ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『メゾン・ド・ヒミコ』

2005-09-19 00:25:36 | 映画
(※注:けっこう辛口です。犬童監督や『メゾン・ド・ヒミコ』をお好きな方は
お読みにならない方がいいかも)


------今日は、立川のシネマシティ2に行ったんだよね。
映画は『メゾン・ド・ヒミコ』だっけ?
おや、なんかイライラしてニャい?
「う~ん。どこから喋ろうか?
先日、『タッチ』を観て思ったことにもつながるんだけど…」

------確か、あのときは「『死に花』は犬童監督向きではなかった…とか?
「うん。でも覚えてるかな。
『悪く言えばサプライズに乏しい』みたいなことも言ったんだけど…
今回『メゾン・ド・ヒミコ』観てみて
『タッチ』がものたりなかった理由が見えてきた気がするんだ」

------どういうこと?
「誤解を恐れずに言えば、
犬童一心監督にはデヴィッド・クローネンバーグのようなところがある。
大ヒットした『ジョゼと虎と魚たち』の
<せつない純愛>に思わず目がいきがちだけど、
犬童監督が取りあげる素材はいつも、ある種の不全さを伴っている。
『金髪の草原』の主人公、日暮里は自分が20歳だと思っている80歳の老人。
『ジョゼと虎と魚たち』のジョゼは脚の不自由な少女。
そしてこの『メゾン・ド・ヒミコ』は同性しか愛せない老人たちだ」

-----あれれ大丈夫?それって差別で言ってるんじゃないよね?
「もちろん。そういうつもりじゃない。
むしろ、犬童監督はそのような
日常ならざるものを持ってくることで、
視覚芸術である映画における
自分の世界の個性を造形しようとしている。
そこには、そういったいわばマイノリティ、
社会から阻害されている人々への共感さえ感じ取れる」

-----あ~あ、そういうことか。
「つまり、『タッチ』がなぜものたりなかったかと言えば、
あのような明朗青春映画は、彼の描く世界とは真逆の世界。
心の悩みはさておき、社会から欠損と観られる要素は全くない。
むしろ『死に花』ではなく
『タッチ』こそ、彼向きではなかったわけだ」

-----なかなか大胆な意見だね。
確かに『死に花』も老人たちが主人公だったけど…。
でも、今回の映画にも不満があるとか?
「うん。彼の描く世界をクローネンバーグに例えて敬意を表しても、
それでもどうもあの監督の描き方、
<予定された感動に向かって言葉で結論を出す手法>には納得がいかない」

-----と言うと?
「たとえば、
ゲイのみんなが街に繰り出し、クラブで踊るシーンで、
女装したゲイの一人が酔っぱらった昔の知人に会い、絡まれ侮辱を受ける。
そこで沙織(柴崎コウ)は「あやまれ!」と食い下がる。
『えっ、なぜ?昨日まであんた自身が差別してたじゃない...』と思ってしまった。
また、やはりゲイの一人が不治の病となり、
何も知らない実家に送り返された後のシーン。
そのみんなのやり方を見た沙織がゲイたちに意見すると、
彼女をここに連れてきた春彦は
『ここはゲイが幸せになるところだ。あんたには関係ない。帰ってくれ』と言い放つ。
これも、『でも、あんたが連れてきたんだろうに…』と
思わずスクリーンに向かって言いたくなってしまった。
こういった、本来なら感動的であるはずのシーンが、
途中の感情の動きの説明なしに突然出てくるため、かえってしらけてしまう。
クライマックスであるはずの父親(田中)の『あなたが、好きよ』もそう。
このセリフは、あたりまえすぎて読めてしまう。
それでいながら映画を観る限り
『でもいつ、そんな気になったの?』との疑問が拭えない。
いずれも<感動>のために作ったシーンという感じなんだ」

-----なんか、言い過ぎじゃない?
「それに、ぼくがこの監督を苦手なのは、その性愛シーン。
『金髪の草原』の初体験の後の朝、
『ジョゼ虎』のラブホに行く前のジョゼの台詞、
『死に花』の(かつての日活アイドル)松原智恵子のセックス...。
今回は台詞、キスを始め、生々しすぎてとても書けない」

-----でも、この映画、なかなか評判いいようだね。
「うん。そういう評判のいい映画について書くのは勇気がいる。
好きな人はそんな悪評、目にするのもいやだろうしね。
だから最初に断り書きを書いたわけだ。
ただ、試写で観ていたんだったらスルーするんだけど、
今回は映画館で公開後。思い切って書いてみたわけさ」


(ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
この作品はきついこと書きましたのでこちらからTBはいたしません。
TBをいただいた方のみ、こちらからもお返しをさせていただきたく思います)

       (byえいwithフォーン)

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