ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』

2007-08-22 10:29:45 | 新作映画
----これって超話題の映画だよね。
試写も盛り上がったでしょう?
「うん。改めて三池崇史とタランティーノの人気を知ったね。
まあ、この映画に関しては主演の伊藤英明目当ての人も
けっこういたようだったけど…」

----で、映画はどうだった?
観る前は、あまり乗り気じゃなかったでしょ。
「うん。自分がマカロニ・ウエスタンを好きなだけにね。
観たい。でも観るのが怖いという」

----それってどういうこと?
「マカロニを撮るんだったら
もっとピッタリの監督がいそうな気がして…。
三池監督だと自分の世界が出すぎるのではというイヤな予感が働いたわけ。
その予感は、ある意味正しかった気がする。
プレスを読んでみて納得したけど、
三池監督はマカロニのリアル世代じゃないんだ。
どちらかというとドラゴン世代。
つまり、この映画も
『三池崇史マカロニを斬る』…みたいな
ちょっと引いた作りにないっている。
よく言えば、マカロニにしては“立派”すぎるんだ」

----立派すぎる?
「うん。室賀厚監督の『GUN CRAZY Episode-1:復讐の荒野』あたりの
チープさがマカロニにはちょうどいい。
もちろんマカロニにもセルジオ・レオーネの『ウエスタン』のような
超大作がなかったわけじゃないけど、
この『ジャンゴ』にはあまりにも多くのことを詰め込みすぎている」

----たとえば?
「物語は語る必要もないほどシンプル。
ある寒村で源氏と平家の末裔が埋蔵金をめぐって争う。
そこに過去あるひとりの用心棒が現れ、
抗争に巻き込まれていくというもの。
まあ、『用心棒』だね。
で、そこに棺桶やガトリング銃、墓場、十字架といった
『続荒野の用心棒』のアイテムを中心に
『荒野の用心棒』の仕込み鉄板、『夕陽のガンマン』のサドルバッグといった
マカロニ・ウエスタンの記憶が
もう至るところに盛り込まれているという寸法。
たとえば、義経(伊勢谷友介)があらぬ方向に向けて銃を放つのに、
それが清盛(佐藤浩市)に当たる。
これなんて、よくあの頃言われた
『この角度では弾は当たらないじゃないか…』をわざと大げさにやってみせたもの。
また、子供が言葉を喋れないというのは
『殺しが静かにやって来る』の主人公サイレンスの設定と同じ。
それを意識してか、ラストの決闘は一面雪の世界だ。
そうそう、ここはチャン・イーモウのパクリじゃないから、
くれぐれも間違えないようにね。
だけど、ここまでやるんだったらせっかく『金』が出てくるんだから
『情無用のジャンゴ』の火傷シーンもやったほうがよかったんじゃないかな。
あの残酷さこそ、三池崇史に合うと思うんだけど…」

----それって世界マーケットを意識してのことじゃないの?
でもこうやって聞いていると、満足度高そうだけど…。
「う~ん。マカロニ好きにはどうかな。
ラストの剣(伊勢谷)と銃(伊藤)の決闘は映画史に残る素晴らしいアクション。
でも、全体的にセルジオ・レオーネのようなケレンとタメがなく、
だからと言ってセルジオ・コルブッチほどに泥臭くない。
タランティーノが出ているから言うんじゃないけど、
彼のファンには受けそうな気がする。
タランティーノ出演の回想シーンなんて
まるで『キル・ビル』タッチ。
あっ、そうそう。
このシーンにはスマップの一人が出ている。
これには驚いたね。
場内もざわついていた」

----あれれっ。言ってもいいの?
「いいと思うよ。口止めされてないから。
さて、そのついでに俳優についても触れれば
もうけ役と言えるほどカッコいいのは桃井かおり。
彼女のアクションにはほれぼれしたね。
あと、女優では木村佳乃もマカロニらしく泥んこまみれに。
あっ、伊藤英明の風貌は
イーストウッドでもフランコ・ネロでも、
ましてやトーマス・ミリアンでもなく
アンソニー・ステファンに近い気がしたな。
あとコメディリリーフでは香川照之と石橋貴明かな。
前者はゴラム、後者は保毛尾田保毛男」

----ニャに言ってるのかわかんないよ。
「まあ、それだけ
ギャグも散りばめられているってこと。
マカロニでは『ミスター・ノーボディ』がそうだったかな。
全編、英語なのにときどき日本語が混じり
TVのセリフなんかも出てくるしね。
あまり言うと、観る人の楽しみ奪うことになるから抑えるけど、
小栗旬演じる正義感の<名前>がポイントだよ。
それじゃ。
『♪ジャンゴ~。アイ・アマトウ・ソロレイ。
ジャンゴ・マディ・メンティカ~~~』」



(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「なに歌ってるのニャ?」小首ニャ

※スケールの大きいウエスタンだ度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー 


最新の画像もっと見る

9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (mig)
2007-09-06 00:35:27
こんばんは、

前者がゴラム、まではわたしも思ったけど後者が
保毛尾田保毛男 ←笑いました
そういえばそうですね~。
わたしタラのファンですが、
後半のご老体はよくあるハリウッド映画のパクリですかね
返信する
■migさん (えい)
2007-09-06 09:46:01
こんにちは。

