北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【22】自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略(1)(2012-10-08)

2024-05-12 20:24:59 | 海上自衛隊 催事
■日米同盟と米中対立
 今回から自衛隊観艦式の写真と共に本来であれば独立した特集記事とする予定でしたマルチドメインドクトリンへの一視点を文章として掲載します、解説を書くのがしんどくなったとかではない、多分ね。

 アメリカの認識は大丈夫なのか、台湾有事に関する図上演習を行った際に日米は最終的には勝利するがアメリカは航空母艦2隻を失い日本も護衛艦11隻程度を失う、こうした研究結果が2023年に発表されまして詳細は非開示ながら日本の研究者を驚かせました。

 図上演習、ただ当時は詳細が非開示であり、軍関係者と保守系シンクタンクなどが専門分析を行ったことがだけが示唆されていたものの、なんとか勝てるのか、という安堵と、恐らく造船能力を考えると中国のほうが艦隊の建て直しは早い、という危惧などなど。

 日本からは笹川平和財団など参加者があったのですが、あれからまもなく一年というところで徐々に情報が出始めていまして、その詳細は少なくとも両国は全面戦争に達せず、限定戦争の方式をとり台湾海峡有事に日米中が衝突していたという点が示されている。

 戦場の霧、といういま実際に最前線では何が起こっているのかということが指揮官にはわかりにくい部分がなにしろ図上、一目瞭然となっていたことが日本側からみますと、現実として可能なのかという疑問符を投げかけるものではあったという。

 オシントにシギントにコミント、情報収集能力も実際には戦闘を左右するのですがあまりこの点は、アメリカの情報収集能力への自身の現れかのかもしれませんが、日本の視点から見ればその能力を過大評価していないかという疑問符などもついていて。

 短期決戦として一定以上の損失が中国側に積み重なれば中国側が断念するという想定でもあり、いやこれ図上演習ですので年単位の長期戦を想定しないこととしなければ関係者が帰宅することもできませんので仕方ないようにみえますが、違和感のひとつ。

 限定戦争であるためにアメリカは中国本土の基地や施設を叩くことはなく、逆にグアムや沖縄や九州の基地施設を中国が叩かない、報復により全面戦争に展開することを互いが回避するであろうという認識だそうですが、空母いぶき漫画ではあるまいし。

 戦場の霧については、アメリカの視点からしますとロシアウクライナ戦争やハマスイスラエル攻撃とモスクワテロ事件にイランイスラエル本土攻撃を的中させたという自信の現れなのでしょう。けれども情報を実際に活かせたのはイランの例だけにみえます。

 オシントにシギントにコミントについては、これも実際にどこまで実践で機能するのかは、電子戦技術いついて中国は2000年代と2020年代を比較すると西側でいうならば1980年代と2030年代くらいの開きを実現していますので安易に優位を自負できるのか。

 短期決戦については、重要でロシアがなぜ大損害を被っているにも係わらずウクライナから撤退しないのかという点と重なり、民意ではなく権威主義国家の政策決定とそこで失策を認めた場合の政権、というよりも頂点の一人が有する権力基盤への響き。

 長期戦となっているのは、民主主義国家では政権は選挙により倒れるが権威主義国家では政権はある日突然倒れる、それは離反や造反により物理的に倒れることを意味していますので、一回軍事的な失敗を冒せば政変にさえつながりかねない事への理解です。

 限定戦争についても、結局その線引きは曖昧であり、いやだからこそ日本はミサイル防衛に、従来の防衛力を事実上瓦解させるに等しい巨費を投じてまで、整備してきたことを忘れてはなりません、本土は安泰というのは余りに楽観的要素ではないのか。

 マルチドメインドクトリンというアメリカ自身の陸軍などの変革をみますと既に中国本土を叩くことを事実上ドクトリンに内部化していますので、するとこちらも叩かれる想定が必要で、特に基地など補給施設を使えるかどうかが、無視できない不確定要素だ。

