ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』 

2007-05-16 23:08:28 | 新作映画
『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』 

(原題:Borat : Cultual Learning of Amerca for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan)

----この映画ってアメリカで連続2週、
興行収入No.1のヒットを飛ばしたんだって?
「うん。しかも主人公ボラットを演じているサシャ・バロン・コーエンは
ゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディ部門で主演男優賞を獲得。
アカデミー賞の脚色賞にもノミネートされたりしているんだ」

----えっ?だってこれドキュメンタリーなんでしょ?
“脚色”っておかしくない?
「あっ、言っちゃった。
これはね、一種のフェイク・ドキュメンタリー。
まずはその設定から話そうかな。
カザフスタン光栄テレビの看板レポーター、ボラット。
彼はカザフスタン情報省の命令で
偉大なるアメリカ文化を学ぶためまずはニューヨークへ。
たどたどしい英語と気持ち悪いくらいのフレンドリーな態度で突撃インタビューを敢行。
ユーモア指導の先生やフェミニストの女性たちに対しては
カザフの国民性、人種差別、反ユダヤ主義、女性蔑視をむき出しにして衝突。
ところがテレビで一目惚れした
パメラ・アンダーソンがカリフォルニアに住んでいることを知り、
同行のプロデューサーとともにアメリカ横断の旅に出るというもの」

----えっ、カザフスタンってそんなヒドい差別主義の国ニャの?
「そんなわけないだろう(笑)。
第一、このサシャ・バロン・コーエン自身からして
ユダヤ系のイギリス人。
カザフスタンの撮影も実はルーマニアで行なわれている。
でも、旧ソ連の一部だったこの国のことを詳しく知っている人は、
そんなに多くはいない。
そのため、行く先々でボラットが出会う人々は、
一様に彼をホンモノのカザフスタン人で
収録された映像もカザフでのみ放映されると信じてしまうものだから、
いわゆるホンネが次々と出てくる。。
そんな彼らを前に、いよいよもってやりたい放題のボラット。
結果、ガマンの限界に達した人々のさまざまな反応、
困惑、蔑み、怒りなどが見られるってワケだ」

----それはスリリングだね。
でもニャんだかテレビのバラエティにも似てなくない?
「そうだね。
かつてネプチューンがやってた
相手を爆発にまで追い込む緊迫の対談とか、
『電波少年』のアポなし突撃、
さらにはドッキリなどを思い出したな」

----でもさ、肖像権の問題もあるだろうし、
そんなの写しちゃっていいの?
「そう思うよね。
撮影スタッフは逮捕状の発行、州外への退去勧告、
さらには留置場入りとさまざまな危機に見舞われたようだ。
訴訟の数も半端じゃないみたい。
ただ、彼らは放映承諾書や損害保険証書を保持。
おそらく相手に見せたのは撮影直前だろうけどね」

----それじゃあ、観ていてもハラハラだニャ。
「そうなんだ。
なかでもヴァージニア州のロデオ会場のシーンは、
もう一触即発。
ボラットが最初ブッシュを讃え、
イラク戦争支持を高らかに宣言していた頃は
まだ拍手に包まれていたんだけど、
なんとアメリカ国家のメロディに乗せて
めちゃくちゃなカザフの国歌を歌ってしまったものだから大変なブーイングに。
映画には映ってないけど、
激怒したロデオの出場者たちが撮影隊のバンを取り囲み、
リンチを要求したらしいよ」

----それも、わからないでもないニャあ(汗)。
でも、この映画、いったい何を言おうとしてるの?
「結局はアメリカを揶揄して笑い飛ばしているんだね。
世界から見て、アメリカ少しおかしいんじゃないの?ってところを、
さまざまな形でコケにしている。
ときには一種のほめ殺しまでも…。
それと自分が差別主義者になり切ってみせることで、
相手のホンネを白日の下に引きずり出しているんだね。
自分の国では同性愛者狩りをして絞首刑にしていると言うボラットに、
自分たちもそうしようと思っていると答える
ロデオ大会の役員の言葉なんて、
普通の映画ではまず引き出せない」

