ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ブーリン家の姉妹』

2008-08-20 09:53:54 | 新作映画
(原題:The Other Boleyn Girl)

----ブーリン家って、どこの家のこと?
「家?(笑)
でもそうだよね。
この名前、ちょっと日本にはなじみないものね。
ところがなんと、
これはかの有名なヘンリー8世の話だった」

----その人、有名ニャの?
「うん。有名も有名。
なにせ当時のヨーロッパの宗教地図を塗り替えたんだからね。
それまで熱心なカトリック教信者で
法王から『信仰の擁護者』とまで言われていたのに、
なんと自分をイギリス国教会の長としてしまった。
確か、日本の聖公会がこの流れを組んでいるんじゃなかったかな」

----へぇ~っ、何がきっかけニャの?
「それがこの映画のお話。
国王ヘンリー8世はブーリン家の姉妹の姉アンと結婚をしたかった。
しかし王には妻キャサリン・オブ・アラゴンがいる。
カトリックでは離婚が認められていない。そこで-------
と、こういうことだ」

----えっ、自分の結婚のため?
それはスゴいニャあ。
「話はそれるけどヘンリー8世は結局6回も結婚。
ちなみに
ロックグループ、イエスの絶頂期に発表された
リック・ウェイクマンの初のソロアルバムは
この『ヘンリー8世と6人の妻』をタイトルとしているよ。
さて、映画に話を戻すと、
これはベストセラー小説が基になっていて、
フィクションがけっこう多く含まれている。。
アン(ナタリー・ポートマン)には
メアリー(スカーレット・ヨハンソン)という妹がいる。
メアリーはヘンリー8世(エリック・バナ)の愛人。
ここは史実どおり。
ただ、映画ではメアリーが男の子を産んでいるけど、
実際に男の子を産んだのは、
彼女とは違う別の愛人らしい。
と、このように姉妹の相克が数多く脚色されているため
観ていてほんと飽きないんだ」

----そうか、映画はこの姉妹の戦いのお話ニャんだ。
「まあ、ちょっと待ってよ。
アンとメアリー、
ふたりの母レディ・エリザベス(クリスチャン・トーマス・スコット)の弟にあたる
ノーフォーク伯爵(デビッド・モリッシー)は
ヘンリー8世の妻キャサリン・オブ・アラゴン(アナ・トレント)が
男の子を産まないことに目を付けて、
莫大な富と権力を得ようと姪のアンを差し出そうとする。
ところがヘンリー8世は
機知に富み男まさりのアンよりも
気だてがよくて愛らしい新婚のメアリーに惹かれていく。
そこでアンは別の公爵と結婚をあげるが彼には許嫁が…。
そのことをメアリーから聞いた家族は
ヘンリー8世の耳に入ってはまずいと
アンをその公爵と別れさせフランスの宮廷に送る。
やがてメアリーは懐妊するも体を衰弱。
彼女への興味を徐々に失っていくヘンリー8世を繋ぎ止めるために
今度はアンを呼び戻す。
さて、物語はここから急展開。
すっかり洗練された女性として生まれ変わったアンは、
その魅力で国王を虜にしてしまう…」

----なんだかイギリス版『大奥』って感じだね。
どこの国でも絶対的権力者がいて、
周りはそれにあやかろうとするわけだ。
「そう。
で、その権力者は決まって女好き(笑)。
さて史実では
アンは10代の頃のほとんどをフランスで過ごしている。
ところがこの映画では、
彼女の行動のすべては、自分が受けた仕打ちへの復讐として描かれる。
つまりドラマチックな改変がなされているんだね。
アンは王になかなか体を許さず、相手をじらしていく。
『愛人では嫌だ。正式な結婚がしたい……』」

----ニャるほど。そこで王は宗教さえも変えた。
「うん。
で、その裏にアンがいた------。
『映画で観ると歴史は分かりやすくオモシロい』という
まさにこれはそのお手本のようなものだね」

----ストーリー面以外ではどうニャの。
「歴史に登場する候補地。
その大部分は観光名所となっているとかで
そのほとんどはセット。
監督はなんとインドの町からベルリンのクラブまで、
世界中のさまざまな写真からそのヒントを得たらしい。
あと、目を引くのは衣装。
チューダー朝のドレスには
それほど多くの種類の形やシルエットの違いはないということで、
アンとメアリーの衣装は色合いを変えてその差を出したらしい。
これは観てみたらすぐ分かるよ。
アンの色の方が原色に近く、くっきりしているからね」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「こういう映画は気づくと、のめり込んでいるのニャ」身を乗り出す

