ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『春との旅』

2010-04-20 22:29:58 | 新作映画
----これって3年連続カンヌ国際映画祭の快挙を果たした
小林政広監督の大作だよね。
「そう。実はぼくは『殺し』がDVDリリースされるとき、
ライナーノーツを書いたことがあって、
そのときに、いろいろ調べたんだけど、
彼は、かつてフォーク歌手としてアルバムも出している。
その師ともいえるのが故『高田渡』
今回は、おそらくその時以来の仲と思われる
佐久間順平が音楽を担当。
彼の紡ぎ出す旋律が冒頭から映画を満たし、
テンポのいいカッティングにのって、
観る者をあっという間に映画の中に引きずり込んでいく。
しかし、主演の仲代達矢
自分が出演した150本のうち5本の指に入るという
脚本の素晴らしさもさることながら、
この計算された映像、
それに、もう感服するしかない」

----どういう点が、そんなにいいの?
もう少し噛み砕いて話してよ。
「うん。じゃあ、
その前提となるあら筋から。
主人公は仲代達矢扮する老漁師・中井忠男。
そして彼と一緒に旅をする忠男の孫娘・中井春(徳永えり )。
春は母親が自死して以来、
忠男と二人暮らし。
ところが自分が給食係をしていた学校が廃校に。
職を失った彼女は東京で新しい生活をと考える」

----でも、それじゃあ忠男は困っちゃうよね。
「うん。
兄弟のところに身を寄せたら…と、
そう、春が祖父に話してしまったものだから、
忠男は、自分が言いすぎたと思いとどめようとする春を振り切って、
いまは散らばっている兄弟姉妹のもとを訪ねる。
この設定にぼくは
ジュリアン・デュヴィヴィエ『舞踏会の手帖』 を思い出したんだけど、
まあ、これは小津安二郎『東京物語』 を引き合いに出すのが自然だろうね」

----ということは、あまりいい旅にはならないわけだね。
「そういうこと。
忠男は、かつてニシンがもうかると聞き、
周りのことは考えずに
家を飛び出し北海道に渡ったという過去を持つ。
そんな彼がいまは居候させてくれと頼みに来る。
兄弟たちにすれば、
自分の好きに生きていながら何をいまさら…」

----うわあ。
そんな邪険に扱われる姿を孫に見られるのは
忠男にとっても嫌だね。
「だと思うよ。
いきなり端折っちゃうけど、
それでも、兄弟との本音のぶつけ合いの中に、
血のつながり、絆を春は見てとるんだ。
それが、後半の彼女の“ある行動”へとつながり、
映画は一気にクライマックスを迎える。
このふたつの大きな人生を軸に、
ふたりが訪ねる先の
それぞれに、自分の人生を生きている人々の
一生懸命な、それでも決してままならぬ姿を、
いまの時代の抱える諸問題と照らし合わせながら描いていく。
ぼく自身も、いい加減というか、
好き勝手に生きてきた方だから、
この映画は観ていて辛かった。
自分が責められているような…」

----ニャるほど。それは応えるね。
で、さっき話していた計算された映像と言うのは…?
「たとえばキャメラ。
最初のうち、そのほとんどがフィックス。
そしてその中を、
足を引きずる忠男と、
これまた前かがみでガニ股気味に歩く春。
その動きだけでも映画だ。
しかも、その春の服は真っ赤な色のダウン。
もし、これが普通の地味な服だったら、
ここまで目に焼き付いてはいないと思う。
まるで60年代中期のゴダールのように赤と青がポップ。
色ひとつとっても実によく計算がなされている」

----メチャぼめだね。
「配給、宣伝の方も自信があったんだろうね。
実は、試写開始前にコメント記入カードを渡されたんだ」

----へぇ~っ。
ニャにか、書いたの?
『この時代を生きていくことの厳しさと覚悟。
小林監督の人間洞察力が一流のスタッフ、キャストによって
フィルムに焼き付けられた傑作』

いま考えると、人間洞察力だけでなく、
時代そのものを観る目をも併せ持っているんだけどね。
いずれにしろ、これは2010年を代表する日本映画だ。
ぼくの好き嫌いとは別にしてね」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「今年は見ごたえある日本映画が多いようだニャ」身を乗り出す

『生きる道。きっとある』 関根忠雄さん、さすがのキャッチコピーだ度


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