 想像力という視点をもう少し日米は腹を割って話し合うべきではないかと思うのです、アメリカは合理主義の国ですので合理的よりも世俗と文化の要素が多い選択肢を選ぶ権力者や国家と、場合によってはその国の世論さえも、分析に失敗していないか。

 太平洋戦争などは日米共通の話題となるところでしょうし、前のトランプ大統領が、真珠湾を忘れない、と公言した半年後には護衛艦かが表敬訪問という時代となっていますので、かが艦名は真珠湾を叩いた空母加賀、遺恨を越えた研究はもっと可能だろうと。

 軍事的に対抗できない国が軍事行動のような自殺行為を起こすはずがないという合理的な解釈は、自暴自棄になった国が何を起こすかまでの想像力が及ばなかったことといえるわけでして、この点でよみに大きく失敗していたのでした。

 沖縄戦の米軍死者数はバルジ大作戦ともよばれるアルデンヌ冬季攻勢での米軍死者数を上回り、しかし沖縄戦に参加した米軍師団は6個ですがアルデンヌ冬季攻勢の参加師団は33個という、追い込まれた軍隊の死闘を予見できなかったのもアメリカだ。

 石油禁輸という、実質的に日米開戦の直接要因になった施策についてもアメリカ政府は日本でガソリン車保有者が人口の4%であることから日本国民を敵に回さない経済制裁として慎重に選んだ結果として石油を対象としたのですが。

 石油禁輸で国民の財産という認識があった海軍の艦隊が稼働できなくなるかもしれないという危機感が太平洋戦争に向かわせる世論の支持に大きく影響するところまでは、やはりここでもアメリカは予測できなかったのです。今回の図上演習とにている点が。

 コメの自由化、いやアメリカに関しては1990年代まで日本の農業政策を相当誤解していまして、石高など日本にとり麦や大豆とは比較にならない一種の信仰とさえいえるコメの部分で日本にアメリカが最大限譲歩していればとまで考えることができなかった。

 コメでアメリカが日本のこだわった完全自給率100%を支持し唯一の例外としていたならば、なにしろコメがあればあとは副食とさえ考える価値観があり、そのほかの分野で、自動車や牛肉や半導体などで大幅な譲歩を引き出せたかもしれないというのに、とね。

 中国とアメリカの軍事面での緊張を考えますと、もうすこし哲学的な意味で中国といいますか、いやアジアを理解するならば日本的な感覚を理解することによってだけでも、ちょっと考え方の違う国というか文化圏があるのだ、と理解の一助となるような。

 日本と中国は防衛戦略でも絶対国防圏という認識と接近巨費領域阻止という概念はかなり共通性がありますし、台湾問題については段階を独立に進まねば、これも中華民こくという独立国なのだからおかしな話ですが、建前と本音を分けられる可能性は、ある。

 太平洋をハワイで中国とアメリカで分割しようという案を中国から突きつけられ、海洋自由原則でそもそもアメリカのものではないという認識のアメリカを困惑させたのが10年ほどまえですが、このあたりのすり合わせも、もう少し精力的に行うべきなのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】京阪600系,琵琶湖畔は石山坂本線を往く大河ドラマ"光る君へ"ラッピング電車

2024-05-12 20:00:20 | コラム
■光る君へ
 あまり光ってもらっては現代では困るのですが。

 石山坂本線では現在大河ドラマ“光る君へ”のラッピング電車が運行されています。平安時代を舞台としました大河ドラマ、貴重なのですけれどももう一つ、藤原氏の平安京における台頭、平城京での台頭と天平天然痘の歴史で衰退、再興の時代を描いてほしかった。

 平安時代ですが、栄華を誇った藤原氏とはいうものの、寺院や邸宅という意味では飛びぬけたものはなく湿地帯や風葬地近くに造営するなど、権力者の方が貧しいという日本独自の逆格差や、末法思想と自然災害というものの史実をもう少し深堀してほしいのですよね。

 600系電車と700系電車が運行される石山坂本線、。京阪電鉄でゃ異色の存在という印象の路線でして本線とは接続されておらず運行車両もはるかに小型の二両編成という独特の印象とともに全路線14.1kmが大津市内を運行しているという大津のローカル線という感じ。

