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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

戦闘機国産技術存続の道③ ハリアー、ライセンス生産の可能性と需要

2009-08-12 21:41:04 | 防衛・安全保障

◆ハリアーという選択肢

 ハリアーという意外な名前を出してみたのだが、F-4後継機までの時間の空白を。F-2の需要模索で数年間時間を稼ぎ、続いてハリアーをライセンス生産し、国内用とともに輸出用とする案。F-35が開発されている中でハリアーの需要があるかの議論を最初に行いたい。

Img_9188  F-35は、ステルス機であることに加えて、多国間国際共同開発という背景もあり、様々な機能が盛り込まれており、特に開発費負担の割合に応じて発言力が定められている訳であるので、この結果、より多用途性を求めた代償というべきか、自重が計画値を上回り、軽量化と仕様変更の必要性が浮上、必然的に開発計画と量産計画は遅延を重ねている。

Img_9776  7月30日にF-35Cの量産初号機がテキサス州にあるロッキード社のフォートワース工場にてロールアウトを果たしたが、もともと90年代末期の段階では2008年に量産機の引き渡し開始を目指し開発されているので、量産初号機の技術試験が終了し、初度作戦能力を獲得するのはいつになるのか、という問題がある。

Img_0224  加えて、F-35はステルス機であるという関係上、米国国内では、この機体がオビー条項に抵触するのでは、という議論もあり、特にこれから軽空母を建造しようという国が、F-35Bを導入できるかと問われたならば、確証は無い。また、F-35は開発計画が遅延するとともに、開発に要するコストも増大しており、これは必然的に機体単価に跳ね返る。

Img_8208  また、機体単価が上昇し、生産数の減少につながれば、調達数の減少につながり、これが量産効果の低減に伴う機体単価上昇に、という悪循環を招く可能性も無視できない。もちろん、ここまで開発されたF-35は、普及型第五世代戦闘機として、実戦配備には至るであろうが、構造が複雑なF-35Bについて、特にハリアーほど敷居が、もちろん、ハリアーの導入コストも高いのだけれども、ハリアーよりも割高になる可能性が無視できない。

Img_9963  そこで、日本国内でハリアーをライセンス生産し、各国に供給する、という選択肢が生まれる。イギリスやアメリカで生産終了となったハリアーであるが、日本でライセンス生産というかたちであれば、これは、日本国内でラインを整備する訳だから、生産再開は可能である。販路などは、イギリスのBAEシステムズ社が契約を行い、BAEとの互恵を強調する。

Img_4919  その契約に応じて、三菱重工を中心にライセンス生産を行えば、F-2が生産終了したのちでも、戦闘機、ハリアーは厳密には攻撃機・・・、いや支援戦闘機であるが、ラインの維持は可能だ。F-35に関して、特に海上自衛隊が将来、例えば、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦の後継となる22DDHなどに、その運用を期待した場合でも、F-35Bに関してはライセンス生産が認められる可能性は、F-22のライセンス生産と同等の可能性しか有していない。他方で、ハリアーであれば、ライセンス生産が認められる可能性はあり、ハリアー+の性能も、今後20年を見渡しても、近代化を重ねれば、第一級の性能を発揮できる可能性もある。付け加えて、輸出市場でも、F-2よりは、ハリアーへの需要は高い。何故ならば、F-35を除けば、軽空母用の艦載機となり得る機体が見当たらないからだ。

Img_48991  日本では過去にもこうした、本国での生産が終了した機体を日本で生産し、世界に供給した事例がある。川崎V-107だ。陸上自衛隊の輸送ヘリ、海上自衛隊の掃海ヘリ、航空自衛隊の救難ヘリとして採用されたV-107は、もともと、アメリカのバートル社が、陸軍と海兵隊用に開発した輸送ヘリで、特に海兵隊ではCH-46として採用、後継機V-22の配備まで現役にとどまる予定だ。このV-107は、バートルでの生産が終了してのち、スウェーデン軍やタイ軍、サウジアラビア王室専用機などとして川崎重工で生産され、輸出されている。アメリカで生産が終了したV-107を川崎重工がライセンス生産し、供給したのだ。

Img_4658 本国では生産終了となったハリアー、しかし、この機体を、基本的には海上自衛隊用、そして、もちろんこれは武器輸出三原則の緩和と兼ねてではあるが、日本以外の国においてハリアーを必要としている国に対して、BAEシステムズ社からの発注に応えて三菱重工が中心となりライセンス生産し、BAEシステムズ社を通じて三菱重工が供給する。この方法は、かなり無理があるようには見えるが、日本国内の戦闘機生産基盤を維持存続させる、一つの方法にはなるのではないか、そう考える次第。

HARUNA

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コメント (8)
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