クイーン・ハーベストのアップルバターのレシピ。イラスト風にしてみました。
ジャム、ピクルス、マスタードなどの保存食を製造し、料理教室を主催しているとレシピを書く機会が増えてきます。
以前はレシピといってもメモ程度の場合もありましたが、製造方法を記録したり、料理教室の生徒さんたちに説明するには正確なレシピが求められます。
数年前から海外の料理本やインターネットのクッキングサイトなどで海外のレシピを見る機会が増え、今では趣味のようになってしまいました。そうすると、プロからアマチュアまで海外のレシピにはほぼ例外なく一定のルールがありそうだ、ということがわかってきます。
特にアメリカでは昔からレシピコンテストが盛んだったことも手伝って、レシピのルールが浸透しているようです。
別の機会に詳しく書きたいと思っていますが、アメリカでジャムなどの農産加工品のコンテストが行われるようになったのは19世紀始めのことで、長い歴史があります。
ヨーロッパから輸入される優れた農産加工品に対抗するためにスタートした「カントリーフェア」で賞金付のコンテストが行われたとのことです。
「カントリーフェア」は全米中大小さまざまな規模で開催されていて、このコンテストで勝ち抜くための攻略本が出版されているぐらいです。
プリザーブス(保存食)で賞を取るための虎の巻
それでは、ちょっと長くなりますが、レシピのルールを人気クッキングサイトの「The Kitchn」(kitchenではありません)の”
How To Write A Recipe Like A Professional”の記事で見てみましょう。
はじめに
・材料リストの前に、タイトルや作る人数や分量を記す。もし他のレシピを参照した場合には、その著作名を記すべき。
材料のリスト
・すべての材料は使う順番に、作り方の手順に沿ってリストアップする。
・使う順番に一貫性があれば、最も主要な材料をはじめにリストアップする。
・正確に記述する(略さない)
・たとえばパイのように、クラスト(パイ生地)とフィリング(詰め物)から出来上がっている場合は、クラストとフィリングでそれぞれの材料を分けてリストアップする。
・いくつかの材料を一度に使う場合には、量の多い順番にリストアップする。材料の準備が必要な場合、例えばレモンのゼストとジュースならその手順からゼストを先にリストアップする。
・ひとつの材料について2種類の数字は使わない。2種類の数字を使わざるを得ない場合は片方を括弧書きにする。例えば、「クリームチーズ1パック(200g)」。
・材料の書き出しが数字ではなく文字の場合は、先頭の文字を大文字にする。"Freshly ground black pepper."のように。
・簡単に準備することができるような作業については、リストにその内容を書く。例えば「卵1個、割る」や「バター1本、柔らかくする」。
・材料を1回以上使う場合は、最初に使う部分に合計の量を書き、さらに「分けて使う」と付け加える。レシピの「作り方」のほうにそれぞれの段階で使う量を書く。
・材料は一般名称を書く(○○社のチョコレートチップではなく、セミスイートチョコレートチップ)。
作り方
・ボールや調理器具などのサイズを書くことは役に立つ。例えば、「大き目のボールに入れる」。
・文章としては完全である必要はない。可能な限り短く、簡潔に。
・コンロの説明の場合は、火力のレベルを示す。例えば、「弱火でかき混ぜる」。
・正確であるか、あるいはそれに近い調理時間を示す。それが正確なら出来具合のヒントになる。例えば、「両面とも1分間焼く」や「18-22分間ないしは生地が薄く狐色になるまで焼く」。
・材料のリストと同様、パイのクラストとフィリングのように、レシピに異なる要素が存在する場合には、「作り方」ではそれぞれの要素を分ける。クラストから始める場合には、先頭に「クラスト」と書き、その方法を記す。さらに「フィリング」として、フィリングの作り方を記す。
・それぞれのステップは別々の段落に分けて書く。例えば、ボールに入れた粉類を混ぜ合わせる場合、そのステップの説明はすべてひとつの段落で書く。
・給仕する際の説明には、どのような皿に盛るか、どのような温度で給仕するか、付け合せ・飾りはどうするのかを記す。
・最後の説明として保存方法について記すようにする。例えば、クッキーのレシピであれば「クッキーは密封容器に入れ室温で3-4日間保存可能」。
かなり細かいルールが示されていますが、欧米ではごく普通にこのようなルールでレシピが書かれていて、ちょっと慣れればわかりやすく、とても合理的。
日本でもこのようなレシピのルールが浸透することを望みます。
また、レシピを公開する場合には、参照したレシピの著作名を書くことが特に重要なルールでしょう。