月の岩戸

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ミネラウヴァ・18

2017-06-23 04:15:08 | 詩集・瑠璃の籠

うつむく白百合から
重い荷を外し
ウィステリアの花を
尊びなさい

夜明けの風の色をした
美しい秘密を
ささやいてくれるだろう

春が深まれば
清らかな雨のように
垂れ落ちてくる花房を
揺らし
神が決して明かしてくれなかった
愛の形を
話してくれるだろう

白い細月のような形をした
百合がうつむいていたのは
人間の愛があまりに苦しかったからだ
清らかに白い自分を
愛しているくせに
いつも激しく汚して殺そうとする
人間の心が苦しかったからだ

汚されることにも
崩されることにも耐えて
愛してきた
咲いてきた
その苦しみを理解し
もう百合を解き放ってあげなさい

夜明けの風の色をした
ウィステリアは
揺らぎながらも立つ太い幹に
何千もの花房を垂れている
そして
恐ろしく深い物語を
始めようとしている

大地に腰を下ろし
行儀よく頭を下げ
耳を澄ますのだ
神が新たに始めようとなさっている
新たな物語の紐が
とかれる音に




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