平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

Q10~この作品は見事な交響曲である。

2010年10月31日 | 学園・青春ドラマ
★「河合はきれいだ! 河合はきれいだ!」
 「踏みにじられるのを放っておけるわけないだろう」
 「違うことはちゃんと言わないと本当になっちゃうよ。そうじゃないって大声で言おうよ」

 みんなが叫び始めましたね。
 第1話では「助けて!」としか叫べなかったのに。

★「Q10にはイヤなことがないのだろうか?」

 通常、他人のために何かをしようとする時、ためらいが起こる。
 「きれいだ」と叫んだり、「放っておけるわけない」「違うって大声で言おうよ」と言ったりするのはなかなか出来ない。
 叫んでも相手に「当たる」かどうかもわからないし。
 だがQ10にはためらいがない。
 これが平太(佐藤健)たち、まわりの人間に影響を与えているようだ。

★今回は<過去>というのもテーマ。
 ・柴田京子の手を振り切って裏切った過去。
 ・「お前はブスだ」と言われ続けてきた過去。
 ・ヤバイ仕事を誘ってくる先輩を信じた過去。
 ・野球の予選で失敗した過去。

 ふり返ると過去はつらいこと、苦いことの方が多い。
 そして過去が人を臆病にする。囚われた存在にする。
 <自分はもう人を好きになっちゃいけないんじゃないか>とか、<自分はきれいじゃない>とか、<もしあの時、手を振り切られてもそのままでいたら>とか。
 過去のことはたまたま吹いた<風>でしかないのに、それにこだわってしまう。
 でも、前に進むためには、自分を縛る過去などは捨ててしまった方がいい。
 それよりも現在だ。
 過去を捨てることで、平太は人を好きになる自分を取り戻し、河合恵美子(高畑充希)は少し自信を持てるようになった。柴田京子もきっと新しい恋に。
 彼らは輝く現在を獲得し、将来ふり返って、あの時は楽しかったと言えるような過去を持てるのではないか。

★ラストの平太のナレーション「誰かを心配したり心配されたりする、そんな愛すべき人間になりつつある」
 ここでは<心配されたり>というのがミソ。
 平太は中尾(細田よしひこ)に手術の傷のことを心配されて戸惑う。
 恵美子は「河合はきれいだ」と叫ばれて影山聡(賀来賢人)を真っ直ぐに見ることが出来ない。
 しかし平太も恵美子もそれを受けとめる。
 心が凝り固まってしまうと<心配されること>が重荷になったり拒絶したくなったりするものだが、平太たちは受けとめた。
 <心配すること>と共に<心配されることを受け入れること>、これも大きな成長である。


 Q10という作品は見事な交響曲である。
 いくつかのテーマ、モチーフが変奏され絡み合って奏でられる音楽。
 平太たちは楽器の演奏者。そこには長調があり、短調があり。
 今回は恵美子によるシューベルトの「風」の独唱もあった。
 Q10はオーケストラの中で異彩を放つトライアングルのような存在かな。
 この作品は視聴者を心地よい音楽を聴くような1時間の世界に誘ってくれる。



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