保毛尾田保毛男をご存知とは(笑)。
ぼくは、最近とんとテレビから離れてしまっているので、
お笑いネタはこういうところくらいしか
引っ張ってこれないんです(汗)。

タランティーノは、最初「なにあれだけ?」と思いましたが、
後半、あそこまで出てくるとは……。
マカロニでなくスキヤキである理由も納得です(笑)。
返信する
さすがプロですね (となひょう)
2007-09-17 21:15:36
お邪魔します。
この作品のパンフレットは700円でした。
活字も幾分大き目なんだけど、だからと言って写真が満載という訳でもなく。
私にとっては物足りなくて700円では高いゾって思わせるものでした。
えいさんのレビューの方がウンチクが一杯 勉強になります。

ところで「ドラゴン世代」って何です?
返信する
■となひょうさん (えい)
2007-09-17 21:56:43
こんばんは。

いやいや。これはプロかどうかという範疇でなく、
単にその時代、
マカロニ・ウエスタンにのめり込んだかどうかという
その程度のお話です。
ぼくなんか、通り一遍にしか観ていなく、
これに関してプロというにはおこがましいです。

「ドラゴン世代」というのは、
1973年に、日本で『燃えよドラゴン』が公開されて、
凄まじいブームが巻き起こり、
その影響下で育った世代のことです。
当時の少年たちはヌンチャクを持ち、
「あちょ~っ」という怪鳥音を発して
主演のブルース・リーのマネをしていました。

マカロニ・ウエスタンは言うまでもなく、
その前の時代にはやっていて、
世代的には三池監督と違うと、
まあ、そういうことが言いたかったわけです。

やはり多感な頃に刷り込まれたものは大きいですから。

ちなみに三池監督は舞台挨拶で
「次はスキヤキ・アマゾネス」と言って、
観客をぽかんとさせていますが、
これはテレンス・ヤング監督の『アマゾネス』のこと。
肉体派の美女ばかりが出てくる映画で、
これは実現したらぼくも観てみたいです。
返信する
こんばんわー。 (minori)
2007-09-24 21:56:16
TBどうもありがとうございましたー。
ホモオダホモオ(変換メンドウでした。
ごめんなさい)懐かしいですねー。
そしてまさにその通りでしたね。
ジャニーズの方、私も「おお」と思いました。
必要あったのかちと首を傾げそうになりましたがこの映画、キャスト陣が豪華だったことは間違いないですね。

それではまたお邪魔します!
返信する
■minoriさん (えい)
2007-09-25 09:29:44
おはようございます。

この映画、なぜか石橋貴明の評判があまり良くないようです。
でも、昔の新春隠し芸大会のヴァージョン・アップみたいな作りから考えると、
彼のような位置づけもあってもいいのではないかとも、
そう思ったりもします。
ぼくは笑えました。
返信する
イーストウッドからブロンソンへ (あかん隊)
2007-09-25 22:12:57
そんな時代に、マカロニが大好きで良くひとりでこっそり(親には叱られることが前提だったため)観に行ったものです。フランコ・ネロ! なんて懐かしい名前でしょう。エンニオ・モリコーネの楽曲も大好きでLPを購入したりしました。>どこへ行った?(汗) ウェスタンではありませんが、「仁義なき戦い」シリーズも好きで、変装(?)して(女子学生がひとりで観に行くにはちょっと…)行きましたっけ。(^^;)
『ロイ・ビーン』は、タイトルだけ記憶にあります。本場モノのウェスタンは、あまり好きじゃなかったのかもしれません。ジョン・ウェインなどは、タイプじゃなかった?(笑) この際ですから、レンタル屋さんで探してみようと思います。
仰る通り、三池監督は、若干引き気味の雰囲気があったようにも感じました。そのせいか、シェークスピアのセリフを入れたりして、まぜこぜ(スキヤキ?)のテイストに、無理にしていたのかもしれませんが、それはそれなりに、個人的には結構ツボで、周りの観客とは違うところでウケていましたっけ。。。
返信する
■あかん隊さん (えい)
2007-09-26 00:09:22
こんばんは。

ぼくも正統派ウエスタンよりもマカロニが好きです。
モリコーネももちろん好きで、
同じくレコードを買いました。

『仁義なき戦い』は変装しなくても観ることできましたが…(笑)。

さて、あかん隊さんのところでお話しした『ロイ・ビーン』は
西部の終わりを描いた映画で
正統派の西部劇とは少し趣をことにしています。

三池監督が苦手なのは
サンプリングというか、
映画の記憶のコラージュ的な感じが強いところです。
「じゃあ、ゴダールはどうよ」と突っ込まれると困るのですが…。
あっちはポップでカッコよかったし、
まだ有機的に生かされていたとしか答えようががないです。

たとえばマカロニだとタメ、ケレンがなくては
あのゾクゾクする感じは出ない。
それなのにこんな感じで詰め込まれると
ゴチャゴチャしすぎていて
どうしても表層的にしか見えないんですね。
もちろんこれは彼の意図的なモノとは思います。
『オーディション』『インプリント ~ぼっけえ、きょうてえ~』
みたいなものもあるわけですから。

でも、やはり自分には合わないですね。
返信する
実験が作品? (あかん隊)
2007-09-26 01:10:40
再来してすみません。えいさんのコメント、実に言い得ていて。同感です。三池監督は、作品を作りながら、それ自体、実験的要素がとても大きいのじゃないか、そんな気がしています。今作のごちゃごちゃ度は、濾過しきれなかったものが、たくさん残ってしまった結果のようにも思います。とはいえ、三池監督のような手法でトライすることも、邦画にとっては良い刺激になっているような気もします。素人ながらですが。もっとも、私も、よほど元気(勢い)がないと観る気持ちになれない監督さんではあります。(汗)
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。