 比叡山坂本からは延暦寺への鋼索鉄道が若干歩いた先にありまして、その界隈には日吉大社など、新しい神社ですが近江神宮が昭和の頃から鎮座していてその近くには古刹の三井寺が広い伽藍を湛え、そして石山神社や石山城址を経て終点の先には石山寺があります。

 大津市を琵琶湖岸に沿って縦断する路線ですので通勤需要と通学需要はある路線なのですが、京都へ向かうには東海道本線と湖西線の輸送力が大きく、20年ほど前には余りに赤字である為に分社化が検討されたほどでしたが10年がかりの収支改善策が実り今に至る。

 観光路線としては、三井寺等もう少し混雑してもいいのではという壮大伽藍なのですが、考えると京都でも善峰寺や大覚寺のように若干でも観光の中心を逸れてしまうと意外と閑散としてしまいますので、やはりなあと思いつつ勿体ないとおもう沿線なのですが、ね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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【京都発幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌-滋賀彦根,美味しいボルシチとウズバルとハリコフ再侵攻の厳しいウクライナ情勢

2024-05-12 18:10:10 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
ウクライナはウクライナでもウクライナ料理の話題をひとつ。

 北大路機関では毎週定期的にウクライナ戦況報告としてISWアメリカ戦争研究所やイギリス国防省情報などが発表しました、ファクトチェックが十分なされた戦況情報の概況をまとめているのですが、4月28日のアメリカ援助再開まで厳しい話題が多かった。

 アントノフAn-225ムリーヤ、ウクライナ語で“夢”を示す世界最大の巨人機の模型が飾られている店がありまして、An-225は2022年2月のアントノフ空港の戦いにおいてロシア軍の攻撃を受け世界に一機だけのAn-225は破壊されてしまいましたが、ここでは。

 ウクライナ料理、さてここは彦根の城下町、京都でロシア料理といえばキエフですが、ちょっと最近は足を運びにくい心持となっていまして、すると本格的なボルシチを頂きたいときには彦根に行く事にしています、彦根城の直ぐ近くで街並みも美しい。

 ボルシチを頂くのはファイナさんという、いやもうこれNHKで何度も紹介されていて有名店ですよね、ロシアウクライナ戦争開戦とともに母娘で日本に避難された方が、一念発起してここ彦根にてキッチンカーから始まりお店を出すに至った新しい名店で。

 サワークリームを添えて、しっかりとしたお肉の身がビーツのスープに透けて見えるボルシチに投じますと、さきほどまでとは急に風味が一新されるという。このほかに細身の葱なども添えられていて、いわゆる“味変”、薬味のようにこちらは齧っていただく。

 ファイナさんは城下町の古民家を巧く改造して、古い街並み商店街に開業しました、故に古民家独特の奥ゆきある鰻の寝床をおもわせる配置を欧風な店内としていて、しかし店の通りの向かいは石田三成の持仏を奉じ朝鮮通信使が宿所とした宗安寺がある。

 ビーツの、独特の酸っぱさというのがボルシチの醍醐味でして、なんでもビタミンを寒い冬でも補充するための料理といい、ビーツのとれない地域ではジャガイモの水煮でビタミンを補充していた歴史があるそうでして、日本には無かった発想なのかも。

 メレンゲケーキ、そうボルシチをセットにしなかったのは今回、ケーキセットにボルシチをつけてみようという、まあ甘いものが欲しかったんですよという心の探求というかもう好奇心がありまして、実際このメレンゲケーキ、口の中でほどける甘さが。

 コーヒーは深煎りだったのですけれども凄い甘さのケーキとはこれもよく考えられたもので甘すぎるという一瞬の考えをコーヒーでこれすっごい苦いよねと初期化してまあ甘いものに暖かいコーヒーとで繰り返し愉しめるようになっているのがちょっといい。

 メレンゲって泡立てている乳清というものですので時間と共にほどけやすくなっているものなのでしょうか、これをふっと口にれるとクリームなのだけれどもそれ以外の工夫という甘さとともに微妙な酸味とこれはジャムなのだろうけれども美味しさが。

