石仏散歩

現代人の多くに無視される石仏たち。その石仏を愛でる少数派の、これは独り言です。

138 東京都北区の石造-18c-滝野川4丁目

2020-05-10 08:17:00 | 石造物巡り

新型コロナ感染防止のため外出を自粛しています。そのため、取材が出来ず、ブログを新規に投稿することが難しくなっています。これまで日曜日に更新してきましたが、以後、隔週日曜とします。

 

◇真言宗豊山派・南照山観音院寿徳寺(滝野川4-22-2)

山門右に新選組近藤勇の線刻画がある。

寺は近藤勇の菩提寺であり、JR板橋駅前の近藤勇墓地は、寿徳寺の境外地です。

左の小堂には、お不動さん。

その左には「西国十二番/近江岩間寺うつし」の石柱が。

山門を入る。

数年前までは、いつも閉じられていた。

正面に本堂。

階段の手すりの朱色がアクセントをつけている。

階段の両側に立つ仁王には、金網が被せられている。

本堂に向かって左の庫裡前には、異国風仏像がおわす。

向かって右が、インド国サールナート出土/アショーカ王石柱頭部。

左が、釈尊初転法輪像。

「平成十三年十二月八日開眼」と間に立つ石柱に刻されている。

インドやスリランカへ住職が仏教の地順礼に行った、その記念に建てたもの。

ちなみに「初転法輪」とは、お釈迦様が初めて仏教の教義(法輪)を人々に説いたこと。

その時のお姿が「初転法輪像」です。

余談ですが、現在の寿徳寺の住職は、女性。

不明な石造物について訊きに行ったら、女の人が出てこられたので、記憶にある。

初転法輪像の左奥におわすのは、聖徳太子立像。

極めて珍しい丸彫りの太子像です。

台石には「天皇陛下/玉體安穏/皇軍海陸/武運長久/国民豊楽/天下泰平/五穀成就」とある。

戦前教育での聖徳太子のイメージはこうだったのだろうか。

 

本堂の左を墓地へ。

無縁仏塔がある。

突き当りに石造物が並べられてある。

目立つのは、日清、日露戦役の傷病者供養塔。

右から「日清事変戦病死者供養塔」、中が「日清日露戦役戦病死者為供養」、左は「日支事変軍用馬頭鳩大戦傷病亡供養塔」。

数が多いので、全部紹介できない。

一つ二つ、選んで紹介すると、「水神大六天尊護防空守護」。

太平洋戦争中の米軍の空襲防御を祈願するものか。

もう一つ、「帝釈天三猴」。

私にとっては、懐かしい石碑。

なぜなら、このブログ「石仏散歩」の第1回のタイトルが「帝釈天三猴」、まさにこの文字塔を取り上げて、私が石仏に関心を持つ経緯を述べているからです。

https://blog.goo.ne.jp/fuw6606/e/a1a290af21dc961d542fdca3834e7bb0

寺を出る。

石神井川までのゆるやかな坂道は「谷津観音坂」。

      坂下から寿徳寺を臨む

このブログは「石仏散歩」なので、木彫像はどんなに有名であっても取り上げない。

だから、寿徳寺の本尊子育て観音については、触れなかった。

木の皮を煎じて飲むと母乳の出がよくなる銀杏の木とともに、子育て観音(子安観音)目当ての参拝客が、かつてはひきもきらずだったという。

それは、俳句にも詠まれるほどの人気だった。

秋たつや 子安詣の 名の束 河東碧梧桐

谷津観音坂を下る。

思いもしなかった景色が広がって、初めての人は驚くに違いない。

なにしろ本物の大仏が座していらっしゃるのだから。

しかし、大仏を詠んだ明治時代の句はない。

なぜなら平成20年に造立されたばかりだからです。

 

大仏は、正式には、谷津大観音というのだそうだ。

寿徳寺が出した説明板がある。

世界平和  萬民豊楽  子孫繁栄  諸願成就

   谷津大観音は、南照山観音院寿徳寺第二十四世住職新井慧誉和尚の発願によるもので、第
   二十五世新井京誉がその志を引き継ぎ寿徳寺の寺域である当地に建立着手しました。
   寿徳寺がまつる御本尊は聖観世音菩薩であり、谷津の観音様として親しまれておりますこ
   とから谷津大観音と呼称します。
   大仏を正面から拝せる、石神井川にかかる観音橋のたもとから一筋の光明が生まれること
   でしょう。
   平成二十年十二月吉祥日 開眼供養            當山第二十五世 新井京誉

    
概要 唐金鋳造 佛身四・五米
    
   総高石台共七・七米 唐金重量五t
    
設計施工 翠雲堂  監修 鏡恒夫  原型製作 渡邊雅文
    
こちらの蓮華は大観音様がお持ちの蓮華と同寸です。
    
泥中より美しく咲く蓮華にどうぞ触れ合って下さい。 
 

しばらく橋の上から見ていると、通りかかった人の半数以上は、頭を下げ、合掌してゆくのが分かる。

庶民の生活に溶け込んだ大仏さまといえようか。

 

 


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