月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ミアプラキドゥス・3

2018-02-01 04:14:35 | 詩集・瑠璃の籠

夕日の足が
あなたの部屋に忍び込み
ゆっくりと歩いてゆく

岩戸の中は
暖かな光でいっぱいだ
もう何も心配はいらないと
鈴のような声で
誰かが言っている

苦しかったか
おお
苦しかっただろう

剃刀の混じった風の中を
ひとりで生きていた
だれも愛を信じない
礫のような孤独を吐きながら
ただれた心臓を燃やして生きていた

そんな中で
あなただけが
ただ一筋のまことを生きていたのだ

あなたを
傲慢のきぬをかついだ
いやらしい女にしたくて
大勢の人が
怪しい嘘を吐いた
それは津波のように町を洗ったが
小さな野原があなたを守り抜いた

その野こそが
この世界で
たったひとつ
真実が生きられる場所だったのだ
そこがなくなればもう
あなたの生きる場所はこの世界にはない

もう二度と帰らなくてよい
生きることはだれかにまかせてよい
自分だけの世界で
犬を追いかけていなさい
誰も責めはしない

何もしなくていい
あなたは
夕日のやわらかな光の中で
しばらくの間
溶けていればいい




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