しろくま

軟い雑感、とりとめなく。

かたりくち

2014-10-29 | 本棚
このところ、すさんだ記事ばっかりなので、ひといき。

『都市』’52、クリフォード・D・シマック
世に出たのはこっちの方が早いが、ひとことで言えば、『猿の惑星』の社会の犬版かな。


この作品は53年国際幻想文学賞を得ているが
中身そのものは、動物、ロボット、突然変異、火星人、宇宙旅行の話。sfファン好み。
そのままで子供に語(れ)る人はいないだろう。子供より大人に向けたファンタジーといえる。

原書で読めればそれに越したことはないが、日本語訳も頑張っている。
細やかな気づかい。覚え書き、エピソードも言い回し、語尾を微妙に変えている。
(「日本語っていいな」て思う)。

これは、火があかあかと燃え、北風が吹きすさぶとき、犬の物語る話の数々です。どこの家庭でも、みんな路ばたにつどい、子犬たちは黙々と座って、話に耳をかたむけ、話が終わるといろいろな質問をします。
 たとえば、「人間ってなあに?」とか、
「都市ってなあに?」とか、
「せんそうってなあに?」と、いう風に。
 こういう質問には確答が出ないのです。仮説もあり、置く説もあり、いろいろと知性にあふれた推測もされますが、いずれも回答らしい回答にはなりません。……(刊行者の序文/伝説慣行委員会より)

まさに、わからない子供に言い聞かせるよう。かたりくちがじつにいい。ツカミはOK。
8つの時代の話。覚え書きのあとに、エピソードがくりひろげられる。

気に入ったところを書いてみると
・グランプ家の自動芝刈り機だの、ちょっと『夏への扉』みたいで、古き良きsf好きにはたまらない。
・ウェブスター家に代々遣えるロボット・ジェンキンズ、ジェローム・ウェブスターと火星人との対話、
息子が火星に向かうくだりなどは、『火星年代記』'50が思い浮かぶ。
(マニア間では周知のことかもしれないが、なにぶん自分目線なもので)

異世界(?)の筈だけど、テンポ、言葉/シチュエーションのおいてけぼり感がない。
(ウィリアム・ギブソンの千葉シティで何度現場に置き去りになったことか。『ニューロマンサー』、まだログにしてなかったな)。

・突然変異者が世話する“アリ塚”は、白鹿亭の「隣の人は何する人ぞ」。オマージュだったのに、今気付いた。
・木星探検ミッション。隊長ファウラーと愛犬タウザーの話は、メデューサの原型。
クラークは現代技術に近い形で書いている。


時の旅人、ジョン・ウェブスターとサラの会話だの、ジェンキンズとかアリ塚の行方とか、
クックロビンの一節に、子どもの時一度は耳にするおとぎ話の西欧とマザーグース読んだことない私とのギャップを感じたし、
時の流れにつれて、人々から人間、人類が、影の薄い神話の色合いに描かれていくことなどもおもしろい。
もっとある。…

文章/時間(何日も)のわりに、なかなかうまく書けないものだ。やっきになった割に言葉が進まない。

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