----それってスゴすぎ!
「でも、本当はこんなこと何も知らないで観た方がこの映画を楽しめる。
ぼくも観終わるまでサシャ・バロン・コーエンはカザフスタン人と思っていたしね(笑)。
あっ、監督は『ボブ・ディランの頭のなか』のラリー・チャールズ。
あれもかなり変な作品だったけど、
これはそれを遥かに上回るね」



     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「きわどいニャあ」ぱっちり


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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (かめ)
2007-05-19 04:41:10
ご無沙汰します。
この映画、日本で公開されたのですか?
知りませんでした。
反響はどうでしたか?
返信する
■かめさん (えい)
2007-05-19 22:55:29
こんばんは。

公開はもうすぐ、来週末からです。
その規模も大きくないので
反響と言うところまで
掴めるかどうか分かりませんが、
もし分かったらこちらで
ご報告いたしますね。
返信する
Unknown (プリシラ)
2007-05-21 20:07:55
これ 笑っていいか 笑って悪いか わからなくなってしまいますよね。
ホント どっきりみたいでした。
ワタシはあんまりアメリカという国に 思い入れがないのですが アメリカ好きな人なら 怒っちゃうでしょうね~。
とはいえ あの大学生たちの素直さには だまされるのが気の毒に感じざるを得ませんでした・・・。
返信する
■プリシラさん (えい)
2007-05-21 22:08:40
こんばんは。

そう、他の人はともかく、
あの大学生たちは可愛そうでした。
彼ら、アメリカでは放映されないと思っていたとかで、
相当に怒っているらしいですよ。
返信する
フェイク? (kazupon)
2007-05-29 11:47:47
えいさんこんにちわ。
記事を拝見してると、結構マジに騙されてる
人がいるのかな?自分ちょっとそういう記事ひっくるめてフェイクじゃないかと深読みしすぎてるんで
すけど(苦笑)
確かにヘンなカザフスタン人を通して、実は
アメリカがヘンって事を言ってる映画に見えました。
ジャッカスがヒットしたのと同じで、こういう
映画ってアメリカ当たりますよね!^^
返信する
■kazuponさん (えい)
2007-05-29 19:00:41
こんばんは。

この映画『ニューズウィーク』か何かで特集が
組まれていました。
その記事によると、やはり大方の人が騙されたみたいですよ。
ていうか、あれが<騙された演技>だとしたら、
あまりにも巧すぎる。
『ブレア・ウィッチ~』とは違うと思いたいです。
返信する
イタズラ (ノラネコ)
2007-06-03 23:16:03
こんばんは。
フェイクドキュメンタリーとしては良く出来てましたね。
テーマ性は過激なギャグと濃すぎるキャラで消し飛び気味な気もしました。
欧米でもテーマ性を積極的に評価する意見と、反米を商売にした単なる娯楽作品という相対する評価があるようです。
いずれにしてもここまで自分たちをコケにした作品が大ヒットしてしまうアメリカは、やはり奥が深いなあと思います。
返信する
ファンファーレ・チォカリーア♪ (かえる)
2007-06-04 17:50:49
こんにちは。
私も映画を観る前にニューズウィークの特集記事を読んだりして、風刺な部分に興味をもって観たので、下ネタの炸裂ぶりにビックリでした。
ロデオ大会や教派の集会以外はそんなにアメリカ人を揶揄している映画のようには感じなくて、結局、アメリカ人はおバカコメディが好きだからヒットしたのかなぁと思えてしまいました。
撮影場所はルーマニアだったんですかー。
それなら、ジプシー・ブラスも納得。
返信する
■ノラネコさん (えい)
2007-06-04 18:04:22
こんにちは。

こんな風刺の仕方もあるんだと、
少し虚をつかれました。
なぜって「風刺」なんてことを感じる以前に
あまりの下品さに驚くことしきり。

でもほんとうにアメリカでのヒットは
不思議です。
返信する
■かえるさん (えい)
2007-06-04 18:25:34
こんにちは。

あの記事、読み応えありましたよね。
ぼくは映画の後に読んだので、
「えっ、この映画そんなに深かったの?」って(笑)。
しかし、あの裸でドタンバタンは
ぼかしなしで観るのは苦痛だろうな…(笑)。
アメリカではどうだったんだろう?
全部見せたのかな?
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