※『ミツバチのささやき』の女の子が女王キャサリン・オブ・アラゴン役だ度

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22 コメント

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エリザベス・エリザベスゴルデンエージ・レディージェーンが続けてみたいぞ! (亜蘭真 主美士)
2008-08-21 14:11:25
ラストのエリザベスちゃん観てそうかんじました。
この作品衣装舞台ふくめて、すべてが絵画的でした。どのシーンを一時停止(きりとっても)しても一枚の絵として成立する。フェルメールであったり、レンブラントであったりと・・・。それは多分背景のどこかに光があり逆光の使い方がうまいせいかもしれません。衣装等のことはえいさんの書いた通りで、僕の補足はないですので、女優ふたりの演技について、だれかがこの作品のキャスティングはナタリー・スカーレット反対の方が、イメージ的にあうかも・・・というのがあったんですが、僕はこれで正解だと思いました。ナタリーは直接的というか、表情も派手。対照的にスカーレットは動きがあまり無い中での表現力と、どちらも役柄にあった演技でした。もちろん逆をやってもどちらもこなしていくでしょうが・・・。
ラスト近くのクライマックスのナタリーの見せ場のネックレスを取る手がふるえていたのが印象的でした。
よだんですが、リック・ウェークマン、今度はセンター・オブ・ジ・アースで、地底探検をおもいだされるんだろうか?あの、ジャケットの中心に丸い筒状のアルミ箔を置いて画をみるということをしたのをおもいだしました。
大奥というところは云い得て妙でした。
篤姫もそうですが、こういった女性を中心とした話は、やはり女性の脚本?とおもっていましたら、やはりメインの方はじょせいでした。余談ですが・・・。
■亜蘭真 主美士さん (えい)
2008-08-21 21:34:46
こんばんは。
そうそう、光のことを書き忘れていました。
あの左斜め上から差し込む光の使い方は
「レンブラント照明」という言葉を思い出させました。
そのとき同時に脳裏に浮かんだのは
「『バリー・リンドン』は自然光のみで照明を使ってなかったよな」ということ。
今回、長くなりすぎてここまでは書ききれなかったです。
でも、久しぶりに光を感じさせた映画でしたね。
あのスカーレットが床に伏せて
その部屋を暗くした中に差し込む光は、
少し見え見えでしたが…。

ぼくもナタリー、スカーレットはこのキャスティングで正解だと思います。

あっ、「大奥」の言葉はプレスに使用されていたのを頂いております。
これ考えた人、エラいですよね。
★えいさんこんにちは★ (mig)
2008-09-20 10:49:14
観ました、期待していたけどすごく映画的に作られてて、好みでした
大奥ってみたことないんですけど、
観たらきっとハマるんだろうなーって思ってたところで
、、、、
このお話最終的に本当、怖いですね。
でも当時だったら当然の結末なんでしょうね。。。
悲劇です
■migさん (えい)
2008-09-21 13:55:49
こんにちは。

見応え十分でしたよね。
史実が基になっているわけですが、
権力と性をめぐる物語は
どの国でも同じなんだなと、
改めて実感いたしました。
大奥! (たいむ)
2008-10-25 09:05:22
えいさん、こんにちは。
>イギリス版『大奥』
ソレですよ!ソレ!!私も同じように思ってました。

ひとつ気になったのは、毎度妊娠すると心が離れる王って、結局は身体?王子云々は建前にしか感じられないのは気のせいかしら?(^^;
キャサリン王妃は愛されてたんだなーと思いますが。
■たいむさん (えい)
2008-10-25 22:08:39
こんばんは。

>ひとつ気になったのは、毎度妊娠すると心が離れる王って、結局は身体?

もしかしたら、それもあるかも。
この映画を観ながら思ったのが、
「なるほど人間って権力志向になるはずだ」と……。
こんな好き勝手なことが許されるのは
あの時代だと国王だけ。
いまは、それが「富」に変わっているのかな?
拝金主義が横行するのも、
一つは、この欲があるからかもしれないですね。

歴史 (kazupon)
2008-10-26 19:56:18
えいさん

アンとメアリーのオヤジと叔父が画策したのが結果的に歴史に大きく影響しているって考えたらスゴイ話ですね。ただわかっていながらなんかもどかしくて
イライラしてしまうストーリーでした(笑)
自分も大奥みたいだなーって思いました。
アナ・トレントが彼女だったんですね。「ミツバチのささやき」っていつの映画だったんだろ・・。
■kazuponさん (えい)
2008-10-27 21:51:03
こんばんは。

こういう形で歴史の勉強をしていたら、
もっと興味を持てたのではないかと…。
映画を鑑賞した後で、
「ここは創作ですが……」と
教えてもらえたら、
これ以上に楽しい勉強はないでしょう。

『ミツバチのささやき』、
調べてみてビックリです。
製作は1973年。
なるほどこれならアナ・トレントの件も分かります。
日本での公開は1985年。
12年も遅れていたんですね。
Unknown (mariyon)
2008-10-28 22:45:55
こんばんはーー。
面白かったです。
史実とはちがっても、細かいところはよく知らないので、へぇ~~なんて思っちゃいましたが・・・。

二人ともうまかったですね。
ヨハンセンはひっそりとしながら、でも芯はしっかりしている美女にみえたし、ナタリーは最後、貫禄まで感じて一瞬、デミ・ムーアに見えちゃったくらい。
■mariyonさん (えい)
2008-10-29 20:43:17
こんばんは。
ぼくもこういう芝居がかった歴史劇は好きです。
史実に忠実と断ってあるわけでもないし、
過去のSFと考えれば映画として十分に楽しめます。

なるほど。デミ・ムーアですか。
あそこまで逞しくならないでほしいです。

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