「あかん、加野屋の若旦那様ともあろうお方のお着物が、あないな縫い目ではあきまへんな」
はつ(宮あおい)があさ(波瑠)に再会した時のせりふだ。
上手いですね。
「こないな姿、見せたくなかった」でも「放っておいてほしい」でもない。
もし、これらのせりふを言っていたら、はつが普通の、安っぽい女性になってしまう。
だから、正解は冒頭のせりふ。
ボロは着ていても、はつは常にあさに注意する、尊敬すべきお姉ちゃんでなければならないのだ。
そして、凛として美しい。
これであさにも、はつが今の境遇にへこたれていないこともわかる。
実に上手いせりふだと思います。
この着物の縫い目の件は、話を発展させることにも使われていた。
前半は、新次郎(玉木宏)の浮気疑惑。
あさは、見事な着物の縫い目が自分が縫ったものでないことに気がついて、「どこぞのおなごはんに縫うてもろたものだす?」と問いただし、三味線の師匠の美和(野々すみ花)との関係を疑う。
そこで、後半。
何と縫ったのは、はつだったのだ。
そして、あさは、新次郎が縫い物の仕事をしばしば持って来て、はつの家の家計を助けていたことを知る。
<浮気疑惑の夫>から<姉のことを気遣っていた新次郎>へ。
見事なストーリー・テリングです。
その他、あさとはつの会話で、はつの姑・菊(萬田久子)がすっかり元気をなくしてしまったこと、あさが京都の実家の両親に、はつの無事を伝える手紙を書くことも描かれた。
石炭で走る鉄の車の当時の人の驚きや、びっくりぽんなカッパ→ビッグなカンパニー(笑)の話も!
実に密度の高い15分です。
脚本、かくあるべし。
何の工夫もなく、ダラダラとストーリーを進行させる今の大河ドラマの脚本家は見習ってほしい。
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