 ウズバル、もうここまで来たら個人的フルコース突入だあ、という感じで追加注文してしまいました、なんかグラスの柄が土偶のようになっているのは気のせい、メニューに最初載っていなかったので季節ものかと思っていたら一枚ものメニューに載っていた。

 ウズバル、ドライフルーツをハチミツとともに煮込んで冷やした、真冬のウクライナでもビタミンを補充できる飲み物なのですが、甘さと酸っぱさが独特で、そうウクライナ料理というのは生野菜以外からのビタミンなんだなあ、と理解できるお勧めのひとしな。

 シェフを待つ店、NHKではここファイナさんをこう紹介していました、シェフとなるお店のご主人は現在、ウクライナが動員準備により児童と高齢者を除く男性の出国を禁止しているゆえ、戦争に勝利すれば、シェフが来日できる、その日を待ち店を出ました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア軍ハリコフ州再侵攻,ハリコフ市から北東50kmの距離にあるボウチャンスク市が戦場

2024-05-12 07:01:23 | 国際・政治
■防衛情報:ウクライナ戦争
 日本の防衛は海を渡られれば終わりだという年頭で戦車など重装備を削減していますが遮二無二海を渡られた場合に亡国となるよりは重装備を揃えておく政治の責任を感じます。

 ハリコフ州へのロシア軍攻撃の概況について、突破は現地時間10日早朝の時間帯で攻撃を受けたのはハリコフ市から北東50kmの距離にあるボウチャンスク市、ロシア軍は砲撃と航空攻撃の後に突破を仕掛けたとの事。ウクライナ参謀本部発表ではロシア軍攻撃は撃退されたとしていますが、この防衛先頭にウクライナ軍は予備隊を投入した、と。

 ISWアメリカ戦争研究所は5月9日の戦況分析においてロシア軍は西側の軍事援助到着前に戦果を拡張するべくこの一カ月間攻撃を激化させていると報告しています。そしてISWはイギリス国防省の発表を引用するかたちで、2024年3月と4月との間では攻撃が17%増大しており、チャシブヤールとアウディイフカ、マリンカに攻撃が集中したとしています。

 ロシア軍の損害も大きく、ISWはオランダのオープンソース情報分析団体であるORYXの発表を引用し、ロシア軍は2022年の開戦以来、戦車3000両、装甲車1321両、装甲戦闘車4000両、装甲輸送車431両、耐爆車両56両、ヘリコプター137機、艦艇24隻を喪失し車両と兵器システムの喪失数はじつに15724台に達すると発表しています。
■防衛情報:ウクライナ戦争
 ハリコフ州は新編の第44軍団が主力ということで人員や装備では自衛隊で喩えれば東部方面隊と東北方面隊を合わせた規模になります。

 ロシア軍のハリコフ再侵攻の徴候についてISWは5月5日付戦況分析として、レニングラード軍管区に新設された第44軍団がハリコフ州との国境地域に配備されていると分析しています。この第44軍団は第76空挺師団を中心に5万名規模の部隊となっており、レニングラード軍管区派遣部隊を“北方部隊群”として精鋭部隊との位置づけであるという。

 ハリコフ州国境付近以外ではロシア軍はチャシブヤール周辺において2万から2万5000名規模の部隊を集結させていると、ウクライナ軍ホルティツイア方面報道官の発言をISWは紹介しており、ザポリージャ州ロボティネでの前進やクピャンスク南東部のコトリャリョフカをロシア軍が新たに占領するなど、攻撃は着実に前進につながっているとしています。

 アメリカの対応について、ISWはフィナンシャルタイムズでのサリバン大統領補佐官の声明を引用し、ロシア軍は今後も継続的な前進を続ける等予想していて、アメリカの軍事援助はウクライナの状況を即座に好転させるものではないと認めつつ、戦線を維持できる程度のものではあると想定、2025年以降にウクライナ軍が反転攻勢できると発言しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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