しろくま

軟い雑感、とりとめなく。

2011-01-02 | TV, 映画, DVD
黒澤の色彩美、色彩幻想。

夢 [DVD]
クリエーター情報なし
ワーナー・ホーム・ビデオ


前にノルシュテインを書いたことがあったが
http://blog.goo.ne.jp/dearblossom/e/156486ffc8d140264596d1d78ac8bc2a
同じように寓意に満ちた オムニバス8篇。
主人公(わたし:寺尾聡)の目の前の景色が
一生になぞって進んでいく。

「第1話/日照り雨」(倍賞美津子)
「第2話/桃畑」
 子どもの約束
 切られた桃の木 
 自然への慈しみ
 痛いほど美しく眩しい画である。

「第3話/雪あらし」(原田美枝子)
 自然の神秘さ、厳しさ 幻想

「第4話/トンネル」
 戦争で帰って来れなかった配下への自責の念

「第5話/鴉」(マーティン・スコセッシ)
 ゴッホとスコセッシと絵描きの黒澤※1 がダブる。 

「第6話/赤富士」(井川比佐志)
「第7話/鬼哭」(いかりや長介)
 色あせた現実 原色の悪夢
 今でいうなら原爆戦やスリーマイル、チェルノブイリ他よりも 
 環境汚染で痛めつけられた自然の悲鳴・怨念だろう。
 黒澤はそのつもりはないだろうが
 ネビル・シュートでも円谷でもなく、黒澤が撮ったsfとして(大して差はないが)わたしは観た。

「第8話/水車のある村」(笠智衆)
 本来そうであったならいいなという理想郷/希望で結んでいる
 黒澤の願いである。

 毒に毒で返す表わし方の人には
 ♪You may say I'm a dreamerだろうが、
 だけど
 Kubricのドクター・ストレンジラブより
 八月のラプソディの弱者のばあちゃん、水車小屋の爺さん/黒澤の言葉の方が、
わたしは深く沁みる。


それに黒澤ビギナーとしては、
社会派(寓話)の画というより、エンタメで見ている部分が大きい。
“お客さんが見たかった”画が“侍”なら
こちらは“監督が撮りたかった”画だろう。

以前、8 1/2(フェリーニ)を見たことがある※2。
友人は絶賛していたが、わたしには、さっぱりわからなかった。
(しいていえば、現実とめくるめく映像幻想の交差なのだろうか)。
2001にしても、
画と音に圧倒され、ずっと後になってから、感想が追いついて来る。
観客の感覚が追いつかないとスベル。撮る側の画って、そんなタイプ。


※1
“まあだだよ”の絵コンテみたことあるが、一等の絵本作家だと思う。

※2
名作志向ではないし、芸術芸術よりもっと普段着のヤツも観たいのだけど、
あんまり観てない/知らないから、“名前”で拾うしかないないのだ。