫緊の課題ですね。オスプレイやAAV7なんぞ買って、予算を大量に使ってしまったので出遅れるのが残念ですが。。

予算捻出のためには、やはり陸自の実員減が必要かと思います。V22やAAV7の維持費も今後のしかかってききて、整備+兵站部隊の増強も必要ですから、前線兵力は大胆に削減が必要でしょう。それでもその方が結果として精強になる(弱点である兵站や整備を補強することで、継戦能力が上がる)ので、メリットしか無いと思いますが...。

さらに言えば、まずその前に定員を減らす=部隊規模を実員相応にすることで、無駄な高級士官を減らすのが先だと思います。師団を全廃して、16個旅団にすれば良いだけかと。
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Unknown (Unknown)
2015-04-13 08:34:42
はるな様
10式を欧州に提案というのはどうでしょうか?

10式は防御力を除けば優れた新世代戦車だと思いますが、欧州で求められているのはまさに最高の防御力を備えた主力戦車でしょう。特に相手がロシアの新型戦車となると、その能力は欠かせません。
歴代の自衛隊の戦車が、そこまで防御力重視でこなかったのは、北海道を除けば大規模な主力戦車対主力戦車の戦いが想定しにくいこと。基本戦術が車体を隠して待ち伏せする稜線射撃であることなど、欧州や中東で求められる条件とは異なるからです。

ドナルドさんも書かれているように、90式を近代化改修したものであれば、欧州への提案はありだと思いますが、ならば「レオパルト2A7」でかまわないし、運用維持や整備等まで考えると、勝ち目はないですね。一方10式は、それこそ日本の国状に特化した装備ですから、欧州のニーズには合わないんじゃないかと思います。
(誤解なきよう申し上げますが、けして10式を貶めているわけじゃありませんよ。あくまでもニーズが違うという話です)
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肝ぶっ潰した (専ら読む側)
2015-04-13 20:22:46
境界線の国、認識が甘かった期間は些か長くとも捨てないでおいて良かったと思う心や潔しと実感
縮ませ思考(兵站が正面を縛るべき等)など通ぜぬ世界から背を向けた輩は即死と再認
頭を良くして速い乗り物を与えただけでは巻き込まれて潰されるだけと悟りつつ、チビた軍備で蒼い顔しつつ脅威に対峙する他無くなった北欧の某国には成りたくないですな
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Unknown (ドナルド)
2015-04-13 23:43:40
専ら読む側さま

西欧がロシアの脅威に、慌てて陸軍の強化を進めているのは、おっしゃる通りですね。ロシアもあと20年待てば、西欧の機甲部隊は壊滅していたのに、ちょっと急ぎすぎましたね(笑)。

一つだけ反論すると、「(兵站が正面を縛るべき)」は、軍隊として基本中の基本。当然の考え方だと思います。兵站なき正面は、敗北あるのみです。

専ら読む側さまがおっしゃりたいのは、正面を削るのではなく、兵站を強化することで軍備を整えようというコメントだと思います。(であれば、はっきり、そう書いていただきたいのですが。。苦笑)

必要と考える最終的な陸自の規模が、私と貴方で違うのはその通りですが、兵站の必要性、今の陸自の兵站が非常に不足していて弱点になっているという理解は、共有できていると思ってよいでしょうか?

#ここから先はいつものコメントですが、

戦いにおいて、敵の弱点を突くのは基本中の基本。今の陸自の弱点は兵站。すなわち陸自の実力は、完全に兵站の不足によって制限されており、今正面を強化しても陸自の実力は全く強化されない。むしろバランスが悪化して弱体化する。強化するなら兵站であるべき、というコメントです。

その兵站の強化を、ゼロサムでやるのか、予算・人員増でやるのかは、私と貴方で意見が異なるのは確かですが。。。
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Unknown (PAN)
2015-04-14 01:04:39
すいません。
2015-04-13 08:34:42の名無しは、ワタクシPANの投稿でした。
名前入れ忘れました。

個人的には、ドナルドさんがおっしゃるように、90式の近代化改修は行うべきだと思います。そうすればまだまだ一戦級ですよ。もし、現行のままの砲塔じゃ改修が費用対効果が悪いってなら、砲塔だけ10式のものに乗せ換えるって手もあります。イスラエルのマガフやサブラの例もありますから、けして荒唐無稽な話じゃないと思います。

現行の90式の半数は近代化改修し、残り半数はモスボールして、将来に備えましょう。
ついでに次期装軌歩兵戦闘車の開発は当分なさそうですから、89式の近代化改修も行うべきでしょう。

あとは予算をどこから引っ張り出すかなんですが、やっぱりオスプレイキャンセルでしょうか。それで浮いた金の半分は90式改修、半分はチヌークの追加なり次期UH-Xに使うなりしたほうが、なんぼかマシな気がします。
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yuuiti.ineto08@docomo.ne.jp (通りすがりの者)
2015-04-14 02:12:24
戦車、火砲の定数を600に戻し10式増産と特型運搬車の調達を再開して欲しいですね。
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通りすがりの者 様 (はるな(Weblog北大路機関管理人))
2015-04-15 23:43:04
通りすがりの者 様

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