大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 10月13日 猫

2016-10-13 18:12:10 | B,日々の恐怖


 

  日々の恐怖 10月13日 猫




 ひとり暮らししていたOL時代、仕事の帰りに子猫を拾った。
電信柱の影でみゃあみゃあ泣いてて、その愛らしさに抱いて帰った。
 そうは言っても当時住んでいた1DKのマンションは当然ペット飼育禁止だった。
引き取り手のアテはいくつかあったので、とにかく数日間だけ世話しようと思った。
もしオーナーに見つかったら、正直に話して1日か2日待ってもらおうと安易に考えていた。
 マンションは5階建ての5階。女のひとり暮らしなので戸締りはきっちりしてある。
帰宅して玄関に入ると、いつものように鍵とチェーンを掛け、それから子猫を床に降ろした。
すると、トットットッとベッドの下に潜り込んで行った。
覗き込むと、薄暗いベッドの下でジッとしてこっちを見てる。

「 ちょっと待っててね。」

と声を掛けて台所に行った。
 鶏ささみがあったのでレンジでチンして火を通し、裂いて冷ましてご飯に混ぜたものを少しだけ作り、

「 ごはんだよ~。」

と持って行った。
 でもベッドの下から出てこない。

“ あれ?”

と思って覗き込むともうそこにはいなかった。

「 出ておいで~。」

と言いながら探したが何処にもいない。
 私の部屋は色気も何もない殺風景な部屋だったから、隠れる場所なんてない。
窓も玄関も閉まったままだし、トイレやお風呂には窓はない、っていうか、ドア閉まってるし。
 クローゼットの中も探した。
カラーボックスの裏も探したし、テレビの後も探した。
まさかと思ったけど冷蔵庫や洗濯機の中まで馬鹿みたいに探した。
 でもどんなに探しても、確かに連れて帰ったはずの子猫は見つからなかった。
あまりにも見つからないので、連れて帰ったことが夢なのかと思った。
 しかし、私の手と胸には抱いて帰った感触が残っていたし、抜け毛が少ないはずの子猫なのに、ジャケットの内側には明らかに猫の毛と思われるものが小さく一塊ついていた。
訳が分からなくなって、その日は恐怖で泣きながら部屋中子猫を探したけど、ついぞ見つからなかった。
 翌日会社でその話をすると、

「 ゴミを捨てるか何かで一度部屋を出たんじゃないの?
そしてその時に逃げたんだよ。」

と言われた。
 そんなことは絶対ないと確信してたけど、あまりにも怖いので、それが事実で、私が玄関ドアを開けたことを忘れてると言うことにした。
 その日、自宅に帰ってもやはり子猫はいなかった。
そしてその日以来、真夜中に目が覚めると、

「 みゃぁ・・・。」

と言う子猫の鳴き声が、一声だけ枕の下から聞こえて来ることが続いた。
恐ろしさに耐え切れず、半月ほどでそのマンションを引き払った。












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